ガンダムシリーズ【魔を滅する転生頑ーSEEDー】   作:月乃杜

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第6話:尋問タイム

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 ユートのシルバーフレームには光の翼とも呼ばれた正式名――ミノフスキードライブ、コイツのピンクでケバケバしい色を深い大空の如く蒼い翼へと変化させる事から始まり、それをヴォワチュール・リュミエールの技術へと落とし込む。

 

 ミノフスキードライブは理論上でしかないが、それでも巡航速度が亜光速に達すると云う。

 

 結果、何をどうしたのか光の翼はとある何処かの不貞の騎士の名を持つ“白兜”が白き龍の名を新たに獲た際の翼そっくりに、それは図らずも少しだけ未来にユート自身が獲るであろう聖書の神が創り給うた“神の器”が一つと同様の形。

 

 故に名称は“アルビオン・ドライブ”とされて、シルバーフレームの背中へと装着をされている。

 

 それは原典――【機動戦士クロスボーン・ガンダム】に於ける木星帝国の悲願、希望にして切札と成る手にした者を英雄とするであろう器。

 

 ユートの識らない【機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト】でもそれは同様、然しながらユートが宇宙世紀に介入をした際に大拠点として使われる星帝ユニクロンは、本来なら何も無いであろう木星にこそ富を実りを与えたし、水も食糧も空気でさえも厳重に管理をしなければ生きていけない木星の浮かぶ宇宙で、クラックス・ドゥガチを指導者――総統とした帝国は建国されたし、それを支援したのは他ならないユートだった。

 

 原典通り、木星がヘリウム3や重水素など資源を獲る為の一大拠点を造り、地球側は矢張り黙っては居られなかったのか良家の御嬢様をクラックス・ドゥガチに差し出して来た。

 

 名前は“ダナエ・ブリエット”、その姓からして間違いなく原典でクラックス・ドゥガチの花嫁と成った女性だろう、故に彼女が――ダナエ・ブリエット・ドゥガチがクラックス・ドゥガチとの間に産んだ娘にはテテニスと名付けられている。

 

 とはいえど、宇宙世紀にユートが介入したから木星帝国は名ばかりは独裁政治を行っていそうにも聴こえるが、実際には半世紀を越えて厳しくて甘くは無くとも優しい国作りが成されていた為、クロスボーン・バンガードをセシリー・フェアチャイルドが復活させる意味は無く、シーブック・アノーとパン屋を開いて暮らしていたらしい。

 

 勿論、地球圏ではクロスボーン・バンガードは建国されつつあったし、サナリィで“フォーミュラシリーズ”は造られて“ガンダムF90”は元より、“ガンダムF91”も建造されていた。

 

 アナハイム・エレクトロニクスも、その技術を盗用した“シルエットフォーミュラ91”を完成させていたし、サナリィが更に“フォーミュラシリーズ”を手掛けて原典でクロスボーン・ガンダムと呼ばれていた“ガンダムF97”もきちんとした形でのロールアウト、然しながら実戦を行いたくとも難しい情勢だったから木星帝国というかユートに譲渡し、ある程度の実機データを獲てサナリィに渡す契約を交わしていた。

 

 故にこそ、クロスボーン・ガンダムと成る筈だったガンダムF97は、ユピテル財団が使うMSというユピテルガンダムと名付けられて長らく活用をされていく事になる。

 

 そんな世界線だったから、トビア・アロナクスが木星帝国に留学をする事自体は普通に有ったにも拘わらず、彼が存在すらしない海賊クロスボーン・バンガードなどに関わる筈も無かった訳で、普通に留学して普通に地球圏に帰って普通に卒業をして、木星帝国の子女と仲好くなったのだからと木星帝国へ移住――御相手はテテニスでは無いけど――をして結婚にまで漕ぎ着け、それなりに幸福な人生を歩んだのではなかろうか?

 

 それはフォント・ボーンも同様で、抑々にしてエンジェル・コール自体は発見されていたけど、それに関してはユートがテテニスの反対を押し切ってまで、極大消滅呪文(メドローア)によって宇宙細菌の抹消をしている。

 

 よって、ザンスカール帝国と木星帝国による奪い合いなどは起きる筈も無いし、彼がサーカスの争いに巻き込まれる謂われも無かった。

 

 トビア・アロナクスがカーティス・ロスコとか偽称もしていないし、ベルナデッド・ドゥガチは木星帝国を出ていないから出逢う事も無い。

 

 概ね、木星帝国は地球圏での阿保な争いに関してはどちらにも荷担しない方向性だった訳だが、それでも兵器の試験を以て予備兵器の譲渡をされていた関係から、ユートが傭兵団を率いて地球圏で暴れる事により帳尻を合わせていた。

 

 リガ・ミリティアとザンスカール帝国の戦争にもユートが個人的に、傭兵として参戦をしていたから歴史上で木星帝国が参戦した事実は無い。

 

 当然だけど、銀色のクロスボーン・ガンダムもフォント・ボーンが乗り込んだ“ファントムガンダム”も存在していない歴史と相成る訳で、ユートがザンスカール帝国戦で乗ったのは漆黒に塗りたくられたVガンダムとなる。

 

 後に木星爺さん――グレイ・ストークと名乗る某J・A氏の許、ジョング戦でウッソ・エヴィンと敵のMSを庇って破壊されたシャドーVガンダムの代わりに、蒼いV2ガンダムを金色のジョングから助けた少女と共に駆け抜けた。

 

 ナイト(宵闇)V2ガンダムにはミノフスキードライブが確り実装されていた訳では無いが、後にウッソ・エヴィンが乗り換えた正規のV2ガンダムに装備されたミノフスキードライブから装置を完成する。

 

 破壊されたとはいえ修復が充分に可能であったシャドーVガンダムは、ユートと共に地球へと戻りユピテル傭兵団の一員として所属をしたカムイがパイロットを務め上げた。

 

 そんなカムイの乗るシャドーVVガンダムには、ナイトV2ガンダムに搭載をしてデータを取れたから新たにミノフスキードライブを装備。

 

 更に防御力の効果を獲る為にシャドーVVガンダムに搭載をしたミノフスキードライブ、これにはABF――アンチ・ビーム・フィールドを発生させる事を可能とするシステムが積まれていた。

 

 これは或る意味で原典のファントムガンダムに積まれたアレに近く、ユートは図らずもそれ自体では無いものの模倣して再現していたのである。

 

 こうやって、宇宙世紀の世界で“アルビオン・ドライブ”の基礎は着々と技術的に積み上がった。

 

 その集大成こそがシルバーフレームに与えられたという訳だ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートがアークエンジェルのブリッジに上がって来た為、目的地への航路を既に取って少しだけ手の空いたブリッジクルーが、マリュー・ラミアスがユートの尋問を行うべく待っていた。

 

「現在、アークエンジェルは慣性航行ですすんでいますから、私達は敵に発見されるまでユートと話が出来ます」

 

「何処に向かっているんだ?」

 

 識っているけど。

 

「お前が知る必要は無い!」

 

「煩い少尉さんだな」

 

「な、何だと!?」

 

 ナタル・バジルール少尉はユートから言われて激昂をする。

 

「立場的には副長の心算か? どうせマリューへの進言なんぞ『アルテミスへ航路を執るべき』とか何とかだろう? 下らんな」

 

「なっ!? 貴様! 傭兵風情が連合の策にケチを付ける心算か!」

 

「ガルシアを識っていれば、連合のコードを持たないアークエンジェルとストライクガンダムは、奴に取って格好の獲物と成るのは考えるまでも無い事だ。大方、己れはそれが最善だとか敵と事を構えるのを鑑みればユーラシアのアルテミスとて理解してくれるとか、理想論を語ってマリューを動かしたんだろうがな?」

 

「な、なにぃ!」

 

「ガルシアは地球に帰りたがっている。抑々にしてアルテミスに赴任した事、それ自体を奴は忌み嫌っているのさ! 其処へ……フフッ、大西洋連合の新型艦と新型機を手土産にすればと考える。俗物らしいガルシアなら間違いなく……な」

 

「ば、莫迦な! 同じ地球連合だぞ! それが、貴様は手柄の為に味方を騙し討ちにするとでも言う心算か!? 傭兵如きと同列に考えるな!」

 

 ユートは静かに瞑目して……

 

「っっざっけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっ!!」

 

 カッと目を見開くと、力の有らん限りを籠めた怒声をブリッジ内全体へと響き渡らせた。

 

 それは真なる怒り、遥かな過去へと置いてきた存在を侮辱する愚者の囀ずり、然れどもユートの怒りという琴線に触れたナタル・バジルール少尉の科白は許し難く且つ度し難い。

 

 その怒号はブリッジを確かに揺らして、まるで鬼神か魔神か或いはそれを越えた某かなのか? 一切合切が解らぬ憤怒にブリッジクルーは怯えてしまうしか出来なかった。

 

 顔芸? そんなモノなど遥かに超越した怒りはナタル・バジルール少尉が粗相をしてしまう程、ムウ・ラ・フラガ大尉もともすれば粗相をしてしまいそうなのを、ギュッと括約筋を引き締めて何とかやらかさずに済んだという話だ。

 

 ブリッジクルーの何人かは耐え切れずに気絶をしてしまったし、マリュー・ラミアスはユートという存在に好意を懐いていたから何とか正気を保ったに過ぎないのだろう。

 

「傭兵なんて名ばかりのドサンピンであるのならいざ知らず、真の傭兵が裏切りなど働くとは努々思わない事だな! 若し傭兵が雇い主を裏切る事が有ったならばそれは唯一、雇い主が傭兵を裏切った時に他ならない! それ以外で無為に雇い主を裏切った傭兵が居た場合、それは敵味方の区別は無く八つ裂きにしても厭き足らんっ! それが傭兵の流儀ってもんだからな!」

 

「ご、御免なさいユート。副長であるバジルール少尉が貴方に無礼を働いたわ」

 

「マリューが謝っても意味は無いな、其処の副長が謝らなければ僕が許しなど与える訳が無い」

 

「そうね……バジルール少尉、彼に……ユートに謝罪をして下さい」

 

「…………申し訳ない」

 

 青褪めた表情、心から申し訳ないと思っているのでは無く、先の怒号への一時的な恐怖心が謝罪の科白をスムーズに言わせたらしいけど、これで取り敢えず許さないのも流石に大人気ない。

 

「気を付けるんだな」

 

「は、はい……」

 

 物理的に揺れたブリッジ、何処までも通る声が怒りに奮えたらどうなるのか空恐ろしかった。

 

「それで、質問は良いかい?」

 

「どうぞ」

 

「先ずはハッキリさせたいのが、坊主にも問いたんだけどな。アンタはコーディネーターかい?」

 

 マリュー・ラミアスを除く全員がハッと成ってユートを見遣る……因みにどうでも良いけれど、ナタル・バジルール少尉は粗相の所為で気持ち悪そうにしているが、こんなブリッジクルーの面前でソレを口に出すのは矢張り憚れている様だ。

 

「成程、随分と浅い見地だな?」

 

「と、言うと?」

 

「MSを操縦が出来るのは即ちコーディネーターって話なんだろうけど、確かに連中の基礎は高いから難しいMSを操縦するのも御手の物だろうさね。だけど能力は特殊なモノを除けば基本は相対的なモノなんだし、学び鍛え上げればコーディネーターと同じ事はナチュラルにも出来る。要するに、ナチュラルである事に甘えているって話だよ」

 

「それは、耳に痛いねぇ」

 

 甘えを指摘されて苦笑いだ。

 

「コーディネーターというのを、誕生前の段階で遺伝子を弄った人間の事だと定義をするのなら、僕は間違いなくナチュラルだよ。だけど身体能力も頭脳も、コーディネーターに負けないけどな」

 

「やれやれ、確かにそれが事実なら俺達は怠け者だからMSを操縦出来ないって話になるよな~」

 

 ユートがナチュラルなのにMSを操縦しているのであれば、出来ない自分達こそが『アナタ、怠惰ですね?』的な人間だと証明をされてしまう。

 

「ユートがナチュラルなのは私も確認してるわ。その……ね、コーディネーターだった場合は子供がデキない可能性もあったから。遺伝子を操作するのってリスクも高いもの」

 

「って、艦長? まさか!」

 

「ううっ、私だって軍人である前に一人の女として付き合いだって有るものなのよ!」

 

 ムウ・ラ・フラガの質問に近い科白に、真っ赤な顔をしながらそっぽを向きつつも答えた。

 

「じゃあ、私からも質問よ。ユートが乗っていた連合の“G”と似たMS、あれはいったい何なの?」

 

「推測はしてるんじゃないか?」

 

「ええ、だからこれは単なる答え合わせみたいなものなのだけれどね」

 

「オーブ連合首長国が五大氏族が一つサハク家の主導にて、地球連合のアークエンジェルと“G”はモルゲンレーテ社が開発を請け負った訳だけど、元々がオーブの理念は『他国への侵略をしない・させない』ってものも政治的に武威的に力が無ければ理想も語れない。プラントがジンを開発して以来、MSの優位性は日々見直されていく中に在って遂には地球連合もMSの開発をしようと考えた。その槍玉に挙げられたのがオーブだった訳だが、先の武威をどうにかするべくオーブもMSを独自に開発しなければ……と成った。其処で地球連合の機体である“G”の技術を流用して五機のMSを開発したって訳だよ。それがプロト・アストレイだ」

 

「我々、連合の技術を盗用したのか! オーブは何という恥知らずな!」

 

「莫迦を言っているなよ? 恥知らずは己れだ、ナタル・バジルール少尉」

 

「な、何だと!?」

 

「オーブにMSの開発を依頼した時点で技術流出は避けられない。ならば初めから技術の転用を許可して着実な仕事をさせた方が建設的だ。少なくとも“G”計画を推し進めたハルバートン提督はソレを込みで依頼しているだろうさ。当然ながら本当に機密な技術はブラックボックスにしていた筈。事実としてアストレイに地球連合で独自に開発をしていたPS装甲や、ブリッツガンダムに使用されているミラージュコロイドなんかがね」

 

「機密をよくもまぁ、随分と熟知しているわね。私は当然だけどユートに仕事関連は話してない、地球連合の技術士だとは言ったけれどね?」

 

「僕にも伝手はあるさ、傭兵だからこそ情報の取り扱いには注意が必要だ」

 

「そうかもね。貴方の機体はプロト・アストレイと言ったかしら?」

 

「MBFーP05ガンダムアストレイ・シルバーフレーム――全高一七.五三m、重量四九.八t、装甲材は発泡金属。とはいえ、それなりに手を入れてあるから既にノーマルなアストレイじゃないが」

 

「詰まりは五号機……ね。シルバーフレームというのは何?」

 

「実際に見たら判るだろう? 銀色のフレームだからシルバーフレームさね。尤も、元はグレーのフレームだったのを塗り直したんだがな」

 

 白色では無く然れど灰色でも無い白銀の色を選んだのである。

 

「ガンダムアストレイはプロト〇一~〇五までで異なるフレームを持つ、一号機が金色で二号機が赤色で三号機が青色。そして恐らく四号機が緑色なんだと思うんだが……ね」

 

「恐らく?」

 

「四号機は視てないから」

 

 実際に四号機はロウ・ギュールが用途に併せて塗り直したのか、それとも元々がグリーンフレームだったのかいまいち判断が出来ない。

 

「僕が知り得る限り、MBFーP01ゴールドフレームはサハク家のロンド・ギナ・サハクが、MBFーP02レッドフレームはジャンク屋のロウ・ギュール、MBFーP03ブルーフレームは傭兵集団サーペントテールの叢雲 劾がそれぞれ手にしている。MBFーP04グリーンフレームに関しては行方不明だけどな」

 

「それでMBFーP05グレーフレーム改めシルバーフレームがユートの手に……か。ハルバートン提督は誰が入手するかに付いては兎も角、少なくともオーブが技術転用をしてMSを開発する事を見越した上で、オーブのサハク家にMS開発を依頼した。ならば私達が異を唱えても仕方がないわね」

 

 ユートが何処から獲た情報かは判らないけど、取り敢えずマリュー・ラミアスの敵では無いという事が判れば良しとして、ストライクガンダムと共にシルバーフレームが運用される事に成った。

 

 

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