ガンダムシリーズ【魔を滅する転生頑ーSEEDー】 作:月乃杜
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出陣をしたユートのシルバーフレーム、前方のヴェサリウスから発進をしたイージスガンダムにはキラ・ヤマトのストライクガンダムが当たり、シルバーフレームはローラシア級から発進してきた三機の“G”を相手取る事に。
原典では四機の“G”を全て相手にしなければならないプレッシャー、そして嘗ての親友と闘わねばならないストレスに晒されていた。
だからユートがどちらかを受け持ってやる心算な訳だけれども、奪われた“G”が相手で同時に三機をも相手に闘う事になるプレッシャーと、親友を相手に撃ち合わねばならないストレスというのは果たしてどちらがマシなのか?
答えが出難い二者択一。
其処でシミュレータを使ってキラ・ヤマトとの勝負をしてみた処、三本勝負で先に二本を取った方が勝ちというルールでユートがストレート勝ちを決めてしまったのである。
〔まだGが在ったのか!〕
たった一人でも姦ましい大声が、オープンチャンネルに乗って流れてくるから喧しいものだ。
「此方、ユート。三機の“G”とエンゲージした、これから戦闘行動に入るからアークエンジェルはストライクガンダムの援護を主に頼んだ」
〔え、ですが?〕
「ハウ、これは初めから決まっていた事なんだ。故に返事は了解かAIGだ!」
〔いえ、AIGって何ですか?〕
この世界には存在しないであろう日本の特撮、【ウルトラマンメビウス】の現地組織の了解という意味の掛け声、但しガイズでは無く所属的にはアークエンジェルだから頭文字はAとなるだけ、然しながらそんなモノをミリアリア・ハウに理解が出来る筈も無かった。
通信を無理矢理に終わらせると先ずは駆け付け三杯とばかりに……
「魔砲システム起動、メラゾーマ! 喰らえ!」
ユートが後付けされたクリスタルに手を触れながら、それに魔力を高めて魔法力を注ぎ込みながら魔法式を刻み込んでいく。
それに伴ってシルバーフレームがメラゾーマをブッ放した。
「「「は?」」」
三人が三人共に揃ってマヌケな声を上げたのは仕方が無い、行き成り機動兵器が燃え盛る炎の玉を放って来たのだから、どの様に思考を廻らせたのだとしても想像の埒外だったろうから。
「チィッ!」
デュエルガンダムは躱し、バスターガンダムは砲撃で迎撃、然し未だに呆然自失となってしまっていたニコル・アマルフィのブリッツガンダム、こいつだけはメラゾーマの一撃を喰らう。
「うわぁぁぁっ!」
「ニコル!」
幸いに燃え続ける訳では無かったからコックピット内に伝わった熱も然程では無くて、ニコル・アマルフィも別に其処まで大した火傷を負ってしまった訳では無い。
それでも酷い熱を帯びた訳で、若しブリッツガンダムがラミネート装甲ならば熱にも耐えたが、生憎とPS装甲は物理的な衝撃には強いけど熱には其処まで強くは無かった。
「大丈夫かニコル?」
「ええ、イザーク」
「くっ、何なのだ今のは!」
思わず歯噛みしてしまうイザーク・ジュールではあるものの、それでも未だに激昂をしていたとは考えられないくらいに頭脳は冷静沈着を保ち、先程の不可思議な現象に関して思考を廻らせる。
「空気ってか、酸素の無い宇宙空間なんだぜ? 火が燃焼する為の媒介が
「そうですよね」
ディアッカ・エルスマンの高説にはニコル・アマルフィも頷く、そんな事はジュニアスクールで理科の履修をしている人間ならば当たり前でしかない化学現象であり、今更ながら基本的な学業を軍事訓練と共に確りと修めているザフトレッドが判らない筈も無かった。
そう、これが単なる化学現象であるのであればその知識は間違い様が無いくらいに正しいのだ、違っていたのはこれが化学現象では無く魔法的な現象であるが故に、化学の常識には当て嵌まらないという事だ。
魔法にも拠るし術者にも拠る事だから一概には云えないけど、ユートの魔法とは基本的に魔力を媒介にしているから炎の魔法は酸素を燃焼させて燃えている訳では無く、自然界とは無関係に使えるから宇宙空間で焼けるし、それこそ真空の宇宙で真空の刃を発生させられてしまう。
こんな具合に……だ。
「
「「「うわぁぁぁっ!?」」」
しかも魔力由来の攻撃だから実はPS装甲による物理的な攻撃を防ぐ……が殆んど機能してない、事実として真空の刃を含む唸りを上げながら偶にクロスしつつ向かう大竜巻、これに巻き上げられた三機の“G”は大気も重力も無い真空の宇宙空間故に、何処までも飛ばされている訳だがPS装甲にはあちこちに深い傷が付いていた。
ユートの魔法が物理現象では無い証左だろう、目を回しながらも三機は制動を掛けて戻る。
「くそっ、いったい全体何なんだ! 火の玉だけでなく宇宙で竜巻だと?」
「意味が判らねーぜ」
「これがナチュラルの脅威のメカニズム? 幾ら何でも……」
イザーク・ジュールもディアッカ・エルスマンもニコル・アマルフィも、未知なる存在に対する恐怖を感じてしまっている様だ。
オープンチャンネルな侭に話しているのに気付きもしない。
ユートの目的は“G”の奪還では無いし、況んやコーディネーターの絶滅でも無いので“コーディネーター絶対殺すマン”に成る気は更々無かった。
そんな時にガキンという甲高い音と衝撃と共にシルバーフレームの両腕が破砕、腕が行き成り喪われたけどブロック式だからダメージコントロールはばっちりである。
「ああ、矢っ張り魔砲システムの負荷がヤバかったみたいだな」
アークエンジェルに戻れば壊れた両腕くらいはすぐに修復が可能、何故ならば既にシルバーフレームの各部位は製産をしているからだ。
問題は両腕が壊れたのをチャンスと見なしてしまう連中が、再び動き出して此方へと攻撃を仕掛けようとしてきている事であろう。
「まったく、元気だね」
肩を竦めるユート、バスターガンダムが早速だと謂わんばかりに、可成り遠方から自分の武装である“超高インパルス超射程狙撃ライフルを構えており、チャージが開始されている辺りが成程といえるだけの或る意味で優秀なザフトレッド。
「グゥゥゥレイトォォッ!」
そしてこれこそディアッカ・エルスマンという代名詞的な科白を叫びつつ、その引き金を引くと黄色いビームエフェクトを放ちながら、ユートが乗ったシルバーフレームへと真っ直ぐに飛ぶ。
「無駄だ無駄だ無駄なのだ!」
ユートが何処かの闇勇者みたいな事を言いながらバスターの一撃を受けると、不可思議なバリアによって黄色いビームは防がれていた。
「はぁぁっ!?」
意味が完全に理解不能なディアッカ・エルスマンは叫ぶが、これは魔法では無く【フルメタル・パニック】由来の技術で“ラムダ・ドライバ”というモノで、意志の力を斥力場として顕現をする事が可能だ。
“ラムダ・ドライバ”は使い方次第で如何様にも成る為、正しく攻防一体の武装だと云っても過言では無いが、何しろ扱い難くてコレを積んでいたAS――アームスレイブを彼の男は中々に使い熟せてはいなかった。
然しながらTーLINKシステムもそういう意味合いのシステムだし、意志の力をというなら魔法だってそういった大概な代物なだけに、ユートであればコレは扱い易い。
そして攻撃に転用するのに手足や武装が有ればイメージし易いけど、別にそんなモノが無くともフィールドを発生させて攻撃が可能。
「BANG!」
ユートは指鉄砲の形を作ると炸裂音を口ずさんで撃った仕種を行う、それは【フルメタルパニック】にてガウルンという敵がした行為。
「ぐわぁぁっ!?」
「ディアッカァァァッ!」
突然のバスターガンダム胸部が粉砕という又もや不可思議な現象が起き、余りにも未知が過ぎるからか怒りより何より勝るのは恐怖。
想像の埒外、全く理解が出来ない未知、それらが敵として現れる事などは考えるだに恐ろしい。
「何なんだ、何なんだよ貴様はぁぁぁぁぁっ!」
だからイザーク・ジュールも恐怖を拭い去るべく叫ぶだけでしかなくて、
「イザーク、落ち着いて下さい!」
「ニコル、これが落ち着いていられるか! 宇宙空間で火を燃やしたり竜巻を発生させたり、あまつさえ見えない壁に見えない弾丸だと?」
「……撤退しましょう」
「なにぃ!?」
「ディアッカのバスターも中破、僕達の機体も大なり小なりダメージが有ります。そして相手は未知の技術を持つ意味不明な機体。撤退したとしても決して叱責は受けませんよ」
「俺がバスターを連れて行く。ニコルはアスランに連絡をしろ!」
何やら慌ただしく撤退をして行ったZAFT連中を見送るユート、其処へまるで待っていましたとばかりに通信が入った。
〔ユート!〕
「どうした、マリュー?」
相手はマリュー・ラミアス。
〔キラ君が、イージス相手に苦戦をしているわ。しかもバッテリー切れでフェイズシフト・ダウンに陥ってしまったのよ!〕
「判った、すぐに向かう」
フェイズシフト・ダウンは割と前半では起こしていたが、バッテリー残量がPS装甲の励起に足りなくなったら落ちる仕組みで、バッテリーが空っけつに成っている訳では決してないから暫くならば動くだけは可能だ。
実際、原典でもバッテリーが切れたとか言っていた割に戦闘は継続していた。
「アレは!」
イージスガンダムがスキュラだったかに変形をして、原典での通りにストライクガンダムをガッシリと掴み上げて移動をしている場面らしい。
「そうか、僕が居た分は原典よりストレスやプレッシャーが乗し掛からなかったからか、戦場での一人切りな状態+親友が相手と云うプレッシャーに圧し負けて、無様を晒してしまったって訳か」
介入すれば全てが丸く収まって上手く回るという訳でも無い。
「悪いがアスラン・ザラ、君の思惑通りにキラ・ヤマトもストライクガンダムも渡す気は無い!」
魔砲システムの負荷で両腕は喪った訳だけど、それで闘えなくなる程度の戦歴では無かった。
「くっ、イザーク達が抑えていた筈が! まさかあの三人が斃されたのか? 両腕を喪っているなら落とされた訳じゃ無いのか……」
アスラン・ザラが見たシルバーフレームは肩から下を左右共に砕かれてしまっており、これがZAFTの僚機だったのならば痛々しいダメージだと認識をしたであろう。
「ストライクガンダムもキラ・ヤマトも渡さん、返して貰うぞアスラン・ザラ!」
シルバーフレームが脚部を揮う。
「なっ!? 蹴りだと?」
武装されているなら兎も角、脚部に武装などは装備されていない、余りにも有り得ない行動に遂戦慄して動きを止めてしまう。
「隙有りだ! はぁっ! 脚だけど
ユートの使える村正抜刃は本来だと手刀により放つが、今回は“ラムダ・ドライバ”を使って放つ擬似的なモノだったから脚でもイケた。
“ラムダ・ドライバ”はイメージを表現が出来るというのは何処のZガンダムかと、バイオセンサーを装備したアレも『人の意志を表現する』機体と呼ばれていたし、イメージとは異なる別のモノではあるから別物と言えば別物だけど。
実際、ガウルンも機体内で指鉄砲を翳しながら『BANG!』と呟くだけで不可視の弾丸を放った。
彼にはイメージが出来ていたから、それに反して相良宗助は現実的が過ぎてイメージが力に成るというのがいまいち想像の範疇に無く、故にこそイメージも何も無いが兎に角
ユートは脚を刃に見立て、普段は腕を揮い手刀にて繰り出す“村正抜刃”を脚で放つイメージを、その刃をイージスガンダムに叩き付けて斬り裂く事を想像しながら蹴りを放ったのである。
「そんな莫迦な? PS装甲のボディが単なる蹴りで傷付けられただと!?」
「そういうシステムだからな」
「お前は!」
「アスラン・ザラだな? 僕の名はユート・O・スプリングフィールド、木星帝国の女皇の皇配って事に成っているが実質的な支配者だ」
「木星……帝国だって? 莫迦を言うな! 火星だって未だに完全な入植はされていないんだぞ。木星なんて、ファーストコーディネーターであるジョージ・グレンが行った切りだ!」
其処で羽鯨の化石を見付けたらしい、その話はユートも識っている。
ユートが以前に介入をした宇宙世紀で生命体の片鱗を見付けたのは、テテニス・ドゥガチによる宇宙外航での事で“エンジェル・コール”と名付けられたものの、それは危険な細菌だったからこそユートはテテニスの反対を押し切ってまでも消滅させる事にした。
「PS装甲とて完璧完全な訳じゃ無いのさ。抑々にして“ラムダ・ドライバ”は物理攻撃じゃないし」
「くっ、このぉ!」
ストライクガンダムの拘束を解除せざるを得なくなったイージスガンダム、サッとMAモードからMSモードに戻ってユートを――シルバーフレームを睨み付けて来る。
だがビームライフルを取り出す予備動作は無手――と言っても両腕は無いから脚技だけど――でも攻撃可能なシルバーフレームには遅い、ユートはシルバーフレームを操作して攻撃を放つ。
「クルダ流交殺法・影技、
本来は高速の蹴りを放って真空の刃を生じさせて斬る技だが、真空の刃の代わりに斥力場々の刃を発生させる事で似た攻撃を仕掛けていた。
「ぐぅっ!」
イージスガンダムの右手にビームライフルを持っていたが、その右腕を斬り落とされてしまった為に無防備な姿を晒してしまう。
「キラ! 俺と共に来い! お前はコーディネーターなんだぞ? 俺達の仲間なんだ! それなのに何故ナチュラル共と行くんだ!?」
「言った筈だよ、アスラン。アークエンジェルには僕の友達が居るんだ!」
「そんなの! お前は人が好いから良い様に利用をされているだけだ!」
「いやいや、他は兎も角としても闘いたく無いなら引っ込んでろと言いたいな」
横から言い合いを潰されてしまって少し気拙いアスラン・ザラ。
然しながらユートもちょっとだけ困っていた。
(参ったね、アーバレストやレーヴァテインは普通に使っていたから組み込んだが、斥力場を纏って闘うってのがこれだけ負担に成るとは)
先程の攻撃、即ち“村正抜刃”と“爪刀”によってシルバーフレームの脚は既に限界がキている。
(脆そうに見えて初めから組み込む事を前提にして造られた機体と、思い付きで適当に組み込んだ機体との差が出たんだろうかね?)
正直に云えば今回は帰って欲しい、というよりは出来たら連中を撃墜=しなせるのは流石に勿体無い、男に関しては余り温情を与えないユートではあるが戦力に成るならば問題も無い。
三隻同盟……には恐らくしないだろうけれど、いずれにしてもナチュラルもコーディネーターも関係無い、一つの目的の為にブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエルとコーディネーター極上原理主義パトリック・ザラ、そしてラスボスとして立ち塞がるアル・ダ・フラガのクローン体である処のラウ・ル・クルーゼを斃さねばならない。
(ラウ・ル・クルーゼはナチュラルの筈だよな、アル・ダ・フラガが自分より優秀なクローンなんて造る器は無かろうし、コーディネーターとして複製はしていないだろうからな)
それでいながらスーパーコーディネーターとして造られたキラ・ヤマトを凌駕しかねない実力、軍人として初めから鍛えていればどうか判らなかったが、少なくとも彼は不断の努力によりキラ・ヤマトと同等か下手したら勝る能力を獲た。
そういう意味では彼も死なすには惜しいのだ。
「今、退くなら追わない。処で、デュエルガンダムとバスターガンダムとブリッツガンダムは既に退いたけどな?」
「な、に……」
確かにユートが、シルバーフレームが此処に居るからにはイザーク達が敗れたか、或いは撤退をしたかのいずれかである。
「くそっ!」
ユートの科白に已むを得ず即撤退を選んだらしいアスラン・ザラは、イージスガンダムをヴェサリウス乃至はローラシア級に戻るべく後退をして行き、ユートは取り敢えず胸を撫で下ろして自身のシルバーフレームの修復に気を揉むのだった。
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