古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──アストリウス・アカデミー//名誉学部長
アルブレヒト殿下の支援を受けて、エルダーグローブ学院魔術学部はアストリウス・アカデミーへと再編成されようとしておる。
「カリキュラムについては、世界魔術連盟からも人材は提供され、さらに拡充される予定になっている」
そう魔術学部の教職員が集まった会議場で言うのは再編成を主に引き受けているトーランド教授で、彼はここ最近はずっと忙しそうじゃ。
「研究についてもこのエルダーグローブ学院が世界の中心となるべく、世界魔術連盟と協力していくことになるだろう。既に精霊魔術の分野では、世界魔術連盟から支援を受けて北部フェイロックに研究所が建設中だ」
フェイロックの研究所hはわしらが下見したところじゃな。
「学院にある魔術学部の施設も増築が進んでいる。理事長と相談したが、将来的には今の学生の数の3倍の定員を目指す予定だ」
「3倍ですか……! それはすごい!」
トーランド教授の言葉に唸るのはローガンじゃ。非血統魔術師ながら魔術を広めたいという思いを持ったグレイスと似た教員じゃな。
「我々はこの時代において改めて魔術を見直すべきだ。そういう動きを作らなければならない。それを主導するのは学院と世界魔術連盟であり、我々自身なのだ」
世論は魔術にこれ以上ないほどに注目している。
それはザリオンという伝説の魔術師の復活とわしという古代帝国時代の魔術師が転生していたということもあるじゃろう。
世界に魔術の神秘性と謎が広まり、人々はそれに興味を示しておる。
このまま頑張れば魔術が再興するのは間違いないような気がするのじゃよ!
「我々は再編成が終了後に正式にアストリウス・アカデミーを名乗ることになる。そこで問題になるのは、誰がこのアストリウス・アカデミーを代表するかだ」
トーランド教授はそんなことを述べる。
「理事長と話したが、我々はアストリウス・アカデミーの名誉学部長にアリスを就任させたいと思っている。どうだろうか?」
「わしが名誉学部長ですかの……?」
なんと! そんなことになるとは!
「わしにそれが務まるでしょうか?」
「足りない分は我々が支えよう。アストリウス・アカデミーを名乗っておきながら、そのアストリウスである君がただの講師では、羊頭狗肉だ。ここは君にも魔術というものに対する人々の注目を集めるために頑張ってもらおう」
「了解ですじゃ。引き受けましょう」
そう言われては断れぬ。わしは名誉学部長の件を引き受けることにした。
「では、これからまだまだ忙しくなるぞ、諸君」
トーランド教授はそう言って、それぞれが果たすべき役割を割り振っていった。
そして、会議は終わり、わしらは会議が行われていた建物の外に出る。
「凄いですね、アリスさん! 名誉学部長にまで出世するとは!」
「うむ。わしも驚いておるよ、グレイス」
グレイスが喜び勇んでやってくるのにわしはそう答えた。
「私も手伝えることがあれば何でも手伝いますから、遠慮せずに言ってくださいね!」
「頼りにしておるよ」
後日、わしが名誉学部長に就任する旨が正式に発表され、魔術学部にざわめいた。
「アリスちゃん、名誉学部長になるの!?」
「すげえな!」
そう驚いてくれているのはマヤとライリーで、食堂でそう話しかけてきた。
「うむ。わしも魔術に人々の注目を集めたいからの。古代帝国の魔術師が名誉学部長をやっておると聞けば、興味を示した学生が入学してくれるかもしれぬ」
「きっとそうだね。間違いないよ」
客寄せには珍しさも必要であろう。わしという看板を出すだけで、人々が魔術に再び関心を示し、興味を持ってくれるならば何よりじゃ。
「そう言えばレオ君も周りの関心を引いてるって知ってる?」
「そうなのか? その、悪い意味ではないじゃろうな……?」
「もちろんいい意味でだよ。レオ君はあのアストリウスの弟子だってことで」
「ほほう!」
レオ坊は今世でのわしの一番弟子じゃ。それがそのことで有名になるならばよいことじゃのう!
「そう言えば魔術史で習ったが、アストリウスの弟子って何人もいたんだろう? 何か個性的な弟子はいたのか?」
「ふむ。弟子は皆、個性的じゃったな。ザリオンは精霊と対話するために何日も山籠もりしたりの」
「へえ。精霊魔術ってのは難しそうだ……」
「実際そこまでせずとも精霊魔術は使えるのじゃが」
単にザリオンが文明を離れて、自然で暮らすのがすきじゃったたけじゃよとわし。
「他にも皇帝のひとりであるルキウスもわしの弟子じゃった。あやつには才能はあったのじゃが、何かと後ろ向きでのう」
「当時の古代帝国の皇帝たちのこともしってるの!? 歴史の生き証人じゃん!」
「一応はそうなるの。まあ、わしの主観が入っておるから客観的なものではないが」
「それでも史学科とかが興味を示しようだけど」
マヤはそう興味を持ってそう言っておった。
「ルナフィーナって弟子が異界魔術の使い手だったのだろう? そう教わったが」
「ルナフィーナ、か……」
ルナフィーナはどういうわけか魔術を隠匿し、後世に引き継がれないようにした。
わしはあやつにも将来においても魔術を継承し、より高みに登らせてほしいとの頼んだのじゃが……。
「もっとザリオンから話を聞くべきかもしれぬな……」
わしはそう思い、ザリオンの下に向かった。
* * * *
「ザリオン! 少し良いかの?」
「どうしました、アストリウス様?」
ザリオンはフェイロックに設置される精霊魔術研究所の設置に向けて、他の教職員たちと話し合っているところじゃった。
「ルナフィーナのことを少し聞きたいのじゃ。あやつに何があったのかを」
「……そうですね。話しておくべきだと思います」
ザリオンは頷き、わしらは大学の中にある喫茶店に入った。
「ルナフィーナがおかしくなり始めたのは、まさにアストリウス様が亡くなったあとのことです。彼女は明らかに何かに動揺していました」
「動揺していた? 原因は?」
「分かりません。ただ彼女がそのときから調べ始めたのは不老不死についてです」
「不老不死……」
わしが死んだあとにルナフィーナは不老不死について調べ始めた。
「あやつは死を恐れたのじゃろうか……」
「死を恐れない人間はいないでしょう。ボクのオリジナルも死を恐れたからこそ、こうして精霊に記憶と人格を宿したのですから」
「それもそうじゃが……」
やはり死というものは恐ろしいものなのじゃろうか。
確かに志半ばにして若く死ぬのは辛いものじゃが、わしのように年老いて十分に生きたのならば死を受け入れられるじゃろう。
「しかし、ルナフィーナは何故魔術の継承を断つようなことを? そのことであやつに何かのメリットがあったのかのう?」
「それはボクにもまだ分かりません。ですが、異界魔術について彼女は徹底的に隠匿を測りました。内戦に乗じて図書館を焼いたのも彼女が率いる魔女学会です」
「ふむ……。本当にそのようなことをする理由がわしには分からぬ……。ルナフィーナはおぬしと同じくらい魔術を愛しておった。魔術が発展することはあやつにとってもいいことであっただろうに」
「もしかすると、不老不死について研究している際に、何か発見があったのかもしれません。自分の不老不死を妨げる何かが、魔術の中にあった、とか」
「ふむ……」
わしは不老不死などについて調べておらんので、こればかりは分からぬ。
「しかし、それでもルナフィーナはボクが見た最後まであなたのことを慕っていましたよ、アストリウス様」
「そうか。あやつはわしの弟子であったことまでは否定しなかったか」
それだけは少し嬉しいことじゃった。
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