古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──アストリウス・アカデミー//北部フェイロック
わしらはアストリウス・アカデミーの開設に向けた準備に入った。
まずは北部に設置される精霊魔術復興の研究拠点の設置が課題じゃった。
「わしらが現地に向かって場所を確かめる、と」
アストリウス・アカデミーの準備に入っているトーランド教授からわしはそう言い渡された。
「ああ。そうだ。君たちが確かめるのが適任のように思われる。我々は精霊魔術についてかすかな知識しかないのだ」
「そうですの。わしも専門家であるザリオンが現場を見た方がいい気がしますのじゃ」
わしも精霊魔術に無知というわけではないが、ザリオンの方がより知っておる。
そして、トーランド教授も言っていたようにこの時代の魔術師たちには、精霊魔術についての知識は少ない。何せこの世界では精霊が数を大きく減らしていたのじゃから当然なのだ。
これから精霊の数を増やし、精霊魔術を再興するのじゃ。
「では、わしとレオ坊、そしてザリオンで現地の様子を見てきますのじゃ」
「ああ。よろしく頼む。魔術学部からもアイザックを同行させる」
「了解ですじゃ」
こうしてわしらはアルビオン北部に向かうことに。
* * * *
アルビオン北部まではやはり鉄道で移動する。
目的地は北部にあるフェイロックという街で、そこで精霊魔術研究所が建設されるということじゃった。
「北部の方に来るのは初めてじゃのう」
「そうだね。北部にはまだ自然が残っているらしいが……」
わしとレオ坊は鉄道の外の景色を眺める。
北部には自然が残っているといっても、それは南部と比較した場合であり、やはりここでも木々が切り倒されて山肌が剥き出しになった光景などがあった。
しかし、北部に向かうについて木々が僅かながら生い茂り始める。
「ザリオン。どうじゃ、北部の様子は?」
「悪くはありませんが、やはり精霊が育つにはもっと自然が必要ですね」
ザリオンは精霊として周囲の自然を感じ取っておる。
それから鉄道はがたがたと揺れながら、北部の街フェイロックに到着した。
「到着じゃ。よい感じの街じゃのう」
フェイロックは落ち着いた雰囲気の、静かな都市じゃった。
都市と言ってもそこまで大きなものではなく、わしらの生まれ故郷であるオールデンウィックの方にある街よりも小さいものだ。
「ようこそ! 学院から派遣されてきた方ですよね?」
「ああ。そうじゃよ。アリス・カニンガム、レオ・カニンガム、ザリオン、そしてアイザック・ドレイクじゃ。今回はよろしく頼む」
既に建設現場を確保しようとしている学院の人間が出迎えるのに、わしらはそう挨拶したのじゃった。
「早速じゃが建設予定の現場を見せてもらえるのかの?」
「はい。どうぞこちらへ」
わしらは準備されていた馬車に乗り、フェイロックの街を郊外に向けて進む。
郊外は本当に静かな場所じゃった。
森があり、湖があり、川が流れてる。
自然が残っていると言えるかもしれぬ。ここに研究所を設置するというのは、いい考えだったのじゃな。
「ここが建設予定地です」
そして、わしらは森の傍にあった平原に到着した。
「ザリオン。どうじゃ? 精霊は育ちそうかの?」
「ええ。アストリウス様。もう既にここには精霊の気配がします」
「おお! そうか!」
ザリオンはそう言って森の方に向かう。
「ほら。ここに風の精霊であるシルフがかすかに存在しています」
ザリオンがそういうとそこにほんの小さなものであるが、シルフがいた。まだ精霊魔術を発動させるのに十分ではないが、確かに存在しておったのじゃ。
「ふむ。このレベルの精霊の存在は前々から僅かに報告例があったが、これは期待できそうだな……」
「そうじゃのう」
とは言え、昔はこのような僅かな精霊がいるだけではなく、どの森にも立派な精霊たちがいたものじゃ。
それを考えると寂しくなってしまうのう……。
「アストリウス様。場所はここでいいと思います。あとは自然環境の改善と精霊の保護のためにボクが必要なことをしておきます」
「そうか、そうか。何か支援は必要でないかの?」
「これ以上、森に手を入れない方がいいでしょう。既にここには精霊がいます。あとは周辺を流れる水をある程度清め、自然に生きる動物たちを増やせれば……」
ザリオンはそう言い、早速何をするべきかを考えておった。
「ザリオン。もう少し周囲を見て歩かぬか?」
「ええ。そうしましょう」
わしはそんなザリオンを誘い、レオ坊たちとともに森の周りを見て回る。
「綺麗な森だね、姉上」
「そうじゃの、レオ坊。流石は精霊が僅かにでも宿っていた森じゃ」
わしとレオ坊はそう言ってのんびりと森の周りを見て回ったのじゃが、ここにも自然破壊の手が出ていることを知った。
森の反対側は木々が伐採され、牧場へと姿を変えつつあったのだ。
一見すると牛が放牧され、牧歌的な光景に見えるが、これは自然の姿ではない。これは人工的に作られた環境じゃ……。
しかし、それを非難することはできぬ。
全てを自然のままにしておくということは、それは文明の否定にもつながる。わしらは開発を全て否定するような不毛なことはせず、節度を持って開発することを心掛けねばならぬのじゃ。
「この森に関しては完全に土地を学院が取得している。これ以上、森が切り開かれることはないじゃろう」
「それは何よりじゃ」
そこでアイザックがそう教えてくれてわしは安堵の息を吐いた。
「それでは建設現場も決まったことじゃし、一度フェイロックに戻ろうかの?」
「そうしよう」
それからわしらはフェイロックへと戻った。
今日はここで一泊して、明日の朝にロンディニウムに戻ることになっておる。
わしらはフェイロックのいい感じのホテルにチェックインして、フェイロックの街を探検したりしたのじゃった。
「ほほう。なかなかいい感じの市場じゃのう」
街の市場は地方都市にしては活気に満ちており、野菜やチーズ、肉が売られておる。
「研究所がここにできたら、ここで長い時間を暮らすことになるのじゃからしっかり見ておいた方が良いぞ、ザリオン」
「そうですね。この街はロンディニウムよりもボクには生きやすそうです」
「ロンディニウムは開発されきっておるからのう。仕方ない」
ロンディニウムは完全な人工物でできた大都市じゃ。
今は精霊そのものになっているザリオンには暮らしづらいかもしれぬのう。
「姉上はこれからもここにできる研究所に参加するのか?」
「いいや。ここはザリオンに任せようと思う。船頭多くして船山に上るというじゃろう? リーダーはひとりで十分であり、そのリーダーに相応しいのはザリオンじゃ」
レオ坊が少し心配して尋ねるのにわしはそう返した。
「しかし、いつかここに精霊が満ちたら、また来てみたいのう」
わしはそう言ってフェイロックの街から見える雄大な自然を眺めた。
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