自分の考えた能力で本当に戦うことになった話 作:今でも雲は綿あめで出来ているって信じてる
学校の帰り、家の近くの公園で意味もなく黄昏ていたら空からノートが振って来た。
意味が分からないって?俺も意味が分からない。唐突に振って来たからな。
しかも、ノートの表紙には『これに能力を書けば本当に使えるようになる』と書かれていた。
まったく馬鹿馬鹿しい。
………。
「よし!」
我ながら良い能力になった!
え?さっきまで馬鹿馬鹿しいとか言ってなかったかだって?
いや、だってほら…暇だったし?こんなノート出鱈目だと分かってますけどこれを落とした奴の思惑に乗るのも一興的な?別に全然信じてねぇけど、それを踏まえて全力で遊ぶのも大人の嗜み的な?
俺が心の中でそう言い訳してるとノートが光った。
正確にはノートの表紙の裏が光った。そんで文字が浮き上がった。
凄い液晶入ってる?
内容はこうだ。
『どうも上位者です。
能力確認したよ~ん。
ちゃんとデメリットも書いてるね。えらい!
このバランスなら実装してもいいかな~。
それじゃあ、君には他のノート所持者と戦ってもらいます。
あ、安心して別に倒されても死なないし、倒しても死なないから。
ただ、能力と能力を持っていた時の記憶が消えるだけ。
僕って優しい!
さぁ、戦え矮小な人間よ!我を楽しませるのだ。
ワ~ハッハッハ
あ、因みに最後に残った人にはそのまま能力プレゼント!
30日以内に複数人残ってた場合はそいつらは死にます!
更に自ら命を絶ったり、態と負けたりしたら死ぬから、そういうことで夜露死苦!』
文字は数分で消え、代わりにここら一体の地図に変わった。更に地図の中心、公園の中に一つ青いアイコンが出ている。触れてみると俺の名前が表示された。
グー〇ルマップみたいなもんか。
だけど、なんでマップ機能なんて実装されてるんだ?そう思っていると地図に俺を示す青いアイコンとは別の黄色いアイコンが表示される。試しに触ってみると、そのアイコンが黄色から赤に変わり、ノートの表紙の裏に『戦闘意思確認・バトルフィールド展開』という文字と共にアラートが鳴り響く。
このノートほんとにどんな仕組みになってるんだ?
けれど異変はそれだけでは終わらない。
地図が消え代わりに大きいマイクアイコンと斜線の入った小さいマイクアイコンが出たかと思うとノートから声がした。
「この俺に勝負を仕掛けるとはいい度胸だ!」
先程の『戦闘意思確認』と言う文字、それにノートから聞こえた声の主の発言では俺が勝負を仕掛けたことになっている。つまり、黄色いアイコンは他のノート保持者でそれをタッチする行為は戦闘の合図ということなのだろう。
「いいか!俺の能力は遠距離系能力、その名も三原色の矢と書いてレイ〇・ボウ!!」
「いやそれハン〇ーハンターのパクリじゃねぇか!!」
思わず、マイクのミュートを切ってツッコミを入れる。
いや確かに能力を書けば本当になる使えるようになるノートかも知れないけど、既存の能力は止めろよ上位者!
「気持ちは分かるがちょっと待ってくれ!最後まで説明させてくれないか?」
「…手短にな」
「ありがとう!俺の能力はレイ〇・ボウ!!しかし即座に出せるのは藍、赤、緑の三原色のみ!それ以外の矢を使いたい場合は矢を混ぜ合わせる必要がある!例えば青なら緑と藍。黄色であれば赤と緑!混ぜ合わせる際に生まれた七種類以外の色はスカでなんの能力も宿らない。能力はそれぞれ赤色は火、藍色は水中でも勢いが減衰しない、緑色は探知、橙色は最も速い、青色は飛距離が最も長い、紫色は意識の鈍化と痺れによる敵の拘束!黄色は閃光!」
めっちゃ早口で言われた。
まぁでも、基本はハン○ーハンターのレイ〇・ボウ。制約で混ぜる手間を増やしたことで威力を上げてるとかだろ。原作に出てこなかった色は自分で考えてはいるのは評価できるが所詮借り物の能力、俺が考えた最強の能力が負ける筈ない。
さて、地図で相手の居場所を探るか。
そう安易に考えていた俺の思考が止まる。
…これ、戦闘中は相手の姿映らないですやん。
不味い芋られてるだけで負ける可能性がある。
焦っている俺に向かって案の定青色の矢が飛んでくる。
それを俺は自身の能力であるサンドバック君で受ける。というかサンドバック君はオートガードなので勝手に出てきて守ってくれた。
サンドバック君は見た目青色のサンドバックに羽が生えており、目と口はデフォルメされた可愛らしいもの、更に
「やめて!痛いよぉ!!」
ダメージを受ける際に萌え声でダメージボイスを叫んでくれるのだ。
因みにサンドバック君には攻撃性能はない。それも相まって罪悪感から手を緩めてしまうことだろう。
まぁ、今回の相手には聞こえていないだろうけど…。
取り敢えず、サンドバック君を盾にしながら、前進だ。
そうして、時に建物の影に隠れ、時にサンドバック君を盾にすることで順調に矢の飛んでくるビルへと距離を縮めていった。
だが、距離が近づくにつれて敵の猛攻も勢いを増す。最初は青色の矢だけだったのが、赤色、橙色、紫色と数を増やしていく。代わりに青色は飛んでこなくなったが、それが戦況を変える鍵になるかと言われればそんなことはない。
「痛いよぉ!!なんでこんな酷いことが出来るのぉ!」
それとサンドバック君の悲鳴に俺が精神的ダメージを受けてるんだが…。
そんな中この状況を変えるために向こうがアクションを取ってきた。
ノートが光、ボイスチャット機能が使用される。
「どうやら、君の能力は守りに特化しているらしい!ならば!こちらも切り札を切らせて貰おうか!先ほど能力を説明した時に混ぜ合わせる際に生まれた七種類以外の色はスカでなんの能力も宿らない、と言ったがそれはそれ以外の色…能力が存在しないわけじゃない!」
「…なに?」
「赤、藍、緑、黄、橙、青、紫、この七色を混ぜ合わせることによって生み出される虹色の矢!それこそ俺の最大火力!受けてみろ!!!」
そう言うが早いか俺はとんでもない強風に煽られ空を舞っていた。
恐らく攻撃事態はサンドバック君が防いでくれたが、攻撃の余波で吹き飛ばされたのだろう。間違いなく最速最強の矢だ。
俺は無様に地面に叩きつけられ、暫く痛みにのたうち回る。まさか俺の能力にこんな弱点があるなんて思わなかった。
こんな状態じゃ戦いどころじゃない。後は倒されるだけ、そう思っていたのだが不思議と痛みは引いて行く。能力を貰ったことで生身の強度も上がったのだろうか?
とはいえ、サンドバック君はそろそろ限界そうだ。
早めに距離を詰めないと…。幸い先ほどの攻撃で向こうもこちらを見失ったようで緑色の矢を四方八方に出鱈目に撃ってこちらの場所を特定しようとしている。
兎に角ビルまで全速力で走る。
ビルまでついてしまえばこんな一方的な狙撃は出来ない。
というか、初めからそうすれば良かった。
まぁ、いい、急げ!
俺は運よく見つかることなく、ビル内部まで辿り着いた。
そして、非常階段でビルを駆けのぼる。
最悪、非常階段での待ち伏せも想定していたのだが、どうやら向こうにそのつもりはないらしい。
俺はサンドバック君がいるのをいいことに一切隠れることなく探索を進める。
下手に時間を与えた方が危ない気がする。
そして、遂に俺は18階で奴の姿を見つけた。
正確には曲がり角で奴の弓が見えたのだが同じこと!
全速力で駆ける。
「見つけたぞ!」
接近して思い切り蹴りを放つ。弓が弓なりに飛んでいく。
弓だけがだ。
そこには弓と緑の矢しか置いていなかったのだ。
緑は探知。不味い!
そう思うよりも早く俺目掛けて矢が飛んで来た。
ボイスチャットが起動する。
「俺の能力はハ〇ターハンターをレイ〇・ボウをモチーフにしている。当然弓が無くても指で矢を射れるのさ!」
うるさい。神経を逆撫でしてくる奴だ。いや、落ち着け。状況を整理しよう。
矢が飛んでくるのは良い。だが、一体奴はどうやって移動した?
持ち前の身体能力で?いやチート過ぎだろ。そんなん勝てる訳がない。
ただ上位者は俺の能力を見て、このバランスなら実装しても良いといっていた。つまり相手の能力もバランス調整されている筈。
なにか、ある筈だ。
能力の絡繰りが。
今までの戦いで可笑しな点は無かったか?ビルで待ち伏せしなかったのは…移動法があるなら可笑しくない。
その後も普通に攻撃しているし…。
その前は?緑の矢をあれだけ撃って見つからないことがあるのか…。まぁこれに関しては詳細な能力を知らないからなんとも言えないな?
他は無いか?
…………そういえばさっき俺が罠に嵌った際になんで虹色の矢を使わなかった?態々緑色の矢を置いておく程の周到な作戦。なら、虹色の矢で確実に倒した方がいい筈。
そうできなかったのか?
ならなんで?いや、なんでなんて遠回りな考え方をする必要はない。
俺はミュートを解除する。
「さっきお前は切り札を切らせて貰おうと言っていたが、どうやらまだ矢を隠し持っていたらしいな。いや正確には虹色の矢には強力な矢と言う側面と転移能力の二つの能力があるのか?そりゃあ放出系なら欲しくなるよな?更に言えば虹色の矢にはインターバル若しくは同時に二本以上作っておくことが出来る矢とそうではない矢が存在する。違うか?」
「…ふふっ。半分正解と言っておこう。
先ず虹色の矢に関しては作成方法が二種類ある。一つ目は手元で混ぜ合わせる方法。二つ目は着弾先、若しくは飛翔中に混ぜ合わせる方法。二つ目の場合は矢同士の距離が近くないと出来ないが、代わりに使用者が矢の場所へと移動できる転移能力が備わる。この場合は矢のエネルギーを使って転移しているから攻撃性能はないがな。
そして、同時に二本以上作っておくことが出来る矢とそうでない矢が存在する、という問いに関してはYESでありNOだ。三原色に関しては何本でも作っておける。そして合成矢に関しては4種類の合成矢の内二種類は二本以上作れないが、その二種類は厳密には決まっていない。例えば黄色と青色を二本以上作っていた場合は紫色と橙色の矢は二本以上作れない。逆もまた然りだ。
それと最後に一つ。切り札は先に見せるな。見せるなら更に奥の手を持て、だ。」
「いや、その台詞言うなら植物系の能力にしろよ」
「…蔵〇の能力って完成され過ぎてて妄想の余地がないんだよ」
「確かに」
兎に角、敵の手の内は割れた。ならばこちらも切り札を切らせて貰おうか。
「色々教えて貰ったからな。お礼に俺も手の内を明かそう。
俺の能力はサンドバック君。俺を敵の攻撃から守ってくれる。ただし、攻撃性能はない。
一度姿を現してから30分以上攻撃がこなければ消え、再度召喚するには一日のインターバルを必要とする。
また、一定以上攻撃を受けた場合も消える。
ただし、サンドバック君は攻撃を受けている際二つの作業を行っている。
一つは敵の攻撃の解析
二つ目はエネルギーの吸収。
そして、一定以上攻撃を受けたサンドバック君は吸収したエネルギーと解析した情報から消える前に一発逆転且つ一回限りの秘密兵器を残してくれる。」
俺がそこまで言い終えるとサンドバック君は破裂し、中から無骨な錆びた大盾が出てくる。
「さて、自分の能力に自信があるのなら射ってこい。虹色の矢を。
怖いのならそんなリスクを負わなくて良いがな?」
「…良いだろう。受けて立つ」
俺は大盾を構える。
そして、次の瞬間衝撃に襲われる。盾が割れる音がする。破片が俺の背後へと飛んでいく。
けれど、サンドバック君が肩代わりしてくれた時ほどの衝撃ではない。それに割れたのは表面だけだ。盾の中から鏡が顔を出す。
鏡は矢を跳ね返し、射手の下へと導く。
ドンッ
遠くで凄まじい爆音が鳴る。
「ば、かな」
ノートからそんな声が聞こえた。
「だが、これが現実だ」
「矢を、跳ね返す、鏡、だと?」
何か勘違いしているようなので訂正する。
「そんなものある訳ないだろ?鏡は光を反射するもんだ」
「なら、なんで?」
「お前は言ったな。赤と緑を合わせれば黄色になると。だがな、絵の具において赤と緑を合わせても黄色にはなりはしない。その組み合わせは光でのみ再現可能なんだよ」
「そ、そんな、理由で跳ね返し、たのか?いくらなんでもこじつけ、だろ?」
本当にこいつは勘違いをしているらしい。俺は苦笑いを浮かべてその質問に答える。
「おいおい知らないのか?中二病能力勝負なんて屁理屈の捏ね合いだ。
…それで、記憶を失う前に言いたいことはあるか?」
「…なら、最後に聞きたい。
ポッ〇ルは優秀か?」
「え?あ、ああ優秀だろ。どう考えても」
「そう、か良かった。」
そして名も知らぬ敵は完全に意識を失った。
というか、え?アイツなんだったの?ポッ〇ルの厄介ファンボ?
補足
バトルフィールドは現実世界を写し取った世界です。そのため、弓使いや主人公がビルに不法侵入したり、街中で派手に戦っても大丈夫です。