Re:トリガーには無限の可能性があるんだ!   作:アルピ交通事務局

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第6話

 

「っと、椎茸の戻し汁が出来たか」

 

 ボーダーに正式に入隊することが決まり母さんの説得に成功した。玉狛支部で干し椎茸の戻し汁を作っている。

 

「桃仁、牡丹被、芍薬、茯苓、桂皮……コリアンダー、クミン、カルダモン、ナツメグ……モリンガも入れるか……」

 

「おさむ、なにをしているんだ?」

 

「薬膳スープ的なのを作っている」

 

 玉狛支部にはパイセン達は居ない。普通に学校とかがある。なので、やれることはやっておこうとスープを作っている。

 お子様S級隊員こと陽太郎が俺がキッチンでなにかをしているのでなにをしているのかと聞いてくるのでスープを作っているという。

 

「ただいま〜……って、あれ?修くんだけ?」

 

「千佳と空閑も居ますよ」

 

「そうなんだ……なにを作ってるの?」

 

「薬膳スープ的なのです」

 

 玉狛支部に宇佐美さんが帰ってきた。

 俺がグツグツと鍋を沸騰させているのでなにを作っているのか聞いてきたので薬膳スープ的なのを作っていると言えば驚かれた。

 

「修くん、料理が出来るんだ」

 

「出来ますけど冷蔵庫の食材でパパっと適当に作る的なのは苦手です。限られた食材で数日分の料理を作るとかなら出来ますけど」

 

「まぁ、料理をすると料理が出来るは違うからね……で、なんでスープなの?」

 

「健康維持の為に薬膳スープを飲んでるんですよ……12月も中盤でここから一気に寒くなるので冷え性とかじゃなくても寒いですし」

 

「味噌汁とかじゃなくて薬膳スープ?」

 

「ええ、ちゃんと漢方薬の素材とかスパイスとか使ってますよ……効果はゆっくりじっくり効くので毎日色々と中身を変えて作ってます。味だけを言えばちょっと独特の風味がある茸のスープです……昔、ヨーグルトの宅配を契約していたんですけどヨーグルトは胃腸とかが限界で健康に気を使うなら薬膳スープ的なのを毎日飲めば良いかなって……薬剤師免許と漢方薬免許を持ってない、漢方アドバイザーとかの民間資格ぐらいしか持ってないですが」

 

 味噌汁を毎日飲むでもいいんだ。味噌汁は塩分とかはともかく健康に良いもので出来ている。

 でも、味噌汁はご飯として食べたい。毎日の健康に気を使って1日1杯の薬膳スープを飲む、それをするだけで大分違う。

 

「ここ最近、寒さの段階が一気に変わったからね……味見してもいいかな?」

 

「ええ、茸のスープ味ですけどちょっとクセがありますので」

 

「あ〜……美味しいけどちょっとクセがあるね」

 

「でも、コレを1日1杯飲むだけで体が健康になるって考えたら気持ち的に楽ですよ」

 

「おさむ、おれにも飲ませてくれ」

 

「……いや、無理」

 

 宇佐美さんが茸のスープ味になっている薬膳スープを飲めばクセがあるけど美味しいと言う。

 コレを1日1杯飲めばそれだけで病気になりにくく疲れやすくなくなる。寝る前に飲んだりするだけで疲れが取れる。

 陽太郎がスープを飲ませろと言ってくるので俺は申し訳ないけども無理だと断れば陽太郎は怒った。

 

「なぜだ!しおりちゃんには飲ませたじゃないか!えこひいきだ!」

 

「別に意地悪をしているわけじゃない。薬膳スープは健康に良いものと言うか色々なスパイスを入れているが、中には量を間違えれば効果がありすぎるものもある。市販の漢方薬でも15歳以上とかに飲ませてくれって書いてあって子供が飲んで良いものじゃない。子供用もとい陽太郎用にスパイスの量を減らしたスープを作らないとダメなんだ……もしこのスープをガブガブと飲むと……」

 

「ど、どうなるんだ?」

 

「丸一日トイレに入る……健康のためとは言え不味いものを食べたくないと味重視で薬膳スープ作ったら配合をミスって下痢を起こしてそれはもう大変だった」

 

 いや、ホントにあの時は死ぬかと思った。

 体の老廃物を一気に出している感覚はあったけれども、それ以上に水分を出しまくっている感覚があった。

 

「1日1杯健康に気を使って飲む……ほら、スプーン1杯分なら飲んでも特に問題は無い」

 

「……うげ……なんか変な味だ」

 

「スパイスを色々と入れてるから嫌でもクセのある茸のスープになる……美味しいから食べるんじゃない。健康のため飲むんだ」

 

 陽太郎にスプーンを渡して味見をさせれば変な味と言われた。

 色々なスパイスを入れているしベースが椎茸のスープだったりするから独特なクセがある。

 

「牛乳とか入れたらいいんじゃないかな?」

 

「美味しくなりますけど入れてるスパイスが効きすぎるので……味重視じゃなくて健康のためのスープですから」

 

 このスープの味を変える方法を提案するが、それを断る。牛乳はスパイスの効果を促進したり妨げたりする物だから。

 味重視じゃなくて健康面重視で牛乳入れて効果がありすぎて痛い目に遭った事があるので入れない。それでも味云々を言うならば豆乳辺りを入れれば良い。

 

「お〜メガネくん。美味そうなキノコのスープだね」

 

「味はちょっとクセがあるスープですよ」

 

「あ、コレこそ迅さんが飲むべきスープなんじゃないかな?迅さん、油断するとぼんち揚げを食べてるから」

 

「ぼんち揚げはオレの一部なんだ……メガネくんもどうかな?」

 

「いや、いいです……それよりも一応は完成したので飲みますか?」

 

「ああ、飲むよ」

 

 大体こんな感じだなと薬膳スープが完成した。飲みすぎるとホントに痛い目に遭うので量は1杯分、紙コップに入れる。

 千佳と空閑もやってくるのでスープを飲むかと聞けば飲むと言う。

 

「おぉ、結構イケるな。オサム、美味いぞ」

 

「味じゃなくて栄養面と健康面重視だから美味しさを追求したスープの方が美味いから……と言うかお前なに食っても美味いって言うな」

 

「だって、こっちの世界ホントに飯が美味いんだ……なんでこんなに美味しいんだ?」

 

「日本人が食事に対する熱意がおかしいだけだ。イギリスとか行ってみろ、ホントに飯がクソまずい」

 

 いや、ホントに1回外国で飯を食えば日本の飯が如何にしてイカれているのかが分かる。

 美味しいところは日本人の口に合うんだけど、美味しくないところはな。

 

「そうなのか?」

 

「私は外国に行ったことが無いからわかんないな」

 

「修くんのお米とタイで出来たタイ米を食べ比べましたが……タイ米は口に合わなくて修くんのお米の方がスゴく美味しかったです……あ……」

 

「まぁ、美味しいご飯を食べに色々な国から日本にやってくるってのは割ときっ…………」

 

 千佳が少し余計な事を言ったのだがそれに関しては誰も気付いていない。

 迅さんも美味しいご飯を食べに日本に来るからと言おうとすれば迅さんが固まった……え、なに?

 

「迅さん、どうしたんですか?」

 

「メガネくん……スープになにを入れたの?」

 

「冷え性予防のスパイスと胃腸の整備のスパイス……迅さんまさかトリオン体なんですか!?」

 

「ぎゃああ!ヤバい!ヤバい!ごちそうさま!」

 

 迅さんはスープを飲み干せばトイレに向かった。

 え、どういうこと?と千佳はなっているので宇佐美さんが説明をする。

 

「トリオン体で食事をしたらカロリーとか栄養素を滅茶苦茶吸収するんだよ。だから、単純なクッキーとかでもカロリーとか糖質とかそういうのをスゴく吸収してね……トリオン体での食事は油断すると太るんだよ……」

 

「迅さんはスープの薬膳効果がドンッと出てきた……普段から不摂生な生活をしているから体にある老廃物を出そうとしてるんだろう」

 

「………大丈夫なのか、おれが飲んで」

 

「知らん……普通に毎日飲めば健康面でいい、病気になりにくいや疲れにくくなるレベルだから……ゲームとかでよくある食べれば確定で病気を治す便利アイテムじゃないから」

 

 あくまでもホントに健康面を重視にしてる青汁的なのだから。

 

『オサムよ、ユーゴの事だが』

 

「はいはい、分かってる……俺としても有吾さんが居てくれたらありがたいからな」

 

 スープを飲み終えた後にレプリカが有吾さんについて聞いてくる。

 トリオン兵を生み出すシステムは一応は玉狛支部にある。空閑の黒トリガーを少し解析すれば有吾さんの生体データ、トリオン反応があった。そこからは、まぁ、色々として有吾さんの人格と記憶を持ったトリオン兵を作れる。

 しかしいきなり有吾さんのトリオン兵をポンッと作るわけにはいかない。なにせこの分野はトリオン不足で出来ていない研究だ。

 

『しかしオサムよ、この様なプログラムをよく作っていたな』

 

「ああ、コレね。穢土転生の術って術を応用したらいけるんじゃね?ってしてた研究だ」

 

『エドテンセイ?』

 

「死んだ人間をあの世から呼び寄せるとある漫画に出てくる忍術で、この不死身のゾンビは封印以外でどうすることも出来ない術……この技術が行き着く先は捕らえた捕虜からトリオンを採取、そこからその人間と同じ人格と記憶を持つトリオン兵を作って情報を吐き出す為の技術だ」

 

『効率が良いが……倫理観が……』

 

「穢土転生の術とは元来そういう風に使うもの……例えば優秀なトリガー使いのトリオンを採取してそいつの人格と記憶を引き継いだトリオン兵を作り上げて通常より遥かに強い人工知能が入っているトリオン兵が生まれる……この技術の欠点は倫理観が終わっている、色々と最低という事だ」

 

 流石は卑劣様の卑劣なる禁術、あまりの卑劣具合に俺も引いている。

 倫理観的にあんまりやりたくない事だけども……う〜ん……クソである。

 

「はい、じゃあ先ずは試作品1号機」

 

「修くん、遊真くんのお父さんをそういう風に扱うのは」

 

「倫理観を溝に捨てた研究なのでこういう線引きをしておかないといけないんだ!人体関係とか兵器関係は何処かの段階で倫理観を溝に捨てないといけない。それをやっているという感覚を忘れたらそれはもうマッドサイエンティストなんだ」

 

 トリオンを動力源に動くパソコンを片手に試作品1号機を作ることに。

 千佳が有吾さんだからそういう風に扱っちゃダメだと言いたそうだが倫理観を溝に捨てている研究なのでそういう感覚を忘れてやってしまったらそれはもうマッドサイエンティストなんだ。

 

「空閑の中にある空閑遊真でなく空閑有吾のトリオン確認、少量採取。トリオン兵作成プログラム、人工知能作成プログラム、トリオンからなる人工知能……ポチッとな」

 

 システムとかは色々とダウンロードが出来ているのでポチッとエンターキーを押した。

 プログラムが作動し……パソコンのモニターに有吾さんが映し出される。

 

『……ん……何処だここは?』

 

「空閑、お前から見てどうだ?」

 

『見た目も声もおれの知ってるおやじだ」

 

『何もない真っ白な部屋か……となると誰かが俺を監視している……』

 

 パソコンのモニターに映っている有吾さんは周りを見て冷静に判断する。

 誰かが自分を観測している、監視している。カメラらしき物がないのか辺りを探すので俺はインカムを取り出す。

 

『あーあー……はじめまして』

 

『お、来たか……はじめまして……』

 

『いきなりのことですみません。空閑有吾さんでお間違いないでしょうか?』

 

『ああ……ん、いや、待て……なんで俺はここに居るんだ?ここは所謂天国的なところなのか?』

 

『仮想空間の中です……有吾さん、今自分は確か遊真にとか思い出しましたか?』

 

『ああ……何者だ?』

 

『俺は三雲修、空閑遊真の友達みたいなものです……空閑の持っている貴方の命で生まれた黒トリガーの中に入っているトリオンや生体データをベースに有吾さんの人格と記憶を引き継いだトリオン兵を作成していて現在有吾さんの人格と記憶を引き継いだ人工知能的なところでして……そこに居る貴方は有吾さんの人格と記憶を引き継いだ人工知能です』

 

『……話が壮大過ぎるな……』

 

『空閑有吾さんで間違いないか分からないので空閑遊真に変わりますね。お互いにしか知らない情報を見せ合って貴方が有吾さんかどうか確認します』

 

 有吾さんのトリオン兵をポンっと作らない。

 人の姿をしたトリオン兵はモデリングとかをすればトリオンさえあればポンッと作れる。問題なのは人工知能とか、自分を空閑有吾だと思っていて記憶と人格を引き継いでいるかどうかの確認。お互いにしか知らないこととかあるだろうと空閑にインカムを渡せば互いに言葉を交わす。親子の交流なので余計な事は聞かない。

 

「大丈夫、おれの知ってる親父だ」

 

『私の知っているユーゴだ』

 

 空閑は有吾さんと少しの間会話を交わした後にインカムを返してくれる。

 レプリカも空閑も自分の知っている有吾さんだと認定をしてくれるのでインカムをつける。

 

『空閑遊真から三雲修に代わりました。レプリカを含めて空閑遊真が知っている空閑有吾さんとのことです』

 

『とのことって言われてもな……俺は俺だってなってるからなんとも言えないな』

 

『そうでしょうね……今、有吾さんの人格と記憶を引き継いでいるトリオン兵に乗せる人工知能が出来ました。そこに居る有吾さんと同じ見た目で戦闘以外の日常使いのトリオン兵と言うかトリオン体を生み出します。そこに貴方を搭載します』

 

『……俺になにかあったら最上宗一に頼れって言ってるんだがな……』

 

『貴方がボーダーと関係を絶ってから色々とあって最上宗一さんは黒トリガーになって死んだ……ボーダーは秘密の組織じゃなくて政府公認の民間企業となっています』

 

『……民間企業なのか?』

 

『ええ……こっちの世界と向こうの世界の人間と仲良くしようとかして国の偉い人達が握手をして条約を交わすとかそういうのが一切無くて大規模な侵攻があってボーダーが表に出て民間企業になりました』

 

『……そこまで辿り着かなかったのか……』

 

『貴方達のスタートが何処なのかはともかく、国同士で仲良くしましょう。トリオンを用いた文明、電気と石油を用いた文明で国をお互いに豊かにしましょうとかは出来なかったですね。まぁ、そのおかげで俺は政府の偉い人へのコネを手に入れましたが』

 

 民間企業と言われたのでピンと来ていない有吾さん。

 きっと近界民とこちらの世界の住人が仲良くしているとかをイメージしているのだろうがそこには至らなかった。

 

『それで、俺にどうしろと?』

 

「俺個人の意思を言えば俺の実験に付き合ってほしい。でも、ボーダー全体で言えば指導者や指揮官なんかになってほしい。貴方の人工知能を維持するには黒トリガーの中に入っている貴方のトリオンが必要で、それは毎日少しずつ消費していく。他のトリオンで代用は出来ない。トリオンを充電するシステムは出来ているので黒トリガーの中にある貴方のトリオンを蓄えてトリガーを使用して戦うことは可能ですがあくまでもそれは追い詰められた時の最終手段で普段はボーダーの何度もやり直しが出来るシステムで訓練や指導をする、防衛任務等には出ない』

 

『……俺の知らない間に色々と変わっちまったんだな……』

 

『良くも悪くも人間、変わりますからね……なので……有吾さん、トリオン体を作っていいですか?』

 

『……ここまで来て許可を取るんだな』

 

『やってること、クローン研究となにも変わらないので……俺の中にある倫理観とか人として大事ななにかがゴリゴリ削れてます』

 

 ホントはやりたくないとかは思っていない。でもやってはいけないこととは自覚している。

 色々と矛盾しているが、俺がやっているのはそういう仕事……だから倫理観とかがおかしくなっている。かと言って他人に任せて依存するわけにはいかない。自分の物差しでしっかりと歩かないといけない。

 

『あの時とボーダーがなにも変わらないって言うならこのままシャットダウンしてくれ、最上宗一も作るなって言いたいが……あの時から一気に変わった。俺の知らない事が沢山起きた……約束、してくれないか?』

 

『なにをですか?』

 

『最上の奴も他の奴も黒トリガーになったなら今の俺と同じようにすることが出来る……それはやめてくれないか?俺は遊真の面倒とかボーダーの利益として働く、だが……』

 

『……分かりました……それではトリオン体を作るので暫しお待ちください』

 

 最上宗一さんのトリオン兵は作らないでほしい、そう頼まれたのならば首を縦に振る。

 この技術を迅さんに話した時に迅さんは最上さんを!と全くと言って言わなかった、迅さんは最上さんの死を受け入れた。昔のボーダーの人達の変化や死を受け入れた。予知なんてチートを持っていて誰よりも残酷な物を見続けていてそれでも受け入れて乗り越えて一歩ずつ前に進もうとしている。ならば、最上さんのトリオン兵は作らないほうがいいだろう。

 元からそのつもりは無かったからそれでいい。有吾さんの人格と記憶を引き継いだトリオン兵は完成した。

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