ミス・トゥースフェアリーに真面目な話をしてもらおうと思ったらなんか筆が滑った   作:グシャグシャボックス

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 ●トゥースフェアリーからテレパスで説明を受けたフェイは、考えた末に、自らチェシャーに出向くことにします。

 

 イギリスの空港に降り立ち、チェシャーに向かい、やがて広々とした敷地の中に建つ重厚なキャンベル家を目にする彼の様子を描写してください。フェイ(イギリスでの呼称はミスター・ハガ)はトゥースフェアリーの考えた文面の手紙を使用人に渡し、家の人間に会わせてほしいと願い出ますが、閉鎖的な環境もあいまって、取り次いですら貰えません。仕方なく彼はキャンベル家の近郊を回って、郷土史を調べ、民芸館なども回ってみますが、これといって収穫はありませんでした。

 

 フェイは意気消沈しつつも、翌日もういちどキャンベル家に出向いてみました。すると、何故か話が通っていて、豪華な応接室に通されます。しばらくその場で待つと、一人の女性がやってきます。その女性を見て、フェイは固まってしまうでしょう。彼女はフェイよりも一回り年嵩で、おそらく30代半ばか後半あたりのイギリス婦人でしたが、風貌がトゥースフェアリーにそっくりだったからです。

 

 以上のような流れを、フェイの一人称で、詳細に描写してください。

 

 

 

■チェシャーへの旅

 

 トゥースフェアリーとのテレパシーが、私の頭から離れなかった。彼女の声――柔らかくて、少し鼻にかかったようなその響きが、心のどこかに引っかかって仕方なかった。「転移術式があなたの世界に隠されているかもしれない」と彼女が言ったときの、かすかに震える希望の色。それが私を突き動かした。

 

 2025年の春、私は悩んだ末に決意し、パスポートとイギリス行きのチケットを手にした。チェシャー、キャンベル家。彼女の生まれ故郷をこの目で確かめ、そこで決定的な手がかりを掴みたかった。

 

 

 

 ヒースロー空港に降り立ったとき、冷たい風が頬を刺した。4月のイギリスはまだ肌寒く、スーツケースを引きずりながらタクシーに乗り込むと、「チェシャーまで」とだけ告げた。

 

 車窓から見える風景は、日本のそれとはまるで別世界だ。石造りの家々が点在し、古びた看板が並ぶ田舎道を眺めているうちに、緊張と期待が胸の中で混ざり合って重くなった。彼女が育った場所に近づいていると思うと、妙に息が浅くなった。

 

 チェシャーに着いたのは昼過ぎだった。タクシーを降り、目の前に広がるキャンベル家の敷地を見た瞬間、私は息を呑んだ。広大な緑の芝生に囲まれた、重厚な石造りの屋敷。窓枠には蔦が絡まり、まるで時間が止まったような威厳を放っている。トゥースフェアリーが「伝統ある名家」と呼んだ意味が、急に現実味を帯びてきた。彼女の幼い足音がこの敷地に響いていたのかと思うと、胸が締め付けられるようだった。

 

 ポケットから、彼女がテレパシーで伝えてくれた文面を書き起こしたレターを取り出す。彼女らしい、丁寧で少し詩的な言葉遣いだ。「私は遠くの友を訪ねて参りました。キャンベル家の皆様に、どうかお話を伺う機会をいただけますようお願い申し上げます」大筋はそんな内容だった。

 

 私は深呼吸して門のベルを押した。しばらくして、無愛想な使用人らしき男が顔を出した。レターを手渡し、「家の人間に会わせてほしい」と頼んだが、彼は一瞥しただけで「ご用件はお預かりできません」と冷たく言い放ち、門を閉ざした。閉鎖的な空気が漂っていて、まるで異邦人を拒む見えない壁にぶつかった気分だった。

 

 仕方なく、私はキャンベル家の近郊を歩き回ることにした。郷土史の本でも見つかるかと小さな図書館に寄り、古い展示品が並ぶ民芸館にも足を運んだ。日本から送り付けられた異質な何かについて、手がかりはないかと目を凝らしたが、古い農具や織機ばかりで何も得られなかった。

 

 宿に戻ったときには疲れ果て、肩が重くてたまらなかった。彼女に近づけた気がしないまま、夜が更けていった。

 

 

 

■再訪と驚愕の出会い

 

 翌朝、私は意気消沈しながらも「もう一度だけ」と自分に言い聞かせてキャンベル家に向かった。

 

 昨日と同じ門の前で、同じようにインターホンを押す。どうせまた断られるだろうと半ば諦めていたら、意外にも使用人が「どうぞお入りください」と静かに言った。

 

 拍子抜けしながら敷地内へ進むと、別の使用人に導かれて屋敷の中へ通された。

 

 豪華な応接室に足を踏み入れると、高い天井にはシャンデリアが吊り下がり、壁には古い肖像画がずらりと並んでいる。革張りのソファに腰を下ろすと、ふかふかすぎて逆に落ち着かなかった。テーブルには紅茶が用意され、湯気が細く立ち上っている。

 

 静かすぎる空間に、自分の心臓の音がやけに大きく響いた。なぜ急に話が通ったんだろう。まさかトゥースフェアリーが何か仕掛けてくれたのか? いや、そんなはずはない。彼女は別世界の1990年代にいるんだから。考えがまとまらないまま、私はただ待つしかなかった。

 

 しばらくすると、ドアが静かに開いた。足音が近づいてきて、顔を上げた瞬間、私は固まってしまった。

 

 そこに立っていたのは、30代半ばか後半くらいのイギリス人女性だった。濃い茶色のウェーブがかった髪、はしばみ色の瞳。口元に特有のヘッドギアはなかったけれど、その顔立ち、雰囲気――トゥースフェアリーにそっくりだった。

 

「あなたがミスター・ハガかしら?」

 

 彼女の声は落ち着いていて、少し低めだった。トゥースフェアリーの声とも似ているが、より大人びた深みがあった。私は言葉に詰まり、ただ頷くしかできなかった。

 

 頭の中がぐちゃぐちゃだ。彼女は誰なんだ? トゥースフェアリーの姉妹? いや、彼女は長女で、家は弟が継ぐと聞かされたことがある。それなら彼女自身? でも、年齢が合わない。混乱が渦巻き、目の前の女性が儀礼的に微笑むのを、ぼんやり見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 ●トゥースフェアリーに良く似た女性、ミセス・キャンベルは、美しくもどこか疲れたような表情をしています。彼女はフェイからの手紙を読み、普段の彼女自身が書くような文面が、彼女とは違った筆跡で書かれているのを見て興味を持ったということでした。

 

 フェイは慣れない英語でコミュニケーションを続け、500年前の古文書の話を、少し歪めた形で口にします。彼の実家である芳賀家に伝わる文書に、500年前、遠く離れた地にあるキャンベル家に古文書を送りつけたという記録がある。それを辿って、このチェシャーの地にまで辿り着いたのだと。

 

 明らかに荒唐無稽な話ですが、ミセス・キャンベルはあっさりと信じます。というのも、実際それらしいものが現存するからです。フェイの話を聞く中で、どこかくたびれたままだった彼女の表情が、なんだか少し生気を取り戻したように見えるでしょう。灰色の日常に、ちょっとした楽しみを見出したのかもしれません。

 

 以上のような流れを、引き続きフェイの一人称で、詳細に描写してください。ミセス・キャンベルの表情の変化を丁寧に描くこと。

 

 

 

■ミセス・キャンベルとの対面

 

 目の前に立つ女性――ミセス・キャンベルと名乗った彼女――は、美しい顔立ちをしていた。トゥースフェアリーそっくりのウェーブがかった茶髪とはしばみ色の瞳が印象的で、まるで彼女がそのまま年を重ねたかのような錯覚に陥るほどだ。

 

 でも、よく見ると、どこか疲れた影が彼女の表情には宿っていた。目尻に細かな皺が刻まれ、口元がわずかに下がっていて、実際の年月以上の重みが滲み出している。それでも、その疲れすら彼女の美しさを損なわず、むしろ深みを与えているようにも感じた。

 

「突然のお訪ねに驚きましたけど、あなたの手紙を読んで、少しお話を伺いたいと思ったの。キャンベル家に何の用かしら?」

 

 彼女がそう言って、私の向かいのソファに腰を下ろした。落ち着いた声に促され、私はようやく口を開いた。でも、とっさの英語は厄介なものだ。日本語のリズムがこびり付いていた頭の中で、怪し気なフレーズを、たどたどしく絞り出すしかなかった。

 

「えっと……その、手紙を、読んでくださって、ありがとうございます。私は芳賀と申しまして……実は、私の実家に伝わる古い文書がありまして、500年ほど前に、遠く離れたチェシャーの地に、何か大事なものを送ったという記録が残っているのです。それを調べて、何か手がかりがないかと思い、こうして足を運んだ次第です」

 

 自分でも荒唐無稽な話だと分かっていた。そもそも芳賀家の古文書にそんな記述はない。500年前の転移者の記録を少し歪めて、彼女に信じてもらえそうな形に仕立てただけだ。

 

 トゥースフェアリーとの繋がりを明かすわけにはいかないし、こんな突飛な話でどうにか会話を繋ぎたかった。でも、言葉の拙さも手伝って、余計に胡散臭く聞こえたかもしれない。冷や汗が背中を伝うのを感じながら、彼女の反応を恐る恐る窺った。

 

 ミセス・キャンベルは私の話をじっと聞いていた。疲れた表情はそのままだったが、手に持っていた私の手紙をもう一度見つめ直すと、彼女の眉がわずかに動いた。

 

「この文面……どこか懐かしい響きがあると思ったの。私の書くような言葉遣いなのに、筆跡が違う。それが気になって、あなたに会ってみようと思ったのよ」

 

 彼女がそう言って、手紙をテーブルに置いた。確かに、あの手紙はトゥースフェアリーがテレパシーで伝えてくれたものだ。彼女の詩的で丁寧な言い回しがそのまま反映されている。ミセス・キャンベルがそれに気づくなんて、さすがキャンベル家の人間だと思った。血の繋がりか、それとも何か別の縁か。考えがまとまらないまま、私は話を続けた。

 

「その……古文書に記されていたモノが、キャンベル家に所蔵されているかもしれないと。ちょうどこの屋敷の敷地内が書かれた目的地のようでしたから。チェシャーまで来て、この目で確かめたかったんです」

 

 喉がカラカラだった。我ながら怪しい言動に、緊張で頭がクラクラした。しかし、その後の彼女の反応は予想外だった。

 

「そう……500年前、ね」

 

 ミセス・キャンベルは小さく呟き、目を細めた。疲れが色濃く滲んでいたその表情が、ほんの一瞬、揺らいだ気がした。彼女はソファの背にもたれ、遠くを見るように視線を宙に浮かせた。

 

「実はね、この家にはそれらしいものがあるのよ。古い箱に収められた古紙の紙束。先祖が長らく保管していたものの一つなのだけれど、誰も中身を読み解けなくて、ただの置き物になっていた。まさか、地球の裏側近くから来たあなたが、それを探してるなんて……」

 

 私は目を丸くした。本当にあるだなんて。トゥースフェアリーの言う術式が、500年前、ここに送り付けられていたということか。混乱する思考の中、彼女の表情が少しずつ変わっていくのに気づいた。口元がわずかに緩み、頬に微かな血色が戻った気がした。まるで、灰色の日常に小さな火が灯ったかのように。

 

「面白い話ね、ミスター・ハガ。こんなことが起こるなんて、ちょっとした楽しみだわ」

 

 彼女がそう言って、初めて自然な笑みを浮かべた。その笑顔は、疲れを帯びたままだったが、どこか生き生きとしていて、トゥースフェアリーを思い起こさせた。彼女にとって、私の突拍子もない話は退屈な日々に差し込んだ一筋の光だったのかもしれない。

 

 私はその表情を見つめながら、胸の奥が熱くなるのを感じた。トゥースフェアリーに会いたいという想いが、また少し強まった気がした。

 

 

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