――Side 寄道
生活も軌道に乗り始めた学校生活2週間目の朝。
登校していると校門前に人だかりが。
「……なんかめんどくさそう」
「寄って集って欲しい発言出るまで質問したりしてくる悪質なやつとかじゃなきゃ良いけど……」
「流石に雄英高校相手にソレはしないでしょ……たぶん」
「こういう時は別口から入るのが良いですよ」
しれっと5人で登校してるので両手に華どころじゃないが、これはそういうことでいいのか……?
渡我が向かうのは正面入口から離れた雄英高校の高めの壁。
「えーっとこの辺に……」
渡我が壁を叩いたり触ったりしてると壁が一部捲れてカードリーダーが現れた。
「ここに学生証を通せば……はい、裏口登校出来ました」
壁の一部が動いて扉が開く。
「コレ関係者以外にバレると先生たちから小言言われるのでさっさと入ってください」
オレたちはそそくさと入ると渡我が内側のカードリーダに学生証を翳す。
すると扉が静かに閉まり、継ぎ目の見当たらない壁に戻った。
便利だなコレ。
朝のホームルームにて
相澤先生より、先日の屋内戦闘訓練に関して爆豪含め何人かが小言をもらった。
あるものは不貞腐れつつも返事し、あるものは進歩を実感しながら元気よく返事した。
「……さて、ホームルームの本題だ。今日は急だか、あることをやってもらう」
相澤先生の言葉に『また臨時テスト……!?』と殆どの生徒が身構える。
「――学級委員長を決めてもらう」
その言葉に安堵の気配がクラスに満ちる。
そして数秒間の切り替えタイムのあと、彼らは口々に挙手して自己アピールなどを始める。
「時間内に決まれば誰でもいい。委員長1人、副委員長1人な。合理的に決めろ」
めんどくさそうに寝袋に入り微睡みに身を委ねる相澤先生。
よくも悪くも部分的放任主義だよな……。
混沌とし始めるなか、オレは手を鳴らして告げる。
「日も浅いのに誰が良いだのを喧々諤々小田原評定してても時間の無駄だ。分かりやすくやろう。八百万さん」
「はいっ!?」
「20枚の投票用紙と赤いラメ入りマーカーペンよろしく。ペンはインク少なくていいぞ」
「え、ええ」
掌から要望したものを生成する八百万。
「投票用紙っていうからには投票させるんだろうが……1枚少なくねぇか?」
切島が問いかけてきた。
「オレは選挙管理のポジするから投票しないし参加しない。全員が万一自身に投票してた場合、最終決定権がオレにあるって形になるのは面倒くさいからな」
「その万一が起きた場合は?」
芦戸の言葉にオレは少し考えてから告げる。
「その時は再選だな。ただ……時間を加味したら出来て3回。これで決まらなきゃオレたちは仲良く相澤先生に小言を食らったりすることになるってだけで」
オレの言葉に全員の意思が揃った気がしたが、スルーする。
「そんじゃオレが教壇に立つから八百万から用紙とペン受け取ったら各自書いてくれ、書き終わったら分身が回収する」
〜生徒 投票中〜
「――ということで投票数3の緑谷、投票数2の八百万がそれぞれ委員長と副委員長になりました」
「異議あり!少なくとも私と轟さんは千手君に投票したのにカウントされてません!」
オレの発表に対して異議申し立てをする葉隠。
「選管なので投票しないし参加しないと言ったのにオレの名前書かれたやつはすべて無効票になりました」
「い、異議ありっ!仕切るとか出来ないボクより自然に選管名乗り出て場を仕切った千手君の方が適切だと思います」
「学級委員の選定方法に投票を君たちが選んだ。そしてオレは出馬を拒否しているので対象外。ぶっちゃけ普段からこんな疲れることやりたくないので却下です」
緑谷の異議を事実と本音のコンボで却下。
「異議あり! 副委員長は私より相応しい人がいると思いますわ!」
「しらん。少なくとも現状はこれで確定。どうしても辞任したければオレ以外の後任を探して交代打診するなりしたあと、相澤先生に根回しして公表するがヨロシ」
「……終わったようだな」
起き上がる寝袋……じゃなかった相澤先生。
「もし交代とか考えるなら、事前にオレに伝えるようにな。そんじゃホームルームは終わりだ」
そういって寝袋のまま教室でていく相澤先生。
後ろ姿が某たらこたと思ったのはオレだけじゃない……はず……。
昼休みにて
「「「「お昼一緒に食べよう(ましょう)」」」」
お弁当を持った(なお半数はオレが作った)寧亜、焦凍、葉隠、渡我の4人にそう言われるが
「モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ独りで静かで豊かで……ちなみに食べ終えてるから一緒は無理なんだ」
「「前振りからの食べ終えてる宣言は斜め上過ぎる!」」
何故かすっ転ぶ峰田上鳴コンビ。
「……なら寄道の傍で勝手に食べてもいいよね?」
「なんで好感度が高いのか……コレがわからない」
焦凍の言葉に素で返してしまう。
「……兄さんたち助けてくれたし、救ってくれた恩人だし、作ってくれるご飯おいしいし、一緒にいると心がぽかぽかするから」
焦凍が普段見せない微笑を浮かべる。
(巨乳)美人の微笑は絵になる。
ただ……
「1番力強かった部分がご飯のところじゃなければもう少しクラッときたかもね」
「むむむ」
少し頬を膨らませたあと、ご飯を食べ始める。
「ボクは君のせいで人生狂ったんだから責任取らせようとしてるだけで……好きってわけじゃないんだから……」
「……本当に申し訳ない(ブレイク博士ボイス)」
ゲッター線によって個性が変質し、ソレの研究のためそこそこの頻度で父上の携わる個性研究所の検査を受けているのは事実。
なので素直に謝っておく。
「素直じゃないからはぐらかされる、アホの子」
「轟さんや、喧嘩売ってるよね?表出ようか」
「(もっもっもっ)……下らないからパス」
「煽りスキル高くないこの女ァ!」
怒りが噴火してる寧亜は放置。
「渡我が道を踏み外した時に助けてくれて、今こうやって御天道様の元を歩けるようにしてくれた恩人を嫌いになるほど、捻くれてませんよ?」
「……そうか(ゲンドウボイス)」
「あと血を吸わせてくれるお人好しで、社会不適合者の渡我のメンタルケアできるのは寄道君だけです」
「老老介護ならぬ若若介護かな?」
「むー、そうやってのらりくらりするのは渡我も困ってます、改善してください」
「前向きに検討する」
検討するだけだがな。
「私は家族以外に自分を見てもらえたのがうれしかったのと、全部見られた恥ずかしさから責任取らせたいって名目です」
「素直と思ったら後半が名目だった件」
葉隠の言葉に内心こけるオレ。
「それとご飯がおいしいから側にいればおこぼれもらえるかなって!お弁当も作ってくれたし!」
「おっと焦凍と同類だったか?」
「……私のご飯目当てはついでだから。一緒にしないで」
ジト目の焦凍がキッチリ指摘してきた。
「「やっぱりモテモテじゃねぇか、地獄に落ちろよリア充め」」
峰田上鳴が血涙流しながらそういう。
「2人の場合――」
オレが2人の直したほうが良いところを言おうとしたら、けたたましいサイレンが鳴る。
それと同時に粘ついた黒い悪意を感じた。
「なんだかんだ!?」
「火事とか!?」
オレは立ち上がり木遁で分身を作る。
そして分身に窓の外確認させ、オレは教室を飛び出す。
発生源は……職員室!
オレが飛び込んだ時には黒いモヤのようなモノが消える直前だった。
すかさず木遁の挿し木を飛ばしたが――
「……手応えも無かったな」
吸い込まれた挿し木がなにかに当たったという手応えもなく、感覚が途切れた。
「――千手、何故職員室に?」
振り向くと相澤先生がいた。
「今の騒動の間に職員室に侵入者がいたようです。黒いモヤのようなものでココに出入りした様子。あとでモヤが消えた瞬間の映像を媒体で渡します。騒動の前後でなくなったものが無いか確認お願いします」
「わかった。媒体の方はUSBあたりで頼む」
オレは頷いてから職員室を去る。
その後帰りのホームルームで緑谷が学級委員長を辞任し、飯田が就任したりしたが、何があったんだろう(痴呆民)
あと麗日さんが駅前商店街で八百屋の売り子をしていた。
主婦のおばさま方からかわいがられていたのを横目にオレは肉屋でバイトをするのだった……。