古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──アストリウス・アカデミー//パーティ
「アストリウス・アカデミーの設立を祝ってのパーティですかの?」
わしはトーランド教授からそう聞かされて、首を傾げる。
「ああ。アストリウス・アカデミーの設立を社交界にも広く宣伝したいという意向だ。理事長とアルブレヒト殿下の考えである」
「なるほどですのう」
確かにせっかく大々的に魔術学部を再編成したのじゃから、そのことを周囲に知ってもらわなければならぬのう。
「君はもちろん名誉学部長として出席してもらいたい」
「ええ。喜んで出席させていただきますじゃ。他には誰が?」
「学院の関係者はもちろん政府関係者なども招待する。国外からも興味を持っている人々や興味を持ってもらいたい人々を招く予定だ」
「では、気合を入れていかなければなりませんのう」
「ああ。だが、パーティの方はこちらで準備するから君が気にすることはない」
「了解ですのじゃ」
わしはトーランド教授に言われたようにパーティそのものは彼に任せることにした。
わしではパーティの準備などなかなかできぬしのう。どうやって会場を予約すればいいのかも、予算はどれぐらい使っていいかも分からないのじゃよ……。
「レオ坊、今度アストリウス・アカデミーの設立を祝ってパーティがあるそうじゃ」
「姉上も出席を?」
「うむ。わしは名誉学部長じゃから出席しないわけにはいかぬ。そこでレオ坊にもわしのパートナーとして出席してほしいのじゃ。頼めるかの?」
この手のパーティはひとりで出席するわけにはいかぬ。基本的に誰かと一緒でなければならぬそうなのじゃ。
わしはまだ相手がおらぬので、レオ坊に頼むことにした。
「もちろんだ、姉上。私でよければ一緒に出席しよう」
「助かるのじゃ、レオ坊。では、当日はよろしく頼むの!」
わしはレオ坊にそう頼み、パーティの当日を待ったのじゃった。
* * * *
そして、パーティの当日。
パーティはロンディニウムの高級ホテルであるロイヤルオークで開かれることになっており、わしらは馬車でそのホテルまで向かった。
「もう人がたくさんいるのう」
「そうだね。全員がパーティの招待客だろうか?」
ホテルのエントランス付近には馬車や自動車が何台も列を作っており、そこからタキシード姿の男性やドレス姿の女性が降りてきておった。
なかなかに大きなパーティになりそうじゃのう。
そして、その列に並ぶとわしらにホテルのスタッフがやってきた。
「招待状をお願いします」
「うむ。アリス・カニンガムとレオ・カニンガムじゃ。よろしく頼むの!」
「確認いたしました。こちらへどうぞ」
わしらはホテルスタッフに案内されて、大ホールに通される。
「来たか、アリス、レオ」
「うむ。こういうパーティは久しぶりじゃから緊張しておるよ、アイザック」
大ホールには既にアイザックやトーランド教授、それにアイザックの妹のリリーがおり、他の招待客たちも少しずつ入り始めておった。
「緊張することはない。君がこのパーティの主賓だ。誰も君にケチなど付けないさ」
「そうじゃといいのだがのう」
こんな盛大なパーティに出席するのは本当に久しぶりじゃからのう。
「そろそろ招待客が集まる時間だ。まずは君にスピーチをお願いする」
「了解じゃ。予定通りにこなしてみせるぞ」
わしはパーティの開会にあたってスピーチを任されておる。
アリスとしてアストリウスとして、アストリウス・アカデミーの設立に相応しい挨拶をしなければならぬのじゃ。責任重大じゃのう……!
「では、そろそろパーティの時間だ」
トーランド教授がそう言い、招待客たちが会場に集った。
「では、アリス。頼むよ」
「うむ!」
パーティ会場には40人ほどの男女が集まっておる。どれも重要人物だと聞かされておるので、やはり緊張してしまう。
しかし、招待客の中でマヤやライリー、それにアルブレヒト殿下やエリオットといった知った顔を見つけると、少し緊張が和らいだ。
「ごほん。この度はアストリウス・アカデミーの設立記念パーティにご出席いただきありがとうございます」
わしはそうスピーチを始める。
「皆さま、恐らくはご存じの通り、わしはアリス・カニンガム。古代帝国時代の魔術師であるアストリウスの転生したものじゃ。未だに信じられぬと言う方もいるじゃろうが、わしは嘘はついておらぬよ」
わしがおどけて言うのに列席者たちから僅かに笑いが漏れる。
「さて、我々はエルダーグローブ学院魔術学部をアストリウス・アカデミーとして再編成し、新たに世界的な魔術教育と研究の場とする予定ですじゃ。今日はそのことを広く知ってもらうための場としてこのパーティを開かせていただきました」
わしはそう言い、さらに続ける。
「わしらの願いは魔術が再び人類の選択肢になること。そのための第一歩として、今回のアストリウス・アカデミーの設立となりましたのじゃ」
何はともあれ目的は魔術の再興じゃ。
「かつて魔術は人類にとって科学と同じくらい有力な選択肢であり、問題解決に役立ってきました。わしらはそれを取り戻したいと思います。そのことに皆さんのお力が借りられれば光栄ですじゃ」
わしはそう言って挨拶を終えた。
拍手が送られ、わしが笑みを浮かべると演台から降りる。
それから自由にパーティが始まり、わしらは挨拶回りをすることになった。
わしとレオ坊は事前に聞かされていた重要な人物たちを中心に挨拶をしていく。
その中には意外な人間もいたのじゃ。
「マヤ。お父上を紹介してもらえるかのう?」
「もちろん!」
わしはドレス姿のマヤにそう頼むと彼女はひとりの紳士を紹介してくれた。
「お父様、こちらはアリス。アリス、こちらは私の父のエドワード」
「初めまして、アリスさん。それともアストリウスさんと呼ぶべきなのだろうか?」
その紳士はエドワードと名乗った。マヤの父親じゃ。
エドワードは前に話していたように政治家で、庶民院に在籍している。
「アリスで結構ですじゃ、閣下。この度はお忙しい中、ご出席いただき感謝の限り」
「私も娘も魔術には注目しているからね。何か力になれることはないかとやってきたところだ」
トーランド教授からはエドワード閣下は魔術関係の新部門を政府に設立するために行動してると聞かされておった。ここで機嫌を損ねぬようにし、逆に魔術をより気に入ってもらわなければならぬのう。
「閣下が政治的に応援してくださるのであれば、我々もより魔術の再興に力を入れられますじゃ。是非ともよろしくお願いします」
「ああ。娘は学院でよくやっているかね?」
「そうですの。わしから見てもマヤは優れた魔術師ですじゃ」
「よかったよ。それから軍もあなたの講義を聴講しているとか?」
「学院襲撃のようなテロが起きたときに対処するためですじゃね」
「ふむ。その段階か……」
しかし、政治家の相手とはなかなかに難しいものじゃ! 何を言ってよくて、何を言ってはダメなのかが分からぬ!
「ありがとう。また話を聞かせてくれ、アリス君」
「はいですじゃ」
わしはエドワード閣下への挨拶を終えて次に向かった。
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