――Side 寄道
「雄英高校体育祭……」
USJ襲撃の次の月曜日の朝のホームルームにて。
相澤先生から告げられた約2週間後のイベントの名前を口にする。
「ああ。毎年各学年ごとに行われているいつものアレだ。例年通りなら会場別の同時開催だが……今年は1学年ごとに1日ずつ開催し、他の学年は変則休日扱いになっている。予定表や他の日のホームルーム等で何度か通達するが来る日を間違えるなよ」
その言葉にクラスはざわめく。
「何故今年から!?」
「新しい試みだ。教員側は各学年毎にリソースをつぎ込める。生徒側は上の学年から希望者を下の学年体育祭の裏方に回し安全管理の実践と下級生との繋がり作りができる。観客側は3日という期間体育祭を観ることができ、同時にすべてを確認出来ないなどの声に応えられる……とのことだ」
飯田が代表して質問をぶつけ、相澤先生は冷静に応える。
「教員側や警備のヒーロー等の負担は……?」
「根津校長がその辺の根回しは終わってる。負担も例年より軽いとオレも判断した。あと担任は基本自分の受け持ちのところで仕事する。……情けない姿見せるなよ」
全員の身が引き締まった気がした。
「あ、あと教員による協議の結果、A組は千手、B組は物間が出場停止になってる。当日は実況解説補佐としてプレゼント・マイクと一緒に会場盛り上げろと校長からのお達しだ」
「えぇ……(困惑)」「まあ寄道なら父さん始めトップヒーローたちにはその実力とか認知されてるから、アピールするまでもないだろうけど」「かわいそ……でもねぇな順当だわ」
先生の言葉にざわめくオレたち。
なお先生の一睨みですぐに沈静化した。
「それに伴い今日からA組連名かつ千手と教員1名の監視の元、訓練場βを貸し出す。2年やB組も申請が有った場合は合同になるから、その辺り覚悟しておくように」
「あーい(諦めの境地)」「ついに補助教員みたいな事やらされ始めてる……」「流石にタダ働き……じゃないでしょ」
「分身した分ランチラッシュ先生の料理という現物支給が支給される予定だからタダ働きじゃない。そんじゃ、ホームルームは以上だ。委員長、号令」
「……なんか人がたくさんいるね」
ホームルームを終えて放課後訓練の支度をしようとしてると焦凍から声かけられた。
彼女の見てる廊下には結構な人だかり。
「大方敵情視察といったところか」
「あん? オレたち警戒されてるのか?」
切島が首をかしげる。
「そりゃそうだろ。 敵連合とか言う本物の敵相手にして全員無事に生還したし……ゼノ「それ以上は箝口令抵触する」」
上鳴の言葉にインターセプトして止める。
わりぃわりぃと謝る上鳴。
ゼノスについてはA組に箝口令が敷かれている。
理由としては敵連合の協力組織が表沙汰になればそれに同調する敵が増えそうだから――という表の理由と。
オールマイト(と主に対放射能系爆弾の盾兼敵のヘイトタンクしてたオレ)を以てしても持久戦(しかも相手はほぼ無傷)で限界だったという裏の理由がある。
もっともオールマイトの戦闘に関してはオレもオールマイトも口を噤んでいるので、(当事者の1人である甘粕が言わない限り)漏れることないはず……ではあるが……。
「取り敢えずさっさと行くぞ。雑魚に構ってるだけ時間の無駄だ」
「ヒーローの卵にあるまじき発言だな」
爆豪が強行突破しようとしたところ、目つきの悪い生徒がそういって一団から前に出てきてそう告げた。
「雑魚に雑魚と言って何が悪い」
「それはどうかな?――フェアじゃない実技試験で受かったか否か……そこで明暗が別れた連中が普通科には多くいるんだ。――その様子だと知らないようだね。ならコレも知らないか。――体育祭の結果次第でヒーロー科と普通科で入れ替えが発生することもあるんだ」
なんか聞いたことある(痴呆民)
「――雑魚と見下してる相手に負けて恥をかかなきゃいいけど」
「ハッ、そこで半分女に抱きつかれてるトップヒーロー連中ですら倒せないバグ野郎でもなきゃオレは負けるつもりも理由もねぇ。オレらに見向きもされてねぇからと挑発してる暇あるなら、その時間を有効活用しやがれ、その時点で差がついてんだよわかったか三下ァ!」
「「「「!!!」」」」
そのまま教室を出て更衣室に向かう爆豪。
さながらモーセのように野次馬組が爆豪に道を開けていく。
「おっとオレもランチラッシュ先生の飯分は仕事しないとな」
木分身を20体ほど作り、そのまま一体分身残して窓から飛び出す。
全員五点着地ヨシ!
「爆豪を待たせたらまずいからな」
「んだんだ」
「あ、渡我先輩がこっちに」
「「「全力逃げる!!!」」」
ちょっとゴタゴタがあったが、概ね平和に終わった。
――Side 甘粕
暗い道を歩く。
足音はオレを含め5つ、除けば4つ。
1つは老いた老人のモノ。杖のつく音も響いている。
1つは小娘のモノ。戦い方もロクに知らぬのが足音からでも分かる。
1つは怪盗。身のこなし故か音にブレがない。
1つは殺人鬼。この中で音が最も少なく、同時に死の匂いを纏っているのに罪の気配が皆無。
そんな我々は出口のドアにたどり着く。
オレがノックするとドアが開かれる。
「――槙島さん……と誰だソイツら」
『彼らはキミに協力してくれる盟友だ。仲良くしたまえ』
気に食わぬ三下の声がした。
「――木原、貴様の頼みだから付いてきたがオレは降りてもいいか?」
「ダメだ。儂の研究のためにもな」
老人の返答にため息をつきそうになった。
『おやおや、甘粕君か。私をさんざんコケにした癖に、木原君の後ろ盾なければその日暮らしも困る生活破綻者が居ると聞いていたが……よもやよもやだ』
いちいち癇に触る。
だが恩人の面目を潰すかもしれんから黙っておこう。
「残念、生活破綻者はこの私、新庄アカネだから。その人お金さえ何とかなれば一人暮らしくらい余裕だよ?」
娘の言葉に空気から毒気が抜けた気がした。
『……取り敢えず自己紹介したらいい。君たちは今の秩序を是としていない者たち同士だ。仲良くなれるだろうさ』
そういって声が消える。
「……オレは死柄木弔。こっちのは黒霧だ。……ソッチの槙島先生は知ってる。新庄アカネ?はもう聞いた。残りの仮面野郎と軍服野郎と爺さんの名前教えてくれ」
「――では最初は私から。市井では怪盗Bと喚ばれているしがない美の開放者だ」
「……オレは甘粕。下の名は捨てた、決別の意味を込めてな」
「儂は木原正兼。ゼノスのスポンサーで……かつて早乙女先生の末弟子。そして千手先輩、発目先輩を騙し功績を掠め取った木原の味噌っかす。今はゲッター線の第一人者……という肩書だけの老害じゃよ」