古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。 作:第616特別情報大隊
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──子供時代//再びロンディニウムへ
わしは今年で15歳じゃ。
しかし、相変わらず身長は120センチすらもない……。いくらなんでもちんますぎるのじゃぁ……。わしはもしかして本当に永遠に幼女のままなのか……。
グレイスからいろいろと教わり、わしは魔術について新しい認識を得た。それは主に世界の理を記した
「アリス、レオ。今度、またロンディニウムへ行くよ」
そんなある日、父上がそう言ってきた。
「ロンディニウムにですかの? 何用で?」
「父さんの事業関係のパーティがあるんだ。それに出席するためだよ。それからアリスとレオにはエルダーグローブ学院を案内してもらえるように、グレイスさんに頼んである。気になってはいたんだろう?」
おお。確かに魔術師がいるという学院には少し興味を持っておったところじゃ。
「しかし、父上。学院に通うのは難しいという話だったのでは?」
そう尋ねるのはレオ坊だ。
レオ坊は13歳となりもうすっかり大きくなって、身長も165センチと成長した。もう幼子は卒業して、立派な男子という具合である。喋り方も大人びたものへとなり、わがままも減ってきた。
「お前たちも大人になってきたから、16歳から入れる高等部からの編入で学院に通わせようかと考えている。ここから通えないので学生寮に入ることになるから、社会性も身につくだろうと思ってね」
確かにこの屋敷でずっと過ごしていては社会性など磨かれないじゃろう。父上はやはり考えておられるのじゃな。
「それにグレイスさんによれば学院には他にも魔術師がいるそうじゃないか。そういう友達はほしいだろう?」
「そうですね。友人を作って、見識を広げたいです」
父上がそう言うのにレオ坊が頷く。レオ坊も考えるようになったのう。少し前までは我がままで、子供っぽかったのにのう。
「もし、学院を見学してみて、合いそうにないと思ったら行かなくてもいい。父さんも学院には通ったことがないから、何とも言えないんだ。だから、見学してきて、お前たちが決めなさい」
「はい」
こうしてわしらはパーティに参加したのちに学院の見学をすることになった。
「学院の見学、楽しみじゃのう、レオ坊」
「そうだね、姉上。けど、もし入学するとしたら姉上は私より2年先に入学することになるね……」
「そうじゃの」
一人称もぼくから私になって、レオ坊が大人びておる。
「姉上が心配だよ。だって姉上はこんなに小さいし……」
「うぐ。ま、まあ、人の価値は身長では決まらぬからな。大丈夫じゃよ」
「それでも心配だ。姉上のことは私が守りたい。姉上にはお世話になったから」
「はははっ。わしはレオ坊に守ってもらわねばならぬほど弱くはないよ」
レオ坊も確かに大人になったが、まだまだじゃのう!
「だが、その気持ちは喜んで受け取っておくぞ。何かあったらレオ坊を頼ろう」
「ああ、姉上。ぜひそうしてほしい」
レオ坊は至って真面目にそう言ったのだった。
まあ、よほどのことがなければわしがレオ坊を頼るということはないじゃろうが。
それからロンディニウムに向かうための準備が始まった。パーティに参加するのでわしらはドレスやらアクセサリーやらを母上に選んでもらい、旅行鞄に詰め込んだ。
さて、いざロンディニウムへ!
* * * *
ロンディニウムまでの鉄道の旅は相変わらず楽しかった。
車窓の外で景色が流れていくのをみるのは格別だ。
そして、ロンディニウムに到着。いつ見てもこの大都市には肝を抜かれるわい。
「さて、まずはホテルに向かおう」
今回は父上も母上も一緒である。フォーマルなパーティではパートナーとともに出席するのが基本らしいのじゃ。今の社交界というのもなかなかに大変なルールがあるのじゃのう。
わしらはホテルでパーティの開かれる時間まで過ごし、着替えると馬車でパーティ会場であるホテルへと向かった。
「のう、父上。パーティにはどのような人間が招待されておるのじゃ?」
「主に貿易関係の人間だね。父さんの同業者たちだよ」
「ほうほう」
父上は貿易商じゃ。主に家具や小物を扱っておるそうだ。顧客にはお金持ちも多く、我が家はそれで裕福な暮らしができておる。父上に感謝じゃ。
それからパーティ会場に到着するとホテルのカウンターで招待状を見せ、1階の大ホールに入った。そこではタキシードでばっちり決めた男性たちと色とりどりのドレスを纏った女性たちが華やかにパーティを楽しんでおる。
「おお。ジョージ! 久しぶりだな!」
「ああ。ロバート、最近はどうだい?」
父上は母上とともに顔見知りへの挨拶を始めた。
「姉上は私がエスコートするよ」
「では、任せようかの」
レオ坊が張り切っておるのに、わしも思わず笑顔になる。
「レオ坊も大きくなったら、父上の会社を継ぐことになるから、こういう場に慣れておかなければならないのう。将来は父上みたいに、立派な実業家になるのじゃぞ」
「……私はあまり父上の仕事を継ぎたいとは思わない」
「そうなのか? 他に何かやりたいことがあるのかの? そうであるならば、わしもレオ坊を応援するぞ」
「ありがとう、姉上。私は……なれるならば魔術師になりたい」
「魔術師、か」
レオ坊は昔から魔術が好きじゃったが、将来の夢にするほどになったか。わしとしても今世の一番弟子が魔術に意欲的なのは素直に嬉しいのう。
「しかし、私は本当に魔術師になれるだろうか、姉上? 私はまだ姉上ほど上手に魔術が使えるわけでもないし……」
「何を言っとるのじゃ、レオ坊。レオ坊の魔術はグレイスも驚くほどじゃぞ。その年齢で将来を悲観するなど早すぎるわ。レオ坊の未来はまだまだ多くの可能性が、ちゃんと待っておる。わしが保証しよう」
「姉上……」
わしが励ますのにレオ坊は僅かに目を潤ませていた。
「せっかくパーティに来たのだから、美味い物でも食べて、そんな弱気な考えは捨ててしまうのじゃ。ほら、わしをごちそうまでエスコートしておくれ、レオ坊」
「はい、姉上!」
レオ坊が元気を取り戻したようでよかったのう。
しかし、パーティはそのまま平穏に終わりましたとはいかなんだ。というのも、このあとで事件が起きてしまったのじゃ。
それはわしとレオ坊がごちそうを皿に乗せて、楽しんでおったときじゃ。
「きゃああああ────!」
急にご婦人の悲鳴が響き、わしらはびっくりして声の方を見る。
「動くな!」
パーティ会場に乱入してきたのは、覆面を被って銃火器で武装した男たち6名。
ダンッと銃声が響き、さらに悲鳴が響く。
「姉上!」
「大丈夫じゃ、レオ坊。おぬしこそ落ち着け」
この手の修羅場はわしは初体験ではない。前世ではもっと危険な場所にも赴いた。わしは戦場における百人隊長たちのように、がっしりと肝を据えて、自分を落ち着かせた。わしがパニックになればレオ坊も不安になってしまう。
「ここにいる人間には人質になってもらう! 抵抗すれば命はないと思え!」
男たちは声こそデカいが、わしが見る限り動揺しておる。どうやら計画的にホテルを襲撃したわけではなさそうじゃのう。
「それからここにアイザック・ドレイクという男がいるはずだ! 出てこい!」
おや? わしの予想が外れたのか、男たちはパーティ会場にいる人間を指名した。
「私だ」
そこで声を上げたのは、ひとりの青年であった。まだ若く10代後半か20代前半といった具合で、凛々しい顔立ちをした人物じゃ。彼は恐れる様子もなく、手を上げて襲撃者たちの方に歩み出た。
「悪いがお前には死んでもらう。悪く思うなよ」
男たちはそう言って銃口をアイザックという青年の方に向けた。
いかん。このままでは人が殺されてしまう!
「レオ坊。ここはわしらがどうにかせなばならぬようじゃ。いいか?」
「ああ。姉上は私が守るから、姉上は思いっきりやってくれ」
「よろしい。では、ゆくぞ!」
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初のバトル展開です!