古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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発展のとき//根源魔術

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 ──発展のとき//根源魔術

 

 

 わしは最近は実戦魔術の講座を担当するのに忙しかったが、たまにはと思いトーランド教授の研究室に顔を出した。

 

「トーランド教授。お邪魔しますのじゃ」

 

「ああ。よく来てくれた、アリス」

 

 トーランド教授に挨拶すると、わしは快く迎えられた。

 

「実は君に相談したいことがあったのだ。我々の研究についてね」

 

「ほう。お聞きしましょう」

 

 トーランド教授が言うのにわしは興味を示した。

 

「我々は基底構造(ベース)についてずっと研究を進めていた。表面構造(テクスチャ)に下にある根源とでも言うべきものを調べていた」

 

 そのことはわしも知っておる。ここでわしも基底構造(ベース)について実験や研究を行っていたのじゃから。

 

「実を言えば我々はようやく基底構造(ベース)について具体的な情報を把握できるようになってきたのだ」

 

「おおっ! しかし、どうやって?」

 

表面構造(テクスチャ)を削除するという上書きで、その下にある基底構造(ベース)に干渉できるようになったのだよ。しかし、我々ではほんのわずかにしか基底構造(ベース)に干渉できない」

 

「ふむふむ。そこでわしの出番というわけですな?」

 

「ああ。君ならば我々より広範囲の基底構造(ベース)に干渉できるはずだ」

 

「それでは是非とも実験に参加させてくださいなのじゃ」

 

 これは実に興味深いことじゃ。

 

 表面構造(テクスチャ)の下にある基底構造(ベース)に干渉した人間は存在しない。それは全く未知の領域なのじゃ。

 

 それゆえにわしも結果がどうなるのじゃろうかと興味津々なのじゃよ。

 

「この実験はそれなり以上の危険性もある。前例のない実験だからな。それなので実験を行う場所は学院内ではなく、陸軍の演習場を借りるつもりだ」

 

「そうですの。基底構造(ベース)に下手に干渉したことで宇宙が崩壊してしまう可能性もあるわけですからのう」

 

 基底構造(ベース)は世界を規定するものじゃ。それをいじれば、どうなるのかは今は誰にも想像できない。

 

 というわけで、わしらは何が起きてもいいように、学院ではなく陸軍の演習場で実験を行うことに舌のじゃった。

 

 

 * * * *

 

 

 わしとレオ、トーランド教授、アイザック、リリー、マックスの6名は西部にある陸軍の演習場へとやってきた。

 

「記録の準備は整いました」

 

「アリス。いつでも始めてくれ」

 

 マックスたちはカメラなどを準備しており、わしらはついに基底構造(ベース)の干渉を行うことになった。

 

「始めるぞ」

 

 わしは深く息をついて、まずは表面構造(テクスチャ)を削除する。

 

 表面構造(テクスチャ)が削除されたことで、演習場の一部に何もない空間が出現する。空気も、光も、生命も存在しない空白だ。

 

「見えた……!」

 

 わしはその表面構造(テクスチャ)に下に基底構造(ベース)を見た。

 

 基底構造(ベース)表面構造(テクスチャ)と同様に一見して理解できない光の集まりで構築されており、わしにもそこに記されている意味は理解できない。

 

 わしはその基底構造(ベース)にそっと干渉する。本当に僅かにわしの望む事象を書き込んだ。

 

 すると──。

 

「おお!?」

 

 何もなくなっていた空間に炎が浮かび、それが燃え上がる。

 

 しかも、それは延々と燃え続けたのじゃ!

 

「これは……表面構造(テクスチャ)への書き換えと違って、基底構造(ベース)への書き換えは復元されないというのか……?」

 

「うむ。その可能性は高いのう」

 

 トーランド教授が唸るのにわしもそういって炎を見つめた。

 

「では、次はこれを消せるか試してみてくれ」

 

「やってみよう」

 

 わしは基底構造(ベース)への上書きを消して、生み出した炎を消そうと試みる。

 

 すると無事、炎は消滅したのじゃ。

 

「ふむ……。これはある意味ではとても危険なものを発見してしまったのかもしれない。これはこの星の物理法則を完全に破壊してしまう恐れもある……」

 

「そうじゃのう。だが、外部に汚染を出さずにエネルギーを供給し続ける炎と言うのは、ポジティブに捉えればこれまでの汚染を出す燃料に比べてはるかに環境に優しいのではないじゃろうか?」

 

「それはそうなのだが……。どうにもこれは慎重に扱うべきもののように思える」

 

「不安になるのは分かるのう……」

 

 これは世界の理を根源から揺さぶるような代物じゃ。

 

 何せ一時的にではなく、恒久的に物理法則を変化させてしまうのじゃから。

 

 これまで信じてきた全ての物理法則が人の願うように滅茶苦茶に書き換えられる可能性を考えれば、それがどれだけ危険なものかは理解できる。

 

 それはどこかで宇宙というものを破綻させる恐れすらあるのじゃ。

 

「今は限定された実験に留めて、そこで得られた観測データをもとに理論の研究を進めよう。そして安全性が確認されてから、もっと大規模な実験や応用を開始する。それでいいだろうか?」

 

「うむ。異論はないのう」

 

 わしらはまずはこの基底構造(ベース)を変化させる魔術が本当に安全かどうかを確かめるために、小規模な実験と理論研究を行うことになった。

 

「しかし、この魔術にも名前を付けなければならぬの」

 

 この魔術はまだ発見されたばかりで名前がない。

 

 一般魔術、異界魔術、精霊魔術のように名前を付けなければならぬじゃろう。

 

「それならば根源魔術と言うのはどうだろうか?」

 

「悪くないの。それぐらいシンプルなのが望ましいじゃろう」

 

 そして、根源魔術の研究が開始されたのじゃった。

 

 今のところ、この根源魔術が使えるのはわしぐらいじゃが、将来的にもっと基底構造(ベース)表面構造(テクスチャ)について理解が深まれば、状況も変わるかもしれぬのう。

 

 魔術はまだまだ可能性があるということじゃ!

 

 

 * * * *

 

 

 それから根源魔術についての研究が進められた。

 

 やはり一度の基底構造(ベース)への書き換えで、上書きされた事象はほぼ恒久的に続くことが分かった。

 

 炎は外部の酸素などを必要とせず燃え続ける。

 

 これはあらゆる意味で物理法則に反しておる。化学反応には質量保存の法則が適用されるし、エネルギーは通常の場合、減少していくものなのじゃから。

 

「様々な学者がこの現象に興味を示してる」

 

 トーランド教授は研究室でそういう。

 

「従来の物理学や化学に真っ向から逆らうことなので当然と言えば当然だ。それに永久機関は様々理由で存在しえないとされてきたが、その永久機関すら実現可能なものが、この根源魔術なのだ」

 

「無尽蔵のエネルギーが得られるわけですからのう。しかし、このような現象が悪用されなければよいのじゃが……」

 

「それが問題だな。兵器として利用されれば、どうなるか分からない。今のところ、我々は正の事象しか試していないが、人を殺傷するような負の事象が恒久的に、消えることなく存在し続けることに気づけば……」

 

「よくないですのう」

 

 魔術は可能であれば、人を生かし、文明を発達させる方へと利用してもらいたい。

 

「トーランド教授。根源魔術を広める前に、これを悪用しないという条約のようなものは作れませんかのう? そういうものがあれば安心して他の研究者にも研究成果を共有できるのじゃが……」

 

「うむ。そうだな。政府にも働きかけてみよう」

 

「お願いしますじゃ」

 

 新たに発見された根源魔術が、人類の発展のための選択肢ではなく、人類を滅ぼす選択肢にならならぬことを祈るのみじゃ……。

 

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