ラーメンが正邪を作るお話   作:最弱の鬼人正邪ファン

10 / 18
クルシミながら眠りに就く

 朝が来た。光が差し込み、私の顔を照らす、事はなかった。

 外は雨が降っていた。ザーザーと雨が降っている。稀に見るような大雨だった。

 博麗神社の布団にも慣れてきた。慣れてきたというのに、雨のせいで台無しにされた気分だ。

 

「霊夢、あうん、おはよう……」

 

 未だに眠たい目をこすりながら、私は挨拶をする。二人からも、おはようと、声が返ってきた。

 あうんは雨の日は神社の中で過ごしているみたいだ。縁側で神社の狛犬のような姿勢をしていた。

 しかし、霊夢の顔はあまり優れていないようだった。

 

「どうかしたの?」

「ん、いやあ、なんか妙な予感がしちゃって」

「妙な予感?」

「そう、だけど、そこまで気にする必要はないわ。よくあることだから」

「ふーん」

 

 とりあえず気にしないことにする。私は寝間着から着替えて、歯磨きをし、朝ごはんの用意をする。

 

「すっかりうちの家事を担当するようになっちゃって」

「えへへ、いろいろ教えてもらったからね」

「それで、今日は輝針城にいくんだっけ?」

「うん、そのつもり。天邪鬼が寂しがってるかもしれないからね」

「あいつに限ってそれはないでしょう」

「わからないですよ、霊夢さん。どんな妖怪でも少しは寂しさを感じますから!」

 

 あうんの言うとおり、正邪はああみえて寂しがり屋なのだ。天邪鬼という性質からして、他人がいないと駄目なタイプなのだ。多分ね!

 

「まあ、雨には気を付けて、風邪は引かないようにね」

「うん。雨粒を全部よけるよ!」

「無理はしないようにね?」

 

 うん。と返事をして、私は朝ご飯を作り終える。

 これからも、これまでも。私は無理をしない。

 

「はい、朝ごはんできたよ!」

「わあ! 美味しそうですね!」

「そうねえ、初めの頃と比べれば、随分と手際も技術も成長したわ」

「ありがとう、さあ、食べてみて!」

 

 みんなで一緒に、いただきますと言って、朝食に手をつけ始める。

 今日は簡単に卵焼きと、たくあんを用意した。どちらも最高にご飯が進む物だ。

 

「いやほんと美味しいわね……恐ろしい才能だわ」

「ふふん!」

「すごいドヤ顔ですね」

 

 家事を本格的に始めて三日ほど、私の家事力は比べ物にならないほど大きな物となっていた。

 それはもう、霊夢に届きうるほどに。

 

「ついに師匠を超える時が来たわ!」

「そう簡単に超えられてたまるもんですか」

 

 私と霊夢は互いに睨み合う。火花がばちばちと、音を立てて燃え盛る。そんな錯覚を見た。

 

「「あうん!」」

「あっ、私ですか!?」

「公平な審判をお願い!」

「この際、閻魔でも呼ぼうかしら?」

 

 いいアイデアだね。それ。

 

「号外! 号外でーす!」

 

 私達が朝食を食べていると、天狗の焦った声が聞こえてきた。

 号外というのは確か、定期的に発行される新聞とは別に、緊急の時に発行される新聞だったっけ?

 

「はいはい、置いといていいわよ!」

「いや、一応見てもらえませんか? ちょっと私では判断しきれませんので!」

「あー? 何よ判断できないって……」

 

 怠そうに座布団から立ち上がった霊夢が、縁側の方に歩いていく。私とあうんも、気になるのでついて行く。

 縁側へ出ると、急いできたのだろう。雨合羽を着つつも、随分と濡れた射命丸文の姿があった。

 鞄から、乾いていて少し暖かさを感じる、新しく刷ったのであろう新聞を取り出した。

 

「見せてみなさい……はあ?」

「何が書いてあったの? 見せて!」

「私も気になります!」

 

 余談だが、この中で一番身長が低いのは私である。小人という種族の特性なので仕方ない、もし私が人間だったらこの中の誰よりも高身長であっただろう。

 霊夢が屈みながら、新聞を広げて見せてくる。書かれている内容に唖然とした。

 

「これって……」

「今朝の早朝、雨が降っていたので、自宅で執筆作業をしていたんですがね、ふと、空を眺めたら奇妙な物が浮かんでいまして。しかし、貴方がここにいるということは、打ち出の小槌を使ったわけじゃないんですね?」

 

 新聞に書かれていたのは、大きな雲が、この幻想郷に出現したということだ。

 実際に空を見れば、そこには雨を降らし、雷と魔力を纏う積乱雲が、そしてこの雲には見覚えがある。私が、打ち出の小槌を使ってこの幻想郷に異変*1を起こしたときのことだ。打ち出の小槌に願いを叶えてもらった時、この雲が現れて、そして、中に輝針城が現れた。

 

「なんで……だろう……?」

「心当たりは……ないでしょうね。打ち出の小槌を使ってる様子もなかったし」

「じゃあ、異変じゃないんですかね? てっきり、前回の輝針城異変と同じものかと思ったんですけど」

「うーん、特にお祓い棒が暴れ出してるわけじゃないし、大丈夫じゃないかしら」

 

 じゃ、私は号外を配ってくるんで! そう言って、天狗は去っていった。

 きっと異変ではないのだろう。それはわかっているが、異変ではなくとも、何かが起こっている。

 

「行かないと……」

「……輝針城に?」

「うん」

「そう、気をつけてね」

 

 どうしてか、必ず行かないといけない気がする。それに、私の手にある打ち出の小槌が反応している気がする。

 

「止めないんですか?」

「大丈夫でしょ。それに、私は保護者じゃないんだから。針妙丸の好きにすればいいわ」

「ありがとう霊夢、あうん、行ってきます!」

 

 私は手に打ち出の小槌と、輝針剣*2を持ち、お椀の中に入り、天高くまで昇っていく。目指すは巨大な積乱雲の内部。きっとそこに輝針城(わたしのいえ)があるはずだ。

 

 お椀の蓋を被って雨除けとして使っているが、それでも全ての雨を防げるわけではない。

 それに時々、雷がわたし目掛けて降ってくるのも煩わしい。

 私の持っている輝針剣は、先端が尖っているからか。いい感じに避雷針となってしまっている。

 

「うう、急がないといけないのに……!」

 

 ついつい弱音が出てしまう。だが、挫けてはいけない。私は必ず辿り着かなければいけないのだ。

 

「あっ」

 

 という間の事だった。私の頭部に雷が直撃する。強い衝撃が走り、視界がぼやける。

 そして、次の瞬間。気づけば私は地面へと落下している最中だった。

 雷に打たれるってこんなにも恐ろしい物なんだ。

 

「うわっ!? っと……」

 

 そして私は何かにぶつかっ……空中で止まった?

 

「……」

「地上では水や電気と一緒に小人も降ってくるわけ? 怖いわ〜」

 

 私は誰かに受け止められたみたいだった。

 霞んだ目で見ると、全体的に黄色かった。服は黄色いシャツに、黄色と白の縞々のズボン。黄色い髪に、茶色い帽子、黄色い傘。特筆すべきはウサギの耳をつけている事。そして目は鮮やかな赤色だった。

 地上では、と言っていたので、月から来た玉兎である可能性が高いだろう。

 

 私をお礼を言おうとしたけど、体が痺れてうまく喋れない。

 

「あ、あい、がお……う」

「おお、随分と痺れてるね? あの電気の塊にやられた感じか。確かここでは雷って呼ぶんだっけ?」

「そ、そのろおり、です」

「あれって確か三万アンペアとかなかった? よく生きてたね……」

「丈夫だから、ね」

「丈夫で済ましていいのか?」

 

 全く酷い目にあった。頭の中が揺らされ、視界が点滅。オマケに体が痺れて感覚がなくなった。

 この兎がキャッチしてくれなかったら、私はどうなっていたことか。

 

「助けてくれてありがとう! お礼は後で必ずするから、じゃあね!」

「いや、ちょっと待ってよ。絶対病院行った方がいいって」

「いい、そんな時間ないから!」

「ちょちょちょ、危ないって! また雷に打たれたらどうするの!?」

 

 ちょっとしつこいよ! 私は何がなんでも輝針城に行かなければいけないんだ! こんなところで立ち止まってられないよ!

 

「避けるって!」

「既に一度当たってるけど……」

「うるさいなあ、放っておいてよ!」

「あっ、ちょっと! 待ってよ! そっちは危ないよ!?」

 

 無視して上に飛んで行く。すると、後ろから引っ張られる。

 兎が傘を広げて、私の上を覆っていた。

 

「ちょっと! 邪魔しない」

 

 言葉にする前に、目の前が光り、後から音が聞こえた。大きな音だった。

 

「ああ、あ」

「雲が電気を帯びてたからねえ、こんな盾じゃすぐに破れてしまいそうだけど、キミが感電するのは避けれると思う。多分ね」

 

 ま、実際は外れたわけだけど。お気楽そうに目の前の兎はいう。

 

「あ、あの、ご、ごめんなさい」

「気をつけてよね、いくら私たちが妖怪とはいえ、度が過ぎたダメージは致命的だから」

 

 うう、雷はもう懲り懲りだ。まさかこんなにも体と心が恐れているとは思わなかった。端的に言えばトラウマだ。

 

「ほら、早く家におかえり……いや、心配だからウチに来なよ。雨が止むまで泊めてあげるよ」

「で、でも、どうしても上に行きたいんです」

「……止めても、無理やり行きそうだなあ」

 

 はあ、と大きなため息を吐いてから、兎は頭を掻いて、仕方がないと言った。

 

「キミ、名前は?」

「少名針妙丸です……」

「そっか、キミが……針妙丸ね、覚えたよ。私は鈴瑚。しがない月兎だよ。一緒に行こうか、上に」

「はい、お願いします……」

「あー、もっと元気だしな! 生きてるんだから、そんな落ち込むことないって!」

「うん……わかった!」

 

 こうして私は、鈴瑚と共に輝針城に向かう事になった。

 雨に打たれながらも上に昇っていく。時折雷の音がして怖くなってしまうけど、鈴瑚が手を引っ張ってくれた。

 

 そして私達は積乱雲の中に入る。突入する際、私は小槌の力を使って、一部分の雲をどかして、雲を流れる雷や水滴に当たらないようにして、内部へ入った。

 

「わあ……」

「おお……」

 

 中は晴れていた。青く晴れた空に輝針城が浮かんでいて、濡れた服を乾かすような太陽光が私たちを照らしていた。やっぱり太陽は素晴らしい。雨なんて嫌いだー!

 

「こりゃあ、いい景色……かな。欲を言えばもっと雲が白かったらいいんだけど」

「とりあえず、早く行こうよ!」

「はいはーい」

 

 私は鈴瑚に声をかけて輝針城に向かっていく。

 一番下の階にある、ひっくり返ってるから一番上の階にある入り口に近づいて、気づいた、誰かいる。入り口の端に腰掛けて、足を揺らしている。

 あれは、確か……

 

「……「清蘭?」」

 

 鈴瑚と声が被った。二人とも知り合いなのかな?

 

「鈴瑚と針妙丸!? どうしてここに……」

「それはこっちのセリフよ!」

「そうだそうだ! どうして貴方が私の家に居るのよー!」

「あはは、いやあ、ちょっとねえ?」

「しかも、月の制服に着替えてるし……ああ、嫌な仕事のこと思い出しちゃった」

 

 鈴瑚は苦い物を食べたような顔をしている。

 

「一応言っておくけど、私はアンタのことを探してたんだからね?」

「ええっ、私を?」

「そう、昨日から見かけてなくて、心配だったんだから!」

「それは、申し訳ない……」

「……なんでもいいけど、中に入っていい? ていうか、正邪見なかった?」

「ああ、正邪は今。鬼の世界だよ」

 

 それは、とても聞き馴染みのある言葉だった。

 

「鬼の世界って、何もかもがひっくり返ってる世界だよね?」

「そうだよ。知ってるの?」

「知ってるもなにも……お母様から昔話で何度も聞かされたから。それに、この輝針城も鬼の世界からやってきたとかなんとか」

 

 しかし、鬼の世界か。どうして正邪はそんなところに?

 

「……私も鬼の世界に行けないかな?」

「うーん? ちょっと私は判断できないな。誰も通すなとか言われてないし」

「じゃあ、いいんじゃない?」

「うーん、ちょっと中にいる人達に聞いてみよっか? ついてきてよ」

 

 そう言って清蘭は輝針城の中に入っていった。いや、中にいる人たちって、他にも不法侵入してるの!? うーん、鍵を掛けてはいないけどさあ、人の家に勝手に入らないでよ。

 とにかく、私達は清蘭の背中についていく。中に入って、廊下を歩いて、階段を降りていく。

 

 三階ほど降りた後、大広間にたどり着く。というか、私が使ってる部屋じゃんここ。

 広間の襖を清蘭が開ける。

 

「失礼します」

「こらー! 私の部屋にいる奴って誰……だ」

「私もおじゃまし……」

 

 中に居たのは、なかなか見かけないような面子というか、結構重々しい奴らというか……人の上に立つ存在? 私みたいな……とにかく。そこには、幻想郷で有名な組織のトップを務めている存在が複数いた。

 

「な、なんでこんな奴らがわたしの部屋にいるのよ」

 

「邪魔してるぞ」あいつは確か山の神様

「……」黙ってこちらを見てるのは、確か月からやってきた医者

「桜が咲き始めたわね、ねえ?」桜の話をしているのは、確か亡霊の親玉

 

「錚々たる面子だね、一体ここでなにがあるっていうの?」

 

 鈴瑚と同感である。何故私の部屋にこんな奴らが? そんなに過ごしやすいのだろうか?

 

「ここにいる針妙丸が、鬼の世界に入りたいそうなのですが、よろしいでしょうか?」

 

 敬語で清蘭が話す。あまりにも重く、堅苦しい雰囲気に、私と鈴瑚は口を挟めない。

 

「天邪鬼と八雲紫が未だに戻ってきていない。私は反対だ」

「あら。私は賛成よ〜」

「……その小人の自由意志に任せるわ」

 

 一瞬で結論が出た。これは、入っていいってことなのかな?

 

「えーっと、鬼の世界に入るにはどうすればいいのか?」

「そこにある襖が境界になってるから、開けて中に入ってから閉めれば、後はすぐに着くはずだよ」

 

 広間の奥の部屋。そこに入り口はあった。見ただけでわかる、異質な雰囲気。

 

「ここに入ればいいんだね」

「針妙丸、やばそうだったらすぐに戻ってくるんだよ!」

 

 鈴瑚が心配そうに言ってくる。

 

「……あの、私も鬼の世界に行ってもいいですか」

「え!?」

「ちょ、清蘭、なに言ってるの!?」

「ダメ、ですかね。人探しをするなら、数が多い方がいいと思うのですが」

 

 少し時間が経ってから、月人から返答が返ってきた。

 

「ここで思案して欲しいのは、この扉の先は鬼の世界ということ。昔話で、欲深い小人達が国ごと閉じ込められた、そんな場所なの。小人の犯した罪に対応するように、この世界は罰の側面を持っている。それが、どんな罰なのかはわからないけど」

 

 つまりね、そう一呼吸置いてから、月人は話す。

 

「貴方達は罰を耐えることができるのかしら?」

「耐えるよ、きっと耐えて見せる」

「罰を受ける覚悟はあります」

「そう」

 

 それだけ言って、また黙り始めた。

 

「ねえ、人探しって、誰を探してるの?」

「ああ、なんか、紫さんの昔の友達らしいよ? 鬼の世界に閉じ込められてるんだって」

「無理しないように頑張ってよ。応援してるからさ」

「うん」

 

 私は襖を開く。襖の先はなにも無かった。光も影も。

 清蘭と一緒に中に入る。そして、この世界と鬼の世界を繋ぐ境界である襖を閉めた。

 

 視界が完全に見えなくなる。

 

「鬼の世界にもう入ったのかな……清蘭?」

 

 私は清蘭がいたであろう場所に手で触れようとした。手を止めるものはなにも無かった。

 

「ど、どこ行ったの?」

 

 突然姿を消したので、不安になってしまう。だが、きっと大丈夫なはずだ。

 気持ちを切り替えようとした瞬間、世界は明るくなり、色がつき始めた。そして、

 

「針妙丸? どうしたの?」

「おかあ……さま?」

 

 幼い頃の記憶の存在だった母を再び見て、固めようとした気持ちは、脆く、崩れていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 針妙丸と一緒に鬼の世界へ突入した。したはずであるが、針妙丸はどこかへ消えてしまった。

 

「針妙丸? 聞こえたら返事をして?」

 

 何かを掻き分けるように暗闇を進んでいく。しかし、自分は動けているのか、そもそも、道はあるのか? そんなふうに考えてしまい、疲れてしまう。

 ため息をついて上を見上げた瞬間。景色が変化していることに気づいた。

 そして、体に振動が伝わってくる。まるで、車に乗っているような。

 

「清蘭? どうしたの?」

「レイセン」

 

 戦場に向かう月面を走る車に、私は乗っていて、左隣には友達のレイセン……いまは、鈴仙・優曇華院・イナバだったか。が、座っていた。

 じゃあ、右隣には?

 

 戦死した私の姉が座っていた。

 

「はは、はははは」

 

 乾いた笑いしか出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正邪と一緒に鬼の世界へと入った。スキマを開いて、正邪の能力を使い、反転した鬼の世界へと繋がるように。

 幻想郷の大結界のように、色々と条件を付け足すことでようやく繋げることができたが、これで、蓮子を助け出すことができる。

 

 そのはずであるが、私の隣にいた正邪はいなくなった。

 どうしてしまったものか、隙間の座標もあべこべになっているのか?

 私がそう考えていると、不意に景色が変わる。

 

 建ち並ぶ高層ビル。街灯に照らされて、明るい夜。夜だというのに見れない星空。背後には、よく使っていた駅が。

 とても()()()()景色だった。

 

「メリー? どうしたの?」

「蓮子……」

 

 これは幻覚だ。鬼の世界が私に見せているまやかしだ。だというのに、貴方を見るととても胸が締め付けられる。

 訳が分からない、鬼の世界に前来た時は、こんな現象は起きなかったはずだ。

 

「行こうよメリー、今日は謎の土砂崩れを調査しに!」

 

 だめ、ダメだ。それには、触れては行けない。触れてはいけなかったんだ。

 

「ダメよ、蓮子」

「どうして? せっかく切符も用意したんだし、行きましょうよ」

 

 蓮子は改札を通って行く、何年も経って、精神も図太くなったと思っていたが、結局私はなにも変わらない。

 蓮子の姿を後ろから眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メリーと一緒に鬼の世界へ入った。私は入りたく無かったが、無理矢理連れてこられた感じだ。

 鬼の世界は全てがひっくり返っている。

 朝と夜、時間、色、とにかく色々。ひっくり返し過ぎて、もはや普通の世界と変わらない。

 太陽が現れ、草原が現れた。

 

 そして、見知った顔の金髪の少女が隣に立っていた。先程まで私の隣にいた人物だ。

 

「なあ、お前もそう思うだろ? メリー」

「え? いや、急過ぎてなにも分からないんだけど」

「そうか、そうか」

「そんな事よりも、黒い帽子を被って、黒いマントみたいな物に、黒いスカートを履いている私の友達を知らない?」

「さあ? 知らないね」

「そう……」

 

 鬼の世界では、全てが反対になっている。

 

 過去に進み、日が登れば夜になり、落ちれば朝になる。

 そして、生きようとすれば、死ぬ。

 

 突然だが、妖怪を殺すには、精神を攻撃すればいい。

 

 だから、鬼の世界は見せるのだ、妖怪を殺す為に。

 私は、目の前の悩ましげなメリーを見ながら、死を覚悟した。

*1
針妙丸:打ち出の小槌を使って、弱い妖怪や道具に力や体を与えて、下剋上を起こそうとした異変。正邪に唆されて実行した。最終的に霊夢によって止められた。

*2
霊夢:針妙丸の使っている針。むかーしむかし、一寸法師って奴が鬼退治に使ったと言われてるらしいけど、本当なのかしら? けれど、その鋭さは本物だわ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。