古代の偉大なる魔術師、永遠のTS幼女になってしまう。   作:第616特別情報大隊

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子供時代//パーティ会場の戦い

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 ──子供時代//パーティ会場の戦い

 

 

 アイザックという青年に向けられた銃口。

 

 わしは銃という武器について既に知っておる。あれは火薬の爆発を利用して、銃弾を撃ちだし、それによって殺傷を行う道具であると。

 

 であるならば、火薬が爆発しなければよく、銃身から弾がでなければよいのじゃ。

 

 しかし、今は一秒でも長い時間がなければ、わしが魔術を発動するより襲撃者の指が引き金を引く方が早い。

 

 ならば、時間を引き延ばすのみ!

 

「時間よ、緩やかに」

 

 わしはそう唱えて異界魔術を発動した。

 

 このホテルの大ホールにおける表面構造(テクスチャ)に上書きされた異界の理は、術者以外のときの流れを遅滞させるもの。わしとレオ坊以外は1秒が1分に引き伸ばされ、周りの動きがずうっとゆっくりになる。

 

「レオ坊。わしが銃を無力化するから、襲撃者たちを無力化するのじゃ!」

 

「分かった!」

 

 続いて稼いだ時間で銃を無力化する。

 

 襲撃者たちが持っている銃は散弾銃と拳銃というものじゃと確認した。

 

 まずわしは一般魔術で水を犯人たちの銃弾の内部に生じさせ、火薬を湿気らせる。だが、これだけでは十分とは言えぬ。万が一でも点火に成功すれば、アイザックやレオ坊が傷を負ってしまう。

 

 よって、わしは一般魔術で生成した金属の塊を銃身内に生じさせた。

 

 と、そこまで成功した時点で、異界魔術の効果が切れた。時間の流れが通常の速度に戻り、襲撃犯はアイザックに向けて引き金を引く。

 

「ああっ!? 不発だと!?」

 

 襲撃犯は引き金を引いたが弾は出ぬ。成功じゃあ!

 

「ふん!」

 

 そこでアイザックが動いた。彼は指を振ると襲撃犯の男が吹き飛ばされる。あれは間違いない。魔術じゃな!? アイザックは魔術師じゃったのか!

 

「クソ! 死にやがれ!」

 

 残った5名の男たちは攻撃目標をアイザックに定め、散弾銃と拳銃を向ける。

 

 そして、引き金を引いた瞬間、3名の銃が不発に終わり、2名の銃が銃身が詰まっていることで暴発。散弾銃の銃身が裂けて、金属の砕ける音が響いたが、まだ誰も怪我はしておらぬ。よいぞ!

 

「はあ!」

 

 さらにアイザックがふたりの襲撃犯を吹き飛ばし、残りは3名じゃ!

 

「ち、畜生!」

 

 そこで男のひとりが銃を捨てナイフを構えた。鋭く、刃渡りの長いナイフを構えてアイザックに突っ込もうとしておる!

 

 見ておったがアイザックの魔術は発動に時間がかかるようじゃ。即応は不可能。つまり、今の状況は不味いのじゃあ!

 

「加勢する!」

 

 そこでレオ坊が駆け付けた。レオ坊はナイフを構えた男の手に、わしが教えた召喚武具の剣で切りかかる。

 

「ぐあああっ!」

 

 すると、血は流れぬが痛みを感じた男がナイフを落とし、地面でのたうった。

 

「加勢に感謝する、少年!」

 

「油断なされず! まだ敵はいます!」

 

 アイザックが礼を述べるが、レオ坊はまだ敵を見据えている。

 

「クソ! 魔術師がふたりいるなんて聞いてねえ!」

 

「に、逃げろ!」

 

 ここで残った男たちは銃は使えなくなり、近接戦もレオ坊の出現によって阻まれたことから敗走を始めた。

 

「動くな! 警察だ!」

 

 しかし、そこでエントランスから警察がなだれ込んできた。男たちは逃げることもできなくなり、両手を上げて投降した。

 

「皆さん! もう大丈夫です!」

 

「怪我をしている方はいませんか!?」

 

 警察は男たちを拘束すると、次にパーティ会場にいたわしらを安心させようとし、同時に怪我人の有無を確認し始めた。

 

 警察たちは気絶した襲撃者たちを連行していき、彼らが持っていた銃を押収していく。パーティ会場はようやく安堵の空気に包まれ、秩序と平和が戻ってきた。

 

「レオ坊。怪我はないか?」

 

「ええ。大丈夫です、姉上」

 

 わしはレオ坊の方に駆け寄ったが、レオ坊は無事であった。何よりじゃ!

 

「君たちは魔術師だな」

 

 そこでアイザックがわしらに話しかけてきた。

 

「私が銃を向けられたとき、表面構造(テクスチャ)の書き換えを認識した。あれは一般魔術とは思えない大規模なものだったが、何をした?」

 

 アイザックは鋭い猜疑の目でわしらの方を見てくる。

 

「それにその武器も一般魔術のそれではない。君たちは……何者だ?」

 

 魔術師ならば疑問に思うのは当然じゃろう。むしろ、疑問に思わなければ優れた魔術師とは言えない。

 

「わしはアリス・カニンガム。お察しの通り魔術師じゃ」

 

「私はレオ・カニンガム。魔術師です」

 

 わしらはまずアイザックに自己紹介する。

 

「そして、今のは異界魔術じゃ。時間が遅延したのも、レオ坊の召喚武具もな」

 

「異界魔術……。まさか……」

 

 異界魔術は失われた魔術と言われておる。アイザックが魔術師であったとしても、異界魔術については知識がないのであろう。

 

「君たちは血統魔術師の家系か? どこ家のものだ?」

 

「わしらは血統魔術師ではないよ。普通の家庭で生まれ育った魔術師じゃ」

 

「ふむ……。確かにカニンガムという家名は聞いたことがないが……」

 

 アイザックはそう言って何やら考え込んでおる。

 

「失礼。自己紹介が遅れた。私はアイザック・ドレイク。ウィンタースリー伯爵家のものであり、五大血統魔術師の家系に連なるものだ。この度は命を助けてくれて、心から感謝する、アリス、レオ」

 

 アイザックはそう名乗った。

 

「五大血統魔術師とな?」

 

「ああ。君たちも魔術師ならば知っているだろう」

 

「いや。実を言うとわしらは田舎者でな。都会のことはよく知らぬのじゃよ」

 

 分からぬことは正直に分からぬと言った方が良いじゃろう。

 

「そうか。だが、君たちの魔術の腕前は確かだ。もう既に誰かの師事しているのか? どこかの教育機関に通っているのか?」

 

「グレイス・イーストレイクという女性に魔術は教わっておる。半分は独学じゃがな」

 

「グレイス・イーストレイク……。ああ、学院の講師だった人か。急に学院を辞めたのでどうしたのだろうかと思っていたが、君たちのような優秀な人材を彼女は見つけたというわけだったのか」

 

 アイザックはそう言って頷いていた。グレイスのことを知っておるということは、アイザックも学院関係者なのかのう?

 

「しかし、君たちはもっと確かな教師に師事した方がいい。グレイスが悪い教師だとは言わないが、彼女には君たちほどの才能を扱えるだけの能力はない。君たちはエルダーグローブ学院に行くべきだ」

 

「ふむ。その予定がないわけではないがのう」

 

 グレイスはよい教師だとわしは思っておるのじゃが。彼女のおかげでいろいろなことが分かったからのう。

 

「アリス、レオ!」

 

 と、ここで父上と母上が駆けつけてきた。

 

「おお。父上、母上。大丈夫じゃったか?」

 

「アリスとレオこそ怪我はしていないね?」

 

「ええ。わしもレオ坊もこの通りぴんぴんしておるぞ」

 

 わしは胸を張ってそう宣言した。

 

「よかった。安心したよ。こちらの方は?」

 

「初めまして。私はアイザック・ドレイク。エルダーグローブ学院で研究員として勤務しております」

 

「これはご丁寧にどうも。私はジョージ・カニンガム。アリスとレオの父です。ドレイクと言いますと、ウィンタースリー伯ウィリアム・アイザック閣下のご子息ですかな?」

 

「ご存じですか。ウィリアムは私の父で、今日は父の代わりに出席しております」

 

「ああ。やはりでしたか。以前、ウィリアム閣下がエルダーグローブ学院にご子息が在籍しておられるという話をしておられましたから」

 

 ふうむ。父上はアイザックの父をご存じのようじゃ。

 

 しかし、血統魔術師と言うからには、職業は魔術師ではないのじゃろうか? もしや、魔術師は副業をせねば食っていけぬほど貧しておるのか……?

 

 そこで私の疑問に気づいたようにアイザックがわしの方を向いた。

 

「父は魔術師であると同時に実業家だ。そして、政府の顧問もしている。血統魔術師というのは社会的信頼があるから便利なのだよ」

 

「なるほどのう。もしかして、それは今回おぬしが狙われたことと関係あるのかの?」

 

「……分からない。だが、血統魔術師には敵が多い」

 

 アイザックはわしの質問にそう答えるのみじゃった。

 

「アイザック・ドレイク氏ですね。少しお時間をよろしいですかな?」

 

 それから警察がアイザックから事情を聞くためにやってきて、アイザックは席を外し、わしらもパーティはお開きになったのでホテルに帰ることにした。

 

「レオ坊。今日の戦いぶりは流石じゃったのう」

 

「ありがとう、姉上。けど、勝てたのは姉上のおかげだ」

 

「レオ坊は謙虚じゃのう」

 

 さて、明日は学院の見学に向かう日だ。今から楽しみじゃ!

 

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