ラーメンが正邪を作るお話   作:最弱の鬼人正邪ファン

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ンがついたのでこのお話はこれでおしまい

 私達は墓石……というにはあまりにも粗末な岩に向かって近づいていく。

 緑の葉っぱが目立つ桜の木の下にポツンと置いてあるそれは、木漏れ日に一部が照らされ、そこに刻まれた名前が強調されていた。

 

「……」

 

 何を考えてるか知らないけど、私の隣にいる小人は祈りを捧げていた。

 こういう時にどんな気持ちで居たらいいか私には皆目見当もつかないが、同じように手を合わせて祈りを捧げておいた。

 

 何秒か経過してから目を開けると、針妙丸はまだ祈りを捧げていた。

 私は黙って待つ事にした。一分ほど、待っていたが、ようやく手を離して頭を上げた。そしてつぶやいた。

 

「お花とか持ってくればよかったかな」

「よかっただろうな」

「……そっかあ」

 

 何を考えているのかはわからない。わからないけど、それでも後悔しているのは読み取れた。

 

「見るからに落ち込んでるな。慰めたほうがいい?」

「本人に聞かないでよ……うん、慰めて」

「あー、ほら、死人に口なし。だから花を持ってきてなくてもなにも文句は言われない!」

「慰めるのが下手だね」

「天邪鬼ですから」

 

 あー、あと、と付け加えるように私は言った。

 

「花よりも、気持ちを伝えるほうが大切なんだよ」

「……正邪とは思えない発言」

「天邪鬼ですから」

「意味わかんないよー」

 

 くすくすと針妙丸は笑う。何が面白いのか分からない。

 そんなことよりもさっさと家に戻って掃除の続きをするべきだ。私は振り返って元きた道を戻る。

 

 そんな矢先、背後からお腹が鳴る音が聞こえた。

 

「……ごめん、朝からお団子以外何も食べてなくって」

 

 ははあ、確かに今は昼頃。昼よりも少し朝方な時間だ。そして博麗神社からここまではまあまあな距離がある。お腹が減るのは当たり前か。

 

 別に忘れるつもりはなかったし、忘れていたわけではないが、脳裏によぎるのはある約束。いや、あれは幻なので、約束というよりかは宣言か?

 

「針妙丸。ラーメンって食べたいか?」

「え〜……」

 

 私が聞くと何故か針妙丸は露骨に機嫌が悪くなっていた。

 

「また顔面に叩きつけるつもり?」

「そんなことはしないよ……悪かったって」

「わあ、正邪が非を認めるなんて」

 

 素直に驚いた様子を見せていた。こいつめ……

 そんな風にしているうちに、私達は家に着いた。

 

「なんか忘れてるような……」

「気のせいだろ、さっさと入ろう」

 

 扉に手をかけ、中に入っていく。後ろから雑巾……と呟く声が聞こえた気がするが、私は無視して進む。睨みつけるような目をした針妙丸が続いてくる。

 

「ま、いいか。許してやろう。私は偉いから」

「全部思い出したのか?」

「……うん」

「へえ、一回目の事も?」

「一回目?」

 

 キョトンとした顔でそう聞き返してくる。

 

「ほら……私らが初めて鬼の世界で出会った時のことだよ」

「いや? 私そもそも鬼の世界にいたことないし」

「そうか」

「そうだ! そのことについて聞きたかったのよ! あの八雲紫とどうして親しくしてるの? 話が読めてこないんだけど?」

 

 どこからか取り出した針を突きつけて、針妙丸は詰め寄ってくる。

 

「なんだ、覚えてないのか。じゃあ忘れてろ。この話は墓まで持ってく」

「むむむ、こうなったら小槌を使って無理やり話させて……あ、そういえば無くしてたっけ……」

 

 (たもと)をゴソゴソ探していたが、お目当てのものが見つからなかったので肩を落とした。

 

「ああ、そうだ。お前に返さないといけないものがあったんだ」

「ええ? なんか貸してたっけ」

「はい」

 

 私は打ち出の小槌のレプリカを針妙丸に渡した。

 

「これは……いつぞやの打ち出の小槌! ……のレプリカじゃん。こんなの貸した記憶ないけど」

「だからだよ。貸した覚えがないから返すんだ」

「よくわかんない」

「わかる必要はない」

 

 立ち上がって、拝借してきた食材を袋から取り出す。

 

「少し時間はかかるけど、いいな?」

「まあ、いいよ」

 

 いちいち癪に触るな。そう思いながら、ボロボロの包丁をみてため息をついた。

 麺はある。守矢からとってきた。だから野菜を切ってスープを作って麺を茹でればいい。ただそれだけだ。

 

「そういえば、私ってまだ正邪に謝ってないよね」

「はあ? 何かありましたっけ」

「ほら、小槌を使って追い出したじゃない。今思えばわがまますぎた」

 

 野菜を切る……ボロボロな包丁のせいで切りづらい。あとは精神的な動揺で手元がおぼつかない。

 

「そんなに驚くことではないでしょ」

「お互い様だろ……私は一生許さないぞ」

「じゃあ死んでから許してよ」

「それならいい。許してやろう」

「やったー」

 

 それでいいのか。野菜を切り終えた私は、麺を用意して、お湯に……お湯なかった。仕方ないからお湯を作る。

 水を火にかけ沸騰するまで待つ。

 

「そういえば城から追い出した後、ずっと団子屋で過ごしてたの?」

「んー、いや? 団子屋で過ごしたのは一日だけだ。その後は……ああ、あんまり思い出したくないけど、切られたり追いかけられたり、こき使われたり」

「ひどい目にあってるね」

「その通りだよ。ここに来てから嫌な思い出ばっかりさ」

「嘘つき」

「わかってるじゃないか」

 

 沸騰した水に麺を入れて、今のうちにスープを作る。……どうやって作ればいいんだっけ?

 

「……疲れたでしょ?」

「いや、全然疲れてないけど?」

「嘘ばっかり、そんな体勢で料理するのやめなよ」

 

 その言葉で今一度現在の自分の姿を客観視する。私はまな板に頭を乗せながら、鍋の中身を見る事もせずにかき混ぜていたのだった。

 とりあえず麺は茹で上がったと思うので、取り出して湯を切る。

 ……順番間違えたか?

 

「……失敗しちゃった?」

「そんな、そんなわけないでしょう」

「顔から余裕が消えていってるよ? 大丈夫? 一応言っておくけどそれを食べるのは私なんだからね!?」

 

 大丈夫、大丈夫だと伝えながら、スープを器に移す。底が深い、汁物を入れるために作られた皿だ。麺を入れるとスープが溢れかねないラーメンにはもってこいだ。

 後は切った野菜とか肉とか、とにかく具材を乗せて完成だ。

 

 できたラーメンを持っていく。後ついでに箸も。

 

「できましたよ、姫」

「うむ、くるしゅうないぞ〜」

「驚くほどに似合わないな」

「知ってるよ。それじゃあ、いただきます」

 

 私は机に肘をついて、目の前の小人がラーメンを啜っているのを眺めた。

 

「どう?」

「正邪が作ったからか、おいしくないね!」

「最高の褒め言葉だな」

「でも、私この味好きだよ、クセがある感じ、やみつきになりそう」

「なんでそんなひどいことをいうんだ」

「やっぱり嫌いかも……」

「どっちなんだよ」

 

 けどねけどね! そう続けて、針妙丸は言った。

 

「このラーメン、正邪を作ったって感じするよ」

「……は?」

 

 聞き間違いを疑った。だけどどうやら私も針妙丸も正常なようで。

 

「その心は?」

「このラーメンを作るうえで、いろんなところ巡ったんでしょ? そして成長した。色々なことを経験して色々な迷いも晴れた。つまり、ラーメンを作ってたと思いきや、逆にラーメンが正邪を作ってたってわけ!」

「はっ、ははっ」

 

 なるほど、逆に考えるのは私も好きだ。けどな……

 

「お前疲れてるんだよさっさと寝ろ」

「ええ〜?」

「ていうか誰の入れ知恵だ? そんなこと言わないだろ普段なら」

「あ、バレた?」

「私はもう疲れたから寝る。お前も、そんな事言ってしまうんだったら早く寝たほうがいい」

「そんなにひどいこと言ったかな?」

 

 何かまだ文句を言いたそうにしている針妙丸を無視して、私は机にうつ伏せになった。そして瞼を閉じて、自分の意識が途切れるのを待った。

 

 夢は何も見なかった。

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