G線上のオーガ 作:のの
隼人は満足そうな顔をしている姫香の横を歩いていた。彼女は次の目的地を言わないが、確かな足取りで歩いているため、大人しく着いて行った。
「いや~お腹一杯だよ!」
「そりゃ、特盛食べたからな。というか、よくアレだけ食べれるな…」
「にゃはは、私って、普段は内緒にしているんだけど、かなり大食いなんだよね」
姫香はお腹を叩いて杯だよ!」
「そりゃ、特盛食べたからな。というか、よくアレだけ食べれるな…」
「にゃはは、私って、普段は内緒にしているんだけど、かなり大食いなんだよね」
隼人は彼女のくびれているウエストを見やった。あの細い腹にどうやって、先ほどの量が入るのか、不思議だった。
姫香は、ンーっと、両手を伸ばして背筋をピーンっと張った。
「長瀬君、食べたから少し動いていかない?」
「何をするんだ?」
「そりゃあ!コレだよ!」
姫香は剣道の中段構えをしている。どうやら、彼女は隼人と剣道をしたい、とのことだった。
「でも、どこでやるんだよ?」
「そりゃあ、私の家だよ!」
「古城さんの家?」
「うん、道場もあるし、ココから近いんだよね。それに……長瀬君の実力知りたかったからね♪」
「……俺は、剣道初心者だぞ?古城さんのご期待に応えられるとは思えないが?」
「謙遜はいいよ。剣もそれなりに扱えるんでしょう?」
姫香の目からは隼人を逃がさない、と言わんばかりの肉食獣のような目をしたいた。彼女は普段からは天真爛漫な美少女といった印象であったが、剣のことになると性格が変わるようであった。それだけ、剣道に対して誠実なのだろう。
「多少出来るくらいだ。それに剣道のルールとかでは――」
「寸止め」
「え?」
「防具無しの寸止めでやろうよ。その方が長瀬君も慣れてそうだからね」
「分かった…」
「お、やけに素直だね!そういうところ、好きだよ♪」
「す、好き…。ん、んん!!なんで、剣使えるって分かった?」
姫香から好きと言われて少し動揺した隼人が咳払いをして切り替えた。隼人を揶揄った本人は、くすくすと楽しそうに笑っている。
「長瀬君が武道や格闘技をかなりのレベルで修めているのは、最初から分かっていたよ?でも、剣まで使えるって知ったのは、時計塔で私の手を握った時だよ。あのタコは、剣を握らないと出来ないからね♪」
名推理だろう、と言わんばかりにドヤ顔をしていた。実際に姫香の予想は概ね当たっており、剣ではなく少し短い短剣であるのだが。
「大体、正解だ。それで、古城さんは、どのくらいの実力なんだ?」
「あれ?もしかして、知らないの……」
「何が?」
「私、去年の全国大会優勝しているんだけど……」
「え、そうなのか?」
スマホで確認してみると、確かに姫香の顔付きで優勝している写真が見つかった。
記事には、こう記載されていた。
『公式戦無敗の女王』、『美しすぎる剣士』
彼女の記事は、それこそ数年前から取り上げられていた。
「ね?私、強いから手加減は不要だよ?」
「バレていたか。そこまで強いと分かれば、全力でいかせてもらおうかな」
隼人は、普通の人間の軽く数倍以上ある膂力を誇っているため、力として全力は出さないが、技として全力を持って姫香に挑もうと決意した。
「お、嬉しいね!もし、私に勝てたら……何でも好きなことしてあげるよ♪」
絶対に負けることが無い、と確信しているような笑みを浮かべていた。隼人としても日頃殺し屋としての仕事をこなしているのだから、負ける気は無かった。何がなんでも勝ってやる、という気分であった。
「そうか。なら勝ったら……俺に弁当を作ってくれ」
「え、そんなのでいいの?そういう時は、『へ、へ、へ!お前の厭らしい体を頂戴するぜ!』って言わないとダメなんだよ」
「え、そうなのか?」
「うん、気を付けてよ?」
隼人は、姫香の発言を真に受けていた。こういう返しがユーモアの一つなのだと、一人納得していた。
「プクッ……フフフ」
「何、笑っているんだ?」
「ん~な・い・しょ♪お、そろそろ着くよ!」
指を差した方向を見ると、そこには和風の造りの家があり、そして敷地内には剣道の道場も確かにあった。