ミス・トゥースフェアリーに真面目な話をしてもらおうと思ったらなんか筆が滑った   作:グシャグシャボックス

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 ●さて、フェイはフェイで調査を進めていましたので、彼は夜の交信時にトゥースフェアリーに分かったことを伝えます。Googleアースなどを用い(トゥースフェアリーに対して21世紀の技術革新のことを説明しつつ)、調べたところ、チェシャーのキャンベル家周辺の地理、遠目に見た屋敷の姿などが、トゥースフェアリーの証言と概ね一致しました。どうも両世界のキャンベル家はかなり近しい存在のようです。

 

 仮に、何も知らないトゥースフェアリーの平行存在がこちらの世界にいたとして、彼女に、フェイとトゥースフェアリーとの繋がりを信じさせる方法が何かないか、彼はトゥースフェアリーに尋ねます。子供の頃の、アルカナムと関係ない思い出などがあると良いのではないでしょうか。最も、現時点のフェイがキャンベル家と接触するのは難しいのですが。

 

 その後、フェイはトゥースフェアリーの子供の頃の思い出話を色々と聞くことになります。彼は彼女の話を喜んで聞き続けるでしょう。

 

 以上のような流れを、トゥースフェアリーの視点に立って、細かく描写してください。

 

 

 

■「彼の声と遠い記憶」

 

 夜が更けた頃、テレパシーの感覚が私を包んだ。いつものように、それは突然やってくる――フェイの声が私の頭の中に響き、彼の温かさが感じられる瞬間だ。

 

 研究室の片隅で、訳されつつある芳賀家の資料を眺めていた私は、そっと目を閉じて彼の言葉に耳を傾けた。彼の声は少し興奮していて、どこか楽しそうだった。

 

「トゥースフェアリー、聞いてくれ。僕の方でも調査を進めていたんだが。Googleアースというアプリケーションがあってね。とある企業が一般に公開している技術で、地球上のどこでも、上空や路上から見ることができるんだよ。それを使って、チェシャーのあちこちを調べてみたんだ」

 

 私は目を丸くした。Googleアース? そんなもの、私の世界には存在しない。彼が続ける。「でね、キャンベル家の周辺の地理や、遠目に見た屋敷の姿が、君から聞かされた話とほぼ一致しているように見えた。木々の並びや、石垣の形までそっくりでね。両方の世界のキャンベル家、かなり近い存在みたいだよ」

 

 彼の説明に、私は驚きと喜びが混じった気持ちで一杯になった。私の生家が、彼の世界にもちゃんと存在している。それだけで、私たちの繋がりがまた一つ強くなった気がした。「21世紀ってすごいわね。そんな技術があるなんて……私には想像もつかないわ」と私が言うと、彼は笑って、「そうだね、僕も初めて使ったときは驚いたよ。でも、これで君のそばにもう少し近づけたように思う」と答えてくれた。

 

 そして、彼の声が少し真剣なトーンに変わった。「ねえ、トゥースフェアリー? 仮にね、君の平行存在が僕の世界にいて、何も知らないキャンベル家の一員だったとする。彼女に、僕と君の繋がりを信じさせる方法って何かあるかな? 今の僕じゃ、キャンベル家に直接接触するのは難しいけれど……例えば、子供の頃の思い出とか、アルカナムと関係ないもので、君だけの特別な記憶があればいいんじゃないかと思うんだ」彼のその提案に、私は少し考え込んだ。

 

 子供の頃の思い出。チェシャーのキャンベル家で過ごした日々は、私にとってあまり楽しいものではなかった。伝統ある家柄、長女としての重圧、そして神秘学家と人間の間で揺れる家族。でも、彼がそうやって私の話を聞きたがっていることが、私の心を温かくした。

 

「そうね……少し考えてみるわ。アルカナムと関係ない思い出なら、私にもいくつかあるかもしれない」と私は答えた。

 

 

 

「じゃあ、まず一つ思い出したわ」と私は話し始めた。「チェシャーの家の裏庭に、大きな古い樫の木があったの。子供の頃、そこでよくひとりで遊んでたわ。家族には内緒で、木の根元に小さな穴を掘って、そこに秘密の宝物を隠してた。貝殻とか、きれいな石とか……誰にも言わなかったから、あれは私だけの秘密だったの」

 

 フェイが「へえ、それは可愛いね。その木、まだあるのかな」と楽しそうに言うので、私は少し笑ってしまった。「わからないわ。でも、もしあなたの世界のキャンベル家にもその木があったら、試しに根元を掘ってみて。私の宝物が残ってるかもしれないから」

 

 彼が「それはいいね! もし見つけたら、君の平行存在に『トゥースフェアリーが隠したんだよ』って言ってみよう」と冗談めかすので、私もつられて笑った。なんだか、子供の頃の自分が少し愛おしく思えてきた。

 

「もう一つあるわ」と私は続けた。「家の近くに小さな小川が流れていて、夏になるとそこで裸足で遊んだの。水が冷たくて、足の裏に小石が当たる感触が好きだった。ある日、転んで膝を擦りむいてしまって、泣きながら家に帰ったんだけど、母には叱られるのが嫌で、こっそり自分で手当てしたの。あの傷跡、今でも膝にうっすら残ってるわ」

 

 フェイが「その傷跡か……もし平行存在の彼女にも同じ傷があったら、信じてもらえるかもしれないな」と言うので、私は少し照れてしまった。「そうね。でも、そんな小さな傷で信じるかしら?」と返すと、彼は優しく、「君の話なら、僕だったら信じるよ。だって、実に君らしい思い出だもの」と答えてくれた。その言葉に、私の胸がじんわり温かくなった。

 

 

 

 そのあとも、彼は私の話を喜んで聞いてくれた。次から次へと、子供の頃の記憶が溢れ出てくる。小川で捕まえた小さな魚を瓶に入れて眺めたこと、冬の朝に窓ガラスにできた霜を指でなぞって遊んだこと、家の屋根裏で埃っぽい古い本を見つけてこっそり読んだこと。

 

 どれも、アルカナムとは無縁の、ただの少女だった私の時間だ。フェイは「もっと聞かせてほしい」と何度も言ってくれて、そのたびに私は嬉しくてたまらなかった。

 

「君の子供時代、なんだか君そのものだね。賢くて、少し頑固で、でも優しい」と彼が言うので、私は笑いながら、「頑固なんて失礼ね。でも……そうかもしれない」と返した。彼が私の話をこんなに楽しんでくれるなんて、思ってもみなかった。チェシャーのキャンベル家は、私にとって重い記憶の場所だったけれど、今夜は彼のおかげで、その思い出が少しだけ輝いて見えた。

 

「ありがとう、フェイ。私の話を聞いてくれて」と私が言うと、彼は「こちらこそだよ。今後に繋がる大事な情報だし、それに君の声を聞いていると、なんだか君に会いたくなる」と答えてくれた。その言葉に、私の心がまた高鳴った。

 

 いつか、彼の世界のキャンベル家に辿り着いて、私の平行存在に会える日が来るかもしれない。そのとき、私の思い出が鍵になるかもしれない。そう思うと、夜の交信が終わるのが少し惜しく感じた。

 

 

 

 

 

 

 ●財団が芳賀家の資料を解析した結果、驚くべきことが判明します。

 

 500年以上前、だいたい室町時代の頃、芳賀家の祖先はとある人間を助けました。その人間は波打った茶髪の背の高い男性で、どこか異人(つまり日本人ではなく西洋人)めいた特徴を持っていたようです。彼は不可思議な災害に巻き込まれ、気付いたときには芳賀家の近くに倒れていました。

 

 彼は優れた治癒術を操る神秘学家で、また災害に巻き込まれた際に、新たに転移術の才能をも開花させていました。芳賀家の人間の女性にその転移術の適性があったことから、彼は彼女に転移術を教え込み、またやがて惹かれ合った二人は結ばれ、芳賀家の係累となったとのこと。

 

 これは、これまで確認された中でももっとも過去へと至ったストーム被害者の記録である可能性が高く、それ自体に高い資料価値があります。

 

 しかし、それ以上に、レディ・Zは治癒術を操る茶髪の異人男性という人物に対して直感的なものを覚えます。この人間はトゥースフェアリーの関係者では? 例えば彼女の親戚、祖先、あるいは子孫。

 

 更に言うと、フェイ側の世界には一切アルカナムが存在しないということですが、アルカナム技術の特異性、異質性を考えると、実在のこの技術が後々何かの理由で喪失するよりも、無かったところに後付けで追加される方が順序としてシンプルです。そして、ストーム現象による時間移動は、未来への遡りというよりも、平行世界への転移ではないかという説が昨今強まっている。

 

 となると、フェイたちの世界こそがオリジナルで、あちらの世界で起こった何らかの事件により初めてのストームが発生し、それによって生成された平行世界の一つが、アルカニストたちがいるこちらの世界なのではないか。財団の同僚たちとの議論のなかで、そんな仮説がだんだん存在感を増していきます。

 

 こうした経過を、レディ・Zの一人称視点で、詳細に描写してください。

 

 

 

■「過去と未来の交錯」

 

 私が聖パブロフ財団の研究室で芳賀家の資料を手に取ったとき、最初はただの古文書解読作業だと思っていた。ローカルな文字に埋もれた歴史を紐解くのは骨が折れるが、トゥースフェアリーの熱意と、彼女とフェイの異常な繋がりを解明したいという私の責任感が、それを支えていた。だが、解析が進むにつれ、予想を遥かに超える発見が私を襲った。

 

 資料の一節に、500年以上前――室町時代とされる時期――の記録が残されていた。芳賀家の祖先が、ある奇妙な人物を助けた話だ。その男は背が高く、波打った茶髪で、異人めいた特徴を持っていた。たぶん西洋人だろう、と訳者の注釈で書かれている。彼は「不可思議な災害」に巻き込まれ、意識を取り戻したときには芳賀家の近くに倒れていたという。

 

 そして驚くべきことに、彼は優れた治癒術を操る神秘学家だった。さらに、その災害をきっかけに転移術の才能を開花させていたらしい。彼に惹かれた芳賀家の女性が転移術の適性を見出され、やがて二人は結ばれ、芳賀家の血統に組み込まれたとある。

 

 

 

 この記録を読み終えた瞬間、私の背筋に冷たいものが走った。500年前のストーム被害者? 過去から現在への漂流物ではなく、未来から過去へと至りそこで存在し続けたモノの記録としては、これまで確認された中でも最も古い事例だ。資料価値は計り知れない。

 

 だが、それ以上に、私の頭に浮かんだのは別の直感だった。波打った茶髪の背の高い異人、治癒術の使い手……どこかで聞き覚えがある特徴だ。私は隣の机で資料を読み比べているトゥースフェアリーをちらりと見た。彼女だ。彼女自身ではないだろうが、彼女の関係者――親戚、祖先、あるいは子孫かもしれない。

 

 

 

 私は急いで同僚たちを呼び、会議室の中央の大卓に集めた。目の前には芳賀家の資料が広げられ、古語の解読メモが散乱している。「この男、トゥースフェアリーと繋がりがある可能性があるわ」と私が切り出すと、研究員の一人、ミスター・カールソンが眉を上げた。「まさか、彼女の係累が室町時代の日本に?」と彼が言う。私は頷き、「そうかもしれない。彼女の特徴と一致する部分が多すぎる。波打った茶髪、治癒術、そしてストームに巻き込まれた経緯。偶然にしては出来すぎてる」と答えた。

 

 議論が熱を帯びる中、私はもう一つの疑問を投げかけた。「でも、ここで考えなきゃいけないことがある。ミスター・フェイの世界には、アルカナムが存在しないって言うわよね?」

 

 カールソンが「確かに。彼の話じゃ、2025年のあちらの世界は完全に科学技術だけで成り立ってる」と補足した。私は深呼吸して、頭の中で整理した仮説を口にした。「アルカナムの技術って、喪失するよりも、後から追加される方が順序的に自然じゃないかしら。そしてストームによる時間移動が、未来への遡行じゃなくて、平行世界への転移だとすれば、話が変わってくる」

 

 部屋が一瞬静まり返った。隣にいた研究員のミス・エリザベスが、「つまり、ミスター・フェイの世界がオリジナルで、そちらでストームが発生した。その結果として、あちらの世界からすれば異質なアルカナム技術が蔓延する、私たちの世界が生まれたってことですか?」と呟いた。私は頷いた。「そうよ。彼の世界で何らかの事件が起きて、初めてストームが発生した。それが平行世界を生み出し、その一つがアルカニストのいる私たちの世界になったんじゃないかって」

 

 カールソンが目を細めて、「それで、芳賀家の異人は、フェイの世界からこちらに飛ばされた人物で、ストームをきっかけにして秘められた才能の転移術に目覚めた。おまけに彼は、トゥースフェアリーの関係者かもしれないってわけか」と要点をまとめた。

 

 頭がクラクラした。この仮説が正しければ、私たちがこれまで考えてきた世界の流れが根底から覆る。ストームは過去への移動ではなく、平行世界への橋渡しであるという説自体は以前からあった。しかし、その上私達の世界は本流ではなく、支流にすぎない可能性。そして、トゥースフェアリーとフェイの繋がりは、単なる偶然ではなく、歴史の糸で結ばれた必然なのかもしれない。

 

 私はトゥースフェアリーを呼び、彼女にこの話を伝えることにした。

 

 

 

 彼女は目を丸くして聞き入っていた。「私の身内が……フェイの世界からこちらの世界に来ていたかもしれないって?」と彼女が呟くと、私は慎重に言葉を選んだ。「可能性よ。まだ仮説の段階だけど、もしそうなら、あなたとフェイとの繋がりはもっと深いものになる。あなた達を繋ぐテレパスも、あなたが彼に会いたいと願う気持ちも、どこかで歴史が引き寄せてるのかもしれない」

 

 彼女の瞳が揺れ、またしても涙が滲んだ。「レディ・Z、それって……私が彼に会う運命だったってことかしら?」

 

 私は苦笑して、「運命なんて大げさな言い方が相応しいかはわからないけれど、少なくとも今となっては、あなたたちの出会いは偶然じゃないって思うわ」と答えた。彼女の表情が涙混じりの笑みを浮かべ、続いて決意のようなものが浮かんだ。「だったら、なおさら彼に会わなきゃ。財団の研究が進めば、その方法が見つかるかもしれないわね」

 

 私は彼女の肩を軽く叩き、「その通りよ。私も全力でサポートするから」と約束した。

 

 

 

 会議室を出た後、私は一人で窓辺に立ち、外の暗闇を見つめた。フェイたちの世界がオリジナルで、我々の世界がその分岐だとしたら、ストームの起源はいったいどこにあるのか? そして、トゥースフェアリーと彼とを繋ぐ鍵は、500年前のあの異人の足跡に隠されているのだ。

 

 この研究が進めば、トゥースフェアリーの願いが叶う日が来るかもしれない。そのために全力を尽くすことは……おそらく悪くない選択のはずだ。

 

 

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