G線上のオーガ 作:のの
今の時代SNSで出会うという話もあるくらいに、チャットで交流を深めるというのはよくある話であった。一昔前にもメル友という、電子メールでやり取りで交流を深めるというものがあった。今はそれがSNSに代わったということだ。
そんな隼人は、誰も登録のされていないSNSであったが、人生で初めて登録された人物がいた。それが、“古城姫香”であった。お互い体育の授業をサボったことで、仲を深めるという学生としては良くないことだろうが、隼人としては生まれて初めての友人ということで、非常に嬉しく感じていた。
隼人は姫香一人への返信のため、そこまで時間はかからないのだが、姫香も意外にも返信が速かったため、話が捗っていた。
しかしながら、隼人は最初のころ上手く返信が出来ていなかったので、単語で終わるような短さであったため、姫香に放課後呼び出されて説教をされた。隼人自身は、姫香とのコミュニケーションが上手く取れていると思っていたようだが、一方的な思い込みであったようで、それからは、話題を膨らませるように努力していた。
説教された時、普段明るく笑顔の絶えない美少女である姫香が、目に光がなく、まるで漆黒の目をしていた。あれは、殺しをしている隼人にしても恐怖を感じるほどであった。
美人が怒ると怖い、という話を聞いたことがあったが、隼人はそれを体験し、二度と怒らせないようにしようと、心の中で決意したのだった。
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早朝のトレーニングを終えると姫香からメッセージが来ていた。隼人も慣れた手つきで返信をした。
『長瀬君、今日は健康診断だから体操服忘れずにね♪』
『分かっている。ちゃんと、朝食は摂ったか?』
『うん、もちろんだよ。あ、体重測定するから朝食抜いた方が良かったかも…』
『別に問題ないだろう。誤差の範囲内だ』
『本当に乙女心の理解が足りないなぁ~でも、スタイルの維持に気を遣っているのは本当だよ!』
『そうだな、古城のスタイルからは日々の努力を感じられる』
返信がスムーズに返ってきていたのに、突如として返信が来なくなった。何か変な返信をしてしまったか、考えてみたが特に思い至らなかった。日々トレーニングに励んでいる隼人は、服の上からでしか見たことがないが、姫香のスタイルが毎日の運動と食事管理の徹底による賜物だと、容易に理解していた。
『ありがと』
姫香は一言だけの感謝の言葉を返信してきた。以前、姫香が隼人に注意したことと同じことであったため、何か理由があるのかと考えてみたが、人との関わりがない隼人には答えを出すことが出来なかった。
姫香の返信内容に悶々としながらも、学校に行った。
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健康診断の日。
高校生にもなると、体の成長が止まっている人も増えきている。ワクワクする者もいれば、一年間で全く身長が伸びなかった、と絶望する者もいる。男子にとって、身長が伸びているか、どうかが重要なポイントと言ってもいい。
しかしながら、女子の場合は違う。身長が伸びることがないため、体重が増えていないか、という戦いになるのだ。
男子と女子で競い合うポイントがやや違うのが、高校の健康診断といってもいいだろう。
隼人のクラスも同様で、既に身長が止まっている、と諦めている者もいれば身長の伸びに期待で胸を膨らませている者もいた。
男子女子別れて着替えながら、友人同士で身長の話をしていた。隼人は更衣室で素早く着替えて、外に出ていた。
自分がいてもクラスの空気を悪くする、という配慮の元だ。
隼人は一番最初であるため、特に並ぶようなこともなく素早く、身長、体重を測定する事が出来た。悲しくも身長は伸びることが無かったが、体重が20kg増えていた。体感ではあるが、昨年度と腹筋の割れぐらいからも体脂肪が減っていないので、筋量が増えたのだろうと推測した。
身体測定を終えると、最後の項目である血液検査であった。一昔の高校では、血液検査という項目は“無かった”のだが、いつからか、一部の人間には必須項目となっていた。
隼人は、何故、一部の人間の血液検査が“必須”なのかは当然理解していた。
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隼人には血液検査を行う必要性がないため、身体測定を終えると特にやることもないので、大人しく更衣室に戻っていた。流石にクラス全員は着替え終えて、身体測定をしているので、隼人以外一人もいなかった。
隼人は少しラッキー、と感じていた。なぜなら、クラスの男子たちがジロジロと隼人の彫刻のような筋肉を見てくるため、まるで動物園のパンダのような気分になるからだ。
誰かが戻ってこないうちに、と素早く着替えていると、ピロン、とスマホから着信音が鳴った。
『長瀬くん、私、今年も血液検査あったよぉ…。だけどね検査毎年受けさせられているのに、特に健康への異常は無いんだよね……』
その受信内容を見て、隼人の目は大きく開いた。まるで、頭を殴られたようなショックが全身を貫いていた。
(いや、まだ“確定”というわけではない。落ち着け……)
『なら今年も異常は無いんじゃないか?』
『そうかもだけど…。少し不安になるよねぇ。だって、この学校でも血液検査する人って数人だよ?』
隼人の高校は3学年合わせると、千人を超えているので、血液検査をする人物は珍しいと言えるだろう。
『どこかで聞いた話だが、血液検査するのは一%程度って話だからな。』
『うわぁ~マジかぁ。血抜かれるの好きじゃないんだよなぁ』
採血されることを好きな人は恐らく多くは無いだろう。血を抜かれて、貧血になることはない、と言われている。しかし、視界が暗くなったり・吐き気・冷や汗などの症状が現れる場合がある。これは、血管迷走神経反射と言われており、意外と多くの人間が該当するため採血中や採血後は安静にする必要がある。
『まぁ、他の人より健康診断をより正確に出来ていると思えば、お得だと感じるんじゃないか?』
『え~納得出来ない!それより、長瀬君は、身長とか伸びていた?』
『いや、全く。体重は増えていたけど』
『うわ、それ女の子だったらNGなやつだ……。実は私も少し増えていた……』
姫香の体重が少し増えているとのことだが、隼人的には特段気にするようなこともないと思っていた。健康的な肉付をしているし、十分に鍛えらた体をしているのだから。
しかし、乙女心とは理解しにくいものであり、こういう時にどう返信すればいいのか、隼人にはまだ理解が足りていなかった。
『少しなら気にしなくてもいいんじゃいと思うが?』
『で、でも全部がお腹とかに付いたわけじゃないと思うんだよ。だって、ほら、バスト!5cmも大きくなっていたし!』
メッセージですら姫香の焦りようが目に浮かんだ。
隼人がどう返信しようか、悩んでいると、姫香は高校に進学してから今までの一年間で、自身がどう体が変化したかの生々しい内容が、長文で送られてきた。
どうやら、それほど熱弁するほどに、隼人に太ったと誤解されたくないようであった。
『そんなに気にしなくてもいい。俺は胸の大きい女が好きだ』
隼人は姫香の体重が増えた原因が胸のせいだと言っているので、自分が“女の大きな胸”が好きだと申告した。
送信してすぐに既読が付いたが、それ以降返信がこなかった。
(乙女心っていうのは、難しいものだな……)
この件から女子に体重の話題は、二度としないと決意した隼人であった。