古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

76 / 79
大戦争//師弟対決

……………………

 

 ──大戦争//師弟対決

 

 

 わしの前に現れたルナフィーナ。

 

「このようなことになって残念だ、我が師よ。あなたがこうして蘇ることなど想定していなかった。その理由すら分からない」

 

「わしも残念じゃよ。魔術を託した弟子がこのような所業に手を染めておるとは」

 

 ルナフィーナとわしはそう言い放ちあう。

 

「仕方のないことだったのだ。それに原因はあなたにあるのだぞ、我が師アストリウス。あなたが私を狂わせたのだ」

 

「わしが何をしたというのじゃ!」

 

 わしのその問いにルナフィーナは表情を歪めるだけで答えはしない。

 

「今度こそ死んでくれ、偉大なるアストリウス」

 

 ルナフィーナはそう言い放つと触手を生み出し、わしにけしかけてきた!

 

「その魔術、異界魔術とは異なるようじゃな……!」

 

 ルナフィーナが使っておる魔術は一見すると異界魔術のようじゃが、わしには空気が違うと言うのを感じ取られておった。

 

 何か、もっと危険な魔術じゃと。

 

「流石は偉大なるアストリウスだ。だが、私は種明かしをするつもりはない。そのまま死んでしまえ」

 

 触手がうねり、先端が槍のように鋭くとがったそれがわしを狙う。

 

 わしはそれらを異界の刃で迎撃しながら、正体を探る。

 

「これまで不可能じゃと思われていた空間転移をやり遂げ、さらに奇妙な魔術を操る。成長はしておるようじゃのう、ルナフィーナ!」

 

「ははっ! あなたは相変わらず人を褒めるのが上手い!」

 

 現状、わしとルナフィーナの攻撃と防御は拮抗しておる。

 

 そうであるが故にお互いに魔力が切れるまで戦い続けることになりそうじゃった。

 

 そう、このままならば、じゃ。

 

「甘いぞ、ルナフィーナ。伏兵がおるじゃろう?」

 

 わしは表面構造(テクスチャ)への新たな上書きを察知して、そちらの方に異界の刃を放った。

 

「くっ……!」

 

 そこの刃を退けながら現れたのは、長身のスーツ姿の女じゃ。

 

「エスミーラに気づくとはな。流石と言うべきか」

 

「空間転移を操るのがあやつで、おぬしが使うのははその触手魔術だけなのじゃろう? 役割分担というわけじゃな」

 

「ああ。私にはエスミーラのような空間操作の魔術は使えぬ」

 

 空間操作と軽く言ったが、魔術の原則である術者の視界内にしか表面構造(テクスチャ)を上書きできないという法則を破っておる。

 

 あれはどういう仕組みじゃろうか……?

 

「それだけの魔術を確立させておきながら、どうして魔術を絶やそうとしたのじゃ? わしには本当に理解できぬ!」

 

 わしはまずはルナフィーナを撃破するために異界の刃を叩き込もうとする。

 

「全てはあなたのせいだ。あなたが死んでから……!」

 

 ルナフィーナは異界の刃を退けながら、触手をあらゆる方向からわしに差し向ける。

 

「わしが死んだあとに何かがあったのか!?」

 

「……ああ。あった。あったのだ!」

 

 ルナフィーナの咆哮のような叫びとともにわしの方に数百もの骨と肉の槍が襲い掛かる。流石にこれ以上は持たぬかもしれぬのう……!

 

「ならば、説明せい! 何があったのかを!」

 

 わしは辛うじて攻撃を退けながらも、ルナフィーナの説得を目指した。

 

 このようなことになってもわしの弟子じゃ。殺したくはない。理由が分かれば、止めることはできるやもしれぬ!

 

「我が師アストリウス。あなたは自分の死後に何があったかを知らぬのだろう」

 

「ああ。知らぬ。何があって、おぬしはこのようなことをした?」

 

 攻撃が止まり、ルナフィーナが静かにわしに問いかけてくる。

 

「人が死後、醜く腐り果てる。虫が湧き、肉は腐り、異臭を放つ」

 

「……そうじゃ。それが死というものじゃ」

 

「だが、あなたは例外だと思っていた! あなたのような偉大な人間ならば、凡夫たちとは違い、永遠に美しくあり続けるだろうと、そう思ったのだ!」

 

 ルナフィーナが叫ぶ。憎しみを込めて叫ぶ。

 

「だが、あなたもまた凡夫たちのように腐り果てた死体を晒した! だから、私は恐ろしくなったのだ……! 自分もまたそうなってしまうことを!」

 

「それが理由か……」

 

「そうだ。私は死にたくない。あのような腐り、虫にたかられたおぞましい姿になるのはごめんだ。だから、死なない肉体を手に入れる! それを邪魔するであろう他の魔術師たちを全て排除したうえで!」

 

 ルナフィーナは死を恐れた。そして、死なないために魔術を考えた。

 

 他の魔術を衰退させたのは、ルナフィーナが自らの不死の魔術を邪魔させぬため。

 

「おぬしは間違っておる」

 

 わしは断言する。

 

「死を恐れるなや死を受け入れろ、などとはわしも言わぬ。これまえ人類はずっと死を遠ざけるために努力してきた。おぬしの生み出したそれは、そういう意味においては間違ったものではない」

 

 じゃがとわしは続ける。

 

「おぬしは皆と協力して死に立ち向かうべきじゃったのじゃ。人間が知恵を合わせれば、もっと高度に不老不死が実現できたじゃろう。どうして他者を信じず、ひとりで駆け抜けようとしたのじゃ!」

 

 そうなのじゃ。ルナフィーナが皆と協力して不老不死を研究しておれば、このような争いだって生まれなかったかもしれぬ。

 

「古代帝国の絶頂期に死んだあなたには分かるまい! 人間がどれほど醜いか……!」

 

「内乱の時代が大変じゃっただろうことは分かる! しかし、今の世は安定しておるではないか!」

 

「人は変わっていない! 昔の醜いままだ!」

 

 むむむ。わしは確かに古代帝国の安定期に死んだので、内戦の時代の苦しさを知らぬ。それはルナフィーナが歪んでしまうほど辛いものじゃったのだろうか……。

 

「では、わしを信じろ! わしはおぬしの師匠じゃ! 信じられるじゃろう!?」

 

「それは……」

 

 わしの訴えにルナフィーナが僅かに動揺する。

 

「わしとともに不老不死でも何でも研究すればよい。今度はわしはおぬしを置いて死んだりせぬ。どうじゃ、ルナフィーナ!」

 

 他の誰でもなく、わしのことならば信じてくれぬじゃろうか……!?

 

「……もう手遅れだ。私がこれまでどうやって生き続けたと思う?」

 

「それは……」

 

 既に不老不死の魔術は完成しておるということか……?

 

「私は悪魔に魂を売ったのだ。それで不老不死を手に入れた。それなに今さらあなたとともに歩むことはできない!」

 

 ルナフィーナはそう叫ぶと攻撃を再開。わしの方に触手が襲い掛かる。

 

「おぬしが悪魔に魂を売っていようと、どうだろうとおぬしはわしの弟子じゃ! 言って聞かぬならば、多少の暴力には訴えるぞ!」

 

 わしはルナフィーナを無力化して、そして話を聞くと決意した。

 

 ルナフィーナの放ってくる触手を次々に撃破し、一気に攻撃に転じた。

 

 異界の刃を無数に叩き込みながら触手を屠り、ルナフィーナ本体を狙う。

 

「させんぞ」

 

 だが、そこに立ちふさがったのは先ほどの長身の魔女エスミーラじゃ!

 

……………………

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。