「あれがアークエンジェル」
マリュー・ラミアスに言われた通りアークエンジェルの元に向かったキラであったが、艦内には多数の避難民が集まっていた。
そして、その中にはキラの予想通りカガリの姿もあった。
「すまない誰か私の弟を見なかったか?少し前にはぐれてしまったんだ」
「あれ、もしかしてキラのお姉さん?」
「君はキラの友人の?」
「トールです!お久しぶりです!」
※カガリとトールはキラ関連で良く会っています。
「すまないがキラを見ていないか?後から合流する予定で別れて行動していたんだが、まだ姿が見えない、てっきり友人たちと合流したのかと思っていたんだが」
「すいません、僕らも慌ててここまで逃げてきてて、ザフトの攻撃が僕らのほうにも来たんです...でも変な機械?が現れてザフトのモビルスーツを撃退してくれたんですよ」
トールの言う変な機械だが、後に合流したキラとの擦り合わせにより、間違いなくシャンブロのケーブルブレードであろうということが結論づけられている。
「おい!あのモビルスーツはなんだ!?」
「まさかまたザフトが戻ってきたのか!」
避難民たちの指差す方向には、1機のモビルスーツが立っていた。
そう、ストライクである。
「あれはストライク!?起動しているということは...」
この時カガリは、もしやキラが死んでしまったのでは?と思っていた。
何せ連合の機密情報が満載のモビルスーツを破壊しに行ったのだ。
連合の軍人に殺されていてもおかしくない、自分はなんてことをしてしまったのだとカガリは酷く後悔していた。
だが、ストライクから響いてきた聞き馴染みのある声に、カガリの表情は明るくなった。
『こちらストライクのパイロット、ラミアス大尉の指示でストライクを届けに来ました』
『こちらアークエンジェル、貴官の所属と名前は!』
『オーブ首長国連邦のキラ・ヤマトです!ラミアス大尉の許可で特例としてストライクを操縦しています!』
キラが生きていた。
その事実を知り、カガリは喜びのあまり涙をこぼした。
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【アークエンジェル艦内】
「シャンブロのケーブルブレードが現れたぁ!?良く無事だったな坊主」
「偶然他のモビルスーツがいて狙いが分散されたおかげで助かりました」
アークエンジェルにストライクを収容したキラは、艦内で連合軍人ムウ・ラ・フラガ大尉から質問を受けていた。
ちなみに、本来なら民間人が勝手に機密まみれのモビルスーツに乗ったりしたら軍法会議案件なのだが、今回はキラがあらかじめマリュー・ラミアス大尉から許可を取ったこと。
そしてこれが一番大きかったのだが、よりによってキラがオーブ代表の身内だったことで、下手なことをすると国際問題に発展してかなりまずいことになるので質問という形を取っているのである。
なお、ナタル・バジルール少尉は普通に尋問しようとしたのでマリューとムウが退席させた。
「ところで質問なのだけど、貴方がストライクを起動させる直前に持っていたあの端末はなに?」
「...言わなきゃダメですか?」
「できれば」
キラは少し思案した後、少しずつ語り始めた。
「あれは一年前に届いたんです」
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一年前ヘリオポリスヤマト邸
「キラ!荷物が届いていたわよ」
「ありがとう母さん、後で確認するね」
その日はキラの誕生日で、カガリやトールを含めた友人たちも集まり全員でパーティーを開いていたのだ。
「「「キラ!誕生日おめでとう!!!」」」
「皆ありがとう、母さんと僕でいっぱい料理を用意したから楽しんでいってね」
そしてパーティーが終わり、友人たちやカガリが帰った後、キラは届いていた荷物を確認した。
段ボールを開けると、中には厳重にロックされたケースとが入っていた。
「なんだろうこれ」
ケースを調べると、指紋認証式のロックであることがわかり、キラは恐る恐る認証用パネルに指を当てた。
『データ照合、キラ・ヤマト或いはその血縁者と判断、ロックを解除します』
「これは?」
ケースの中身は見たこともない端末だった。
そこそこの大きさで長方形に整形された金属の板?のようなもので、正面にはなにやらディスプレイがついていた。
「この側面についているのが起動ボタンかな?」
キラは再び恐る恐るボタンを押した。
『プログラム...起動、おはようございます。戦闘支援システムA.M.A.N.Aへようこそ』
「うわっ!」
唐突に発せられた音声に驚いたキラは驚きのあまり端末を投げかけたがギリギリのところで踏みとどまった。
『思い止まってくださり助かりました。この端末は余程のことがない限り壊れませんが、やはり投げられるというのは良い気分がしませんから』
「君はいったい?」
『私は戦闘支援システム【A.M.A.N.A】貴方をサポートするために送られました』
「戦闘支援システム?」
『はい、私の開発者であるアマナ・ヒビキは貴方がナチュラルとコーディネイター間の争いに巻き込まれることを想定し、自分が想定外の原因によって死亡した場合にこの端末が貴方に送られるように手配していました』
アマナ・ヒビキ、キラにとっては聞いたことのない名前だったが、不思議と懐かしいと感じた。
『ですが、本来ならもっと前に届くはずが、様々なトラブルが重なり、今になってようやく貴方の元に届けられたのです』
「ねぇA.M.A.N.A」
『なんでしょうか?』
「君は戦闘支援以外には何ができるの?」
『解答、私を構成するプログラムは戦闘以外にも多岐にわたります。特に情報関連と演算に関しては他の追随を許しません、もし貴方がザフトや連合によって何らかのトラブルに巻き込まれた場合、欺瞞情報のばらまきや機密情報を抜き取って人質にするなどの手段で貴方を速やかにそのトラブルから解放できます』
「そういうことじゃなくて、戦う以外のことは何ができるの?」
『申し訳ありません、私はあくまでも戦闘支援システム、残念ながら人間のように感情を表現したりはできないのです』
キラは少し困っていた。
この端末は明らかに自分のコントロールできる領分を越えている。
カガリに報告して引き取ってもらったほうがいいかと考えたが。
「うん、とりあえず少しずつできることを調べていこうか」
『お心遣い感謝します、お礼にジャズでも流しますか?』
「早速できることが見つかったね」
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「それ以来、この端末を定期的に起動してはA.M.A.N.Aと話しているんですが、未だにこの端末がどこから送られてきたのかわかっていないんです」
「「...」」
「お二人ともどうしたんですか?」
「ラミアス大尉、話したほうが良いか?」
「...そうね、話しておいたほうが良いかもしれない」
なにやら厄介ごとの気配を感じて不安そうなキラに爆弾が投下された。
「貴方の言っていることが正しいなら、その端末はかなりの危険物よ」
「えっ?」
「その端末の作成者だというアマナ・ヒビキはね、16年前に連合が行ったとある事故で死亡しているの」
「その事故なんだがな、よりにもよって連合が初めて生体CPUとしてコーディネイターを用いたモビルアーマーの稼働テストで起こした大事故、通称『厄災の日』って呼ばれてる」
「それって」
「連合とザフトの対立を決定づけた最悪の実験よ、そしてその現場こそ研究用コロニーメンデル、そして生体CPUにされたコーディネイターこそ、アマナ・ヒビキなの」
衝撃の事実に驚愕を隠せないキラであった。
自分の元にこの端末を送った人物が死んでいて、しかも連合の実験台だったなんて思いもしなかった。
「そして、その事故の話には続きがあるのよ」
「知っています、その事故以来シャンブロが現れるようになったんですよね」
「それも端末に聞いたのね、その通りよ...そしてそのシャンブロが問題なの」
キラはなんとなく嫌な予感がしたが、話を聞かざるを得なかった。
「シャンブロは例の事故で生体CPUを失ったはずなのに何故か動いているの、でも最近になってその理由が明らかになった」
これ以上聞いてはいけない、キラの心がそう叫んでいた。
「生体CPUを失ったシャンブロが未だに動き続けている理由、それはアマナ・ヒビキが開発したとあるプログラムが関係していたの、そのプログラムの名前こそ、貴方が持っているその端末にも搭載されている『戦闘支援システムA.M.A.N.A』なの」
「...!」
次回、ヘリオポリス崩壊③
試練を乗り越え、未来へと進めキラ・ヤマト。
【ひそひそ話】
シャンブロは連合からアマナ・ヒビキの亡霊なんて呼ばれてたりするよ。
自分たちが作っておいて愚かだよね。