ガンダムシリーズ【魔を滅する転生頑ーSEEDー】 作:月乃杜
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取り敢えずの説明は終わる。
「アストレイは貴方の物という訳では無いみたいだけど、かと云って地球連合の機体でも無いから接収をするのも違うわね」
「艦長、何を甘い事を! ストライクがキラ・ヤマトにしか動かせないなら、ナチュラルが動かしているアストレイを接収してフラガ大尉に使って貰うべきです!」
確かに軍人としては甘いマリュー・ラミアス、然し接収したとして上手く扱えない人間に使わせる意味は無いとユートは思うし、ムウ・ラ・フラガとしても行き成り使えと言われても困るのだ。
「おいおい、俺はMSを操縦なんてすぐに出来るもんじゃねーぞ? ユートが使えんならユートに闘って貰う方が建設的だぜ?」
「然し!」
尚も言い募るナタル・バジルール少尉に対し、又もや溜息を吐きながら呆れた目で見遣った。
「な、何だ?」
「シルバーフレームは謂わば落とし物、そして僕が拾った取得物に当たる。落とし主であるオーブが返せというなら返還にも応じるが、地球連合にくれてやる謂われは何処にも無い。まぁ、返還の際に一割は貰いたい処だけどな」
「くっ!」
ムウ・ラ・フラガが使えないと言い、ユートも渡さないと言っているのを流石にナタル・バジルール少尉が『寄越せ』とも言えずに、悔しそうな表情に成ながらユートを睨み付けて来た。
「訓練も受けてない人間が扱える程に容易くは無いんだがな?」
TCーOSだから多少は扱い易いかも知れないが、シルバーフレームにはTーLINKシステムが搭載されている為、念動力者以外が動かすのは無理筋でしかない上に【フルメタルパニック】由来であり、概念の理解をきちんとしていないと扱えないだろう“ラムダ・ドライバ”が搭載されている。
ユートはどちらも扱えるが、ムウ・ラ・フラガには果たして扱えるものであろうか? 少なくとも空間把握能力が高くてラウ・ル・クルーゼと通じ合うだけの彼では、TーLINKシステムを使う事など出来る訳も無いであろう。
「それで、ユートはZAFTが襲撃を仕掛けて来たら闘ってくれると思って良いのかしら?」
「僕は傭兵だぞ? 雇用主であれば護りもするだろうが、そうで無い相手を無理をしてまで護ったりはしないな」
「私を護って……は駄目?」
「駄目だな。僕が傭兵で無ければ良かったんだろうけどね、傭兵が如何なる理由が有ろうと無償で依頼を受けてはならないってな。そうでないと、他の傭兵までもが侮られて無償奉仕を求められるかも知れないだろう? 違うか?」
「いえ、違わないわね」
ユートはソッとマリュー・ラミアスに近付き、ボソリ……と耳打ちをしてから素早く離れた。
するとマリュー・ラミアスの顔が真っ赤に染まってしまい、目を彼方此方へと彷徨わせているのをムウ・ラ・フラガが目敏く視ている。
「ヘェ」
故にかニヤニヤが止まらない。
この段階ではまさか、本来の世界線に於いては自分自身がマリュー・ラミアスの恋人に成っていたなど、神ならぬムウ・ラ・フラガの身では判る筈も無かったのだから。
「ふぅ、判りました。その条件でユートを雇う事にしましょう」
「了解した」
「そう言えば!」
「何かな?」
ふと思い付いたみたいに、マリュー・ラミアスがポンと柏手を打つ。
「ちょっと気になっていたんだけど、ユートにせよキラ君にせよどうして“G”やアストレイの事をガンダムと呼ぶのかしら?」
「そういや、アンタも坊主もガンダムと呼んでいたよな」
マリュー・ラミアスの疑問だが、それにはムウ・ラ・フラガも同じ疑問を持ったみたいだ。
「アストレイのOSだよ、恐らくそれはストライクガンダムも同じ筈だが――General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuverと表示されてた。OSの頭文字を繋げて読めば
「そう言えばそうね」
どうやら、マリュー・ラミアスとしては納得をしたらしい。
「それにさ、ストライクガンダムもガンダムアストレイも立派なガンダム顔をしているじゃないか」
「いやいや、ガンダム顔って何だよ? ガンダム顔って!?」
ちょっとした清涼剤となる言葉に何とかフワッとした雰囲気に包まれるが、アルテミスへ向かわねばならない事は変わらないからユートとしては苦々しい思いを隠せない。
「先にも言ったがジェラード・ガルシア少将は、間違いなくアークエンジェルや“G”を獲ようと動くだろう。欲張りな性質だからアレはガンダムアストレイであるシルバーフレームもそうする筈。だからアルテミスに最接近をしたら僕はシルバーフレームを隠すが、それは構わないな?」
「隠すとはどうやって?」
「こんな感じに」
ユートは取り出した水分補給用の水筒を指先で弄ぶと、パッと行き成りその水筒を影も形も無くなる手品みたいな事を仕出かす。
「消えた?」
「亜空間ポケット、一種の魔法みたいなモノだ。正確には亜空間ポケット自体は魔法じゃないが、取り敢えず僕は基本的に魔法が使えると考えてくれても良い。因みにだが、シルバーフレームにも魔砲システムを搭載しているから、その気になったら魔法をぶっ放せる」
一瞬の静寂の後……
『『『『ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』』』』
ブリッジクルーの全員が叫んだ。
「ま、魔法って……」
「体内に存在する魔力を媒介として様々な現象を引き起こす、魔の法則を現実の世界に顕すが故に魔法と呼ばれている。或いは魔力による技術を起こす魔術とも呼ばれているな。まぁ、魔法と魔術は場合によって全く違うモノに語られるんだが」
「そ、そんな……魔法だなんて。だけど水筒を消したアレは手品なんかでは確かに有り得ないわ」
流石の技術屋なだけにか、マリュー・ラミアスは少しばかり冷静に物事を見詰めていた。
「ふむ、そう言えばマリューは腕にダメージを受けていたよな?」
「え? ええ、それが?」
「傷を負った部分を出して」
「こ、此処で?」
「ああ、僕以外の男は視るなよ? 視たらその目を潰して記憶を魔法で消してやる! 因みにこの記憶消去魔法は本来なら頭が良かった筈の者を、物の見事にパーにした実績付きだ悪しからず」
バッとムウ・ラ・フラガを含む、ブリッジクルーの男共は顔を明後日の方へ背けて目を閉じる。
それを見てマリュー・ラミアスは溜息を吐きながら制服を脱ぎ、ユートの前に傷付いた二の腕を晒して来て瞳は早くしてと語っていた。
「
何処か優しい翠の光がユートの掌よりフワリと放たれて、マリュー・ラミアスの傷付いた二の腕に振り掛かってみるみる内に傷が塞がっていく。
「痛みが……和らいでいく?」
血が滲む包帯を外してみれば、彼女に付いていた傷痕が跡形も残らずに、綺麗サッパリと消えてしまっていた。
「本当に治るだなんて!」
「僕が異世界で獲た回復系呪文のベホイミだよ。もっと回復力の高いベホマも有るけどマリューの傷ならベホイミで充分に癒やし切れる。実際に腕はすっかり良く成っているだろ?」
「そうね」
頷くマリュー・ラミアス。
「兎に角、この亜空間ポケットにシルバーフレームは容れておく。間違ってもクルーは当然として避難民の連中にも、ストライクガンダム以外にもMSが有る事を口にしないように徹底してくれ」
「判ったわ」
再び頷いたマリュー・ラミアスは、確かに請け負ったのだと笑みを浮かべながら口を開いた。
「さて、理解して貰えたな? 先にも言った通り“傘のアルテミス”のジェラード・ガルシア司令は欲深く、必ずこの艦のストライクガンダムを欲するだろう。留意だけはしておいてくれ。とはいえユーラシア連邦にストライクガンダムをプレゼントする心算なら止めんがね」
「判ったわ」
仮にも艦長をしている身としては頭が痛い事ながら、逃げられる立場にも無いから粛々と職務を真っ当するしか無いのである。
一応、身体を許したのだからもう少し甘やかして欲しいという思いもあるが、ブリッジクルーが居るこんな場所では無理だとも解っていた。
話し合いの後、すぐに行動を開始するアークエンジェルの面々。
「デコイを用意、アルテミスへの航路修正の為にメインエンジンの噴射を行う。それから後は艦が発見されるのを防ぐべく再び慣性航行へと移行。第二戦闘配備、艦の制御は最短時間内に留めよ」
キリッとした表情でマリュー・ラミアス大尉は艦長として命じた。
「アルテミスまでのサイレントランニング、凡そ二時間って処か。後は運だな……」
ムウ・ラ・フラガも普段の飄々とした態度では居られない。
ナタル・バジルール少尉が命じる。
「三番デコイ発射!」
デコイで相手の目を眩ましてアークエンジェルは先ず動いた。
「メインエンジン噴射、アルテミスへの進路へと航路を修正!」
ユートは識りながらも説明が難しいから、飽く迄も意見を言うだけに留めると格納庫へ向かう。
格納庫にはストライクガンダムとシルバーフレームの二機が立っているが、本来の世界線だったらこれがストライクガンダムだけだったのだ。
「よう、兄ちゃん」
「えっと、確かマードック軍曹だったっけか」
「応よ! 聴いてるぜ、ラミアス艦長に雇われたんだろ?」
「ああ、暫くは僕がシルバーフレームでアークエンジェルを護る手筈だ。悪いけど軍曹には整備を手伝って貰いたい」
「了解だ」
ユートはシルバーフレームのコックピットへと入り、入念なチェックを入れつつTCーOSと機体とのマッチングに齟齬が無いかなどを調べた。
「必ずヴェサリウス、ラウ・ル・クルーゼの部隊と闘り合う事になるからな」
そう独り言ちながら。
男に尻を追っかけられても嬉しくは無い訳で、せめて向こう側に魅力的なお姉さんだか可愛らしい娘さんでも居れば遣る気MAXにも成ろうが、相手は胸の裡に破滅を企むオッサンと小生意気な小僧共、全く以て嬉しくも何とも無い陣容であるのは間違いが無かった。
そして遂にナスカ級とローレシア級の艦が近くまで来ているのに気付き、館内放送で第一戦闘配備へと切り替わり軍籍に有る者達はバタバタし始めるし、館内に居る民間人もヒソヒソと『自分達も居るのに』など非難めいた事を囀ずる。
キラ・ヤマトはユートもシルバーフレームも在るのに、どうして無理に自分が闘わなければならないのかと不満たらたらである様子。
「まぁ、闘いたくないなら別に闘わなくても構わないけどな」
「お、おい?」
驚きのムウ・ラ・フラガ。
「言っておくが、僕の護る最優先は雇用主であるマリューであってお前らじゃない。最悪の最悪で僕はマリューだけ連れてバックレても必要最低限の仕事は熟した事になる。傭兵としての費用を出すのは地球連合でも無ければ勿論お前らの誰でも無い。マリュー・ラミアス個人だからな」
「か、艦が沈めばマリューさんだって死ぬんじゃないですか?」
「沈む前にマリューだけシルバーフレームの中に転移させるだけだ」
「は? 転移って……」
「こんな具合に……な」
言った瞬間、ミリアリア・ハウの足下にベルカ式の魔法陣が展開されると……
「えっ!?」
フッとユートの腕の中に。
「ええっ!?」
「ミリィ!」
頬を真っ赤に染めながらも狼狽するミリアリア・ハウと驚愕しながら叫ぶトール・ケーニヒ、余りにも理不尽極まる現象を目の当たりにしたからかキラ・ヤマトは頭がグルグル、カズイ・バスカークやフレイ・アルスターやサイ・アーガイルも絶賛混乱をして目がグルグルしている。
ミリアリア・ハウが驚いたのは転移の事だけでは無く、見た目と違って意外と逞しい筋肉が付いていた事に糅てて加えて、カズイ・バスカークやトール・ケーニヒなどとは違って整った中性的な顔立ち、どちらかと云えばキラ・ヤマトっぽいかも知れないけど、筋肉がそれは違うと物語っているかの様であったと云う。
「やだ、アンタってまさかコーディネーター?」
「いつからコーディネーターとは、魔法が使える集団に成ったんだ?」
頭のおかしな事を言うフレイ・アルスターに、ユートがキラ・ヤマトへと疑問を問うと……
「いや、使えませんよ!」
きっぱりと否定した。
「魔法に関しては魔力さえ持っていればだいたい誰でも扱える。中には体質的に使えない人間だって一部には居るが、それは生まれ持った資質だしどうしようもない事だろうな」
肩を竦めるとミリアリア・ハウを抱き締める力が少し増し、ムギューッと彼女の顔を自分の胸へと埋めてしまう形に成って更に狼狽。
頭に血が上って真っ赤な顔が更に紅くなってしまい、狼狽しているだけでは無くて胸の動悸が激しく成った上に何だかお腹の奥が熱くなる。
「ちょっ、ミリィを離せよ!」
「ああ、悪かったな」
「……あ」
トール・ケーニヒの叫びに応じてミリアリア・ハウを離すと、何故だか解らないが彼女の表情が少しだけ寂しそうに成っていた。
何だか自分が莫迦らしくなったのか? キラ・ヤマトはストライクガンダムに乗るのを承諾し、ユートはガンダムアストレイ・シルバーフレームのコックピットに、キラ・ヤマトはストライクガンダム、ムウ・ラ・フラガもメビウス・ゼロというMAのコックピットへと入る。
〔メビウス・ゼロ式――フラガ機はリニアカタパルトへ!〕
「ムウ・ラ・フラガ、出る! 戻って来るまで沈んでくれるなよ?」
橙色を基調としたメビウス・ゼロがアークエンジェルより発進し、続いてストライクガンダムがカタパルトへと運ばれていった。
未だにうだうだと考え込むも、取り敢えずではあるが作戦の見直しをしている辺り前向きだ。
ストライカーパックはエールストライカーへと換装が成される。
作戦通りに、アークエンジェルはエンジンを噴かして
「前方ナスカ級よりMSが発進、機影は一です!」
「艦長!」
「ええ、お願い」
「キラ・ヤマト及びユート・オガタ! ストライクとシルバーフレーム発進だ!」
原典との差違は唯一つ、ユートのシルバーフレームが存在している事。
「キラ、ユートさん!」
ミリアリア・ハウが声掛け。
「了解」
「GIG!」
キラ・ヤマトは兎も角、ユートはこの世界の人間には理解が及ばないネタで返事をしながらカタパルトデッキから出陣をした。
キラ・ヤマトは思う。
それは出陣前にムウ・ラ・フラガから言われた事だったり、カレッジの友人達――先程の声掛けをしてきたミリアリア・ハウもそうだったけど、トール・ケーニヒもサイ・アーガイルもカズイ・バスカークも、キラ・ヤマトだけに押し付けたくなくて自らが軍属としてブリッジへ向かった。
因みに、パイロットのキラ・ヤマトは少尉としての待遇だけど、ブリッジクルーとして採用をされたミリアリア・ハウ達は最下位の二等兵だ。
「キラ・ヤマト……ガンダム、行きますっ!」
「ユート・オガタ、ガンダムアストレイ・シルバーフレーム……
原典の中には無かった、ストライクガンダムとプロト・アストレイ初の共演が今始まる。
傭兵としての参戦であるが故に、ユートには階級は無いので命令系統には組み込まれているが、基本的には自由意志に任せてアークエンジェルとストライクガンダムを護る形で……とマリュー・ラミアスから頼まれていた。
既に相手がZAFTだからこそ見捨てる形になったラスティ・マッケンジーとミゲル・アイマン、ユートとしては積極的に大きく世界を変革させようとは思わないが、それでも生かせるものであるのなら生かせれば……とも思う。
今回はイージスガンダムが、デュエルガンダムが、バスターガンダムが、ブリッツガンダムが、連合から奪われた四機のG兵器が出ている。
「オーブから出た後の戦闘でニコル・アマルフィがソードストライクの対艦刀で真っ二つにされ、トール・ケーニヒが怒りに駆られたアスラン・ザラの攻撃で殺された。だけどキラ・ヤマトへ速やかにフリーダムガンダムを渡すのにはこの流れが一番かも知れない……か?」
ミリアリア・ハウを魔法で転移させたけれど、アレは目視をしていたからこそ可能な事だ。
「いや、考えるな! 今は目の前の事に集中をするしかないだろうに」
ユートはキッと前方を睨み付けると、アークエンジェルの後方へと目を向けてやればローラシア級から発進した三機の“G”、後ろを感じてみればナスカ級ヴェサリウスからイージスガンダム。
ZAFTに奪われた四機の“G”、その全てを投入してきた初めての瞬間であったと云う。
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