古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──そして全ては終わり……
ルナフィーナは眠るように地面に倒れておった。
「ルナフィーナ。大丈夫かの……?」
わしはルナフィーナにそう声をかけると、ルナフィーナは静かに目を開いた。
「やはりあなたには勝てなかったな……。あなたは偉大で、そして強い……」
ルナフィーナはそう穏やかに微笑んで告げた。
「そうかもしれぬの。おぬしはこれからどうなるのじゃ?」
「死ぬだろう。それは避けられないことだ」
異界の神格の力で老いをねじ伏せていたルナフィーナは、それがなくなるとこれまでの年月分の老いを一気に経験することになると、そう言っておった。
「残念じゃ。おぬしがこれから隣にいてくれれば、わしも助かったのじゃが……」
「あなたにはザリオンがいるし、新しい弟子たちもいるだろう?」
「それにおぬしも加えたかったのじゃよ」
ルナフィーナの言葉にわしはそう返す。
「……そろそろ時間だ。さようなら、我が師アストリウス……」
そうルナフィーナが別れの言葉を告げた次の瞬間には、ルナフィーナはさらさらと灰になって消えてしまった。
「姉上」
「アストリウス師」
わしが灰になってしまったルナフィーナを眺めていたのに、心配そうにレオ坊とザリオンが声をかけてきた。
「ふたりとも怪我はないかの?」
「ええ。大丈夫だ。姉上こそ大丈夫なのか?」
「一応は大丈夫じゃよ。一応は、じゃが……」
わしは自分の弟子であるルナフィーナを殺してしまったのじゃ。そのことは見えない傷となってしまったようじゃ……。心が重たい……。
「魔女学会は退けられ、全ての戦闘は終結したようです。帰りましょう、アストリウス師。ボクたちの守った日常へ」
「そうじゃな」
わしらは魔術がある日常を、この世界の日常を守った。それに対して払った対価邪と考えるよりほかない。
「では、戻るとしよう!」
わしはレオ坊とルナフィーナを連れてロイヤルオークの中へと戻る。
* * * *
それから時は過ぎた。
根源魔術に関する規制条約は無事締結された。
むやみに根源魔術を使うことは避け、国際的な監視機関の下で根源魔術は研究が進められることになったのじゃった。
おお。そうじゃった、そうじゃった。わしはそれから教授に昇進した。今でも実戦魔術の講座を受け持ち、軍人や警察に魔術を教えておる。
魔女学会が去ったのにそれが必要なのか、と?
うむ。魔術は今やわしの望み通り、人類の選択肢のひとつとなった。それを学ぶ人間はかつてないほどに増えたのじゃ。
人口が増えれば、犯罪も増える。そういうわけじゃ。
「では、今日の講義はこれで終わりじゃ!」
わしはいつものように講義を終わらせ、研究室へと戻る。
「アリスさん! 次の講義の準備は完了しましたよ!」
そして、いつものようにグレイスからそう報告を受けた。
「うむ。ばっちりじゃのう。今週はレオ坊とザリオンの結婚式じゃからな」
レオ坊とザリオンはついにゴールインすることとなったのじゃ。ザリオンは元男じゃが、レオ坊のことが気に入ったようでの。わしとしてもザリオンにならばレオ坊を任せられるというものじゃ。
「アリスさんは結婚は考えてないんですか?」
「ないのう。そう言うおぬしはどうなのじゃ、グレイス。わしよりおぬしの方が……」
「言わないで、言わないでください……」
わしもグレイスも独身のままじゃ!
「まあ、魔術がある限り、わしらは必要とされる。それでよいじゃろう」
今や魔術は完全な人類の選択肢のひとつ。
わしは自分が人生で望んだことをやり遂げたのじゃった。
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