武闘派小国の青年と完璧聖女の逆転劇 作:究極の闇に焼かれた男
(何故だ……どうして、聖女である筈のフィリアがこんな所に居るんだ!?)
エドワードは目の前にいる人物の姿に困惑を隠せずにいた。
数年前、短い間とはいえ共に同じ時間を過ごした人物であるフィリアの姿にエドワードは"何故"と言う言葉が脳内を埋めつくしていた。
「……本当に……本当にエド、なの……?」
エドワードが困惑していると、フィリアは僅かに目を見開きながら問い掛けてきた。
「……数年振りだな、フィリア。 まさか、こんな場所で再会するとは思わなかった。 まあ、積もる話や聞きたい事は有ると思うだろうが、一旦場所を移すぞ」
フィリアの言葉にエドワードはハッとした様子を見せると、なるべく冷静に受け答えながら手を差し伸べる。
そしてフィリアはエドワードの言葉に戸惑いつつも、エドワードから差し伸ばされた手を掴むのだった。
──────────
「──なるほど。 つまり、フィリアはジルトニアのボンクラ第二王子とアデナウアー夫妻が自分の預かり知らぬ所で勝手にパルナコルタへ多額の金と引き換えに取引されたと言うことか。 ……やれやれ、ジルトニアも堕ちるところまで堕ちていたとは嘆かわしいな」
場所は移りエドワードが仮拠点としているキャンプにて、フィリアはキャンプ内にある簡易椅子に腰掛けながらどうして馬車に乗っていたのかを答えると、それを聞いたエドワードは侮蔑を通り越して呆れた表情を浮かべながら呟く。
(他の国々からすれば歴代最高の聖女と謳われるフィリア程の逸材は喉から手が出るほど欲しい存在だ。 なのに第二王子とアデナウアー夫妻、敷いてはジルトニア王国の国民は馬鹿か阿呆しか居ないのか? まあ、良識的で尚且つ見識が豊富な国王が病に伏せてるし、第一王子も王位継承権争いに乗り気じゃない上に引きこもってるせいで第二王子が付け上がってる今のジルトニアに未来は無いのは言うまでもないか……それにしても、フィリアの存在の重大性を理解しているのが他国民である俺なのは如何なものだろうか?)
内心そう考えながらエドワードは対面に座るフィリアの表情を伺う。
フィリアの表情は喜怒哀楽を感じさせない無に近いものだったが、エドワードはフィリアの瞳を見て微かに悲しんでいるのが分かった。
(無理もないか。 少し前まで国の為に、家族に愛してる貰う為に必死に頑張り続けてきたのに婚約者から一方的な理由で婚約破棄された挙句、両親と共謀されて多額の金と引き換えに隣国へと売りとはされる羽目になったんだ。 それが辛くないわけが無い、フィリアだって聖女である前に普通の人間である事に変わりは無いんだ……さて、どうしたものか?)
フィリアの瞳から彼女の抱く悲しみを感じ取ったエドワードは腕を組みながらどうしたものかと考え込むと、フィリアが恐る恐るといった様子で顔を上げると口を開いた。
「エドは……」
「ん?」
「エドは……どうして此処にいるの?」
「俺が此処にいる理由か……まあ言えない程の内容じゃないから答えるけど、今の俺はフーガ王国で将を務めている」
「そうなの?」
「初めて会った時も話したと思うが、俺の家系は元々フーガ王国で将を務めているんだ。 そして俺も例に漏れずフーガ王国に仕える将としての教養を幼少の頃から学んでいたが、その話は一旦置いとくとして、俺が此処にいる理由は同盟国であるパルナコルタの国境で最近妙な連中が活動しているとの報告があって、その連中と国境付近で何をしているのか調べる為に来たんだ。 まあ、今になって思えばパルナコルタへと向かっていたフィリアの護送隊を襲った奴が件の一味だったのは間違いなさそうだが……」
「そう、なんだ……」
エドワードの言葉にフィリアは顔を俯かせる。
「それでだ……これからフィリアはどうするんだ?」
「え?」
「言い方は悪いが、既にフィリアは多額の金品と引き換えにジルトニアから追い出されたんだ。 戻るにしても戻れる可能性は極端に低いし、既に聖女の役目はフィリアの妹が任せられていると見ていい。 かといって大人しくパルナコルタへ行くのは普通に悔しく感じないか?」
「それは……でも、私は……」
「フィリア、君は今まで辛い事や苦しい事を沢山我慢するのを強いられて来たんだ。 だったら最後くらいは我儘を言っても誰にも文句を言う資格は無い。 それに俺と此処で会ったのも何かの縁だし、必要なら俺も手を貸すよ」
「エド……」
「それでも決められないって言うなら、俺から一つ提案なんだが──────フィリア、折角なら俺と一緒にフーガ王国に来ないか?」
「……え?」
エドワードから提案された内容にフィリアは思わず耳を疑うのだった。
──────────
エドワードとフィリアが会話しているのと同時刻、国境沿いにある山奥にある洞窟内にて薄汚れたローブを羽織った人物が黒い水晶玉を手に愉快気な笑みを浮かべていた。
「まさか邪魔者が入るとは思わなかった。 まあ良い、聖女の命が助かったとは言え、今回の騒動を受けてジルトニア王国とパルナコルタ王国の関係が悪くなるのは避けられない──さあ、これから最高で愉快な血で血を洗う戦争が起きるぞ」
そう言いながら、ローブを羽織った人物は独り笑みを浮かべ続けるのだった。
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