以前、お会いしたかもしれませんから。   作:泡沫

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アリウス編の続編を見てから展開を決めたかったので投稿が遅れました。

たくさんの感想もありがとうございます。返信はできていませんが、モチベーションをいただけています。

今話からは返信もしていく予定ですのでよろしくお願いします。

三人称→先生→ゴルコンダの順に視点が推移します。



髪色のジンクス

 カイザーPMCの兵士達と理事を倒し、後はホシノを迎えに行くだけだと安心していた先生とアビドス廃校対策委員会の4人。

 

 しかし、待てども待てどもホシノが囚われていると黒服から聞かされていた建物から彼女が姿を現すことはなかった。

 

 痺れを切らして建物の中に入ると、うへ、うへ、と何やら辛そうな声が聞こえて自然と脚が速まる。

 

 そして声の出処に辿り着いた先生と対策委員会が見たのは──

 

「うへ……うへ……」

 

 拘束をされているわけでもなく、ただ、力無く座り込んでいる小鳥遊ホシノの姿だった。

 

「先輩! ホシノ先輩!? 大丈夫!?」

「あ、あれ…? セリカちゃん…? それにみんなも……」

 

 ホシノ以外の全員が自分達は間に合わなかったのかと肝を冷やしたものの、一先ずまともな受け答えができている様子を見て胸を撫で下ろす。

 

「……カイザー達に何かやられたの?」

 

 険しい表情を浮かべながらシロコが聞いてみるも、ホシノは首を横に振る。

 

「アイツらには何も……強いて言うなら、ちょっと話をしただけなんだけど……なんというか、情報量が多くて……」

「情報量……ですか?」

 

 意味がわからず、首を傾げるノノミ達対策委員会一同。

 

 その情報量とやらについての詳しい話をしようとしないホシノに、セリカやシロコはかなりモヤモヤを募らせてしまっている。でも、どうか彼女を許してやって欲しい。

 

 自分のせいで亡くなってしまったと思っていた大好きな先輩の生存。世界で最も嫌いな奴の名付け親になっていたという事実。

 

 そんな大きすぎる二つの情報に挟まれて、ホシノの頭はオーバーヒートを引き起こしてしまっているのだ。

 

 それに、後輩達はユメ先輩のことも黒服のことも知らないとホシノは思っている──前者については正しい認識だ。

 

 それでも、ホシノはここまで来てくれた後輩達のため、パンク寸前の頭で何とか言葉を出力した。

 

「……知らないうちに誰かの親になるのって、最悪の気分なんだな、って……」

 

 そんな発言によって凄まじい誤解を引き起こし、もう一悶着起こってしまったのはまた別のお話。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 アビドスでのカイザーとの問題から数日が経ったある日。先生は、アヤネとホシノからの連絡を受け取っていた。

 

 内容はカイザーとの借金の問題や、アビドスで様々な意味でお世話になった便利屋や柴大将達のお店の今後についてのことだ。

 

 全ての問題が片付いたわけではないが、一区切りはついたのだろうという雰囲気が伝わってくる。

 

 大人として困っている生徒に手を差し伸べるのは当然の事だが、何もかもを先回りして自分が解決してしまうのは間違いだと考えている。

 

 生徒達には無限の可能性がある。成長の機会にも成り得る時間を大人の自分が奪ってしまうのは恥ずべき行為だ。これ以上は彼女達からの連絡が無い限り、介入をしすぎるべきではないだろう。

 

 しかし、そんな中でも。まだアビドスには先生が手を出すべき問題が一つだけ残っていた。

 

「"ゴルコンダ……だっけ?"」

 

 先生がホシノを救うため対峙したゲマトリアの一人である黒服。

 

 そんな彼の仲間が拘束されているホシノに話をしに来たと言うのだ。

 

『そうそうー。デカルコマニーって名前の人が持ってる絵画がそう名乗ってたよー。普通の人間みたいな格好をしてるのに、首から上だけがなんにも無くってさ。おじさん、もう少しで悲鳴を上げちゃうところだったよー』

 

 黒服も明らかに普通の人間とは違う異形の見た目をしていたのだ。他のゲマトリアの人員が特異な見た目であることは納得ができる。

 

『丁寧に喋る感じとか、後はデカルコマニーの何となくゾクッとするような雰囲気とか。黒服にそっくりだったよ』

 

 そう語るホシノが通話越しではあるが元気になっている姿を見て先生は密かに安堵していた。

 

 ホシノを救出した後のことだ。本来ならシロコ達後輩による説教が始まる予定だったのだが、どう見てもまともな精神状態ではないホシノが一晩だけ一人にして欲しいと言うので、仕方がなく解散となってしまったのだ。

 

 そして次の日。アビドス高等学校でホシノのことを心配していた先生と対策委員会一同の前に現れたのは、憑き物が落ちたような笑顔を浮かべるホシノだった。

 

 拍子抜けしたように安堵しつつ説教を始めていたシロコやアヤネをよそに、先生は少し心配していた。

 

 自分の気持ちにたった一日で折り合いをつけるのは大人であっても難しい。だから、また無理をしてしまっているのではないかと杞憂していたのだが、この姿を見るに考えすぎだったのだろう。

 

 ホシノは想像以上のスピードで成長しているのだ。そんな彼女達生徒の手助けをできたことを嬉しく思う。

 

 そうやってホシノの話を聞いているうちに一つ違和感を覚えた。

 

 どうにも、黒服の事を教えてくれた時とゴルコンダのことを語っている時の口調や態度に大きな乖離があるような気がしてならないのだ。黒服のことを語っているときは嫌悪感を隠しもせずに

 

『……なんて言うのかな。おじさんの喋った印象でしかないんだけど、何となくあの二人は違うと思ったんだよ。これを言うのはすごく失礼だと思うんだけど、なんとなく、先生みたいな雰囲気があったの』

「"……私?"」

『うん。おじさんの考えてることを見抜いてくるところとか、その上で気遣ってくれることとか、何にも対価を求めないところがね。同じゲマトリアでも、黒服とはまるで別物だったよー』

 

 何となく穏やかな笑顔を浮かべているホシノの話を聞いていると、彼女の背後に、青筋を浮かべたアヤネが迫っていた。

 

『そんなことを言って、また騙されないでくださいね!? 大変だったんですよ!?』

『うへっ!? ごめんってばアヤネちゃーん! もうおじさんは大丈夫だってー』

 

 そのままわちゃわちゃとしているホシノ達を見守りつつ、ゲマトリアにも話が通じる人はいるのかもしれないと。そう思った先生だった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ホシノさんとの対話を済ませ拠点へと戻ると、いつものように彼女が出迎えてくれた。

 

「あっ、おかえりなさい! ホシノちゃん、大丈夫でしたか…?」

「ユメさん、毎度のお迎えありがとうございます。ホシノさんについては大丈夫でしょう。彼女は精神的にも強い方です。少なくとも私の目からは持ち直しているように見えました」

 

 そんな言葉を聞いて『よかったです!』と満面の笑みを浮かべる彼女を見ていると、ほんの少しの罪悪感を覚える。

 

 原作では亡くなってしまった彼女を助けたため、ホシノさんの精神的ダメージは抑えられると推測している。

 

 それはそれとして、五体満足で健康なユメさんをアビドスに帰してホシノさんと引き合わせられないのはなんとも心が痛む。

 

 最終編で私の身に万が一のことがあって、地下生活者が解放されてしまった場合の対策として存在を秘匿させるのが必要だろうからこの対処をとっているが、正当な理由があるというだけで機械的に動ける程人間を捨てた覚えは無いのだ。

 

「………ユメさん。改めて申し訳ありません。本来ならこんな所に閉じ込めるよりも解放してあげたいのですが……」

「でもそれは、アビドスやホシノちゃんのためなんですよね?」

 

「そういうこった!」

 

 代わりに応えてくれたデカルコマニーに感謝しつつ、思考を巡らせる。

 

 心が痛むからといって、ここでユメさんを解放するのは違うだろうと言うのが私の考えだ。

 

 原作の流れに手を出した。物語に介入することを望んだ。

 

 そうであるならば、最後まで責任を持って物語を歪めるのが私が取るべき責任だろう。大人として、中途半端で責任を投げる行為だけは避けなければならない。

 

「なら、大丈夫ですよ! 私はゴルコンダさん達を信じてますから!」

「私はユメさんを拉致監禁しているようなものですし、信頼に値するような人物ではないはずなのですが……」

「拉致監禁とは言っても、たまに遊園地にも連れていってくれるじゃないですか!」

「遊園地……ああ、スランピアのことですね」

 

 彼女の言う通りで、何度かユメさんを夜のスランピアへと連れていったことがある。ずっと閉じ込めるのも精神的にも悪いだろうという発想からだ。スランピアならゲマトリアの領域ということもあって、地下生活者でも簡単に把握することはできまい。

 

 ただ、遊園地とは言っても夜だし、ゴズやシロとクロ達がメインであり、一般的な遊園地のそれとはかなりかけ離れてしまっている。

 

 それでも他人を楽しませるための、遊園地に残っていた感情の複製(ミメシス)から読み取ったテクストを多分に付与したおかげが、彼らはユメさんを楽しませるために大いに役に立った。

 

『初めて遊園地に来ましたけど、楽しいですね! いつかホシノちゃんも連れてきたいなぁ……』

 

 そう語っていた彼女の背には哀愁が漂いすぎていたが。

 

 アビドスの環境を考えれば、遊園地なんて行ったこともなくて当然なのは頷ける。学生としてあまりにも不憫な立場であると改めて痛感する言葉だった。

 

 いつか、アビドスの六人……否、死の神(アヌビス)を含めた七人が気負いせずに遊びにいけるような日々が送れることを願うばかりである。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 数日後。アリウス自治区にて。

 

「うわあああああん美味しいですうううううう!」

「あの、ヒヨリさん。どうか落ち着いてください。誰も取ったりはしませんので……」

 

「そ、そういうこったあ!?」

 

 差し入れとして持ってきた様々な甘味を、某有名企業の掃除機もかくやと言う勢いで頬張り続けるヒヨリさんと対面していた。

 

 私にはこの髪色の生徒に困惑させられるジンクスでもあるのだろうかと。そう思わずにはいられなかった。

 




ホシノ

一晩だけ時間をもらって、ユメ先輩のバナナとりの手帳を穴が空くほどに読み込んだ。文字の書き方や内容から本当に本人が生きていると改めて実感したことや、何度も感謝されていたことも相まって号泣。数ヶ月後には再会できるという旨の文もあり悩みの種が吹き飛んで吹っ切れた。ゴルコンダに感謝している。

ユメ

命を助けて貰ったことやアビドスの復興についての相談、更には今回大切な後輩を助けて貰ったこともあってゴルコンダに感謝している。

ヒヨリ

いつも美味しい食べ物を持ってきてくれるのでゴルコンダに感謝している。

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