憑依ゆかりさんとVTuberになった元マスター 作:名前考えるのって難しくね?
改めて思いますが、文章化するって難しいですね(´・ω・`)
「……」
『……』
すぅーっと目線を逸らし、ちらり。
『じぃー』
こ、効果音ッだと!?
……今時口で出すの珍しくないか?いやいや、今はそんなのどうでもいいだろ。問題は……
『じぃぃぃー』
「……」
この、物凄く圧かけてきてるマスター、どうしよ。
酒飲む手も止まってるし、完全に俺意識してるんだよな。
と、とりあえず組んでる腕は膝の上にでも置いとくか。表情もパケ絵のそれに似せとけばなんとか……
「(にぱっ)」
『……。じじじぃぃぃぃー』
だ、ダメか!?ダメなのか!?
「(震えながらの笑顔)」
『じぃぃぃー。っ、ふふ』
「っ!」
わ、笑った、のか?え、これどっちだ!?どっちなんだ!?
『もう、そんなに誤魔化さなくていいって』
アッ、バレテーラ
『……ところで、さ』
アッ、ハイ
『あなたは誰、なのかな?ゆかりんの見た目してるけど』
エッ、ソノ……どう答えるのが正解なんだ、この場合。
バカ正直に「あなたの結月ゆかりに憑依した成人男性です」とか答えようもんなら事案だろコレ。
かといって「あなたの結月ゆかりが自我を持った存在です」とか言っても現実味ないだろうしなぁ……
『やっぱり、答えられない?』
「へっ?あ、いえ、その…恥ずかしい話ですが、私自身分かってなくて、どう伝えたものなのか……」
『そう、なんだ』
「……あの、差し出がましいのは承知ですが、1つよろしいでしょうか?」
……というか、ちょっと気になっていることがあるのだ。
『なに?』
「マスターから見て、今の私って、どういう風に映ってますか?」
『え?』
目を丸くするマスター。まあそりゃそうなるわな。
でも、重要なことなのだ。なにもかも分からないづくしのこの状況では特に。
今の俺の行動、それがいったいどこまで反映されているのか……
『どういう風にって……椅子に座ってるゆかりんが画面に映ってるって感じだけど』
「椅子に……それって、背景とかは」
『背景は白一色のやつだけど』
椅子は映ってて、後ろの和室は映ってない?それは……
『急に立ってどうし――って椅子消えた』
「やはり、ですか」
『やはり?なにかわかったの?』
単なる予想でしかないが、恐らくマスター側に表示されているという”画面"には、"
だからこそ、俺が座っている状態ならば、その座っている椅子含めて映り込み、椅子から立てば消えたのではないか。
『ねぇ?ねぇってば』
「あ、すみません。えっとですね」
マスターに掻い摘んで伝えてみれば、彼女は少し考え込むように黙ったあと、1つ頷いた。
『なるほどね。確かに、一理あるかも』
「私の勝手な予想ですけどね。……というか、私が言うのもなんですが、そんな簡単に私の言うこと信じていいんですか?」
ぶっちゃけ俺って怪しくね?常識的に考えて。
そんなホイホイ信じちゃダメな気がするんだ。
『あー、うん……大丈夫大丈夫。ほら、今って少しでも情報が欲しいじゃない?』
「それは、そうですが……」
『普段はもっと慎重に考えてるし、大丈夫だよ。……ブラック企業入っちゃったけど』
そこ、聞こえてますからね。
『それに、ね?確かに君が怪しいのは確かだけど、自分から言うってことは、そんなつもりはないってことでしょ?』
……。確かに、これは1本取られたか。
『君が私のゆかりんってこともわかってるし。中身はともかく、体はね』
「まあ、状況から考えたら分かりますよね」
『ううん。そうじゃないんだ』
エッ
『その立ち絵、書いたの私だからさ』
「アッ」
そ、そっちかァァァァァ!?
ていうかこれデフォのじゃなかったの!?すごいなマスター!?
『下手な割に頑張った方でしょ?』
「これで下手なら私ミジンコなんですけど」
『あはは。ゆかりん絵下手なんだ』
悪かったな、美術は毎度2評価なんだよ。
「幻滅しましたか?そんなの結月ゆかりじゃないって」
『全然。むしろ私の思ってたゆかりんだよ』
微笑みを浮かべるマスター。その顔には、嘘や誤魔化しの類は見受けられない。
……非常に申し訳なくてしょうがないのだが、俺との会話を楽しんで頂けているようだ。
ここは少し踏み込んでみるか。
「ところで、先程懐かしいと言っていましたが、このアカウントにログインしたということは、何か用があったのでしょうか?」
『…………。あー、うん』
言いづらそうに口篭るマスター。
信頼できる家族や、仲のいい友人なんかではなく、正体不明の怪しい奴が相手なのを鑑みれば、当然の反応か。
頭を下げ、謝罪する。
「いえ。すみません、出過ぎた真似を」
『ううん。……分かった。話す。えっと…聞いてくれる?』
「喜んで聞かせて頂きます」
マスターは話してくれた。
就職した企業での地獄のような日々から始まり、過労により体調を崩し倒れた話、心配したご両親に甘えて実家に戻り、今ではブラック時代の心の支えとなっていたVTuberに自分もなっているのだと。
ぶっちゃけると、心の支えがVTuberだと聞いた時は、ボイロじゃないのかとちょっと思ったりはしたが、失礼を承知で理由を聞いてみれば、納得だった。
その性質上、VOICEROIDがほぼ動画一貫なのに対し、VTuberはライブ配信も行うことができる。
それ即ち、ブラック時代のマスターが求めていた人との触れ合いという条件を満たせるのである。
その辺人によるらしいが、マスターが推していたVTuberはリスナーとの触れ合いを大事にしていたらしい。
まさしくマスターが求めていたような人柄だ。沼るのも仕方ない。
ちなみに、最初はボイロと似たようなものかと思い見始めたが、見れば見るほどにハマって行ったと言うし、ボイロに対する思い入れがあるのも確かのようだ。
『――っと、ごめんね。私ばっかり話しちゃって』
「いえいえ、貴重なお話を聞けて嬉しかったです」
『お気遣いどうも。……夢だったんだ、こうやってゆかりんとお話するの』
「夢」
『うん。いつかこんな日が来ればいいなーって思ってた』
……。なるほど、マスターがVTuberにハマった理由はそこにもあったのか。思い入れがあるのは確かとは言ってたけど、この感じ結構深いか?
「すみません」
『?、なんで謝るの?』
「夢だと言って頂けたのに、中身がこんな訳の分からない存在なのが申し訳なくて」
『あはは。なにそれ』
かなり本気で申し訳なく思っている。
『……確かにさ、ゆかりんのことはよく分からないけど、結構楽しいよ?話しててもゆかりん!って感じだしさ』
ごめん、それも100パーガワのおかげなんだ。中身はこんな奴なんだ。
『……付き合ってくれてありがとね、ゆかりん。おかげで決心がついたよ』
「決心、ですか?」
なんのだ?
なんか嫌な予感するんだが。
『うん。私さ、VTuberやめようかなって思ってるんだ』
やめ――え?
「ど、どうして……?」
あんなに楽しそうにしてたのに…なんで?
目を何度もパチパチと瞬かせる俺。
処理しきれずに困惑している内に、画面に映るマスターは目元を暗くしながら自嘲げな笑みを浮かべていた。
『他の同期達と比べても人気出なくてね。事務所の人達にも迷惑かけちゃってるし』
『元々ボイロでも人気出なかったし、才能ないんだろうね』
『また仕事探さないと。えへへ、今度こそホワイトがいいな』
そう小さくこぼしたマスターは寂しそうで、口ではそう言いながらも、本心はそうでは無い事をありありと感じさせた。
なら、何故……っ!嗚呼、そうか。そうなのか……
「……マスターは」
俺は、俺は勘違いしていたようだ。
『ん?』
マスターは、この人は……
「本当に、それでいいんですか?」
自分を抑えることに、慣れすぎてしまったのか……
一見まともに見えて、中身がおかしくなってる人概念