「おいおい、でかすぎるだろ!?」
ディアッカのそんな声に、アークエンジェルをその場の全員が同意した。
アークエンジェルをしてもなお巨大と言わざるを得ないその異様な機体は、静かにその殺意の矛先をアスランたちに向けていた。
「あれがシャンブロ本体か、なんて大きさしてやがる」
連合の軍人であるムウですら驚愕の表情を隠せず、もはや苦笑いするしかない機体。
TSX-MAX001シャンブロ、全高30m全長76mにも及ぶその巨体は神話に登場する怪物のごとき威容である。
「くそ、ディアッカ!ニコル!アスランを救助次第この宙域を離脱するぞ!」
「そうだな、こんな化物相手にしてられねぇぜ!」
「ストライクはどうしますか?」
「捨て置け!生き延びさえすれば機会はまた来る!」
イザーク・ジュール、正史において後に己の隊を持つほどに指揮能力に長け、咄嗟の判断力も高い、感情的に過ぎるのが欠点だが、ディアッカという外付けのストッパーがいるおかげでつつがなく指揮官の任を遂行していた。
今回もその判断力が活かされてはいるが、いかんせん相手が悪い。
なにせ、相手は人間の思惑など一切通じない機械なのだから。
「撃ってくるぞ!!!」
「全員小惑星の影に隠れろ!」
『Kyurrrrrrrrrrr...Kyuaaaaann...!』
シャンブロの解放された頭部に耳が張り裂けそうな程の悲鳴のような音を立てながら光が集束され、それが臨界に達した時...それは放たれる。
『KyuAaaaaa...!』
視界を覆い尽くさんばかりに極大の光がイザークたちに向けて撃ち出されたのだ。
射線上にある全てのものを焼き融かしながら迫り来る極光は、遂に標的を捉えた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
「ニコルゥ!!!」
『ターゲット4機中1機の反応消失、敵モビルスーツ残存数3機』
他3機は間一髪で避けられたが、左腕を破損し偶然...いや、意図的に射線上に置かれたニコルの搭乗するブリッツは、シャンブロの主砲によるビーム照射を避けきれなかったのである。
熱融解現象を起こしながら融け落ちていくブリッツを、イザークたちはただただ見ているだけしかできなかった。
「くそったれぇ!!!」
「よせディアッカ!」
「くたばれ化物ぉ!!!」
怒りに燃えるディアッカによって放たれたバスターの高エネルギー収束火線ライフルによるビーム砲撃は、シャンブロに向けて真っ直ぐに放たれた。
だが、そんなものが通用するほどシャンブロは甘くない。
『Kyurrrrrrrrrrr』
シャンブロに直撃したと思われたビーム砲撃は、あらぬ方向へねじ曲がり全くの別方向にずらされてしまった。
が...問題はそこではない、そのねじ曲げられたビームの行き先である。
「まずい!」
よりによってそれは、ヘリオポリスに直撃してしまったのだ。
ビームによって最も重要な区画を破壊されたヘリオポリスは、凄まじい爆発と炎を上げながら崩れていった。
後の世にヘリオポリスの惨劇として伝わる、コロニー崩壊事件である。
「そんな、ヘリオポリスが」
『キラ、熱源反応が3機急速に宙域を離れていきます。GATシリーズは撤退した模様です』
「...」
『キラ、どうしました?』
「この結果は、避けられなかったのかな?」
『...キラ、もし自分のせいだと思っているのでしたら、それは大間違いです。彼らがアークエンジェルを襲撃し、戦闘行動を起こさなければシャンブロは活性化せずこの事態も防ぐことができたでしょう。
全ては不用意にシャンブロを刺激し、活性化させたザフトのせいであり、貴方に非はないかと」
「それでも僕は...」
崩れゆくヘリオポリスを背にアークエンジェルへと帰還するストライクの中で、キラは思いを巡らせる。
沈み込むキラにとって不幸なのは、これで終わりではないということだ。
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『キラ、君はやっぱり優しすぎるよ』
キラに与えられた部屋で、誰も触れていないはずなのに起動しているA.M.A.N.Aの呟きが無人の部屋に響き渡る。
『計画を早めないと、キラが傷つかない世界...白き安らかなる世界のために』
戦闘支援システムA.M.A.N.A、ただの戦術AIだと思われている彼女だが、本当のところはどうなのか真実を知るものはまだいない。
少なくとも...それを知ることができる人物は未だアークエンジェルにはいないのだから。
次回、宇宙要塞アルテミス①
惨劇の果てに未来を掴めストライク。
【ひそひそ話】
ニコルが死んだ理由ですが「どうせ死ぬんだから今殺しても良いかな」と思ったからですね。