絶対☆領域~もしもの御話集~ 【凍結】   作:-Msk-

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第一話はFate/Zeroです。
今、Fate/stay night Unlimited Blade Worksが絶賛放送中ですから、乗ってみました。





Fate/Zero

 やっほー、みんな。絶対領域LOVEで敵に会ったら逃げ一手の佐藤(さとう)(はじめ)だよ。

 

 一応人間として死んだ俺だったんだけど、なんの因果か知らないけど現世に召喚されたらしいんだ。ちなみに探索者(エクスウローラー)の格好でね。狐のお面をつけて、軍服みたいな外套を纏った状態だね。

 

 ここまではそれほど問題じゃない。面倒事に巻きこまれるってことが確定したくらいだね。あ、すごく問題だった。

 

 問題は俺をわざわざ召喚してくれた人間だ。

 

 俺の目の前に召喚したであろう人間がいるんだけど………死にかけてますね、はい。左半身が機能してないもん。ちなみになんでわかったかと言うと、俺の神器(セイクリッド・ギア)―――――桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)()()()()()()()からです。俺を中心とした半径5.040m―――――俺の絶対領域内に侵入した者の情報は手に入るからね。いやまぁ、発動してなくてもわかるね。左目は完全に光を失ってるし、動き全体が左半身をかばっているんだもん。

 

 それに加えてさらに大きい問題、いわゆる大問題ってやつがあるんだ。

 

 近くにいたスキンヘッドのおじいさんを思わず『魂ごと消滅しろ』って念じて跡形もなく、完全に消滅させちゃったんだ。

 

 理由? 気持ち悪すぎたからだよ。キチキチなんか鳴ってたし、もうアレだね。生理的に無理ってやつ。

 

 だから反射的に『魂ごと消滅しろ』って念じて消滅させちゃった。それを見た死にかけの人は目を見開いて驚いて動かなくなった。ショックってわけじゃなさそうだね。だって口元がニヤけてるもん。「ザマァw」みたいな感じに。

 

 とりあえず声でもかけてみますか。別に電子音じゃなくてもいいよね? この世界は俺がもともといた世界とは違うようだし。

 

 

「えーっと………そこのキモいジジイ魂ごと消滅させちゃったんだけど………まずかった?」

「い、いや………ありがたいくらいだよ。そうだ!! 桜ちゃん!!」

 

 

 急に思い出したかのように叫んだ死にかけの人。

 

 桜ちゃん―――――ちゃんってことは女の子なんだろうけど、どうかしたのかな? 俺がいる場所のちょうど真下に一つ気配はあるけど………その近くにはキモいジジイと同じ気配もあるし。

 

 

「その桜ちゃんって?」

「―――――そうだ!! おまえは僕のサーヴァントだろ!! 桜ちゃんを助け出してくれ!!」

「サーヴァントっていうのはわからないけど………地下に人間の気配がするんだけど、そう?」

「そうだ!! 急いでくれ!!」

 

 

 そんなに切羽詰まってるの? ていうかもしそうだとしたら既にアウトだと思うんだ。キモいジジイの気配が近くにもの凄い量あるんだもん。まぁどうにかするけど。

 

 

「りょーかい。ここにいてね。一〇秒で戻ってくるから」

「頼んだぞ!! ―――――って一〇秒?」

 

 

 死にかけの人の言葉を無視して行く。時間がないみたいだからね。

 

 俺は『邪魔するものを消滅』と念じて、床を消滅させていく。ちょうど半径5.040mの円状に床がくり抜かれていく。

 

 そのまま俺は重力に身を任せて落下していく。するとすぐにソコに到着した。ソコは蟲であふれていた。キモ過ぎるよ………

 

 ここに長い時間いると俺の精神衛生上良くないからさっさと桜ちゃんを回収しよう。

 

 桜ちゃんはすぐに見つかった。蟲がものすごい量たかってるけど問題ない。俺の絶対領域に少しでも、1μでも侵入した瞬間消滅していってるから。なんか桜ちゃんを渡したくないのかな? 俺が桜ちゃんに近づいていくと俺に迫ってきたんだけど。まぁ片っ端から消滅してますよ。

 

 桜ちゃんを抱き上げて状態を確認した。………純潔が………この年でそれはさすがに無い。いくらなんでも酷過ぎる。

 

 だから全部『今まで蟲にされたことの取り消し』と念じて元の、正常の、一般的な女の子の身体に戻した。

 

 純潔の再生っていうかその、ね? それと身体中にいた蟲の排除。加えて魔術的な刻印などエトセトラエトセトラの取り消しをした。

 

 今の桜ちゃんは、そこら辺にいる普通の女の子と変わらない状態になりました。っていうか戻りました。いや、戻しました。

 

 最終確認として、この部屋・建物内に蟲がいないのを確認して俺は死にかけの人がいるところまで戻る。今回はちゃんと階段を使うよ。まぁ本気で走ってるからほんの数秒で着くけどね。

 

 

「もしもし、この子が桜ちゃんであってる?」

「あ、あぁ!! でもなんで桜ちゃんからクソジジイの気配が―――――蟲が消えてるんだ?」

「それに関しては俺が全部取り消した。だから純潔は保たれてるし、記憶もいろいろとされる前にまで戻ってるよ」

「………本当かい?」

「本当だよ」

 

 

 気絶して俺に抱えられている桜ちゃんを見ながら言う。

 

 まぁ普通はできるわけないからね。確かに、暗示をかけたり純潔の象徴の再生は現代医療や魔術でもできる。でも取り消す―――――ということはできない。それは俺の生前いた世界でもそうだった。

 

 取り消しってことが重要なんだ。身体に負担を掛けないからね。記憶とかは消去したとしても魂が覚えてる。さすがに魂に手は出せないからね。それは人外も一緒だけど。多分聖書の神だったらできるんじゃないかな?

 

 魂に刻まれたものは消すことができないんだ。だから取り消す。事実を取り消したんだ。あれ? 同じことかな? まぁ全て何かされる前に戻ったって思ってくれればいいよ。 

 

 まぁ難しいことはこの辺にして、今確認しないといけないことを確認しようか。

 

 

「それで死にかけの人。なんで死んだはずの俺が呼び出されたの? 俺なんかに用があったの?」

「君は何も知らないのかい? 聖杯からある程度知識を受け取ってるはずなんだけど」

「うん、知らない」

「まず君のことから説明しようか。君は―――――」

 

 

 死にかけの人―――――間桐(まとう)雁夜(かりや)が言うには、俺は雁夜のサーヴァントとして『英霊の座』ってところから呼び出されたらしい。

 

 はいストップ。俺は『英霊の座』なんてところにいませんでしたよ。俺は天界・第四天、別名エデンの園に居たんだけど。

 

 俺が召喚された理由は、第四次聖杯戦争に参戦するためだったらしい。

 

 聖杯戦争っていうのは、万物の願いを叶える『聖杯』を奪い合う戦争らしい。聖杯を求める七人のマスターと、そのマスターと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を競うんだって。他の六組が排除された結果、最後に残った一組にのみ聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられるんだって。

 

 勝利のためにはマスターか、そのサーヴァントを倒さないといけないらしい。それかマスターの令呪を無効化して、 強制的にマスターとしての資格を失わせることが必要なんだって。 なお、サーヴァントを失ったマスターとマスターを失ったサーヴァントが契約を交わし、再び参戦する事も可能らしい。

 

 アカン………これほど俺に向いてない戦争はない。俺は敵に会ったらまず逃げる。逃げられなかったら逃げるために戦うってスタイルだからね。ツライわぁ………

 

 で、ここまでが()()()()()()らしい。

 

 この冬木の聖杯戦争のシステムを作り上げた御三家の本来の目的は、サーヴァントとして召喚した英霊の魂が座に戻る際に生じる孔を固定して、そこから世界の外へ出て『根源』に至る事なんだって。小聖杯は溜め込んだ七騎分をもって大穴を空けるためにあるんだと。

 

 その『根源』っていうのはいろいろあるんだけど………正直全部できますね。俺がいた世界ではできることばっかりだったね。

 

 七騎のサーヴァントは、セイバー、アーチャー、ランサー、アサシン、ライダー、キャスター、バーサーカーのことなんだって。

 

 ちなみに俺はバーサーカーだって。俺、狂戦士だって。

 

 

「俺、バーサーカーなんだ………」

「あ、あぁ………全然バーサーカーらしくないんだけどな。しいて言うならその狐の面くらいしか要素がないんだよな」

「ちなみに俺のパラメーターだっけ? それとクラス別能力とか保有スキルはどんな風になってるの?」

「そうだ………なんだこのデタラメなパラメーターとクラス別能力と保有スキルは!?」

 

 

 雁夜から知らされた俺のパラメーターとクラス別能力には俺も驚いた。ちなみにこんな感じだよ。ていうかよく噛まずに言えたね。

 

 パラメーター 

  筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:D 幸運:C 宝具:EX

 

 クラス別能力 

  狂化:E

 

 保有スキル 

  猫又の純愛:EX 妖狐の寵愛:EX 槍者の狂愛:EX 気:EX 狂化の制御:A+++ 

 

 なんて言っていいのかな………いろいろぶっ飛んでるね。特に保有スキルのところ。

 

 猫又の真愛とか妖狐の寵愛とか槍者の狂愛って………黒歌、九重ちゃん、結衣さんのことだよね? しかもそのスキルの効果がヤバイ。

 

 猫又の純愛:存在するありとあらゆる気を完璧に操作することができる。

 

 妖狐の寵愛:普通の人間と全く同じ気配・姿に変化することができる。

 

 槍者の狂愛:槍の扱いがランサーと同等、またはそれ以上になる。

 

 なんだよこのバグスキル。これで俺も勝つる!! マジで勝つる!! と思う。このスキルで逃げたりなんかしたら笑われそうだね。でも俺は逃げるけど。

 

 その代わりと言っちゃなんだけどさ、パラメーターが宝具以外ゴミだね。ほとんどC以下。いやそれでもスキルがEX以上ってデタラメだわ。

 

 それだけ愛されてたってことかな?

 

 

「俺ってかなり規格外?」

「当たり前だ!! 一番優秀と言われているセイバーですらこんなデタラメな性能じゃないぞ!! というかお前の真名は何だよ!!」

佐藤(さとう)(はじめ)です」

「日本人か!! しかも佐藤って日本で一番多い苗字じゃないか!!」

「俺、少し特殊な力を使える一般人ですから」

「なんでサーヴァントとして召喚されたんだよ!?」

「ごもっともです」

 

 

 いや、なんで俺が召喚されたんだろう。まったくもってわからない。俺を召喚しても何の得も―――――あったね。バグ性能って得が。

 

 そもそもなんで『英霊の座』にいない俺を召喚できたんだろうね。そこからおかしいでしょ。

 

 

「それで俺は何をすればいいの?」

「………僕が聖杯戦争に参加した理由は桜ちゃんを助け出すことだから目的は達成したんだ。でもこんな凄まじいサーヴァントがいるのに降りるのも勿体ないし………」

 

 

 考え込んでしまった雁夜。まぁしょうがないよね。俺でも悩むだろうし。

 

 バグ性能のサーヴァントを従えて死ぬ可能性があるけどなんでも願いが叶うであろう聖杯を求めるか。それともバグ性能のサーヴァントをさっさと手放して桜ちゃんと一緒に人生を歩むか。相当な難題ですな。ちなみに雁夜の身体にいる蟲も排除して、身体も健康な状態に戻したよ。容姿はそのまんまだけど。

 

 個人的にはさっさと降りてほしい。それで天界・第四天で静かに暮らしてたい。

 

 

「よし、決めたよ。―――――僕は聖杯戦争に参加する」

「デスヨネー………まぁいいよ。でも基本的にはこっちから仕掛けないからね」

「どうしてだい? さっさとそのバグ性能を使って他のサーヴァントを倒したほうが―――――そうか、桜ちゃんか」

「Exactly―――――その通りだよ。もし雁夜が大切にしてるって他のマスターにバレたら攫われる可能性だってあるからね」

 

 

 どうやらこの世界の魔術師もかなり残酷らしいからね。

 

 

「その雁夜というのは?」

「マスターなんて呼んだらサーヴァントだってバレるでしょ?」

「なるほど」

 

   

 俺自身はスキル『妖狐の寵愛』で普通の人間と気配・姿を同じにしてるから問題はない。問題は雁夜だね。

 

 雁夜は他の御三家にバレている可能性がある。まぁ身体を元に戻したから魔術師としての痕跡は無に等しいけど。でもどこから情報が漏れているからわからないからね。聖杯戦争の管理をしてる人間から情報が漏れてる可能性もあるし。

 

 

「それじゃあ少し仕掛けをしてくるから待ってて」

「仕掛け? そんなことをしたらバレるんじゃないか?」

「大丈夫。そこはバグ性能のバーサーカーの見せどころだよ」

 

 

 リビングからてくてく歩いて行って、玄関から建物の外に出る。

 

 建物の中に居て何となくわかってたけどさ、あらためてみると結構大きな家だったんだね。まぁ今は関係ないか。さっさと隠蔽結界を張ろう。

 

 建物だけじゃなくて敷地全体に結界を張る。敷地の端をゆっくり歩きながら『隠蔽結界』と念じて結界を張っていく。

 

 ちなみにこの隠蔽結界、この世界で魔力呼ばれているものとは違うもので張っているので探知されることはありませんし、ありえません。

 

 これが神器(セイクリッド・ギア)クオリティ。

 

 結界を張り終わったので、建物内に戻る。

 

 しかしまぁ面倒なことに巻きこまれたものだね。聖杯戦争だっけ? 前にアーサー王物語を読んだときに聖杯がでてきたけど何か関係あるのかな? まぁ無い可能性の方が高いけど。

 

 聖杯は願望を叶えてくれるらしいけど………さすがにそれは無いだろう。人の身でそこまでの魔術を使うことはまず無理でしょ? たとえできたとしても歪むよね。ものすごく歪む。

 

 と、そんなことを考えているうちにリビングに戻ってきた。

 

 

「雁夜、隠蔽結界は張り終わったよ。これからどうするの?」

「そうだね………まず君の宝具について教えてくれないか? EXの宝具っていうのがどれ程のものなのか知りたくてね」

 

 

 宝具………あ、神器(セイクリッド・ギア)か。それしか思い浮かばないし。

 

 

「俺の宝具はね、俺がいた世界では神器(セイクリッド・ギア)って呼ばれてるんだ」

「せいくりっど………ぎあ………」

「そう。神の器と書いて神器(セイクリッド・ギア)神器(セイクリッド・ギア)は簡単に言えば、聖書の神が作ったシステムで不思議な能力を所持者へ与えるものなんだ」

「聖書の神………」

 

 

 魔術師から見た神ってどういう存在なんだろう。イマイチわからないね。

 

 

「その神器(セイクリッド・ギア)の一つを持っているのが俺だね。名前は桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)

「それでお前の神器(セイクリッド・ギア)はどんな力があるんだ?」

「俺を中心とした半径5.040mを完全に支配する」

「………なるほど、EXの理由がわかったよ」

 

 

 簡単に神器(セイクリッド・ギア)についての説明をしたけどこの程度でいいよね。神滅具(ロンギヌス)とか禁手(バランス・ブレイカー)の説明をしたら雁夜が気絶しそうだしね。それに時間もかかるし。

 

 

「とりあえず今日はもう休もうよ。雁夜もまだ体力が回復してないんだし」

「そう、だな。そうしようか」

「あ、あとさ、俺のことはクラスがバレるまでランサーって呼んでね。クラスがバレたらバーサーカーなり(はじめ)なり呼んでいいから」

「わかった。じゃあ先に休ませてもらうよランサー」

「お疲れ雁夜。あ、桜ちゃんの方は任せてね」

「あぁ、まかせた。ランサーのことは信用しているから」

 

 

 信用してもらえるのはうれしいけど、過剰な期待はよしてもらいたい。俺は神器(セイクリッド・ギア)がなかったら何もできないし。まぁ逆に考えれば、神器(セイクリッド・ギア)さえあればある程度のことはできる。桜ちゃん一人守るくらいやってみせるさ。

 

 ソファで寝ている桜ちゃんを起こさないように抱き上げる。『ベット』と念じて、リビングの隅にベットを創造する。ベットのサイズはシングルとダブルの中間だね。

 

 桜ちゃんをベットに寝かせて、俺もベットに横になる。別にナニがあるわけじゃないからいいよね? それに相手はまだ小学生だぜ? 俺はロリコンじゃないから問題ない。

 

 ちなみに狐のお面と外套は外したし脱いだ。さすがに寝るときにつけてるのはツラいからね。

 

 ベットに入ってすぐに桜ちゃんが俺の腕をぎゅっと抱きしめた。ま、まぁ俺のオリハルコン製の理性なら問題ないけどね。問題ないさ………

 

 

 

†††

 

 

 

 目が覚めて、時間を確認すると朝の八時だった。

 

 桜ちゃんはいまだに俺の腕を抱きしめているので、動くわけにもいかない。ちょっとでも動くと―――――

 

 

「いか………ないで………」

 

 

 そう言うんだ。しかも目尻には涙が………

 

 離れられるわけがない。男は女の涙に弱いのさ―――――って誰かが言ってたような気がするけど、それは本当だったね。

 

 しょうがないから桜ちゃんが起きるまで身動きをとるのをやめようか、と思った時だった。

 

 

「ふぁぁぁ………あれ? ここ、どこ?」

 

 

 目をこすりながら寝ぼけ眼で呟く桜ちゃん。

 

 キョロキョロと周りを見回して、隣にいる俺を見つける。

 

 

「あ、あなたは………? あ、私を蟲から助けてくれた人………」

「まぁそうだね。ランサーって呼んでね」

「う、うん………ランサー」

 

 

 俺の腕を抱きしめる力が強くなった。

 

 でもなんで俺が助けたことを覚えているんだろう。記憶はいろいろとされる前まで戻ってるはずなのに。やぱり魂に刻まれてたのかな? まぁいっか。

 

 

「桜ちゃん起きた………の………かい………ランサー、お前何をしてるんだ?」

 

 

 もの凄いタイミングでリビングにやってきた雁夜。すごいね、ギャルゲの主人公並みのタイミングの良さだよ。

 

 

「桜ちゃんを一晩中警護してただけだけど?」

「僕には腕を抱きしめられていい思いをしているように見えるんだけど」

「やだ、雁夜さんってロリコン? おまわりさん、こっちです!!」

「違う!!」

 

 

 全力で拒否する雁夜。だけどそのせいでマジに見える。まぁ無いだろうけど。

 

 雁夜が来たことによって完全に目を覚ました桜ちゃんを連れて、建物の外にでる。なんとなくあの建物の中でご飯を食べるのは気が引けたんだよね。ほら、キモいジジイの蟲の件でさ。

 

 あの蟲がいた建物でご飯を食べるのはねぇ………

 

 桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)はなぜか常時発動されているので、『バーベキューセット』と念じて調理場を俺の絶対領域内に創造する。

 

 今日中には建物ごと立て直す。だから朝と昼のご飯が作れればいいからバーベキューセットで十分だよね?

 

 淡々と朝ごはんをつくる俺―――――と桜ちゃん。それを見てほっこりとしている雁夜。

 

 本当は俺一人で作ろうとしたんだけど、桜ちゃんに上目遣いで「て、手伝わせてください」って言われちゃってさ。いや、断れるとでも? 

 

 今日の朝ごはんはパンにした。ご飯を炊いてもいいんだけどさ、時間の関係でね。桜ちゃんには案にマーガリンを塗ってもらって、網の上で焼いてもらった。

 

 その間に俺は鉄板で目玉焼きを焼く。目玉焼きが焼きあがるのと同時にパンも焼きあがったので、パンに目玉焼きを乗せて完成させる。

 

 

「雁夜、簡単なものだけど口に入れといて」

「あ、あぁ………すまないね。しかし君は本当に英雄かい? 家事ができる英雄がいるとは思えないんだけど」

「いや、もともと英雄になった覚えなんてないんだけどね」

「………君の生前について詳しく聞く必要がありそうだね」

 

 

 よしてくれよ。あんまり過去のことは聞くもんじゃないよ。

 

 英雄の霊だから英霊か。安直だけどこれほど的確な名称はないね。そうだ、そうだよ。もともとおかしいんだよ。なんで『英霊の座』にいなかった俺が聖杯戦争にサーヴァントとして呼び出されたんだ? この時点でバグが生じてるんだよ。

 

 まぁ今はとりあえずご飯を食べますか。

 

 

「手を合わせて―――――」

「「「いただきます」」」

 

 

 もぐもぐと食べ進める桜ちゃん。たまに「にぱっ」と笑う。それがまた可愛いね。

 

 

 

†††

 

 

 

 朝ごはんの片づけを終わらせた俺は、建物の浄化をした。建て直すのもアリだなって思ったけど、さすがにそれは面倒すぎる。

 

 浄化を終えたら建物内に仕掛けを施していく。万が一この敷地内に敵が侵入した時のためのシェルター的なものだ。桜ちゃんをそこに入れて守る。これは絶対に必要なものだ。

 

 雁夜にも言われたんだけど、最優先は桜ちゃんだ。その次に雁夜。あくまで桜ちゃんを中心にする。

 

 そんなこんなをしているうちに日が暮れて辺りは真っ暗になってしまった。月明かりでから応じて辺りが見える程度だ。

 

 ちなみに雁夜は食品の買い出しに、桜ちゃんは庭にあるハンモックで眠っている。

 

 

「ランサー、帰ったよ」

「おかえり雁―――――」

 

 

 最後まで名前を呼ぶことはできなかった。

 

 この気配はサーヴァントだ。それも二機。気配が動き回っていることから考えるに、戦闘中だ。距離はそこまで遠くはないけど近いとも言えない微妙な距離だね。

 

 

「雁夜、なんかサーヴァントが殺り合っているみたいなんだけど」

「なんだって!? 近いのか?」

「近いとも遠いとも言えない微妙な場所だよ。ただ………」

「ただ?」

「殺せっていうなら一〇分以内で殺して戻ってくるよ」

 

 

 俺の一言に雁夜は悩み始めた。

 

 正直、ここからゲイ・ボルグを投げれば当たり一体巻きこむけど殲滅できる―――――かもしれない。ブリューナクならもっと可能性は上がる。地形が変わるけど。

 

 

「偵察だけしてきてくれないか? お前なら容姿、戦闘方法、宝具でどんな英雄なのかわかるかもしれないだろう?」

「まぁ雁夜がそう言うなら偵察だけしてくるよ」

 

 

 偵察だけの方が俺としてもありがたいね。やだよ自分から戦いを仕掛けるだなんて。正直、偵察も嫌だ。バレたら戦闘になる可能性が高いからね。まぁ逃げるけど。数十年磨いてきたこの逃げ足を存分に発揮しちゃうけど。

 

 建物の上に上り、さらにそこから跳躍して状況を確認する。

 

 気配がする方向には川があった。そしてそこにはコンテナが詰まれていて、ちょっとした迷路みたいになっていた。

 

 これなら偵察も不可能じゃないね。

 

 俺は探索者(エクスプローラー)の格好になる。そして『完全無欠のステレス』と念じる。俺の神器(セイクリッド・ギア)も日々進化してくれているおかげで、こんな風に大雑把に念じてもちゃんと効果を得られるようになった。

 

 それじゃあぱぱっといきますか。

 

 舗装された地面を走る。さすが『敏捷:A』だね。すさまじく速いよ。十秒以内には着いたね。ただ先客がいたようだ。

 

 一番高い位置に戦っている二機以外のサーヴァントがいた。あそこまで上る身の軽さから見るに、アサシンだと思う。

 

 まぁそれは置いておいて、戦っている二機を見やすい場所に移動しよう。コンテナの上を走って、二機の戦いが見やすい場所に移動する。

 

 いやぁ、それにしてもすさまじい戦いだね。

 

 金髪貧乳の女の子はセイバーだね。目には見えないけど、使っている武器は剣だ。そのセイバーの相手をしているのはランサーだね。紅の槍と黄の槍を扱っているからね。ただ気になることが一つある。

 

 右目の泣き黒子だ。

 

 やけに魔力が集中している。きっと何かあるね。

 

 そろそろ帰ろうかなって思った時だった。散々面倒事に巻きこまれた俺のセンサーがビンビン反応してる。面倒事がやってきたと!! 

 

 まず始めに舞い降りた面倒事はおっさんだった。「ぐはは」笑ってて豪快なおっさんだなって思った。征服王イスカンダルって名乗りながら登場した時には笑いかけた。まさか自分から名を教えてくれるとは思わなかったからね。

 

 征服王イスカンダルって言ってもわからない人のが多いと思う。でもアレキサンダー大王って言えばわかる人も増えるよね? 俺も詳しくはわからないけど、とりあえず王様ってことだよね。

 

 しばらくガヤガヤやってるなーって思ってたら次の面倒事が舞い降りてきた。

 

 黄金の粒子が空中に徐々に人の形になっていった。

 

 

「俺を差し置いて王を称する―――――」

 

 

 ここで笑いを堪えるのに必死になった。

 

 で、出たー!! 俺様系テンプレート王様!!

 

 このテンプレな王様の容姿はすごいよ。金髪紅目に黄金の鎧。成金もここまで行くと引くね。金、金、金とどこを見ても金だし。

 

 そしてまたガヤガヤと会話を始めた皆さん。でもそれもすぐに止まってしまった。

 

 テンプレな王様の背後に黄金の波紋が浮かび上がったんだ。そこから顔を出しているのは明らかに普通じゃない武器の皆さま。所詮、宝具ってやつだね。

 

 と、とりあえず雁夜に念話しよう。あ、そう言えばサーヴァントになったからかなんでか、念話ができるようになったんだよね。

 

 

(雁夜、なんかサーヴァントがキャスター以外全てが揃ったんだけどどうしよう)

(なんだって!? ていうことは君がバーサーカーってこともバレるね?)

(うん。だから俺のことはバーサーカーって呼んでいいから。―――――って今はそれどころじゃない!!)

(撤退―――――っていうのもいいんだけど………君の力がどのぐらい通用するのか確認してくれないか? そうすれば桜ちゃんを守る方法を考えやすいし)

 

 

 雁夜………そりゃないぜ。 

 

 桜ちゃんは俺の絶対領域内に入っていればどんなものからでも守りぬける。あ………俺の絶対領域内にいないと守れないのか。ずっと桜ちゃんと一緒っていうのは桜ちゃんが嫌がるだろうし………でも拒絶されたらそれはそれで複雑だなぁ………

 

 むーん、仕方ない。やったりますか。それにマスターの命令だし、サーヴァントの俺は逆らえないよね。

 

 まず『声音を電子音に』と念じる。これで声音を知られることは無くなった。そしてステルスを解こうとしたときだった。

 

 テンプレな王様が俺に向かって宝具を射出してきたんだ。

 

 ていうか何で俺の居場所がバレたの!? テンプレな王様限定の力!? やめてもらいたいわ本当に。

 

 俺は無言でグングニルを創造して射出された宝具を弾き飛ばす。それを見たテンプレな王様以外のサーヴァントが驚いたのは言わずもがな。

 

 

『なんで俺がいるってわかったのかな王様』

「ふん、雑種如きが王を欺けるわけがあるか」

『さすが王様だね』

 

 

 俺の返答に満足げに頷くテンプレな王様。

 

 俺はそれをスルーして、他のサーヴァントを見る。ふむふむ、どいつもこいつも容姿が日本人離れしてるね。ていうか外国人ですな。もしからして日本原産の英霊って俺だけ? 

 

 

「あの槍………凄まじい力を感じます」

 

 

 そうつぶやいたのはセイバー。

 

 そりゃそうですよ。なんて言ったってグングニルですからね。

 

 グングニルは北欧神話の主神オーディンが持つ槍だ。ドヴェルグの鍛冶、イーヴァルディの息子達によって作り出されて、オーディン、トール、フレイに品定めされた後オーディンへ渡されたんだ。

 

 この槍は決して的を射損なうことなくて、敵を貫いた後は自動的に持ち主の手元に戻る優れものなんだ。ついでに、この槍を向けた軍勢には必ず勝利をもたらすらしい。

 

 グングニルの穂先はしばしばルーン文字が記される場所の1つとされているんだって。柄はトネリコで作られているとされている。またある再話では、オーディンがミーミルの泉の水を飲んで知識を得た記念として、泉の上にまで伸びていたユグドラシルの枝を折ってグングニルを作ったともされている。

 

 と、まぁこの通り素晴らしいチート性能な槍なわけですたい。

 

 正直に言いますと、グングニル一本でテンプレな王様以外殺せる。テンプレな王様は多分無理だね。すごい量の宝具を持ってそうだし。

 

 そろそろ逃げるかなって思っていたんだけど………あらま大変。目の前にいるテンプレな王様が展開した黄金の波紋からかなりの量の宝具が顔をお出しになってるじゃないですか。

 

 

「どこまで凌ぎきれるか見せてみよ雑種!!」

 

 

 はっはっは………はぁ、かなりの暴君ですな。

 

 でもさ、ただ宝具を放出してくるだけなんだよ? べ、別に怖くないんだからねっ!! ………今のカットしといてくれる? よろしくね。

 

 さて、やったりますか。

 

 こっちには『槍者の狂愛』っていうチートスキルがあるんだ。射出されただけの宝具なんて敵じゃない。

 

 射出された宝具を片っ端から弾き飛ばしていく。上下左右にナナメナナメといって最後に一回転する。

 

 どうだ!!ってドヤ顔をしようとしたらまたまた宝具が射出されてきて驚いた。でも、一点集中って感じに放ってきたから助かったよ。

 

 だってグングニルを投擲すれば纏めてボンじゃん。だから俺はグングニルを投擲しました。

 

 ―――――ゴォォォォォ 

 

 すさまじい音を立てて、テンプレな王様に向かっていくグングニル。どうやら射線上にテンプレな王様がいたらしい。

 

 これはマズイねぇ………

 

 おこになっちゃう。テンプレな王様が、おこになっちゃうよ!! って思ってたんだけど、大丈夫だった。

 

 なんか撤退命令が出たらしくてさ、忌々しくなんか捨て台詞を吐き出しながら黄金の粒子になって消えて行っちゃった。よかったよかった。もしテンプレな王様がおこになったら大変だったよ。相手するのは面倒だしさ。

 

 あ、そうだ。さっきからこっちをじーっと監視してるサーヴァントがいたね。ソイツにグングニルを投擲してみて、性能を確かめてみようか。

 

 助走をしてから思いっきりのけぞってグングニルを投擲する。それを見ていたサーヴァントとそのマスターらしき人間が驚いていた。ふふふ、これがバグサーカークオリティよ!!

 

 サーヴァントを貫き殺した槍は俺の手元に戻ってきた。伝承通りのすばらしい性能ですね。もう俺、グングニル愛用家になちゃったうかも。

 

 

「のう、お主。我が配下に―――――」

『加わらないからねおっさん』

「―――――そうか。まぁ気が変わったらいつでも待ってるからな」

『俺の気が………変わるとでも?』

 

 

 まぁ桜ちゃんを交渉に引き出されたら気が変わるかもね。それはありえないけど。絶対にさせないけど。

 

 よし、とりあえず雁夜に連絡しよう。

 

 

(雁夜。アサシンであろうサーヴァントをぬっ殺したよ)

(本当かい?)

(まぁね。でもあのあっけなさから分身体だと思う) 

(そうか………)

 

 

 あまりにもあっけなさすぎた。本体―――――本物のサーヴァントならもうすこし足掻いたはずだ。だってサーヴァントが負けた時点でそのマスターは負けが決定するんだから。

 

 

(それでもこれからどうする?)

(できれば他の組の拠点を知りたいんだけど………)

(尾行しろってことですね、わかります)

(頼めるかい?)

 

 

 尾行………尾行かぁ………尾行は出来るんだけどさ―――――

 

 

(正直やめた方がいいと思う)

(………わかった。ならやめよう。桜ちゃんが待ってるから早く帰ってきてくれ)

(りょーかい)

 

 

 雁夜が素直に俺の意見を聞いてくるマスターでよかった。

 

 いつの間にかいなくなっていたランサーとライダーの組はいいか。残るはセイバーの組何だけど………

 

 

『なんで俺のことをジッと見てるの?』

「………あなた本当にバーサーカー?」

 

 

 白髪の女の人が声を返答してくれた。ふむふむ、どうやらこの女の人はセイバーのマスターではないようだね。俺の絶対領域内に侵入してるからまるわかりだよ。情報が頭に流れてくるし。ついでにセイバーの情報も流れてきた。

 

 白髪の女の人はアイリスフィール・フォン・アインツベルンって名前らしい。

 

 セイバーの名前はアルトリア・ペンドラゴンって名前らしい。アーサー王物語のアーサー・ペンドラゴンと同一人物だって。

 

 アーサー王物語読んでましたよ。あと子孫のアーサーとルフェイちゃん。ルフェイちゃんはいい子でしたね。素直でさ。

 

 ただ子孫のアーサーが持っていたのは聖王剣コールブランドだったんだよね。これも世界が違うせいかな? それとも俺がいた世界が特殊なのかな?

 

 

『確かに俺はバーサーカーだよ、アイリスフィール・フォン・アインツベルンさん』

「「―――――ッ!?」」

『どうしたのそんなに驚いて? アルトリア・ペンドラゴンっていう騎士までいるんだからもっとどっしりしてればいいのに』

「私の名まで………貴様、何をした!!」

 

 

 目に見えない剣をこちらに向けながら言うセイバー。

 

 

『何をしたって言われてもねぇ? 困るね。俺は別に何をしたわけじゃないし』 

「あなたは一体何?」

『俺はバーサーカーだって言ってるじゃん』

「信じられません。それにバーサーカーなのに何故理性を持って会話をしている?」

『狂化していないのは俺のスキルのおかげだよ。ていうかそろそろ帰っていい?』

 

 

 あまり時間が遅くなるとさ、桜ちゃんの夜ごはんがレンジでチンになっちゃうんだよ。それはアカンでしょう。雁夜? あいつはレンジでチンで十分だよ。 

 

 

「………いいわよ」

「アイリスフィール!?」

『そっか、ありがとね』

 

 

 俺はそそくさとこの場を離れていく。

 

 セイバーよ、アイリスフィールさんの判断が正解だと俺は思うよ。ここで戦ってもほとんど意味がない。まぁ俺から情報が漏れることを防ぐことはできるけどね。

 

 俺は『完全無欠のステルス』と念じてからこの場を離れた。

 

 

 

†††

 

 

 

 川原での出来事から数日が経った。

 

 俺は桜ちゃんと一緒に朝ごはんをつくっていた。桜ちゃんは物覚えがいいね。もう味噌汁がつくれるようになったもん。

 

 味噌汁ぐらいで何言ってんだって? おいおい………この間まで何も常識を知らなかった子だぜ? そんな子がこんな短期間で味噌汁がつくれるようになったんだよ? すごいでしょコレ。

 

 そんな調子で朝ごはんを食べ終わったんだけど………

 

 

「ねーねーバーサーカー」

「桜ちゃん、狐のお面をつけてないときは、(はじめ)かお兄ちゃんって呼んでって言ったでしょ?」

「うん!! お兄ちゃん、私と遊んで」

「―――――ッ!?」

「どうしたの? お兄ちゃん」

 

 

 こ、これはすごいぞ………上目遣いでお願いされちゃったかんね。もうお兄さんなんでもお願い聞いちゃうよ!!

 

 なんだっけ? 遊んでほしいんだっけ? もちろんOKですとも!! おままごと? お馬さんごっこ? それとも―――――お医者さんごっこ? 個人的にはお医者さんごっこがオススメかな?

 

 

「なんでもないよ。何して遊ぶ? 桜ちゃん」

「お医者さんごっこがいい」

「キタコレ!!」

「きゅ、急に叫んでどうしたのお兄ちゃん」

「なんでもないよ桜ちゃん」

 

 

 なんでもないんだ………なんでもないんだよ、桜ちゃん。

 

 

「ちょっとまった!!」

 

 

 そして俺と桜ちゃんのお医者さんごっこに待ったをかけた雁夜。出たな諸悪の根源め!! 俺と桜ちゃんのお医者さんごっこを邪魔するんじゃない!!

 

 

「なーに? 雁夜おじさん」

(はじめ)とお医者さんごっこをするだって? そんなの許可できるわけないだろ!!」

「なんで?」

 

 

 こてんと首を倒しながら訊き返す桜ちゃん。

 

 

「う………ダメなものはダメだ!!」

「えー………雁夜おじさんのケチ」

「ぐはっ………」

 

 

 雁夜に9999のダメージ。桜ちゃんは拗ねるを覚えた。雁夜ザマァ!!

 

 ていうかちょうどいいところに来てくれたじゃないか雁夜。

 

 

「雁夜、なんか小さい気配が密集している場所があるんだけど何か知らない?」

「そんなところがあるのか………僕は知らないよ」

「その近くにはサーヴァントの気配もあるんだけど」

「………お前はそんなことまでわかるのか」

 

 

 俺も驚いてるんだよね。なんかサーヴァントとして召喚されてからやけに感覚が鋭くなった。気配を察知できる範囲も広がったし、その気配で種族とかもわかるようになったし。まぁこの世界に来てからは人間とサーヴァントしかまだ見つからないんだけどね。

 

 

「それでどうする?」

「どうする、とは?」

「見に行ってみる? なんかね、そこに桜ちゃんとよく似た気配があるんだけど………」

「まさか………凛ちゃん?」

 

 

 その凛ちゃんって誰? もしかして『(^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ』の人? 凛ちゃんなう? 凛ちゃんなうなの?

 

 

「桜ちゃんの姉だよ]

 

 

 違ったね。『(^ω^≡^ω^) おっおっおっおっ』の人じゃなかったね。

 

 桜ちゃんの姉かぁ………どんな子なんだろう。まぁ可愛いのは確定でしょ? やっぱり桜ちゃんに似てるのかな? 

 

 

「それでどうする?」

「………凛ちゃんならその子達を率いて抜け出しそうだね。でもサーヴァントの仕業なんだろ?」

「うん。まぁマスターの可能性もあるけど」

「頼めるか?」

 

 

 正直に言えば嫌だよ。絶対嫌だ。俺から戦いに逝くなんてヤダ。相手がどんな力を持っているかわからないし、もし相手がテンプレな王様だったら嫌だよ。まぁテンプレな王様がそんなことするとは思えないけど。

 

 

「お兄ちゃん。姉さんを助けてくれませんか?」

「―――――ッ!?」

 

 

 上目遣いと涙目のコンボ………だと………!? 断れるわけがない。断れるはずがない。普通の感性していたら断れないって。

 

 

「わかったよ。ソッコーで行って、ソッコーで救出してくる」

「お願いね、お兄ちゃん」

 

 

 俺のヤる気は120%になった。佐藤(さとう)(はじめ)、全力全開で逝かせてもらいます!!

 

 俺は家を飛び出した。

 

 今回はあくまでもサーヴァントではなく普通の人間として助けに行きます。サーヴァントってバレたら凛ちゃんが俺に攻撃してくるかもしれないし。

 

 気で身体強化をして街を駆け抜ける。一分一秒が惜しい。さっさと片付けて桜ちゃんに報告せねば。それであのニーソに包まれたおみ足を枕に少しだけ寝させてもらうんだ!!

 

 気配がする場所にはすぐについた。そこまで離れていなかったのも幸いしたね。といっても車で三〇分ぐらいの距離だけどね。

 

 気配は地下の廃れたっていうか廃バーだった。あ、飲み屋って意味ね。

 

 到着してすぐに異変は起きた。魔力だ。魔力が放出されたんだ。魔術でも使おうと思ったのかな? それだとしたら早くしないとマズイね。凛ちゃんに何かあったら桜ちゃんに心配かけちゃうから。

 

 扉をけ破って部屋の中に侵入する。まず目に入ったのは蒼いオーラに包まれた女の子。気配が桜ちゃんと似ているところから考えるに、凛ちゃんだろう。

 

 そして凛ちゃんの腕を掴んでいる野郎が目に入った。いや、凛ちゃんが野郎の腕を掴んでるのかな? 野郎の腕からは紅のオーラが少しだけ放出されていた。そしてこの魔力の質は―――――マスターだね。

 

 俺は無言で野郎の背後に周り、その背中に回し蹴りを放つ。

 

 

「ぐはぁっ!!」

 

 

 部屋の奥まで吹っ飛んで行った野郎を無視して、凛ちゃんの方を向く。

 

 

「もしもし、君が凛ちゃんであってる?」

「貴方誰? どうして私の名前を知ってるの?」

 

 

 この質問にはどうやって答えればいいのかな? なんかこの子は勘がよさそうだし、誤魔化してもバレちゃいそうだよ。適当に答えますか。

 

 

「ある人に君を助けるように頼まれちゃってね」

「ある人って誰よ」

「君の妹―――――桜ちゃんだよ」

「桜から!? ウソよ!! だって桜は―――――」

「嘘じゃないよ。ていうか早くここから逃げたいんだけどいい?」

 

 

 考え込むのは後にしてもらいたい。

 

 さっき蹴り飛ばした時にわかったけど、野郎は戦闘に関して全くの素人だね。背後を警戒していなかったし、攻撃を受けたときに身体をずらしてダメージを軽減させるってこともしなかった。それに魔術師でもなさそうだ。魔術でなにも反撃してこなかったからね。

 

 

「わかったわよ。でも絶対に桜について教えてもらうからね!!」

「はいはいわかりましたよ、お嬢様」

 

 

 とりあえずそこらへんで気絶してる子供達を起こす。そのまま子供達を誘導して店の外に出す。警察も捜索していたみたいだから、パトカーの近くまで行って、警察官に保護してもらうように言いつけた。

 

 さて、後は路地裏に隠れている凛ちゃんだけだね。

 

 なんて言い訳しようか。いや、気絶させて抱えて行った方がいいかもしれない。適当な公園で待って、雁夜に保護者に連絡してもらって迎えに来てもらった方がいいか。

 

 

「待ってたわよ。さぁ教えなさい!! 今桜がどこに―――――」

「おやすみ、凛ちゃん」

 

 

 ビシッと決めている凛ちゃん。でもゴメンね。気絶してもらったちゃった。気絶させた方法かいたって簡単。周囲に溢れている陰気を凛ちゃんに一気に浴びせただけだ。これだけで耐性がない人は気絶する。いやぁ、気って本当に便利ですな。

 

 気絶した凛ちゃんをおぶって近くの公園に向かう。おぶるっていうのがポイントね。警察が徘徊してるからさ、おぶっていれば親子や兄妹に見えるでしょ?

 

 公園に着いたらベンチに座って、凛ちゃんを膝枕してあげた。ダイレクトベンチだと頭が痛くなるからね。

 

 

(雁夜、凛ちゃんは無事回収できたよ)

(そうか!! 葵さんに連絡してそっちに向かってもらうからそこにいてくれ)

(わかった)

 

 

 葵さんってきっと凛ちゃんと桜ちゃんのお母さんだよね。お母さん、かぁ………ヤメヤメ、考えてもしょうがない。

 

 葵さんが来るまで暇だね。何もすることがない。それに凛ちゃんを膝枕しているから動くこともできないし。

 

 それにしても凛ちゃんも可愛いね。それにまだ幼いのに美人さんになる気配しまくりだし。このまま凛ちゃんの寝顔を見ているのも悪くないかなって思った時だった。

 

 

「凛!!」

 

 

 凛ちゃんの名前を呼びながら美人さんがこっちに向かって走ってきた。

 

 早くない? いや、早くない? 雁夜が連絡してからまだ一〇分ぐらいしか経ってないないんだぜ? もしかして探し回ってたのかな? それなら納得だけど。

 

 

「あなたが葵さん?」

「え、えぇ………そうですけど………」

「じゃあこの子、お願いします。この子には何もされてませんので安心してください」

「わ、わかりました。あの………」

 

 

 凛ちゃんを葵さんに引き渡したので帰ろうとベンチを立ち上がった時だった。葵さんが恐る恐ると言った様子で声をかけてきた。

 

 

「なんでしょうか?」

「あなたのお名前は………?」

佐藤(さとう)(はじめ)だよ」

佐藤(さとう)………(はじめ)さん………」

 

 

 確かめるように俺の名前を呟かないでおくれよ。な、なんかむず痒いんだけど………

 

 

「それじゃあ、葵さん。また縁があれば」

「は、はい。縁があれば」

 

 

 

†††

 

 

 

 凛ちゃんを救出して数日が経ちました。数は数えてません。外は真っ暗で、まぁあれですよ。夜ってやつ。

 

 

「お兄ちゃんあーん」

「ん? あーん」

「おいしい? お兄ちゃん」

「うん、おいしいおいしい」

「えへへ」

 

 

 桜ちゃんは一人でごはんがつくれるようになりました。すごい成長速度でございます。教えたことをカラッカラのスポンジが水を吸い取るみたいに吸収していくんだ。これほど教えがいのある子はいないね。

 

 しかもさ、料理してる姿がこれまたかわいいんだよね。ミニスカニーソにエプロン。たまらないね。見てて飽きないもん。 

 

 俺と桜ちゃんのやりとりを見て恨めしそうにしている雁夜。この光景も日常化してる。

 

 

「ごちそうさま。おいしかったよ、桜ちゃん」

「ありがとう、お兄ちゃん」

「雁夜、後片付けくらいはしてね?」

「うぐぅ………わかってるよ………」

 

 

 悔しいか? 悔しいだろう雁夜。俺は今、優越感の波に溺れそうだぜぇ!! ………すいません、調子乗りました。忘れてください。

 

 

「雁夜、俺は風呂に―――――」

 

 

 むむむ、なんだねこのイヤな気配は。冥界にいた魔獣を思い出すね。

 

 

「どうした(はじめ)?」

「風呂に入ってる場合じゃないかも」

「………どういう状況だ」

「川の方から魔獣の気配がする。他のサーヴァントも集まってるところから考えるに、相当な面倒事らしい」

 

 

 ほぼすべてのサーヴァントが集まってる。それほどの相手なんだろうね。しかし困った。もし上陸されたら桜ちゃんにも危険が及ぶね。

 

 

「上陸されたら桜ちゃんに危険が及ぶかもしれないな………よし、倒して来い」

「………怒ってる?」

 

 

 初めて雁夜に命令されたかも。俺に意見を聞かなかったのは初めてかも。

 

 

「別にお前が桜ちゃんと仲良くしてたのがうらやましかったわけじゃない」

「うらやましかったんですね? わかります」

「うぐぅ………いいからさっさと殺ってこい」

 

 

 もうヤケクソですね。まぁ桜ちゃんに危険が及ぶのは俺的にもあまりよろしくないから頑張っちゃおうか。

 

 

「それじゃあ行ってくるよ」

「あぁ………」

「お兄ちゃんどっかいっちゃうの?」

 

 

 桜ちゃんがとてとて、と近寄ってきて俺の足にしがみつきながら言う。くっ………なんなんだこの子は。俺を萌え死にさせるつもりなのか!?

 

 

「ちょっと怪物をぬっ殺してくるだけだよ」

「………やだっ。いっちゃやだっ」

 

 

 ぐはっ………俺は………俺はサーヴァントとして呼び出されて幸せだッ!! ニーソを履いて絶対領域を展開してくれている美少女にこんな事を言われるなんて………幸せだッ!! 

 

 だが断じて俺はロリコンじゃない!! 黒歌を見て見なよ。ボインボインの妖艶なお姉さんだったでしょ? これが証明だよ。

 

 

「大丈夫だよ。雁夜、頼んだよ」

「待っ―――――」

 

 

 桜ちゃんに陰気を浴びせて気絶させる。それから陽気を当てて心を和ませる。

 

 

「桜ちゃんに何をしたんだ」

 

 

 すこし怒気を含んだ声音で訊いてくる雁夜。

 

 そんなに怖い顔しないでよ。俺が桜ちゃんに害があることをするとでも? ………ごめん、陰気は害が無いとは言えないや。

 

 

「陰気を当てて気絶しただけだよ。すぐに陽気を当てたから何も害は無いよ」

「そうか………ならいいんだけど」

「それじゃあ俺は行ってくるから」

「あぁ………さっさと片付けて戻ってきてくれ」

 

 

 俺は狐のお面と軍服みたいな外套を身に纏いながら建物の外に出る。

 

 今回は最初から全力全壊で逝きたいと思います。気で身体強化をして目的地に向かうまでに、ある魔剣を創造した。

 

 

「―――――バルムンク」

 

 

 バルムンクは、『ニーベルンゲンの歌』に登場する剣だ。幅広で黄金の柄には青い宝玉が埋め込まれていて、鞘は金色の打紐で巻き上げられている。北欧神話のグラム、『ニーベルングの指環』のノートゥングに相当する。

 

 ちなみに力はドリル状のオーラを纏って、突き出すことで竜巻状の破壊の渦を放ち空間を削り取りながら攻撃するという鬼畜仕様だ。

 

 これで準備は完了した。目標を―――――駆逐するッ!!

 

 そんなこんなで到着しました。さーて、幾年ぶりの魔獣殲滅だ。張り切っていこう!! テンション上げないとやってられないしさ……… 

 

 

『アテンションプリーズ。目的に到着いたしました。これから目標の殲滅に入ります。近隣住民の方は、激しい揺れと風にご注意ください』

 

 

 メガホンを通したような声量で言うと、戦闘に入っていたセイバーとライダーがこっちをチラッと見た。そして目を見開いた。

 

 川原にいたアイリスフィールさん、草食系男子、ランサーも俺の方を見て目を見開いた。

 

 

『魔獣の周りにいる方は、攻撃に巻きこまれる可能性がございます。ご注意ください、ご注意ください、ご注意くださーい』

 

 

 魔力で足場を創造して空に向かって跳躍しながら言う。

 

 バルムンクを振り回すと、バルムンクから発せられた竜巻がイカ魔獣を空間ごと削り取っていった。一振りでは殺して切れないか………なら何度でもいくよー。

 

 ただ、イカ魔獣もただでは殺られてくれないようだ。触手をうねうねさせてこっちに向かって突き出してくる。まぁ全部バルムンクで空間ごと削り取るけどね。

 

 ヤダよ触手に触るだなんて。もう見た目もアウトなのに触れなんてしたら―――――狂化するよ。

 

 しかし厄介だ。こっちがいくら空間ごと削り取ってもすぐに再生しちゃうんだよ? 手数もこれ以上増やすのは辛いし。一度引いて武器を変えよう。

 

 川原に降り立った俺は、すぐに次の武器を創造しようとしたんだけど………

 

 

「待ってくださいバーサーカー」

 

 

 セイバーに声を掛けられてしまいました。どうしましょ、どうしましょ、どうしましょったらどうしましょ。

 

 近くにはランサー、アイリスフィールさん、草食系男子がいた。でもランサー、なんで紅の槍しか持ってないんだろう。黄の槍も持っていたはずなんだけど………まぁいいか。どうでも。

 

 セイバーはセイバーで黄金の剣を持ってるし。あ、これがエクスカリバーか。アーサー王だもんね。とうとう透明化を解きましたか。それは何よりで。

 

 

『へぇ………それがエクスカリバーね。随分と立派じゃん』

「ありがとうございます。それではそこで見ていてください。あいつは―――――私が仕留めます」

『え? マジ? ありがとうねセイバー』

 

 

 いやぁ、助かった助かった。無駄にしつこくて困ってたところなんだよね。

 

 

「………それでいいのですか? 自分でやろうとは思わないのですか?」

 

 

 セイバーが少し怒気を含ませた声音で言ってきた。

 

 

『え? なんでよ。自分から殺るって言ってくれた人を何でないがしろにしないといけないの? むしろありがたいね』

「………そうですか。では」

 

 

 自ら死地に赴くなんて俺には考えられないよ。

 

 そっからのセイバーの行動は早かった。

 

 まずエクスカリバーから黄金のオーラを天に向かって放った。しかしこのオーラに含まれている魔力がハンパじゃない。魔王級だね。

 

 ここですごいのが、辺りに黄金の雪みたいなのが出てきたことだよね。エクスカリバーに集まってるところから見るに、魔力ですな。

 

 そしてその時が来た。

 

 

約束された(エクス)―――――」

 

 

 ここで一度溜める。そしてそれを一気に―――――

 

 

「―――――勝利の剣(カリバー)!!

 

 

 振り下ろした。

 

 黄金のオーラは真っ直ぐ斬撃となってイカ魔獣に向かって飛んで行った。

 

 これはすごいね。俺の世界のエクスカリバーより威力は確実にある。でも汎用性は皆無だね。状況によって破壊力を上げたり、形を変えたり、使い手の速度を底上げしたり、相手に幻術で惑わさせたり、使い手と剣を透明化させたり、『聖』の属性を攻撃に付与させたり、支配するってことができないからね。こうやって考えるとさ、俺の世界のエクスカリバーって万能だったってことが分かったよね。

 

 

「やった!!」

 

 

 思わず叫ぶ草食系男子。しかし喜ぶにはまだ早いんじゃないかな? だってほら―――――

 

 

『まだ死んでないから』

「「「「「―――――ッ!?」」」」」

 

 

 いや、驚かれても困るんだけど。どんなに驚いても生きているもん生きている。それもなんか前より大きくなってるし。あれか、再生するたびに強くなる―――――ってやつ? 

 

 

「ど、ど、どうするんだよぉ………」

 

 

 ついさっきまで喜んでいた草食系男子は頭を抱えて慌てていた。

 

 さてさて、どうしましょうか。ランサーにも必殺の攻撃は無いだろうし、ライダーなんて持っての他だ。テンプレな王様はまず出張ってこないだろうし。

 

 それとさ、全員が全員俺を方を向いてるんだよね。お前何か奥の手あるだろ的な目で。

 

 

『どうしたの? そんなに期待した目で俺を見て』

「………いえ、あなたならあいつを倒せるのではないかと思ったのよ」

『え? アイリスフィールさん、俺に期待してるんですか? 敵である俺に?』

「うぐぅ………」

 

 

 みんな忘れているかもしれないけどさ、お互い敵同士なんだぜ? 本当ならこんなになれ合っているはずがないんだ。

 

 まぁいいや。いい加減イカ魔獣を倒して帰らないとそろそろ目が覚めたであろう桜ちゃんに怒られちゃうからね。

 

 

『まぁ安心してよ。セイバーが奥の手を使っても倒せなかったあのイカ魔獣は俺が倒すから』

「本当!?」

『うん、アイリスフィールさん。というわけだから少し離れててね。ちょっと本気出すから』

 

 

 みんなうなずいて五歩ぐらい下がってくれた。

 

 今回俺が創造する槍は、結衣さんが一番初めに創造できるようになった思い出の槍。結衣さんの相棒と呼べる槍だ。

 

 

『―――――ブリューナク』

 

 

 そう、ブリューナクだ。俺も愛用させてもらってます。この槍はかなり便利なんだ。投げれば稲妻になって相手に向かって飛んで行って、敵を死に至らしめるからね。もう炭化しますよ。再生不可能。

 

 

『バーサーカー、いっきまーす!!』

 

 

 川原ギリギリまで助走を取って思いっきりブリューナクを投擲する。するとどうだろうか、ブリューナクは稲妻となってイカ魔獣に当たったではないか。

 

 イカ魔獣は灼熱の炎に包まれております。これは消し炭決定ですわ。

 

 炎が収まった後に残ったものは―――――ありませんでした。炭すら残りませんでした。

 

 

『イカ魔獣も消滅したわけだし、俺は帰るね』

「待って!! お礼をさせてくれないかしら?」

『あ、いらないから普通に。絶対俺殺されるでしょ? 絶対ヤダよ』

 

 

 まぁ死なないけどね。テンプレな王様の攻撃以外じゃあノックバックだけで済んじゃうんだけどね。いや、テンプレな王様の攻撃もノックバックで済むか。

 

 

『それとアイリスフィールさん』

「なにかしら?」

『貴女のここにあるもの―――――かなり穢れてるよ』

 

 

 俺はアイリスフィールさんの耳元で囁くように言った。でもリアクションが大きいせいでセイバーがものすごく警戒しちゃってるんだけど。ただでさえ警戒してたのに。

 

 

「―――――ッ!? な、なんで貴方がコレを知ってるの!?」

 

 

 それは俺の絶対領域内に侵入したからだよ。俺の絶対領域内に侵入したら情報は筒抜けだよ。以後、気をつけるように。まぁもう手遅れだけどね。

 

ただアイリスフィールさんは聖杯の存在を知っていることに驚いているだけだね。『穢れ』には反応してないし。

 

 

『それを開放したりなんかしたらさ―――――この街、消えるよ』

「何言ってるの………? それに穢れって………」

 

 

 ここで穢れという単語に気づいたアイリスフィールさん。ファインプレーです。

 

 

『まぁ心当たりが無いならバーサーカーの狂言って思ってもらっても構わないよ。でも一つだけ言わせて』

「なにかしら?」

『面倒事を起こしたらさ―――――塵にするよ』

「………既に面倒事に巻きこまれていると思うのだけれど」

『確かにね。もうダルくてダルくて困っちゃうよ。この聖杯戦争って言うのはさ』

 

 

 ダルいっていうかなんていうか………アレだ、リリン相手にしてたときの感情に似てるね。何か嫌だってやつ。

 

 というわけで、『完全なステレス』と念じてから俺はこの場を離れていく。そうしないと誰かにストーキングされて拠点がバレるかもしれないからね。

 

 

 

†††

 

 

 

 イカ魔獣を倒してから一日が経った。

 

 えぇそうですよ………日が変わる前に家に帰ることはできませんでしたよ。もう家に着いたら朝ごはんつくりましたよ。いや、まぁ直帰したわけじゃないんだけどね。スーパーとか寄ってた。最近のスーパーは二四時間やっているところもあっていいね。これが時代の変化か………

 

 味噌汁の味見をしたタイミングで、リビングの扉が開け放たれる音が聞こえてきた。

 

 

「あ………お兄ちゃん………お兄ちゃんっ!!」

「おぉっと!?」

 

 

 効果音で表すと、とてとてとてだっ。とてとて駆け寄ってきて、だっと俺のお腹にダイブしてきた。

 

 

「心配したんだから………」

 

 

 泣きながら抱き着いてくる桜ちゃん。俺はやさしく頭を撫でる以外の選択肢は知らない。まぁ俺が悪いんだし、しばらくは桜ちゃんの好きにさせてあげよう。でも味噌汁が吹きこぼれないように注意しないとね。

 

 桜ちゃんが泣きやむころには味噌汁も完成した。顔を上げた桜ちゃんが真っ赤になっているのを見て和みました。ありがとうございます、ごちそうさまです。

 

 朝ごはんを食べているときにチラチラ桜ちゃんがこっちを見てきた。でも俺と目が恥ずかしそうに顔を赤くして下を向くんだけどさ、すごくかわいいんだよねこれが。

 

 いつも通り朝ごはんの片づけは雁夜にまかせて、俺は外出の準備を始めた。いや、俺達って言った方が正しいかも。桜ちゃんもいろいろおめかししてるからね。

 

 今日は桜ちゃんと二人でお出かけをします。行先は特に決まってない。行き当たりばったりの旅です。旅って言うほどの長さじゃないんだけどね。

 

 俺の準備はすぐに終わった。別に寝巻から着替えて財布に金を入れるだけだからね。

 

 リビングに行くと、雁夜がかなり真剣な顔でソファに座って新聞を読んでいた。

 

 

「今日………桜ちゃんと出かけるんだって? 桜ちゃんが楽しそうに僕に言ったよ」

「そ、そうだけど………どうした?」

「うらやましいことこの上ない………」

 

 

 あ、要するに嫉妬ですね? わかります。でもしょうがないか。だって桜ちゃんかわいいし。

 

 前から今日は遊びに行こうって話してたんだよね。偶然前日にイカ魔獣が出現しちゃっただけなんだよね。まぁ『幸運:C』は伊達じゃないね。なんせ出かける前日に出現したからね。それでも前日なんだよね………これが『幸運:C』クオリティか。スレスレだね。

 

 

「お兄ちゃん、準備できたよ!!」

 

 

 桜ちゃんの声がしたので、声が聞こえた方を向いた。そこには天使がいた。あ、実際にイリナさんみたいに転生天使になったわけじゃないからね。

 

 白のミニワンピースを身に纏った桜ちゃんは天使って言ってもいい程かわいい。そしてワンピースと同じ色のニーソ。絶対領域が、降臨なさったぞぉぉぉぉぉ!! 桜ちゃんマジ天使!! 

 

 

「おぉ………かわいいね。うん、すっごくかわいいよ」

「え、えへへ………」

 

 

 お、お持ち帰りぃぃぃぃぃ!! 着せ替えして写真撮影したいでゴザル。

 

 

「それじゃあ行ってくるよ雁夜」

「行ってきます」

「あ、あぁ………気をつけてね、桜ちゃん。(はじめ)、桜ちゃんに何かあったら―――――」

「俺がいるんだよ? そんなこと起こさせるはずがないよ」

 

 

 絶対に桜ちゃんとは離れないし。まぁ万が一もあるからお守りを持たせてるんだけどね。お守りって言うか指輪だね。

 

 防除術式をこれでもかってほどに詰め込んでみた。まず英霊程度じゃあ傷一つ、それどころか触れられるかも怪しい。これが神器(セイクリッド・ギア)クオリティ。

 

 桜ちゃんと手をつないで廊下を歩いて行って、靴を履いて外に出る。

 

 本日は晴天なり。まさにお出かけ日和。再び桜ちゃんとてをつないで街中を歩いて行く。

 

 こうしてみると、俺は全然この街を知らないと思った。それもそのはずだよね。召喚されてからずっとマスターとサーヴァントの監視をしてたんだもん。

 

 昼は桜ちゃんと家で遊んで、夜は街を駆けてマスターとサーヴァントの監視。生前の俺からしてみれば、ありえない光景だね。昼の桜ちゃんと遊ぶっていうのはありえるけど。さんざん黒歌と遊びに行ってたからね。

 

 

「ねぇお兄ちゃん」

「どうしたの? 桜ちゃん」

「なんでもなーい。えへへ」

 

 

 ニコニコ笑いながら言う桜ちゃん。

 

 こうやって笑う桜ちゃんを見ていているとたまに思う。もし俺が召喚されなくてあのまま蟲の中にいたらどうなってたんだろうって。

 

 心はもうボロボロだったし、それに引っ張られるように魂も身体もボロボロだったんだ。もしかしたらそう遠くないうちに死んじゃっていたかもしれない。

 

 でもそれはもしもの話だ。雁夜は俺の召喚して、俺は雁夜の命令で桜ちゃんを助けた。今はそれだけでいい。

 

 それにしても聖杯戦争って長くない? 俺は一週間くらいで方が着くのかなって思ったんだけどさ、年越えたよ。ビックリだよもう。

 

 そんなこんなで到着したのは遊園地だ。

 

 電車を乗り継ぎ数時間。二時間以内なのは確実だよ。電車に乗ってるとににさ、桜ちゃんが俺の膝の上に座ったんだけど………もう何て言えばいいんだろう。サイッコウにハイってやつだったよ。俺の膝の上でニコニコ笑う桜ちゃんはマジで天使だね。

 

 平日だったのもあって、入園券はすぐに買うことができた。並ばないってすばらしいね。

 

 

「桜ちゃん、どれに乗りたい?」

「えっと………アレがいいです」

 

 

 桜ちゃんが指さした先に会ったのはジェットコースターという名の拷問器具だった。こいつは俺を拘束しやがるから苦手なんだよ。まぁ怖くはないよ? でも上下左右にぐわんぐわん振られるから胃がシェイクされてさ。あとは察しておくれよ。

 

 

「わかったよ。空いてるみたいだし行こうか」

「うん!!」

 

 

 桜ちゃんは満面の笑みでうなずいてくれた。

 

 そして―――――時は来た。

 

 安全バーを降ろして準備は万端。念のために桜ちゃんのバーが壊れていないかも確認する。―――――よし、異常はないね。まぁ万が一があっても俺の絶対領域内にいるから心配はないんだけどね。

 

 コースターが発射した。カタカタカタカタと独特の機械音を鳴らしながら進んで行く。となりにいる桜ちゃんはニコニコしている。俺? 俺はもニゴニゴしてるさ。

 

 上りに上って79m………構造的に問題ないのか気になってしまうこの頃。隣の桜ちゃんは相変らずニコニコしております。俺はもう悟りの境地に至ったよ。

 

 

「ひゃっ!?」

「出たよ………」

 

 

 出ましたジェットコースターお得意の少し落下してからの一時停止。さすがの桜ちゃんもこれには驚いたらしく、かわいらしい悲鳴をあげた。

 

 ここで問題なのが、これはあくまでも一時停止だという事だ。だから―――――

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「―――――ッ!?」

 

 

 落ちるんですよ。

 

 そこからは地獄だったね。上下左右あらゆる方向に進んでいくんだ。俺にかかるGも滅茶苦茶だからさ、リバース寸前ゼヨ。

 

 桜ちゃんはきゃーきゃー言ってるけど楽しそうだ。いいなぁ………俺も戦闘中だったら全く気にならないのに。自分の意思で動ければ大丈夫なのに。

 

 

 

†††

 

 

 

 すっかり日が暮れて夕暮れですたい。

 

 ちなみに桜ちゃんはスヤスヤと俺の腕の中で寝むっております。俺は起こさないように走る。走って走って走りまくった。腕をうまく使って桜ちゃんに衝撃が行かないようにしてるから桜ちゃんを起こさずに済んでいる。

 

 

「うぅん………あれ?」

「ん? 起きたんだね桜ちゃん」 

「お兄ちゃん? ここ………どこ?」

「もう少しでおうちだよ」

 

 

 ていうかもうついたね。

 

 そのまま建物に入って、桜ちゃんの靴を脱がせて俺も靴を脱ぐ。廊下を歩いて行ってリビングに入ってソファに桜ちゃんを座らせる。

 

 ていうか雁夜はもう寝たのかな? 建物内から気配はするんだけどなぁ………とりあえずはいいか。

 

 

「桜ちゃん、お風呂入ってくるね」

「………私も入る」

「……………………………………いいよ」

 

 

 悩んだよ。悩んださ。悩まないわけがない。

 

 桜ちゃんは確かに少女だよ。小学生だよ。でも一緒に入ってもいいのか? って何度も考えたさ。でもまぁ………いいかなって。別に黒歌みたいにナニがあるわけでもないし。

 

 脱衣所で服を脱ぐ俺と桜ちゃん。俺はさっさと脱いで洗い場に行きましたよ。桜ちゃんの着替え見ていてもしょうがなくはないけど、しょうがないからさ。

 

 少しだけ遅れて桜ちゃんが入ってきた。俺はちょうど頭を洗い終わった。

 

 桜ちゃんの方を見たんだけどさ、何も巻いてなかったよ。真っ裸。ありのままだった。まぁじーっと見るっていう失礼なことはしませんよ。夜のベットの上以外ではね。

 

 

「背中流します、お兄ちゃん」

「よろしく」

 

 

 ふっ………この程度なら俺のオリハルコン製の理性に傷一つつけられないのだよ。生前、黒歌に散々あの豊満な胸で現れたんだ。普通に洗ってもらった程度で―――――

 

 

「はぁ………はぁ………んんっ………んはぁ………」

 

 

 ―――――これは………ヤバい!!

 

 なんだよこれ………喘ぎ声じゃないか。桜ちゃんは一体ナニをしてるんだ? 俺の背中を洗ってるだけなんじゃないの? この感触はタオルだよね? え、違うの? 

 

 どうやら背中を洗い終わったらしく、今度は俺の前にやってきた。

 

 

「洗って………くれませんか?」

「仰せのままに」

 

 

 目を瞑らせてシャワーで髪にお湯をかける。開いている手で髪をすいていく。しばらくしたらシャワーを止めて、シャンプーを適量手にとって泡立てる。ある程度泡がたったらそれを使って桜ちゃんの髪を優しく洗っていく。

 

 髪が洗い終わったら次は身体を洗っていく。

 

 ボディーソープをタオル適量とって泡立てる。それを使って背中を洗っていく。背中を洗い終えたので、前は自分で洗ってもらおうと桜ちゃんに声をかける。

 

 

「前は自分で―――――」

「お願いします」

「―――――りょーかいです」

 

 

 でもあっけなく却下されてしまいました。

 

 意を決して前を洗っていきます。

 

 

「あ………あん………んん………んっ………」

 

 

 相変らずの喘ぎ声です。でも俺のオリハルコン製の理性の前では―――――

 

 

「あぁん!!」

 

 

 アカーン!! マジでアカンよ!! でも後は泡を流すだけだし、これは―――――勝った。

 

 シャワーから流れるお湯が桜ちゃんの身体についている泡を流していく。泡を全て流し終えたので湯船につかる。

 

 この浴槽、かなり大きいので俺と桜ちゃんが入っても全然余裕がある。でも桜ちゃんは俺の膝の上に座っている。安心しろ、何度も言うが俺の理性はオリハルコン製だ。ナニはしない。起立もさせないからね。

 

 

「私………大きくなったらお兄ちゃんと結婚したい」

 

 

 突然何を言いだすんだこの子は。俺と結婚だって? もっといい奴が現れるだろうに。それに俺はサーヴァントだから聖杯戦争が終わったら天界・第四天に戻っちゃうんだ。だから結婚は無理だと思う。

 

 でもそれは言わない。

 

 

「そっか………」

「えへへ………」

 

 

 桜ちゃんの頭を撫でる。誤魔化したかったのかもしれないけどさ、許してくれよ。俺は貧弱なんだ。

 

 

 

†††

 

 

 

 異変は深夜―――――寝ているときに起きた。

 

 隣では桜ちゃんが俺の寝巻の裾を掴んで、ぐっすりと眠っている。気づいていないようで何よりだね。でも雁夜はそうはいかないらしい。雁夜の気配が部屋の前にあるもん。

 

 桜ちゃんを起こさないようにしてゆっくりと起き上がる。そのままベットから出て、部屋から出る。

 

 

「雁夜も気づいた?」

「あぁ………とんでもないなコレは………」

「そうだよね。俺さ、警告したはずなんだよね―――――面倒事を起こしたら塵にするって」

「そ、そうか………」

 

 

 ていうかこんなことを話している時間もなさそうだね。『穢れ』が濁流みたいに街に流れ込んでるもん。このままだとここも危ないかもしれない。

 

 いくら神器(セイクリッド・ギア)で張った結界でも限度っていうものがあるからね。この『穢れ』はどの程度のものだかわからないからね。でもまぁ俺の張った結界は耐えてくれると思うよ。毎日毎日少しずつ強化していたし。

 

 

「―――――雁夜」

「な、なんだい?」

「すっごく久しぶりかもしれないけどさ………本気、出してみるよ」

「………今まで本気じゃなかったのか?」

「俺をそんなに甘く見ないでよ。それにあくまで本気。全力じゃない」

 

 

 この程度、全力を出さなくても大丈夫だし。俺が全力を出す時は世界に干渉する時だけだし。べ、別に強がってないからねっ。

 

 

「それじゃあ行こうか」

「行こうか? おい、それって俺も―――――」

「当たり前じゃん。桜ちゃんも連れて行くよ。もしここに張ってある結界が壊れたりなんかしたら終わりだからね」

 

 

 もしもの話だけどさ、ここの結界が壊れて『穢れ』が桜ちゃんに触れてみなよ。桜ちゃん、どうなると思う? 俺にもわからないよ。たださ、精神が壊れちゃうのは確定だよね。

 

 というわけで、連れて行きます。

 

 部屋に戻って桜ちゃんを抱き上げる。再び部屋を出て雁夜と合流。雁夜は適当に左腕で抱き上げて、桜ちゃんをおんぶする。野郎は適当でいいんだよ。か弱い女の子優先ですたい。

 

 建物の屋根へ向う。屋根からはよく辺りが良く見渡せた。えぇ見渡せましたとも。どこもかしこも泥みたいな『穢れ』で埋め尽くされている。

 

 

「あーあ………こりゃあ参ったね」

「魔術を(かじ)った程度の俺でも分かるよ………コレはヤバい」

 

 

 空気が淀んでいるのがわかるもん。

 

 誰か知っている人がいないか見渡していると、なんとテンプレな王様を見つけました。―――――なぜか全裸なんだけどね。すごいよテンプレな王様の肉体。彫刻みたいだよ!! って今はそれどころじゃなかったね。

 

 さっさとやりますか。

 

 

「―――――雁夜」

「どうしたバーサーカー。いや、(はじめ)

 

 

 雁夜も悟ってくれたのかな? これでこの掛け合いも最後になるってことを。

 

 

「多分だけどこれでさようならだ」

「あぁ………」

 

 

 しっかりと目を見て真剣に話すって言うのは初めてかもしれないね。

 

 

「雁夜、桜ちゃんが起きたらこれを桜ちゃんに渡してくれない?」

「なんだいこれは? かなりのものだと思うけど………」

 

 

 雁夜に渡したのは指輪だ。俺が桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)を使って創造したものなんだけどね、ものすごい量の加護があるんだ。

 

 指輪を創造したのは俺なんだけど、加護を付与したのはミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの四大熾天使だ。俺がいた世界でも、この世界でも、かなり価値のあるものだと思う。

 

 

「お守りだよ。絶対に渡してね」

「あぁ………わかったよ」

 

 

 雁夜に桜ちゃんを預けて俺は屈伸運動をする。体がパキパキなって心地いい。あまり体によくないらしいんだけどね。

 

 

「じゃあね、雁夜。あんたがマスターでよかったよ」

「じゃあな、(はじめ)。お前がサーバントでよかったよ」

 

 

 最後に雁夜が抱きかかえている桜ちゃんの頭をなでる。

 

 

「じゃあね桜ちゃん。桜ちゃんと過ごした日々、楽しかったよ」

 

 

 桜ちゃんの頭から手を離して、雁夜に背中を向ける。一歩、また一歩と雁夜から離れていく。そして跳躍して俺は叫んだ。

 

 

「―――――禁手(バランス・ブレイク)!!」

 

 

 

†††

 

 

 

 こんにちは、佐藤(さとう)(さくら)です。苗字はお兄ちゃんからもらいました。いつまでもアレを名乗っているのは嫌だったので………なにより、私を助けてくれたお兄ちゃんと同じ苗字にしたかったんです。

 

 あれから一〇年が経ちました。私の左手の薬指には、お兄ちゃんからもらった指輪が輝いています。なんで左手の薬指につけているかは察してくださいね? ふふふ。

 

 この指輪をみると、お兄ちゃんといたのがついこの間のように感じちゃいます。もう一〇年も前のことなのに。やっぱり諦めきれませんよ………お兄ちゃんは私が世界で唯一好きになった男性なんですから。

 

 私、言いましたよね? 一緒にお風呂に入った時に、「大きくなったらお兄ちゃんと結婚したい」って。お兄ちゃんは優しく笑って、「そっか」と言って頭を撫でてくれましたよね? 

 

 大人になりました。もう子供だって産めます。結婚だってできます。だから―――――

 

 

「会いたいです………お兄ちゃん………」

 

 

 また頭を撫でてほしい。また一緒に寝てほしい。また遊園地に行きたい。また、また、また………一緒にいろいろなことをしたい。

 

 私、一さんと釣り合う女になるために頑張りましたよ? 頑張りましたよ? 

 

 

「会いたいです………帰ってきてください………―――――痛ッ!?」

 

 

 突然、本当に突然左手に激しい痛みを感じた。ジリジリとやけどのような痛みです。視線を左手に向けるとそこには―――――紋様が、ありました。

 

 紋様はドクドクと脈打っていて膨大な魔力の塊が私の心臓と呼応して早鐘を打っている。

 

 これに似た模様を、私は知ってる。

 

 

「―――――令呪」

 

 

 雁夜おじさんにもあった、サーヴァントを召喚して従える権利を示したもの。同時に意味するのは、近いうちに第五次聖杯戦争が開戦されること。

 

 魔術回路はあるけどろくな魔術を使えない私にどうして? いや、でもそんなことはどうでもいい。

 

 これがあれば………お兄ちゃんに、また会えるかもしれない。向こうが動けないのなら、私が召喚()べばいいんだ。

 

 

「確か雁夜おじさんが使ったモノが地下に………」

 

 

 急いで地下に向かう。ひたすら走る。そして地下室に着いた。

 

 

「あった………あったよぉ………」

 

 

 でもあったからと言って安心はできません。必ずお兄ちゃんを召喚できるわけじゃありませんから。でも触媒としては十分な、指輪があります。これで少しは確立が上がると思うんですけど………

 

 

「ふぅぅぅぅぅ………」

 

 

 静かに深呼吸をするように魔法陣に魔力を流していく。すると、魔法陣は蒼く輝きだした。紡ぐ言葉は知りません。でも、想いなら誰にも負けません。

 

 お兄ちゃん………お兄ちゃん………佐藤(さとう)………(はじめ)………

 

 そして魔法陣に人影が現れた。

 

 

「はぁ………一〇年前にもこんな感じのことがあったなぁ………」

 

 

 この声は………この………声は………!!

 

 

「今回はちゃんとやろうか」

 

 

 彼はそう言いながら顔を上げた。その顔に付けている狐のお面。やっぱり―――――

 

 

「問うけど、君が俺のマスター―――――って、桜ちゃん!?」

「お兄ちゃん!!」

 

 

 お兄ちゃんですね。

 

 やっと………やっと会うことができました。 

 

 

 

 

                          to be continued………NEXT stay night




続きますね。えぇ続きますとも。

文字数が結構なことになってますね。

2014/11/01 『なにより、渡しを助けてくれたお兄ちゃんと同じ苗字にしたかったんです。』→『なにより、私を助けてくれたお兄ちゃんと同じ苗字にしたかったんです。』に修正。

2014/11/15 『私、すごく成長したんだよ』をから大幅削減。他作品と文が似ている殿報告が上がりましたので。
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