古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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アストリウス・アカデミー//講義と新居

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 ──アストリウス・アカデミー//講義と新居

 

 

「殿下。こうして学院に多大な支援を提案していただけるのは嬉しいですじゃ。しかし、エスタシアの学校を支援するのではなくてよかったのですかの?」

 

 わしは疑問に思っていたことを尋ねる。

 

 アルブレヒト殿下はエスタシア帝国の方じゃ。当然思い入れはエスタシアの方にあるじゃろう。それなのに外国であるアルビオンの学校を支援するということに、本当に納得しておるのじゃろうか?

 

「私にとって国境というのはさほど大きなものではないのだ」

 

 アルブレヒト殿下は告げる。

 

「優秀な人材が集うのであれば、それがどこだろうと構いはしない。それにアルビオンは私のいとこが治める国だ。完全な外国というわけでもない」

 

 それにとアルブレヒト殿下は続ける。

 

「アリス、いや偉大なるアストリウスよ。あなたにとってもアルビオンは自分の故郷ではなかろう?」

 

「まあ、それはそうなのですがの」

 

 アルビオンは古代帝国の血を引く国家ではない。

 

 わしはたまたまアルビオンに転生したが、ここはわしの完全な故郷でもないのだ。

 

「文明が進めば進むほど国境や民族というものは遠いものになるはずだ。私はそう信じているよ」

 

 アルブレヒト殿下はそう楽観的に考えておられた。

 

「それよりも君の扱っている実戦魔術の講義を私も聴講していいかね? 興味があったのだよ。あの伝説であるアストリウスがどのような講義をしているのか!」

 

「ええ。構いませんですじゃ」

 

 わしはアルブレヒト殿下を招いて実戦魔術の講義が開かれる講義室に向かった。

 

「さて、諸君。今日はエスタシア帝国の皇太子アルブレヒト殿下が聴講されておられる。失礼のないようのう」

 

 わしがそういうと受講している軍人たちはアルブレヒト殿下に敬意を示すために席を立って頭を下げた。遅れて学生たちが席を立って頭を下げる。

 

「今日の講義は精霊魔術について話そう。ちょうど精霊魔術の専門家であるザリオンもおることじゃしのう」

 

「よろしくお願いします」

 

 ここでザリオンが頭を下げて前に出る。

 

「これまで一般魔術、異界魔術とふたつの魔術を教わってきたが、精霊魔術はこれらとは違った性質を有する」

 

 わしはそう言ってザリオンに合図すると、ザリオンが精霊魔術を発動。

 

 表面構造(テクスチャ)への上書きが行われ、炎の精霊であるサラマンダーの力で炎が生じる。

 

「一般魔術と異界魔術。これらと精霊魔術の違いは分かるかの?」

 

 わしは未だ激しく燃え続ける炎を前にそう質問する。

 

 じゃが、軍人たちも、学生たちもよく理解できていないようだ。

 

「ふむ! これは表面構造(テクスチャ)の復元力があまり強く働ていていないということだろうか?」

 

 と、ここでそう答えたのはアルブレヒト殿下じゃ。

 

「その通りですじゃ。精霊魔術は表面構造(テクスチャ)の上書きに対して働く復元力が弱いことで知られております」

 

「理由はボクが説明しましょう」

 

 ザリオンがそう言って説明を引き継いでくれる。

 

「精霊は自然に存在するものです。一般魔術による人の介入、異界魔術による異界の侵食という攻撃的な表面構造(テクスチャ)への上書きに対して、精霊魔術による精霊の力による上書きは世界を乱すとは思われていない」

 

 精霊はこの世界に自然に存在する存在である。

 

 そう、自然な存在であるが故に、他の魔術と違って表面構造(テクスチャ)に上書きしていると認識されにくいという点がある。

 

 一般魔術は人工的な人の意志によって、異界魔術は異界に存在する理によって、それぞれ表面構造(テクスチャ)を上書きするのに、精霊魔術はそれらほど侵襲性がないというわけじゃな。

 

「このような精霊魔術は大規模な表面構造(テクスチャ)の上書きであっても長期間継続する。故に敵に回せばかなりの脅威なのじゃ」

 

「ただし、精霊魔術には当然ながら精霊の存在が必要だから、今のこの世界ではあまり使える魔術ではないけどね」

 

 わしが言い、ザリオンが付けたす。

 

「もし、自然環境が回復して精霊が蘇ったら、今日教えたことを覚えておいておくれ」

 

 わしはそう言い、精霊魔術についてさらに講義を行った。

 

 

 * * * *

 

 

 それからアルブレヒト殿下は時間になって学院を去られた。

 

「では、わしらの新居を見に行こうかの!」

 

 そう、わしらは学生寮から引っ越したのじゃ。

 

 わしは講師になったし、ザリオンもどこかで暮らさねばならないしで、新居を必要としておったわしらはようやくロンディニウムに物件を見つけた。

 

 学院から馬車で40分ほどの場所に、その新居はある。

 

 それはロンディニウムにある集合住宅のひとつで、古い建物だが内装は十分に綺麗な場所じゃった。

 

 既に引っ越しは父上たちが済ませてくれているので、わしらは中に乗り込む。

 

「今日からここがわしらの家じゃの!」

 

 家具が置かれた部屋は、学生寮より広く、過ごしやすそうであった。

 

 しかし、この広い部屋でも3人で暮らすとなるとそれなりじゃろう。

 

 そう、この部屋にはわしとレオ坊、そしてザリオンの3人で暮らすのじゃから。

 

「姉上。ちゃんと水も出るよ。大丈夫だ」

 

「うむ。ベッドもちゃんとある。ばっちりじゃのう」

 

 生活に必要なものは一通りそろっておる。問題なさそうじゃな。

 

 わしらは一応持ち込んだはずのものが持ち込まれているのを確認した。

 

「さて、今日からここで暮らすわけじゃが、家事は分担してやらねばの」

 

「料理なら私がするよ」

 

「お? レオ坊、いつの間に料理を?」

 

「一人暮らしすることを考えて実家にいるときにメイドに教わったんだ」

 

「そうじゃったのか」

 

 わしは料理などさっぱりできぬからのう。ザリオンも同様じゃろう。

 

「これからは全て自分たちでやらなければならない。いろいろとおぼつかぬこともあるじゃろうが、覚えていくしかないのう」

 

 料理も、掃除も、洗濯も。これからは自分たちでやらなければ。

 

 ううむ。思った以上に大変そうじゃ。

 

「大丈夫だよ、姉上。きっと何とかなるさ」

 

「そうですよ、アストリウス様。ボクだって弟子時代は自分でやっていましたし」

 

 レオ坊とザリオンがそう言ってくれる。

 

「うむ。では、早速今日の夕食を作って、新居への引っ越しを祝おうかの!」

 

「おお!」

 

 わしらはそれから何とか料理と呼べるものを作り、新居への引っ越しを祝った。

 

「レオ坊は本当に料理ができたのじゃのう……」

 

 わしがレオ坊が作ったシチューを食べながらそう呟く。

 

「あまり凝ったものは作れないよ。メイドからは簡単な料理しか教わっていないから」

 

「これだけ作れれば十分じゃよ。流石はレオ坊じゃ」

 

 わしらはレオ坊のシチューを味わい、それから風呂などを済ませてベッドに入った。

 

 寝室は二部屋しかないのでわしとザリオンで同室にすることにした。

 

「ザリオン。寝ぼけてわしを焼き殺す出ないぞ?」

 

「そんなことしませんよ」

 

 わしらはそんなジョークを飛ばしながら眠りに入った。

 

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