厄介強火ハピエン厨一族   作:ばぶ美

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今回、主人公死す!日輪刀スタンバイ!



第五話 夢展開、ですわ!

 

───悲しい。

 

 

そんな、夢を見ていた。

 

 

おぼつかない意識、思うように動かない体に、乾ききった喉。そんな中で、俺の目覚めにカナヲが涙を浮かべて喜んでいることは何となく分かった。頭の中を整理する。

 

脳裏に、あの夢の残滓を浮かべながら。

 

 

 

後藤さんが訪ねてきてからは、本当に慌ただしかった。でも俺はまだどこか夢見心地で、ずっと眠くて、俺のために泣いてくれる皆を気遣う余裕もなくて。ただ、みんなが無事かどうかか心配で。

 

「他のみんなは……大丈夫ですか……」

 

ゆっくりと言葉を紡げば、少しだけ空気が張りつめた気がした。まさか、と、鼓動が早くなる。

 

「───あぁ、全員生きてるよ」

「良かった……全員、無事で……」

「……あー……うん。そう、なんだが」

 

どこか歯切れが悪いまま、後藤さんは口を閉ざす。何かあったのか問い詰めようとした所で、天井から伊之助が降ってきた。

 

そして、他の皆の容態を教えてくれた。

 

「オレはお前よりも七日前に目覚めた!善吉はもう復帰したってよ!派手柱は、知らねぇけどここにはいねぇから多分大丈夫だろ!」

「善逸も、宇隨さんも無事か……伊之助も元気いっぱいで、すごいな……」

 

良かった、良かった。全員無事で───?それならなんで、後藤さんは口を噤み、カナヲ達は悲しい顔をしているのだろうか。

 

そういえば、あと一人。誰か、いたような───

 

 

「───伊之助。あの人は……?団円さんは、大丈夫なんだよな……?」

 

元気いっぱいな伊之助が、ぴたりと動きを止めた。

 

いつものように突然現れ、助太刀に入ってくれたあの人。記憶の中の彼女が大きな怪我をしていた様子はなかったはずだ。毒も禰豆子の炎で消したのを、確かに覚えている。

 

俺が意識を失う寸前にだって、よく頑張ったって、らしくもない言葉をかけてくれていた。だから俺達も安心して、力が抜けて、それで。

 

 

 

「伊之助……?後藤さん、皆も……団円さんは……」

「……っ〜〜あぁ!どうせ知ることだ!」

 

目元だけでわかった。後藤さんが、怒りとか、悲しみとか、やるせなさを感じていることは。それは、つまり。

 

「泥柱様は、生きてる。生きては、な。これは嘘じゃない」

「生きては、いる」

 

含みを持たせた言い方だった。

 

「……遊郭でも、あの人はほぼ無傷だったよ。多少切り傷はあったけど、ピンピンしてた。俺をお前達のところまで誘導してくれたのもあの人だったし」

「それじゃあ、何が……」

 

アオイさん達のすすり泣きが、嗚咽に変わった。

 

「黄色い頭のやつが目覚めて、三日くらいだったか。お前と猪頭がまだ生死を彷徨ってた時、泥柱様は上弦と会敵したんだよ」

 

 

 

 

 

「そいつは上弦の弐。数年前、花柱様に深手を追わせ、泥柱様が仕留めきれなかった因縁の相手だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私に触れない限り、私の認識阻害が解かれることはない。例外は、定期的に「儀式」をしている白菊さんだけだ。

 

「ん〜、終わった終わった」

 

認識阻害は常にある程度発動しているが、完全に気配を遮断しているわけではない。私が意識を失っている時と、自らの意思で能力を使用している時。この二つの場合においてのみ、たとえ極至近距離にいたとしても、誰一人として私の存在を捉えることはできない。

 

「悩める信者の多い事だ」

 

 

童磨の屋敷に侵入して、もう三時間ほどになる。

 

 

夜明けが近づいてきた。速さも持久力もない私の強みは、この能力と瞬間的な爆発力。

 

遊郭で見つけた童磨の信者、それに原典のおかげで、情報戦は私の勝ち。室内、闇討ち、得意分野。それでも、私は人で奴は鬼。

 

この機を逃せば次はないなんて、分かりきっている。

 

 

 

ただ、この日輪刀で、あの首を落とせばいい。

 

 

 

刀を振り上げ、その刀身が首に触れた瞬間───

 

 

 

「やぁ、君か」

 

 

 

体の芯が凍るような冷気が、辺り一面に広がった。

 

距離を取り、息を潜める。理想の計画は崩れた。ここからは何百と用意した計画を読み込んでは切り捨てる、間違うことの出来ない選択の連続である。

 

「ん〜、君のことはよく覚えていないけど、その不思議な剣筋は覚えていたよ。あの時も思っていたけど、君はやはり普通の鬼狩りじゃない!そうなんだろう?」

 

見当違いの方向に話しかけ続ける童磨に、また切りかかろうとしたその時。

 

 

「───そういう子と戦うのは二度目だ。あの味も、よぉく覚えているとも」

 

 

童磨の鉄扇が、私の腹を掠めた。投げつけられたわけではない、あの手に鉄扇は握られていて、その目は私を確かに捉えて───

 

「見つけた」

 

氷柱が耳と脇腹を貫いた。急いで鉄扇から離れたにも関わらず、あの一瞬でこの攻撃。幸い、四肢はやられていないし、致命傷も避けられた。が、だからといって反撃の隙も見当たらない。

 

 

童磨の血鬼術は氷を操る力だけだったはずだ。何故、あの瞬間彼の鉄扇は巨大化し、私の腹を掠めたのか。お喋りな彼の口から、その答えはすぐに聞くことができた。

 

「この前はこっちの方を見せなかったから、驚いただろう?俺も、この力を得た時は随分と驚いたんだぜ」

 

彼の手に握られた鉄扇が、消えたと思えば、先程よりもやや大きくなって現れる。

 

「面白いよなぁ!君みたいな不思議な力を持った子を食べたら、使えるようになっていた。便利な力だ」

 

またしても肥大化した鉄扇を、天井に張り付いて避ける。

 

 

なんということか。

 

 

私の一族は、次代の育成に重きを置いていた。私という終着点まで、その血を絶やさぬように。子が育てば鬼殺は引退する。その歴史に、鬼に食べられたものなんて一人だっていなかったはずだ。父からそんな話は聞いたことがない。

 

しかし、その話が本当だとしたら。

 

 

「おぉ、またいなくなった!君の奇術も随分と面白い!この力を得てから、ずっと君みたいな子を探していたんだ」

 

 

私が今、こいつに食われたら。

 

 

「その力、俺におくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肺が凍らないように体温を高め続けて、いつ来るか分からない鉄扇を避けるために動き続けて、意図せず痣の条件が整ったようだった。

 

うなじがチリチリと熱を発している。

 

なんとも私らしい、地味なところに現れたものだ。

 

 

右足首はさっき潰された。

腕も脚も腹も鉄扇でボロボロ。

いくら体温を上げても呼吸は苦しいし。

左耳はとうにちぎれて。

 

 

それでも私は、鬼殺隊の柱で、団円一族の正統な後継者。

 

相手が何百年も生きた鬼だからなんだというのだ。私だって刀を握って二十余年、この力と共に育って二十五年。一族の執念皆合わせたら、童磨よりは幾年も上だ。

 

私は壮絶な人生なんて歩んでない。

ただ『鬼滅の刃』に全てを捧げてきた。

誰かを真似て過ごした一生。

きっと漫画一冊にも満たない人生。

 

 

 

 

刀を床に刺す。私の血が染み込んでいるから、身体を離れても認識されることはない。

 

死に場所を選ぶ予定なんてなかったが、ここでだけは死ねない。

 

童磨にこの力を渡すわけにはいかない。

 

 

 

小刀を童磨に投げつけた。

 

その一瞬、僅かな隙が生まれる。

 

 

そこをね

 

 

「残念!自分から居場所をバラすなんて、頭が弱いなぁ。大丈夫、君の力は俺がもっと上手く使ってあげるから───」

 

 

 

 

体温のない手が、私の首に。

 

 

 

 

触れられたら、この能力は何の意味もない。弱くて惨めな人間と、強くて愉快な鬼が見つめ合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───この時を待っていた。首に刀が届く距離。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まってからずっと、刀身同士を思い切り打ち合わせて続けてやっと赤く染った───二本の赫刀で、童磨の首を左右から斬りつける。

 

二十年もあったのだ。刀だけは両利きだ。

 

何度も練習した、刀が一番切れやすくなる角度で。自分の首の守りなんていらない。

 

 

 

 

終わりは随分、呆気なかった。

 

 

 

 

 

 

壁を蹴破り頭と胴を日光に晒す。童磨の頭は一言も発さなかった。そしてそのまま、影も残さず消えてしまった。

 

 

見上げた青空に、白菊さん。

 

 

 

きれい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───弱ってる時にする話じゃねぇから、皆隠そうとしてたんだよ」

「団円さんが……そんな……」

 

一ヶ月半意識が目覚めていない上に、未だ容態は安定していない。俺が寝て、夢なんか見ている間に、あの人が。

 

「でも、生きてるだけでも凄いことだって分かるだろ?音柱様とお前達が命を懸けて倒した上弦を、あの人は一人で倒してみせたんだ。そんなすごい人が、こんな所で死ぬわけない」

 

後藤さんの力強い言葉に、皆が頷いていた。

 

口うるさくて、意地悪で、偉そうで、意味不明で───でも、付き合えば付き合うほど、きっと良い人なのだろうと思ってしまう。

 

多分本当は、優しい匂いのする人だ。

 

「お前もどっちかって言ったら間違いなく凄いやつだよ。だからたくさん寝て、早く元気になってくれよ」

「……はい」

 

後藤さんの優しい眼差しが、一気に眠気を呼んだ。団円さんは心配だけれど、まずは俺が元気にならなくては。あの人が目覚めた時に、元気な姿を見せてやりたい。

 

きっとあの人はきっと、嫌味を言って、偉そうにふんぞり返って、それで、少しだけ微笑んでくれるだろうから。

 

 

そうして俺は蝶屋敷で、たくさん眠り、たくさん食べ、回復に努めた。でも。

 

俺が布団から出られるようになっても、あの人は目を覚まさなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

任務から帰る度に、着替えて、清潔にして、そして───幸代の元へ向かう。管と包帯に塗れた彼女が息をしているか、確かめないと眠りにつけない。

 

 

幸代が蝶屋敷に運び込まれた時、既に息はなかった。

 

 

土色の肌、至る所から滴る赤色、錆色の瞳は何も捉えず───一目見て分かった、これはもう助からないと。それでも処置を止められなかったのは、それが私の大切な人だったからだ。結局、幸代の命を繋いだのは私ではなく駆けつけてきた幸継くんだったけれど。

 

幸継くんが何かを注射し、幸代の呼吸が戻ってから───よく、覚えていない。

 

血まみれのぐったりとした幸代のことは忘れたくても忘れられないのに、必死に処置をしていたあの時間は思い出せないのだ。ただ手が震えて、怖くて、必死に感情を制御していた気がする。

 

私ができることを全てやり尽くしても、幸代は目を覚ましてくれなかった。一ヶ月以上たった今日も、眠ったまま。

 

 

もう起きてこなかったら、どうしよう。

 

 

幸代もこんな気持ちだったのだろうか。私が幸代の前に出て、何も出来ずに死にかけた時。私が余計なことをしたから幸代が私を避けてるんだって思っていたけれど、同時に間違ったことはしていないとも思っていた。

 

幸代がこんな思いをしていたなんて、知らなかったのだ。

 

 

 

「……幸代、ねえ。起きて」

 

 

 

私まだ、あなたと仲直りできてない。

 

 

 

 

「───カナエさん」

「……白菊?ごめんなさい、起こしてしまったかしら」

 

幸代が眠り続けてから、ずっとそばに居る白菊。目を閉じていたからてっきり眠っているかと思ったのに、とても優しい声で名前を呼ばれた。

 

「いいえ。私も落ち着かなくて。カナエさんと同じね」

 

私が知っている鴉の中で、一番美しいのが白菊だ。優しくて、穏やかで、幸代の相棒に相応しい存在だと思う。

 

「幸代さんの容態が少しでも変わったら、私がカナエさんを呼びに行きます。だから今晩はもうお休みになって。幸代さんも、目覚めた時貴方が真っ黒な隈を抱えてたら、きっと驚くでしょうから」

「───そうね。幸代は優しいから、心配かけちゃうわね」

 

白菊は、幸代が目覚めることを信じているのだ。不思議な二人だと思う。よく目立つ白菊と、目を逸らせば消えてしまうような幸代。

 

幸代が私を避けている間も、白菊を見かけると安心した。彼女を追いかけて見れば、眩しそうに空を見上げほほ笑む幸代が必ず居たから。

 

 

「……私は幸代さんのそばにいることしかできないから。カナエさん、どうか、どうかよろしくお願いします」

「───えぇ。絶対に」

 

少しだけ妬いてしまう。私が白菊みたいに青空で一際輝く存在だったら、幸代は私を見つめてくれるのだろうか。

 

 

蝶屋敷の蝶のように、夜空を舞う蝶だったら。

 

 

ねえ幸代。早く起きて。その瞳に、どうか私を映して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……熱、やっと下がったのに。まだ、寝てるんですか」

 

声をかけても、返事なんて帰ってくるわけもない。白菊さんが片目を開き、まるで微笑みかけるように羽を揺らすだけだ。

 

「これから私は、貴女が担当していた任務の後始末に行きますよ。遊郭に潜入しながらだなんて、抱え込みすぎるからこうして見逃しが起こるんです」

 

私がどんなに避けても突然目の前に現れて、意地悪に笑って、からかってきたくせに。

 

「何か、応えたらどうなんですか」

 

微かな呼吸音さえ愛おしくなるなんて、思いもしなかった。

 

 

 

面倒な人、嫌味な人、嫌いな人。

 

 

 

姉さんの仇をとってしまった。私が、私がしたかったことを。分かっていた。私では、あの鬼に勝てなかった。

 

実際そうだろう。この人が、ここまで傷を負っている。私が何人束になっても、勝ち目はなかった。

 

自らを毒にする薬なんて、この人には必要なかった。私が、私こそが、そうしてでも奴に挑むべきだった。

 

馬鹿みたい。こんなことで、涙を流すなんて。

 

私がこの人を理解できたことなんてなかった。それなのに、あの意味不明な発言を、勝手に解釈して、分かった気になって、この人を避けて。それで別れを目の前にしたら辛くて涙を流すなんて、とんだ笑い話だ。

 

 

答えを教えてほしい。私の感情の制御を奪ったのだから、責任をとってほしい。まだ幼かった私に優しくして、こんな感情を抱かせたのはあなただ。

 

 

 

そのために、私は私のできることを。

 

「絶対に、死なせてあげませんから。あなたの口で、全てを説明してください」

「えぇ、その言葉、私が責任をもって幸代さんに伝えますとも」

 

驚いた。返事があるとは思っていなかったから。団円さんとは正反対で、その口ぶりには信頼を覚える。

 

「しのぶさん、幸代さんを諦めないでいてくれてありがとうございます。彼女、意地悪だったでしょう?」

「……白菊さんが謝ることではないですよ。でも……そうですね。あなたのご主人に、どうか言い聞かせてやってください」

 

そろそろ出立しないと。白菊さんに目配せをし、部屋を出た。すぐに終わらせて、また治療に専念したいから。

 

 

 

 

 

 

 

人が訪れる度に、薄く目を開き、翼を揺らす。

 

 

「幸代、君は強いな。俺が倒せなかった上弦の参の上を、こうして倒してしまうなんて」

「そういえば、結局稽古でも君には勝てなかった。何年前だろうか……懐かしい、胸が温かくなるような思い出だ」

「……幸代、君は強い。信じている、どうか、どうか」

 

 

 

 

「幸代さんが、死ぬわけない!!だって、強くて、かっこよくて、僕たちの神様みたいな人なんだ!死ぬわけ……ない、よね……?」

「当たり前だろ!俺たちが上弦の壱を倒したら、ご褒美をくれるって約束したんだ!だから……」

「……そうだよ。幸代さんは嘘なんてつかないから。僕たちが強くなって鬼を倒せば、また褒めてくれる。強く、強くならなくちゃ」

「無一郎───あぁ。俺たち、強くなろう」

 

 

 

 

「……おい、これ生きてるんだよな?」

「天元様、縁起でもないこと言わないでください!」

「いや、でも。こいつがこんなに静かにしてるのなんて見たことねぇよ。地味だけど派手に煩い奴だぜ、こいつは」

「確かに……幸代さん、お会いした時はいつもたくさんお話してくれました。優しくて、私好きです」

「遊郭でも、アタシらを守ってくれたしね」

「おい、団円。お前うちの嫁さん達と仲良くしてたんだから、責任とって泣かせるんじゃねぇ。早く起きて、またド派手に騒いでみせろよ。遊郭での礼もできてないんだからな」

 

 

 

 

「おい、二つ結びの、お前だよ」

「……え、わ、私でしょうか」

「アァ。これ、見舞い品だ。傷みそうだったら、お前らで処分しろォ」

「これ……ありがとう、ございます」

「フン。大事な時期に、情けねェ奴」

 

 

 

 

「行きたかったところというのは、ここか」

「うんっ。今日行ったお店も、幸代さんがおすすめしてくれたの!幸代さんも好きって言ってたお団子の匂いで、起きてくれたらいいなって」

「(匂いの薄い団子で……?それで起きるのは甘露寺くらいじゃないか……?)そうか」

「あ、でもずっとこのままだと乾燥しちゃうかしら!アオイちゃん達に伝えてくるわね!待っててね伊黒さん!」

「あぁ」

 

「……」

 

「……いつも俺を甘露寺の件でからかってきたのに、随分と情ない姿だな。」

「……祝言に呼べと言っていたのは冗談か?俺は嘘つきが嫌いだ」

「甘露寺を悲しませるやつもな」

 

「お待たせー!幸代さん、起きた?」

「いや」

「……そっ、か……私、まだ幸代さんと話したいことも行きたいところもたくさんあるの」

「……」

「……ううん!幸代さんなら大丈夫!私よりもうーんと強い人だもん!ねぇ、伊黒さんもそう思うでしょう?」

「あぁ。きっと」

 

 

 

「……失礼した」

「あら、冨岡くん?治療でもしてたの?」

「カナエ様!いえ……団円様の……」

「あぁ……そう。幸代は、本当に愛されているわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たくさんの人が、あなたに会いに来ましたよ。幸代さんは、それを分かっているのかしら。

 

同族から忌み嫌われ、情けなくも野犬に襲われていた私を救い出してくれた優しいあなた。

呪いだと思っていたこの白色を、綺麗だと言ってくれた愛しいあなた。

なぜ生きているのか分からなかった私に、役割をくれたあなた。

 

あなたは思い知るべきです。自分がどれだけ愛されているのか。自分を軽んじることがどれほど人を傷つけるのか。

 

起きたら、お説教ですとも。

 

 

 

 

 

炭治郎が復帰して、あれよこれよと刀鍛冶の里へ旅立って、数日。未だ蝶屋敷は、どこか張り詰めた空気で満たされている。任務から帰ったことを師範としのぶ姉さんに報告に行けば、二人とも優しく微笑んでくれるが、頭の中があの人でいっぱいだろうということは明らかだった。

 

団円幸代さん。

 

師範の友人で、しのぶ姉さんとも仲が良かった。私は一切返事をできなかったのに、たくさん話しかけてくれた人。よくうちの子になるか聞いてきて、私が銅貨を使おうとしたら、バツが悪そうに冗談だと言ってきていた。それと、よく、頭を撫でてくれた。昔の話だけれど。

 

たぶん、幸代さんのことは、好きな方なんだと思う。

 

音柱様みたいに乱暴しないし、あの五月蝿さはどこか心地が良かったから。みんなそう思っている。みんな、なんとなくあの人のことが好きなのだ。

 

以前は炭治郎の病室にも持っていっていた花も、今は彼女の部屋にしか運んでいない。早く元気になって、綺麗なお花だと思ってくれたら、と想像しながら病室の扉を開いた。

 

弱々しく翼をばたつかせ、今にも消えてしまいそうな泣き声を上げる白菊。

 

彼女の目線の先には、眉を顰め小さく瞬きをする幸代さんがいた。

 

 

 

「し───」

 

 

 

 

 

「師範っ!!しのぶ姉さーん!!さ、幸代さんが───っ!」

 

あの隠の人に教えてもらった大きな声の出し方を、私は思いの外早く実践することになった。

 





生きたまま吸収するために舐めプしていたら、首を斬られた件。童磨は恋を知らぬまま地獄に落ちていきました。可哀想に。

胡蝶姉妹の因縁なしで童磨を倒せるわけがないため、主人公はずっと童磨ソロ討伐を目論んでいました。なんならここさえ乗り切れば後は原典(原作)の知識を持つ誰でも攻略できるのではと考えており、父や一族の鬼殺隊士に遺言も託しています。シスコンの弟にだけ秘密にしていたため、幸継くんは絶望しながら注射器と薬を手に走っていました。

やっと柱が出てきたと思ったら夢小説すぎるセリフばかりで申し訳ないです。岩柱がいないのは、柱同士として一番付き合いが長く信頼関係があり見舞うまでもないと考えているため、あと死にかけの前で念仏唱えさせるわけにはいかなかったためです。庇う庇われるではなく、唯一背中を預けられると考えている相手が悲鳴嶼さんです。でも本命は鎹鴉なので、安心してください。

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