「家建てるか」
「はい?家を建てる?」
野原と呼ばれる拠点の主ふりゃが素っ頓狂な事を言い出した事に、それを横で聞いた黄金の騎士シノートは思わずふりゃにオウム返しをした。
「うん。家を建てる」
「えーっと、建築のノウハウとかあります?」
「あるじゃん。アレ自分が建てた家だし」
そう言ってふりゃが指さす先には家と言うには憚れるのが建っている。
草を編んで雨が入り込むのを防いでるが最低限と言うべきもので、いつ雨漏りしてもおかしくない建物。
それを言い切るふりゃに、シノートは眉をしかめた。
「アレ、家って言いません」
この拠点の主に苦言を呈せる程度には立場があるシノートは、家では無いと乾いた口調で否定した。
「そう?発電機大量に置いてるけど、ショートしてないし大丈夫だって」
あっけらかんと、本気で分からない表情をしながらそう言い返してきて、発電機を危険な所に設置している主のおおらかさと雑な行ないにシノートは思わず頭を掻いた。
「えぇ~……」
「ていうかさ、指定してくれないと簡単に作れる草の家になるって」
酷く面倒くさがりが嫌な所で作用している。
シノートは、ふりゃがそんな状態だと考えていた。
自分の家だけを豪華に、とはしない。
それどころか野ざらしにベッド置いて寝る程の横着する人だ。
「はーいはーい!だったら指定させてほしい!」
そう言って宙から声が聞こえてきた。
「ん。ハンソーか。どんな家が良いの?」
ふりゃはハンソーの言葉に反応した。
風のルルウィ様を信仰する事で降臨する使徒の黒天使。
黒い翼と黒い服を纏い、自由を愛するルルウィと同様、妖精のように宙を舞うのが特徴な存在。
「まず弓矢の置き場と的!風通しの良さも欲しいね!宙から出て宙から帰って来られる作り!」
「ふむふむ。的ってどんな感じ?遠いとか当てにくい所を設置とか?」
「的はアンドロイドに決まってるじゃん!」
『マスター。提案します。この女を的にした家を要求する』
「はぁ……」
ハンソーの声を聞いた事でアンドロイドが反応し、ハンソーの要求と同じことを言ってきた。
的は逆だが、この対立は分かっていただけにシノートはため息をついた。
「あ?機械風情が何口聞いてんの」
『感情に振り回される言動が見られます。非合理的。』
「あーあ。機械は可哀想ねぇ夢も自由もなーんにも無いから」
『挑発を確認。非合理的で非効率な考えを抱く者からの言葉に涙を流せない身体である事を嘆きます』
機械のマニ様を信仰する事で降臨する使徒のアンドロイド。
魔道生命体である彼は、黒天使とは馬が合わない。
「せっかくふりゃさんがやる気出してるのに……」
この険悪な仲なのは致し方ないが、せっかく家を作ろうとしてるのに喧嘩しないで欲しいとシノートは1人ぼやいた。
「まあ君ら殺し合いもほどほどにねぇ」
「勝ったらコイツ的にさせてね!」
『敗北?其れはアナタに送られる言葉です』
売り言葉に買い言葉。
ハンソーは短弓を構え、アンドロイドはアサルトライフルのトリガーに指を掛けた。
「いい加減にしなさい!!」
シノートが地面を殴りつけて地震を引き起こした。
その衝撃は殴った箇所を中心に小さな地割れを引き起こし、地に居るアンドロイドはその衝撃に対応させられた。一方でハンソーは宙に居る為に、シノートが引き起こした地震の影響を受けないでいる。
「ちょっとシノート、アンタも射るわよ?」
「私の攻撃、アナタにとって天敵なの忘れてないわよね……?」
「うっ」
大地のオパートス様を信仰する事によって降臨する使徒、黄金の騎士。
その力は、攻撃した対象を地に縫い付ける力がある。
いくら宙にいるといえど、ただの石礫でも命中した瞬間、地に縫い付けられる力を持っている事を知っているハンソーは、シノートの脅しの声に思わず言葉を詰まらせた。
『邪魔をするならアナタも対象です』
「私にそれが効くと思っての発言で?」
『……戦闘は非合理的。停戦を要求する』
「それでよろしい」
タンクと呼ぶべき硬さを持つ黄金の騎士相手に銃撃しても、その銃撃を正面から受けた上で突進してくる。
それを把握してるアンドロイドは即時降伏した。
「ったく……あれふりゃさん?」
「ん?ああもう家作ったよ」
「……」
「……アンタ住んだら?」
『否定。黒天使が住む事を推奨する』
使徒同士が争ってる間、どこ吹く風と言わんばかりに建築に精を出していたふりゃは、フェンスを壁にして、藁人形に的を付けた家とおびただしい数の矢とアサルトライフルの弾を生成していた。