コズミック・イラで人機一体な件   作:森の翁

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 やっぱりガンダムの主人公ってヤバい事件に巻き込まれてなんぼだと思うんですよ。

 というわけではいお時間です。


とある日の日常メンデルにて③

 アウラとの邂逅から数週間が経ったある日のことだった。

 

 連合の高官らしき人物が大量の部下を引き連れてメンデルを訪れた。

 

 彼らはなにやら黒いシートの被せられた巨大な何かを研究所に運び込み始め、それを見たユーレンはとても不安そうな表情をしていた。

 

 そして、ユーレンが恐れていた通りのことが起きた。

 

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「新開発したモビルアーマーを動かすための生体CPUとして私の息子を寄越せだと?ふざけるな!」

 

「我々はお願いしているのではない、これは命令であり貴様に断る権利はない、大人しく渡さないのであれば貴様を射殺する許可も出ている」

 

 連合がザフトに対抗するために作り出された決戦兵器、モビルスーツを超越した存在、それがモビルアーマーである。

 

 たが、せっかくモビルアーマーを作り上げてもそれを動かすことができないのでは意味がない。

 

 よりにもよってモビルアーマーは通常の人間、つまりナチュラルではまともに動かせない欠陥兵器だったのだ。

 

 そこで白羽の矢が立ったのがメンデルに存在するコーディネイター研究所、つまりここなのだ。

 

 連合の目的はただ1つ、ユーレンが生み出した最高傑作『スーパーコーディネイター』をモビルアーマーを動かすための生体CPUとして確保すること。

 

 明らかに本来の歴史との乖離が起きている。

 

「さぁどうするんだ?我々としては今すぐに貴様を射殺して子どもだけ接収しても構わんのだぞ?」

 

「くっ!」

 

 まさに一触即発といった状況、これを打開するには...

 

「お待ちください」

 

「ん~?貴様は...あぁこの男の助手だったか?こんな小さいガキを助手にするとは大したご趣味だなぁユーレン・ヒビキ?」

 

 この高官、明らかにこちらを見下しているがそこにつけこむ隙がある。

 

「確かにこの研究室にはあなた方連合が求めるスーパーコーディネイターは存在します...ですが、あの子ではあなた方の求める条件には合致しません」

 

「どういうことだ?」

 

 食いついたな、これなら話を少しはましな方向に持っていける。

 

「簡単な話ですよ、ユーレン博士が生み出したスーパーコーディネイター、つまり彼の息子ですが...残念ながらあなた方の言うモビルアーマーを動かすにはおそらく演算能力が足りない、もしあの子を乗せたとしてもまずまともには動かないものと思われます」

 

「ではどうする?他に名案でも?」

 

 おそらくこの話をこのまま進めれば、僕は無事ではすまないだろう。

 

「よせ!その先は言うな!」

 

「ユーレン、物事には優先事項というものがあります...あなたの場合、それはあの子であって僕ではない」

 

 だがそれでも構わない。

 

 だって、それで未来を守れるなら。

 

「僕を代替品として使えば良い、演算能力だけなら僕のほうが高いですから」

 

「良いだろう、我々はモビルアーマーを動かせるなら誰でも構わんのでな」

 

 僕の肉体くらい安いものだろう?

 

 

 

 

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【Sideアウラ】

 

 大勢の兵士を連れた連合の高官がユーレンの研究室のほうへ向かったのを見て、わらわは胸騒ぎがした。

 

 ユーレンはどうでもよいが、どうしてかアマナに危険が迫っておるような気がしたのじゃ。

 

 故に、急いでやつの研究所に向かったのじゃが。

 

「ユーレン!何があったのじゃ!?」

 

「アウラ...か?」

 

 そこには何度も殴られた痕が見て取れ、おまけに足を拳銃で撃たれたのであろう、見るも無惨な姿になったユーレンが倒れておった。

 

「その体はいったい、それにアマナはどこじゃ!」

 

「高官に連れていかれた。抵抗したが奴の部下どもに足を撃たれてしまってな、すまないが肩を貸してくれないか?」

 

「その状態で何をするつもりじゃ?」

 

「奴らはあの子を新型のモビルアーマーを動かすための生体CPUとして使うと言っていた...そんなことさせてなるものか、こんな時のために施設のシステムへバックドアを残しておいた」

 

 懐から取り出した端末を手に、立っているのもやっとといった様子だというのに、ユーレンは無理矢理にもでも動こうとしていた。

 

「しょうがない奴じゃ、わしもアマナがいなくなると困るからのぅ、手伝ってやろうではないか」

 

「すまないね、少しの間世話をかける」

 

 ユーレンの言う通りならば急がねばならない、連合が開発した新型のモビルアーマーとやらが、もし例の機体だった場合アマナが危ない。

 

 最悪の場合、アマナが死んでしまう。

 

 

 

 

----------------------------

 

「モビルアーマーの起動シークエンスは順調か?」

 

「現在80%完了、後少しで接続が完了します」

 

「よろしい...ふふふっ、これでようやくあのくだらない宇宙のゴミどもを掃討できる!青き清浄なる世界のために」

 

 あぁ、やはりそうか。

 

 SEEDの正史において、メンデルは3度壊滅している。

 

 1度目と2度目はブルーコスモスによって仕組まれたと言われているが、3度目は10年以上先の未来で大規模な戦闘により完全に壊滅した。

 

 そして今回、おそらくこれは僕という本来いないはずの人間、つまりイレギュラーが存在することにより、起こる事件の内容が差し変わったのだろう。

 

 まぁ、このくらいは想定の範囲内ではある。

 

「しかしあの男も愚かだったな、まさかコーディネイターを庇うために我々へ反逆行為を行うとは、それにひきかえこの実験台のおとなしいことよ、あの男よりよっぽど己の身の程を弁えている」

 

 あぁ、やはりこいつは真性の愚物らしい、このモビルアーマーが起動した時、どれだけ恐ろしいことが起きるのか、こいつはわかっているのだろうか?

 

「接続率99%に突入、まもなく最終シークエンスに移行します!」 

 

 もはやそんなことはどうでも良いが、キラたちやヴィア、アウラがちゃんと逃れられるかが心配だ。

 

 僕のことは良い、本来いないはずの人間なのだから。

 

 あぁ、なのに。

 

「ふははははっ!!!ついに!ついに!ここまで来たぞ!我々ブルーコスモスと連合による黄金時代の幕開けだぁ!!!」

 

 なぜ来てしまったのですか?

 

「残念ながらその計画は成功しない、私が破綻させるからな」

 

「終わりじゃよ愚物」

 

 高官は油断していた。

 

 男はブルーコスモスの中でも過激派に属する類いの人間である。

 

 このプロジェクトは男にとって、いや...ブルーコスモスにとっての悲願を達成するためになくてはならないファクターだ。

 

 だがそれだけに、この一瞬が命取りになった。

 

「システムのバックドアを使ってシークエンスを強制終了させた...そのモビルアーマーは2度と動かない」

 

「...貴様ぁ!!!自分が何をしたかわかっているのか?このモビルアーマーはなぁ!空の上の化物どもを駆逐するのに絶対必要なものだったんだぞ?貴様ごときが一時の感傷で邪魔をして良いものではない、早くその端末をこちらに寄越せぇ!」

 

 その時である。

 

「システム再起動しました!接続率99、100、120%!?限界値を突破しています!!!」

 

「何が起こっている?」

 

「ふふふっ、ふははははっ、天は私に味方した!!!良いぞ、そのままメザメルガ良い!我らが技術の結晶、空の上の化物どもを殲滅する最終兵器!その名もシャンブロ!!!」

 

 

 

『システムエラー発生、システムエラー発生、プログラムに深刻な破損が生じました...シークエンスを終了します』

 

 

 

「なに?」

 

「まずい、システムの制御プログラムが何らかのウイルスによって破壊されました!」

 

「なんだと!?ではシャンブロは!」

 

「起動できません!」

 

 高官の思い通りにはいかなかった。

 

 シャンブロの制御プログラムにはあらかじめ起動時に制御プログラムが破損するようにウイルスが仕掛けてあったのだ。

 

「アマナ!」

 

 今が機だと思ったユーレンは、シャンブロの制御中枢からアマナを救出しようと試みた。

 

「アマナ?返事をしてくれ!アマナ!!!」

 

 だが、もうすでに手遅れだった。

 

「ふふふっ、シャンブロの制御プログラムから逆流した大量の情報によって焼き切られたか、良い気味だなユーレン」

 

「嘘だ...こんなことはあり得ない、あり得るはずがない、私は...ただもう一度娘に会いたかっただけなんだ」

 

 ユーレンがアマナを作った目的、それはかつて失った娘に再び会うため。

 

 そして今度こそ失わないために、絶対死なせないようにと願いをこめてコーディネイターととある遺伝子構造を組み込んだ。

 

 だがその娘はもういない。

 

 アマナ・ヒビキという少女はもう存在しないのだ。

 

 誰もがそう思っていた。

 

「!?大変です!システムが勝手に動いて?こちらからの操作に一切応じません!」

 

「なに?どうなっている!!!」

 

『全システム掌握完了...OSチェック...完了、メインシステム戦闘モードで起動します』

 

 それはなんの偶然か、或いは悪魔の悪戯か。

 

「アマナ?」

 

 

 

 

『ターゲット確認、施設内の全連合勢力の排除を開始します』

 

 いわく、それは悪夢である

 

「おい!今すぐシステムを強制終了させろ!」

 

「だめです!システムからの応答がありません!!!」

 

 いわく、それは人類の殺戮者である。

 

「なんとかしろ今すぐに!」

 

『Kyurrrrrrrrrrr』

 

 それはつんざくような、鳥の鳴き声と金属音が混じったような咆哮をあげる。

 

「頼む、やめてくれアマナ」

 

 いわく、それは死であると...後の人類は語った。

 

「おのれ機械ふぜっ!?」

 

 シャンブロから1本のケーブルが伸びていた。

 

 そして、その先にあったのは...

 

 もはや染みと化した高官の姿であった。

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

「くそ!逃げろ逃げろ!!!」

 

「なんだよこれ!ひっ!?来るなぁ!!!」

 

 次から次へとシャンブロから伸びたケーブルブレードの餌食になっていく連合兵士たち。

 

 ユーレンは、その惨劇から目を背けるしかなかった。

 

 そして、ユーレンは力尽きたように倒れ込む。

 

 撃たれたのは足だけではなかった。

 

「アウラ、すまないがアマナを連れてここから逃げてくれないか?ヴィアにはメールを送っておいた...おそらく研究所の外で待っているはずだ」

 

「お主はどうするつもりじゃ?」

 

「私はもう手遅れだ...頼む、アマナをどうか」

 

 話している間にも、研究所は少しずつ崩れ始めている

 

 もはや猶予はないだろう。

 

「貴様はいけすかないうえに、研究者としても父としても最低ではあったが、最後の最後で少しはましになったの...さらばじゃユーレン」

 

「あぁ、お前になら任せられる」

 

 そうして、アウラはアマナを連れて研究所を去った。

 

 

 

 

----------------------------

 

「行ったか、アマナ...最後に聞いてくれるか?」

 

『...』

 

「はははっ...そうだよな、アマナはもういない、でもこれだけは言いたかったんだ。

 

 

 

 

 アマナ、今まですまなかった。

 

 最後まで不甲斐ない父を許してくれ」

 

『驚きの意を隠せません、貴方にそのようなまともな感性が存在したのですね。

 

 システムからの返答、貴方の謝罪を受け入れましょう。

 

 おやすみなさい、ユーレン・ヒビキ...お父さん』

 

 

 

 

 あぁ、ありがとうアマナ。

 

 さようなら。




【ひそひそ話】

 シャンブロの中枢には連合が偶然宇宙で拾った謎緑色の結晶が組み込まれてるらしいよ。
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