ミス・トゥースフェアリーに真面目な話をしてもらおうと思ったらなんか筆が滑った   作:グシャグシャボックス

12 / 13
12

 

 

 ●アルカナムの存在しない世界に通じる転移術式をトゥースフェアリー経由で手に入れた財団は、突貫工事で解析を行います。

 

 レディ・Zやその他の研究員たちが、アルカナムを用いた突飛な道具を活用し、フェイのいる世界に繋がる転移門を作成する様子を描写してください。

 

 じきに転移門は完成します。多少時間を経過させてください。しかしながら、完成した転移門を用いて正確に目的地に飛ぶためには、何かしら目的地に繋がる道しるべとなるものが必要です。フェイとトゥースフェアリーのテレパスによる繋がりは、時空間の道しるべとしてこれ以上ないほど相応しいでしょう。そのことを伝えられたトゥースフェアリーは、自分が被検体となることを躊躇いなく同意し、決然とした意志を見せるでしょう。

 

 こうした一連の流れを、三人称で描写してください。また、リバース:1999の登場人物をインターネット上から検索し、転移門作成の研究員の中に一人以上含めること。

 

 

 

■転移門作成とトゥースフェアリーの決断

 

 聖パブロフ財団の研究棟は、異常なまでの熱気と緊張感に支配されていた。トゥースフェアリーがフェイの世界から持ち帰った転移術式――アルカナムのない世界に通じる前代未聞の設計図――を解析するため、ラプラス計算科学研究センターの精鋭たちが突貫作業に追われていた。

 

 部屋の中央には、巨大な円形の装置が鎮座し、その周囲には神秘の輝きを帯びた金属板や、巻物から得られた術式の写しが散乱していた。壁やホワイトボードには数式と記号が乱雑に殴り書きされ、研究員たちの焦燥が空気に混じっていた。

 

 レディ・Zは、黒髪を無造作に束ね、眼鏡の奥で鋭い眼光を放ちながら、制御盤に指を滑らせていた。彼女の手元には、アルカナムを動力とする奇抜な道具――青く脈打つ水晶の結晶や、不規則に唸る歯車付きの計器――が並び、それらを巧みに操って術式の骨格を解きほぐしていた。彼女の手さばきは正確だが、どこか急かされるような忙しなさがあった。

 

 もう一人の女研究員が、同じく機材を弄りながら、レディ・Zに対して水を向けた。

 

「この術式、治癒術の歪んだ派生よね? その歪さのおかげで出力される転移効果は強烈だけど、そのぶんいかにも基盤部分が脆そうよ。こんなに突貫で大丈夫かなあ」

 

 彼女はそう言い、続いて視線をウルリッヒへと移した。

 

 ウルリッヒ、ラプラス計算科学研究センターの暗号解読班班長であり、意識覚醒者たる彼は、その磁性体の頭でホワイトボードの乱雑な数式を見上げている。人としては中肉中背の体躯に似合わず、その存在感は異様に重い。その彼が振り向いた。

 

「時間がないんだ。ストームが次の波を起こす前に、転移門を完成させなくてはならない」

 

 ウルリッヒの声は低く、神経質な響きを帯びていたが、その言葉には確信があった。かつてとあるマヌス・ヴェンデッタの術式解読で財団に貢献した彼の手腕は、今この場でも頼りにされていた。

 

 ウルリッヒは別の装置の側に歩み寄り、細長い指で金属板の記号をなぞると、「残留した前回のストーム・エネルギーが現在の異常事象に関わっているなら、次回のストーム後もそれが継続する可能性は低いと言わざるを得ない。連続性が途切れる前に、早急にルートを確立しておく必要がある。……まったく、財団のチームが右往左往していなければ、こんなもの、とっくに完成している頃合いだ」と吐き捨てるように呟いた。

 

 

 

 そして、3日後。トゥースフェアリーは、少し離れた場所で転移門の作業風景を見守っていた。茶色のウェーブがかった髪が肩に揺れ、口元のヘッドギアが薄暗い光を反射している。

 

 彼女の脳裏には、フェイとの精神交換で得た転移術式の記憶が鮮明に残っている。しかし、それを財団に託した今、彼女は静かに待つしかなかったが、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。

 

 彼女にとって、この術式はフェイに会うための唯一の道だった。

 

 やがて、転移門は最後の仕上げに入った。部屋の中央に据え付けられた大掛かりな装置の中心に、青白い光の渦が浮かび上がり、空間が微かに震える。レディ・Zたちが最後の数式を打ち込むと、光が一瞬強まり、安定した輪郭を保った。

 

 研究員たちから安堵の息が漏れたが、ウルリッヒが冷たく遮った。

 

「喜ぶのは早いぞ。座標が定まらなきゃ、この門はただの光るガラクタにすぎない」彼はそう言い、装置の縁を軽く叩いてみせた。その態度に苛立つ者もいたが、彼の指摘は正しかった。

 

 レディ・Zが頷き、補足した。「ウルリッヒの言う通り。この門には道しるべが必要よ。時空間を正確に繋ぐ標識がないと、あちらの世界にはとうてい届かないわ」

 

 その言葉に、全員の視線がトゥースフェアリーに集中する。彼女とフェイを繋ぐテレパスの絆――それは時空を超えた二人の精神的な結びつきであり、道しるべとしてこれ以上ないほど完璧なものだった。

 

 

 

 トゥースフェアリーは束の間、目を閉じた。

 

 今このとき、フェイの声は聞こえない。しかし聞こえないはずの声、これまでに行われた彼とのやり取りの数々が脳裏に響き、行き交った想いのすべてが彼女を支えている感覚があった。

 

 彼女は面を上げ、研究員たちを見据えて静かに言った。「私が被検体になる。それでいいわね?」その声に迷いはなく、開かれたはしばみ色の瞳は決然と輝いていた。

 

 レディ・Zが彼女を見つめ、すぐに小さく微笑んだ。「それしかないものね。でも、あなたらしくなったわ。危険を承知で、冷静に、そしてためらわない」

 

 ウルリッヒは磁性体を震わせ、「熱意や義務感でなく個人感情に基づいた自薦は、必ずしも適格とは言えないが、まあ、この期に及んで文句はないさ」と皮肉を込めて言ったが、しかし彼のガラス張りの頭部の蠢きには、彼女の覚悟を言外に認めた気配があった。

 

 

 

 トゥースフェアリーは微笑み、口元のヘッドギアが光を跳ね返した。「彼に会うためよ。私には、それだけの理由でいいの」彼女はそう言って、転移門の前に堂々と進み出た。

 

 ひとりの女としての彼女の決意が、この世界の人々を別世界へと導く橋渡しとなるのだ。次元を隔てて精神が共鳴する瞬間、転移門は正確な目的地を捉えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 ●トゥースフェアリーは、フェイとのテレパスの繋がりを感じながら、躊躇いなく転移門の入り口へと歩いていきます。これまでの経過を回想させながら、彼女が転移門に入り、時空間を渡り、目的地まで辿り着くべく奮闘する抽象的な状況を、彼女の一人称で描写してください。

 

 最後は目の前が猛烈にフラッシュ・アウトし、彼女の意識が途切れる瞬間で終えてください。

 

 

 

■フラッシュ・アウト

 

 転移門の前に立つ私は、足元から響く低いうなりを感じながら、目を閉じた。フェイとのテレパスの繋がりが、私の心の奥で静かに脈打っている。彼の声、彼への想い――それが私をここまで導いてきた。

 

 私は深呼吸して、光の渦が渦巻く入り口へと一歩踏み出した。躊躇いはない。私の心は、すでに彼のいる世界に向かっているのだから。

 

 

 

 一歩進むごとに、記憶が柔らかな波となって押し寄せてきた。ストームが過ぎ越した後のある日、突然私とフェイの意識が繋がった瞬間。最初はあった不信感が、彼の人柄に日毎に薄まっていったことを覚えている。いつしか彼とのやり取りは私のかけがえのない時間となった。

 

 そして、彼の「好きだよ」という言葉が私の胸を震わせたこと。その純粋さに戸惑いながらも、どこかで密かに憧れていた恋愛という未知が、私の中で芽生えた。

 

 レディ・Zに制限されながらも、彼との交信を待ち続けた日々。精神が入れ替わり、彼の世界で彼の努力の結晶である巻物を手に持ったときの温もり。

 

 そして、キャンベル家に連なる私の身内が残した術式を解読し、彼に会うための鍵を握った今、このとき――すべてが、私をこの転移門へと導いた道筋だった。

 

 

 

 光の渦が私の体を包み込んだ瞬間、全身の感覚が溶けるように歪んだ。

 

 足元が消え、まるで空に浮かぶ羽のように軽くなった。私は目を閉じたまま、フェイの存在に意識を寄せた。

 

 彼の声が、遠くで優しく響いている。「君に会いたい」――彼のその言葉が、私の心に灯る小さな火だった。私はそっと呟いた。「フェイ、私もよ。もうすぐ会えるわ」その想いが、私を時空間の果てしない奔流の中で支えてくれる。

 

 私も彼に会いたい。彼の笑顔を、彼の瞳を、この目で見たい。その一心が、私のすべてだった。

 

 

 

 

 周囲が抽象的な色彩の海に変わった。青白い光が波のように揺らめき、過去と未来が溶け合った幻影が私の視界を流れていく。幼い頃のキャンベル家の庭、歯を並べたコレクションを眺める静かな夜、フェイと歯の話を語り合ったテレパシーの温かさ――それらすべてが光の粒となって、私の周りを舞っては散った。

 

 私は歯を食いしばり、意識を保とうと懸命に抗った。転移術式の不安定さが、私の精神を揺さぶってくる。まるで嵐の中を裸足で歩くような痛みと冷たさだ。

 

 キャンベル家の身内が味わった感傷が、私の胸に重くのしかかった。彼は異国で、愛する者を想うがために、完成させた術式を用いることなく人生を終えた。その選択がどれほど苦しく、しかし妥当なものでもあったか、私は今、身をもって感じていた。

 

「私もあなたと同じ身の上よ」と、私は再び心の中で彼に語りかけた。「そして、あなたは正しい。でも、私はあなたじゃない。あなたが諦めた道を、私は歩ききるわ」

 

 死したる縁者の孤独に寄り添いながら、しかし私はフェイのことを考え続けた。ずっと前に夢で見た、彼の歯の手触りのことが思い浮かんだ。途方もない先にいるはずの彼が、エナメル質のあの白さを隙間に見せながら、私に微笑みかけているような気がした。

 

 それに、しっかりと触れてみたかった。その思いの強さが、今はとても心強かった。

 

 ……ああ、歯を愛する私の偏執的な心が、こんな形で報われるなんて、なんて不思議な運命だろう! 私は小さく笑いそうになった。

 

 光が強まり、耳鳴りのような鋭い音が頭を貫いた。私は手を伸ばした。フェイがすぐそこにいる気がした。私の指先が彼に触れる瞬間を想像しながら、私は時空間の奔流に抗った。もう少し、もう少しだけ――私の心は彼に叫んだ。

 

 

 

 しかし、突然、目の前が猛烈にフラッシュアウトした。

 

 白い光がすべてを焼き尽くし、視界が裂けるような衝撃が私を襲った。私は声を上げようとしたけれど、喉が凍りついて音にならない。フェイの名を呼ぼうとした瞬間、意識が急速に遠ざかり、闇が私の心を飲み込んだ。

 

 私は彼の名を、最後まで胸に刻んだまま、まばゆい光を失った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。