ガンダムシリーズ【魔を滅する転生頑ーSEEDー】   作:月乃杜

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第二章:虚空
第9話:赤と銀


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 アークエンジェルに戻ったユートとキラ・ヤマトの乗るシルバーフレームとストライクガンダムだが、マリュー・ラミアスや他のブリッジクルーは改めて中破をしていたシルバーフレームに驚きの表情を隠せずにいた。

 

 ブリッジに戻って来たユートに、心配顔をしているマリュー・ラミアスが声掛けをしてくる。

 

「ユート、大丈夫なの? モニタで視ていたけれど何だか自壊していなかったかしら?」

 

「していたよ。どうにも思った以上に脆かったみたいでさ、せめてPS装甲であったなら或いは保ったかも知れないけど、軽いのが取り柄な発泡金属だからな。魔導金属や神秘金属なら問題も無かったとは思うけど、せめてガンダリウム合金くらいは欲しい処だよな」

 

「それは暗にPS装甲が欲しいと強請(ねだ)られているのかしら?」

 

「まぁね」

 

「無理よ。PS装甲は確かに私や私のチームで開発を完成したけれど、私の私物では無い連合の機密なんだから勝手に渡せる訳も無いわ」

 

 ガンダリウム合金が何なのかは理解が出来てはいないが、少なくともPS装甲を与えるなんて事が出来る筈も無いのは地球連合の軍人としては至極真っ当な事を口にする。

 

「だけどな、既にZAFTが“G”の現物を持っていった以上、向こうでも造られるんだから最早機密もへったくれも無いだろうに」

 

「それはそうなんだけど」

 

 マリュー・ラミアスも理解はしているのだけど大西洋連邦の一員として、地球連合の軍人としての職業倫理観が頑として譲れない。

 

 技術士官として大尉にまで昇進をしたというのは伊達では無く、矜持に関しては地球連合軍とは思えないくらいに高い様だ。

 

 流石は、彼のハルバートン提督の薫陶を受けているだけはあるだろう。

 

「まさか、貴方が私とその……仲好く成ったのってPS装甲が目当てだったりはしないわよね?」

 

「それこそ、まさかだな。だけど折角、開発者が居るなら頼みたくもなるだろう? それに君だって気にはなるんじゃないか? シルバーフレームの事は……さ。単なる知り合い以上に仲好くしている僕が乗っているから訊きたいと、マリューは思ったりしないのかな?」

 

「はぁ、負けたわ。確かにシルバーフレームに関しては一技術士官としてみれば気になるものね。だけどPS装甲は私の一存でどうにかなるものでは無いから無理なものは無理よ」

 

「判っているさ、それも少しは状況が落ち着いてからになるからな」

 

「ええ、今は早くアルテミスに行かないとね」

 

 ユートとしてはガルシアの性格から会いたくも無いが、アークエンジェル側からしたら同じ連合という事で受け容れられると考えている。

 

「アルテミスな」

 

「まだ反対?」

 

「言ったろ? アルテミスの司令官ガルシアって奴の性格から間違いなくいちゃもんを付けてくるんだって、だからアークエンジェルがアルテミスに居る間は離れようと思う」

 

「え?」

 

「ナタル・バジルール少尉が自慢のアルテミス、だったら護衛のモビルスーツもストライクガンダムだけで構うまいよ。僕としちゃ早急にシルバーフレームの修復をしてしまいたい。すぐ後ろにはどうやらジャンク屋組合の連中が居るみたいだ、彼らに場所や資財を借りて修復をしてくるさ」

 

 ナタル・バジルール少尉の科白を大いに皮肉りながら言うと、彼女もそれに気付いたらしくムッとした表情で睨んで来た。

 

 然しながら、自分がアルテミスの安全性というのを随分強調していたからには文句も言えない。

 

「今回は修復だけだから時間はそう掛からない、尤も要らないシステムは外さないといけないか」

 

 魔砲システムは余り合わなかった様だったし、アレはもう外してしまった方が良いだろう。

 

 付けていても無駄に重くなる。

 

(ラムダ・ドライバは問題無いな。とはいえだ、レポートを書いて木星のテッサに出さないとね)

 

 テッサ――テレサ・テスタロッサ准将、木星帝国に於ける技術士官であり強襲型巡洋艦トゥアハー・デ・ダナンの艦長というか提督。

 

 嘗ての世界では大佐で艦長を務めていたけど、地球の海を航る為の潜水艦に今と同じ名前を付けており、真銀――ミスリルという組織内でそれなりの地位に就いても居た。

 

 ユートが持つラムダ・ドライバは彼女から齎らされた物で、『使うのは一向に構わないですけれど、使い勝手に関してのレポートくらいは出して下さいね』――と笑顔で言われている。

 

 尚、現代に於いて強襲巡洋艦は存在しない型の艦ではあるが、ユートが関わった宇宙世紀の世界ではアーガマがこれに該当していた。

 

 テレサ・テスタロッサが艦長を務めていた物とて強襲揚陸潜水艦で、宇宙世紀の世界の一年戦争で活躍をしたペガサス級なホワイトベースも強襲揚陸艦であり巡洋艦では無い。

 

 どうでも良いけど、今乗っているアークエンジェルは艦種は強襲機動特装艦だとか。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アークエンジェルを離れたユートはそれなりに後方で地球を目指す船、ロウ・ギュールが居るであろう“ホーム”へと向かってシルバーフレームで宇宙空間を飛翔している。

 

「見付けた、あれがロウ・ギュールが所属しているジャンク屋の船の“ホーム”だな?」

 

 ロウ・ギュールもアストレイを手に入れた者、ナチュラル用のOSを構築する為のレッドフレームを使っているが、別にキラ・ヤマト達みたいにOSを捏ね繰り回した訳では無くて、サポートAIがOSに対して色々とやっているらしい。

 

「さぁ、気付いたろうな?」

 

〔おい、其処の銀色!〕

 

「此方は汎木星圏統合法人【ユピテル財団】理事会の理事長でユート・オガタ・スプリングフィールド、乗機はオーブ連合首長国のガンダムアストレイ・シルバーフレームだ。此方側に攻撃の意志は無い、見ての通り満身創痍で修復を行いたいが場所が無くってね? ジャンク屋組合は中立の筈だから場所を借りたい」

 

 先程の声はロウ・ギュール、想像以上に元気が有り余っているらしい。

 

〔莫迦な! 木星に人が住んでいるなど聴いた事がありませんよ! 況してや財団に理事長とか、有り得ません!〕

 

 メンバーに男は二人、確かこれはリーアム? だったであろうか?

 

〔修復したいという話だけど、貴方のその機体はどうしたのかしらね?〕

 

 大人っぽい喋りの女性、プロフェッサーとか呼ばれていたか?

 

「ヘリオポリスで拾った。まぁ、バラけていたから組み立てはしたがね」

 

〔所属が木星では私達も照会のしようが無いわ、序でにメリットも無いから御断りしたいと言ったらどうするの?〕

 

「どうもしない、ジャンク屋としては下の下だったと諦めるさ。とはいえ情けは他人の為成らず、そうやって突き放した結果としてピンチの時には見捨てられない様にな? 中立だからって必ずしも狙われない訳じゃ無いんだから……さ」

 

 恐らくはレッドフレームの事で狙われる可能性を考えているのだろうが、そんな事など知った事かと謂わんばかりに再びロウ・ギュールが通信の会話へと加わってくる。

 

〔アンタはそのシルバーフレームを直したいだけなんだよな?〕

 

「勿論だ。少々、無理な改造をしたから両腕が砕けてしまってね。右脚も蹴りを行った結果、半壊して重力下では自立しないくらいだ」

 

〔判った、良いぜ。壊れた機械が目の前に有んのに放って置くなんざジャンク屋の矜持に悖る!〕

 

〔ちょ、ちょっと、ロウ!?〕

 

 ロウ・ギュールの後の若い女性の声は樹里か?

 

「では着艦させて貰う」

 

 ユートはホームの格納庫へシルバーフレームを入れると、コックピットハッチを開いて重力など無いに等しいからパッと飛び降りた。

 

「改めて、汎木星圏統合法人【ユピテル財団】理事会の理事長であるユート・オガタ・スプリングフィールド、序でに第零傭兵団の【スプリングフィールド】の団長も務めているな」

 

「へぇ、アンタは傭兵かぁ! 俺はジャンク屋のロウ・ギュールだ宜しくな」

 

「ああ、宜しくギュール」

 

「チッチ! ロウで良いぜ」

 

「判った、ロウ。僕もユートで」

 

「応よ!」

 

 快活で表裏の無い性格だ。

 

 すぐにも意気投合をしてしまったジャンク屋のロウ・ギュールから、奥の方から歩いてやって来た仲間を続けざまに紹介される。

 

 黒髪のロン毛で優男はコーディネーターであるリーアム・ガーフィールド、茶髪で焦茶な瞳を持つ活発そうな少女はナチュラルで山吹樹里。

 

 それに怠惰そうで眼鏡を掛けた白衣の女性は、矢張りナチュラルで実はロウ・ギュール達も本名を知らないらしく、普段からプロフェッサーと呼んでいるし呼ばせてもいるらしい。

 

「んで、こいつは8だ」

 

 トランクにも見えるそれは割かし高度な人工知能搭載コンピュータであり、量子型コンピュータが主流なこの世界では既に珍しい前世代型。

 

 ナチュラルのロウ・ギュールがレッドフレームを操縦出来るのは、飽く迄もOSが未成熟でしかなかった頃の話だが8が補佐していたから。

 

「で、あれが僕を受け容れた理由の一つかな?」

 

 シルバーフレームのすぐ側に赤いフレームを持ったアストレイ、即ちロウ・ギュールが手にしたガンダムアストレイ・レッドフレーム。

 

「君らも僕から遅れて崩壊したヘリオポリスからアストレイを手に入れた訳だ。だから、フレームの色違いなシルバーフレームを見て決めたって処で合っているか?」

 

「まぁ、間違っちゃいねーよ。けどな、俺の仕事はジャンク屋だぜ? 壊れた機械が目の前に有んのに放って置けねーのもマジなんだよ」

 

「そうか。赤いフレームだからレッドフレームって処だろうな」

 

「そうだぜ! ってか、アンタもシルバーフレームとか呼んでんだな?」

 

「銀色だからな。でも実はこいつはPー05、プロトアストレイの五号機で実際のフレームの色は灰、詰まりはグレーフレームだったんだよな。趣味じゃ無いから銀色に塗り替えたんだよ。金色は一号機であるPー01がゴールドフレームだからさ」

 

 四方山話が捗るユートとロウ・ギュールだが、プロフェッサーは怪しげな瞳で見詰めてくる。

 

「ふ~ん、随分と詳しいわね」

 

「アストレイはオーブ連合首長国が自国用に造った最新鋭機、詳しい事を識っているのは主導をしたサハク家か設計をしたエリカ・シモンズか……だからな。木星圏の人間だとか言いながら詳しいのは腑に落ちないと?」

 

「……下手に突っついたら藪蛇になりそうだから止めとくわ」

 

「さよけ」

 

 事実、プロフェッサーはオーブのモルゲンレーテ社に勤めるエリカ・シモンズとは旧友の間柄、アストレイの回収を彼女に頼まれてロウ・ギュール達を誘導をしたのがプロフェッサーだった。

 

 勿論だが報酬は獲ている、即ちレッドフレームの現物こそがエリカ・シモンズの示した報酬。

 

 既にオーブ本国のモルゲンレーテ本社に於いてレッドフレームをベースに、M1アストレイとしてナチュラル用のOSを除けば完成しているにも等しくて、実際にOSを換えればすぐにもオーブ本国に配備が可能なレベルで機体が量産されている。

 

「処でよ、いったいどうやって修理するんだ?」

 

 修理の為のパーツは有るのだろうか? などと心配をしていた。

 

「今時の機動兵器はブロック型が主流だからな、各予備パーツは予め造って置いてるのさ」

 

 ユートは亜空間ポケットからシルバーフレームの両腕と右脚を出す。

 

『『なっ!?』』

 

 驚くロウ・ギュール一行を置いてきぼりにしてユートは、機材を巧みに操作をしてシルバーフレームの両腕を肩ブロックから外して新しい両腕を合着させると、その次は少し浮かせた状態で右脚を太股から丸ごと外してしまうと、矢張り新しい右脚を合着させてやった。

 

「本職の俺も驚く早業だな? ブロック化されているとはいえ、まさか僅か一時間か其処らで機体の修復を完了させるなんてよ!」

 

 感嘆な表情なロウ・ギュール、壊れた機械が直ったのが心底に嬉しいといった顔で視ている。

 

 ユートは細かいメンテナンスもしなければ成らないから、未だにシルバーフレームの完全な修復とは云えなかったけど、それでも余りに素直に言ってくるロウ・ギュールとハイタッチをした。

 

「取り敢えず形ばかりは完成した。それにしてもアストレイが二機も並んでいれば圧巻だね」

 

 ロウ・ギュールの赤いレッドフレームとユートの銀色のシルバーフレーム、確かに色違いとはいえ二機のモビルスーツが並べば圧巻だ。

 

「でよ、あの羽根っぽいバックパックは何だ? 他にも色々と改造をしていそうだよな?」

 

「バックパックは“アルビオン・ドライブ”って云うシステムだ。理論上というか理想値でしかないが光速にすら達する航行速度を出せる」

 

「マジかよ!」

 

 ミノフスキードライブであるなら亜光速止まりだったが、ヴォワチュール・リュミエールの技術と併せて構築をしたこれなら、飽く迄も理想値でしか無いけどMSでなら光速を出せる筈だ。

 

 尤も、何の準備もしないで人型の侭に光速を出したら木端微塵のミジンコちゃんに成るけれど。

 

「心臓部は聴かなかった事にするのか、若しくは本当に訊かないかだが?」

 

「ってこたぁよ、バッテリーじゃね~んだな?」

 

 頷くユートにリーアム・ガーフィールドが驚きの表情で問う。

 

「まさか、核エンジンを? 否、有り得ない! ニュートロンジャマーにより核は使えません!」

 

「木星にまでニュートロンジャマーは撒けまい」

 

「そ、それはそうですが! 然し地球に来たなら結局は同じ筈!」

 

 頭が良いリーアム・ガーフィールドなだけに、頭が固いとも云うべきなのか思考が至らない。

 

「ニュートロンジャマーが抑えるのは核分裂だ。僕のシルバーフレームに搭載しているエンジンは核融合炉、その三世代発展型に当たるハイパー・プラズマリアクターだ」

 

「そ、そんな莫迦な!?」

 

「木星住まいを舐めるなよ?」

 

 何しろ、前のU.C.世界では木星にこそ核融合に必要な素材が存在していたのだから。

 

「言っておくが、場所代代わりに教えたけど他言は無用だぞ? 下手に漏らせば君らも口封じされてしまうだろうし、僕は襲って来るなら木星帝国の総力を挙げて地球連合もプラントも亡ぼすぞ」

 

「も、木星……帝国?」

 

「フフ、自らの死と引き換えに地球圏の滅亡を願うジャンク屋か」

 

 勿論、全員が首を横に振る。

 

「他に何かあんのか?」

 

 話題を変えようと、ロウ・ギュールが別の機能に付いて訊ねて来た。

 

「“ラムダ・ドライバ”」

 

「ラムダ・ドライバ? う~ん、名前だけじゃよく判んねーな?」

 

 ロウ・ギュールは首を傾げるが、プロフェッサーは目を見開いていた。

 

斥力(λ)を生成する装置?」

 

「へぇ、よく判ったねプロフェッサー。その通りだよ」

 

 プロフェッサーの答えは満点を上げても構わないもの、山吹樹里が相手なら間違いなく『大変結構』と言ってしまっていたであろう。

 

「ん~? 斥力って何?」

 

「反発力、引力の反対かな?」

 

「へ? それが凄いの?」

 

 山吹樹里は訳が全く解らないと、う~んう~んと唸りながら呟いている。

 

「誤解を覚悟で云うなら、斥力を攻撃力や防御力に換えてしまえる装置なんだ。要は心に念じる見えない刃や盾を創れるって話だよ」

 

「え、割と凄かったわ」

 

 単純で且つ抑々が物理学やら何やらに詳しくない山吹樹里、どうやら取り敢えずざっくりとした説明を聴いて納得をしたらしい。

 

 おバカな程可愛いとは云うが自分を誤魔化している様は確かに可愛らしくて、ロウ・ギュールへと思慕を恋慕を懐いているので無ければコナを掛けたのに……と、ユートとしては少しだけ残念に思いながらも説明を続ける。

 

「シルバーフレームに装備したハイパー・プラズマリアクターも“ラムダ・ドライバ”もアルビオン・ドライブも、全ては木星帝国の機密だと云っても過言じゃないから絶対に余所で言わない様にして貰いたい。亡びは本意じゃ無いだろう?」

 

 これらを教えたのは『これからも宜しくね』、そんなユートなりの誠意ではあるものの機密なのは変わらないのだ、だからこそユートはニッコリと笑顔という名の圧を掛けるのであった。

 

 

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