キラの完成から数日、研究所はとても慌ただしくなり始めていた。
別部門のトップであるアウラ・マハ・ハイバルがユーレンのもとを訪れたのだ。
おそらく想像はつくだろうが一応説明しておこう。
激しく揉めた。
元々思想の違いから仲が悪かった2人だが、ユーレンがよりによってアウラの研究を侮辱するような発言をしたがために、彼女を完全に怒らせてしまっていた。
このままではまずいなと思ったので、僕は研究所の外の廊下で彼女に話しかけたのだ。
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「ユーレンの奴め、わらわの研究を馬鹿にしおって!絶対に許さぬぞ!!!」
廊下に出てすぐ完全にキレている彼女を見つけた。
「申し訳ありませんLady.アウラ」
「ん?そなたは確かユーレンの」
良かった...ギリギリ会話が成立しそうな状態だ。
「先ほどはユーレンがとんでもないご無礼を、本来であれば互いの研究に関する進捗報告と意見交換を行う予定だったのですが、彼のあのような発言の後では流石にお二人がお話するのは難しいと思いましたので、私のほうから研究進捗をご報告いたします」
「ふむ、あやつの娘にしては礼儀正しいの、良い...申してみよ」
今アウラが僕のことをユーレンの娘と言ったが、前回話した通り僕はキラを完成させるまでに大量に生まれた失敗作の1人に過ぎない。
だが、ユーレンは何故かその失敗作である僕に執着して処分しようしなかった。
何を思ったか、僕にヒビキの姓まで与えて娘として扱ったのだ。
僕はそれを研究所の中だけでの扱いだと思っていたのだが、どうやらユーレンは外でも僕のことを娘として周囲に話したらしく、今では研究所の内外問わず僕はユーレンの娘として知られている。
本当に吐き気がする。
「まずこちらからのご報告ですが、ユーレンがとうとう完全なスーパーコーディネイターを完成させました」
「ほう?ようやくか」
よし、興味を持ってくれた。
「かなり難航しましたが、今回の成功により無事プロジェクトを完遂できそうです」
「ふむ、こちらからも進捗を聞かせよう、わらわのプロジェクト『アコード計画』は最終段階に入っておる。すでに何人かは生まれて教育段階に入っておる」
おそらくこの時点でラクス・クラインは誕生しているはず、それを話さないということは...やはり彼女は相当な隠し球だったようだ。
「お互いの進捗報告も終わりましたし、どうでしょう?少し世間話でもしませんか?」
「世間話とな?まぁ良いじゃろう、ユーレンのやつをからかう話の種が見つかるかもしれぬしな」
この会話の後、どうやら僕はアウラに気に入られてしまったらしく、彼女が研究所に訪問する度やたら可愛いがられるようになった。
ユーレンはその度に苦虫を噛み潰したような顔や今にも血の涙を流しそうな顔をしていたが、正直非常に愉快な光景を見させてもらった。
本当に良かった...SEEDの劇場版であるFREEDOMの事件が起こったきっかけは、ユーレン・ヒビキがアウラ・マハ・ハイバルの研究に対して侮辱にも近い否定的な意見を言ったことによる2人の仲違いが原因だ。
今回僕が介入したことにより、依然として仲は悪いままではあるが共に研究について意見交換をする程度にはましになっている。
いずれ世界に羽ばたくキラやカガリたちに負債は遺したくないからね。
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【Sideアウラ】
アマナ・ヒビキ、弱冠5歳という幼さでありながら、その類い稀なる頭脳によりユーレンの助手を勤める天才児。
本人は失敗作などと言っておるが、あれのどこが失敗作なものか。
「しかし、あの様子じゃとやはりまだ知らぬようじゃのぅ、ユーレンめ...本当に趣味の悪いことをするものじゃ、死んだ娘と同じ姿で新しい娘を作るなど」
じゃがまぁ...無理もないかの。
ユーレンの死んだ娘はナチュラルであったが、とても優秀な子じゃった。
しかし、あの忌々しいS2インフルエンザによって命を奪われてしまった。
それからユーレンは狂ったように完璧かつ完全なコーディネイターを作ることに躍起になっておった。
そしてその実験の最中、奴はとうとう禁忌に手を出してしまった。
「遺伝子操作の際に、死んだ娘として限りなく近い遺伝子構造を組み込み、さらにそこへ無理矢理コーディネイターとしての遺伝子構造を組み込んだことで、あの子...アマナが産まれたと奴は言っておったな」
もう少し素直になれば良いものを、おかげであの子は己という存在に全く価値を見出だしておらんではないか。
「あの子がアコードであれば、オルフェの将来の妻として考えなくもなかったのじゃがのう」
ふむ、妻は無理でも何とかあの子をわらわの手元に置く方法はないものかのう?
【ひそひそ話】
一歩間違えたらオルフェの嫁さんが無表情僕っ娘お姉ちゃん系ヒロインになるところだった。
ちなみに主人公がこのまま大きくなった場合、将来的にキラとカガリをめちゃくちゃ可愛がる無表情なのに弟と妹にだけ甘々系お姉ちゃんと化します。