◇
— Side Hitori —
夕方の光は、まるでやさしい刃みたいに心に染みる。
空の端で雲が擦れて、オレンジの薄皮をはがす。水のような夕闇が、ひたひたと遊園のなかに降り注いでくるのが分かった。
ぽつ、ぽつ、と冷たい粒が落ちてくるのを感じた。私は思わず、静かに空を見上げる。
「………あ」
狐の嫁入り─────お日さまは笑っているのに、空だけが泣いてる。
松ノ木児童遊園。私にとって「全部」の始まりになった場所。
そこでブランコのチェーンを握っていた私の両手に、小さく跳ねる空からの贈り物。指の温度が、すこしずつ過去のどこかへ戻っていくみたいだった。
「っは、はぁ、はぁっ………」
砂を蹴る足音と、誰かの肩で息を切らす声が聞こえる。
「……!」
私は顔を上げられなくて、一気に心臓が跳ねるのが分かった。とうとう視界の端に、走ってくる影が揺れた。
「…………!!」
でも、いつまでもそのままではいられなくて、恐る恐る
胸の奥で、ほどけかけていた結び目がきゅっと締まる。
来て、くれた。ほんとうに。
「………ごめん。お待たせ」
春樹くんのふうっとこぼれた息に、雨の匂いがまざる。汗をかいている。
急いできてくれたのかな。もしかして、駅にもう行ってたのに───私の為なんかに、戻ってきてくれたのかな。
そう思うと、胸が締め付けられ過ぎて、思わず声を上げそうになる。
私は、小さく頷く。声にすると、その想いすらも消えてしまいそうで。
「……来て、くれたんですね。春樹くん」
右隣のブランコが仄かな風でギシッ、とかすかに鳴り響く。
鉄と鉄の触れ合う音が、
「ごめんな、色々、あってさ。そのことは、また後で話すけど」
彼が座る気配に合わせて、私も姿勢を整える。
視線が春樹くんへ触れる。逃げる。触れる。逃げる。いつもの仕様。
だけど思うのは、もう逃げたくない、ということ。
微かに髪を濡らす雨粒が睫毛に乗って、世界が一瞬だけ滲む。狐の嫁入りは、心の内側までも濡らしてくる。
「あっ、いいえ……大丈夫、です」
自分の声が、ギターの弦を弱く弾いたみたいに
「…………それで、話って?」
優しい。春樹くんから届く、耳に置かれた毛布みたいな声。
「…………あっ、はい……っ………。あっあの……まずは今日、何も言わずに先に中退しちゃって、ごめんなさい」
「いや、全然気にしてないよ。体調は大丈夫?」
「あっはい、だ、大丈夫です。ありがとうございます」
こんな時にもまず一番に彼は私の体調を
「……わ、私……結束バンドの皆に、話したんです。春樹くんのこと」
「うん。それで……?」
知ってる顔。全部知っているはずなのに、彼は私の“今”を、ちゃんともう一度受け取りにきてくれる。
「………お、怒らないで、聞いてくれますか? 今から、話すこと……」
「もちろん」
そう言って、彼は柔らかくまた微笑んでくれる。チェーンを握る手に、小さな雨粒が貼りつく。指先の冷たさで、言葉の角を丸める。
大げさに空を仰ぐ。雨は細く、なのにその存在は確かで、それはまるで譜面に落ちる音符みたい。
言葉を伝えようと、小さく口を開く。でも、なんて言えばいいか。何から話せばいいか、思いつかない。
「……………っ、あっえっと………」
「……なかなか、上手く浮かばないか」
彼が私の様子を見て、そっとブランコを揺らす。視界の上で、低い雲の裏が薄明るく脈を打った。
「じゃあ、少し歩こうよ。歩いてるうちに、案外思い出してまとまるかもだぞ」
立ち上がり、こちらへ向く笑みを浮かべた彼の姿。促される足。
この “歩き出す” というリズムが、いつも私を救ってきた。
「あっ…………は、はい……」
立ち上がろうとした瞬間、足もとに置いていた不安が音を立てた。
「……っ!? わぁっ!」
重たいギターケースに体が引かれてバランスを崩す。
反射より速く、腕が私を支えてくれた。
「うわぁっと!! あぶな、大丈……夫…………」
「あっ!! す、すすすすみま、せ……」
「───────────ぁ」
近い。雨より、呼吸より、近い距離。
目が合う。
言葉になる前の世界で、心臓だけが先に強烈に頷く。
「ご、ごめんなさ……!! 足がもつれちゃっ、て……………」
視線を逸らす時、頬の上をひと粒の雨が滑る。春樹くんも同じタイミングで目を逸らす。一瞬だけ彼を垣間見ると、顔が赤く見えた。
それを見て、私もなんだか、堪らなく気恥ずかしくなる。それがどうしてかは分からない。ただ喉奥から声が震えて、私は目を逸らしながらもまた無意識に謝る。
「………〜〜〜〜っ、っ、す、すみませ、ん………」
「ううん、俺の方こそ。それよか、怪我、無い? そんな重たいギターケース背負ってるし、なんかあったら大事だぞ」
「ぁっ、は、はい、 平気で……す。ありがとう………ございます」
ギターを背負い直すと、木の匂いとその重みが落ち着きを返してくれた。音と、五感を通して伝わる世界は、いつも私の居場所を指さしてくれる。そんな気がする。
「………行こっか。少し、歩いて、話の続きしようよ」
「あっは、はい、行きます……」
春樹くんの合図と共に歩き出す。
公園の土を歩む頼りないつま先と、リズム。その中で何となく、私は公園の入り口で振り返る。「……」
狐の嫁入りはほんの少しだけ弱まったみたいだった。天気雨の中、つい半年前、はじめて “居場所” を見つけた遊園が、雨に光っている。
「………どうかした?」
背中からそっと声色が届く。慌てて私は彼の方へ身体を向け直す。
「え?! あっ、いえっ……な、なんでもないです! ……ただ、その。懐かしいな、と思って……」
「懐かしい……?」
「………あっ……その、ここは、半年前の五月くらいに……虹夏ちゃんと初めて出会った公園なんです」
私は胸の内で、何か大切なものを返信をする音を聴いた。それは、かつての自分に対してのものなんだろうか。
返信。返歌。リプライズ。
中学一年生の頃。古びた図書館の中で書き始めた幼いメロディに、今日の私が新しい音符を重ねていくのが分かる。追憶する思い出と、今の私とで
「あっ……その日は、バンドマンみたいな、そんな浮ついた格好をしてたんです。前日に、動画のコメント欄に書かれてた言葉でふと思いついて」
「そうしたら、誰かに、声を掛けてもらえると思い込んだんです。……結局、誰からも声は掛けてもらえませんでしたけど」
「………ま、まぁ、たっ他力本願なのが、悪いんですけどね。アハハ……」
何となく、苦笑いをしながら春樹くんへ目を向ける。
彼はそこで私を
ほんの僅かにそんな彼を見つめて、そのまま続ける。
「学校での居場所に耐えかねて、もう、学校に行くの、辞めようとすら思ってました」
「そんな時……なんです。ちょうどあのブランコに座ってたら…………」
「……その時に、虹夏とたまたま会ったの?」
「あっはい……。
雨の粒が、記憶の
“誰かのために” 。私の中で、そのフレーズが、やっと正しい場所に座った。
「……そっから、結束バンドの皆と、ライブを組むことになったんだ?」
「はい、そこから虹夏ちゃんやリョウさんと友達になって……その後、色々あって、喜多ちゃんとも、バンドを組めるようになって」
「………あっ正直なこと言うと……その、私が最初はバンドをやろうと思った目的は、自分がチヤホヤされたい、とか、そんな程度だったんです。でも……皆と出会ってから私、考えるようになりました」
「……どんな風に、考えるように?」
「────な、何のために、バンドをやるのか。何のために、わたしはここにいるのかな、って」
「…………何のために、か」
「虹夏ちゃんは、お姉さんである店長さんの為……STARRYをもっと有名にすること。リョウさんは、自分達にしか出来ない音楽を結束バンドでやること。喜多ちゃんは、あの皆で一緒に何かをやること。………私は………そんな皆の為に、皆がバンドに託した想いの為に────」
顔を上げる。
結び目がほどけないように、ひとつずつ言葉を結ぶ。
「結束バンドを、私に出来る限りのことを尽くして、最高のバンドにしたいって、思ってます」
「───────…………そっか。それが、君が……後藤ひとりがバンドをやる目的なんだな」
「………はい。私、結束バンドの皆には、いつも……助けられてばかりな、そんな気がするので、だから……」
「………どうだろうな。それは」
「案外、そうでも無いかもしれないよ。あの子達にとっての君は、さ。それにね。俺も、君がその気なら、君の力になりたいな……って思ってんだよな」
「えっ……どういう意味、ですか?」
雨脚が一瞬だけ強くなって、そのあとすぐに止む。
空が息を継いだみたいに、世界が静かになった。
「………俺ね、単刀直入に言うよ。結論から言うと、結束バンドのマネージャー、やろうと思ってさ」
「え……? ………………え、ぇ、えぇっ?! 本当ですか!?」
「また顔面崩壊してるぞ」
「あっごめんなさ………え、えぇ、でも、春樹くんが私達バンドのマネージャーって、えっ、でも虹夏ちゃん達とは、春樹くんは面識ないんじゃ……?」
それを聞いた春樹くんは何か言葉を考えるように、僅かに目を閉じて宙を仰ぐ。やがて、穏やかな笑みを携えてもう一度私の方を向く。
「………実は、な。さっき、たまたま会ってさ。声を掛けられて、話をしてな。でもまあ、俺も元々思ってたんだ。君の事、応援したいなって」
「だから……アイツらとその話をして、俺からマネージャーを頼んだ。そしたら虹夏達からも快諾されたよ」
「ぇぇぇぁぁぁっあの、ええっと、ちょ、ちょっと待ってください! 頭が追いつかないです……」
「……あはは、まぁ、混乱するよな、そりゃ。……もっと簡単に言おうか。俺も、応援したいんだ」
「ひとりのこと。応援したいって、そう思った。だから、俺なりに色々考えて、そしたら……結束バンドにはマネージャーがまだ居ないって、虹夏から教えて貰ってな?」
「だったら、俺が勉強して……結束バンドのプロデュースとか出来たら、君の夢も、結束バンドのアイツらの夢も応援してやれるんじゃないか、って」
「……っ、本当なんですか? 春樹くんが、私達の……皆のマネージャーに……本当になってくれるんですか?」
「……本当だよ。………なぁ、ひとり。さっきさ、なんて言おうとしてくれてたんだ?その、結束バンドのみんなから言われたこと。それで、ひとりが考えたこと。話の続き、教えてよ?」
昨日のこと。
皆がくれた、カイロみたいに温かい言葉の数々。それらを取り出しては見つめる。そのなかで、私が思うこと。正直に彼に話したい。私は逆にまた少しだけ俯いて、言葉を選びながら春樹くんへ伝える。
「……皆に、春樹くんとのことを話して、こう言ったんです。私は、私なんかじゃ、春樹くんの隣にいたら、春樹くんをガッカリさせてしまうんじゃ、ないかって」
「…………どうして、そう思うの?」
「そ、それは……どっどうしても、私は自分には自信が、持てないんです」
「わっ私は………ギターしか取り柄がなくて、人と話すことも本当に上手くいかなくて、すぐに気付いたら自分の世界に閉じこもっちゃうし、空回るし…………は、春樹くんに、こんな私なんかじゃ……見合うはずなんて、無いって………思って……だから!」
「……………結束バンドの皆にそう言ったんだろ? そしたら、なんて言われた?」
「……その人はきっと、私の内面をちゃんと見てくれる人間だ、って、春樹くんのこと、皆……言ってました」
「………あいつらが……そんな事言ってくれてたのか」
「……だってそうでなきゃ『演奏をする姿が好き』なんて言葉は出てこない。だからこそきっと……私の歌う姿や歌詞、ギターを弾く姿をそこまで見てくれたなら、大切にした方がいい人だと思う、って………そう、言ってくれました」
言葉にするたび、胸のどこかにしまっていた古い雨が動き出す。
それは、言うなれば “祈り” に似た温度だと、ふと思う。
まるで、誰かのために生きられない弱さを、受け入れたいと願う温度。ずっと心のどこかで願っていたような、そんな在り様そのものかもしれない。
「だから……私、思いました。わっ私は………春樹くんのその、私に向けてくれた、気持ちに……向き合いたくて。真剣に、向き合わなきゃいけない、って! だっだから……!」
十字路へ差しかかったとき、世界の縁がひときわ白く瞬いた。
私は彼の顔を見ていた。周りの音が、ぜんぶ遠のく。反応が、遅れた。
「え?」
ブッブブゥ、ととてつもない大音量と共に鼓膜へ轟音が響く。
「────────ぁ……」
鋭いクラクションが、空の泣き声を裂いた。うそ─────
「ッッ………危ねぇ!!」
手首が強く引かれる。「……へ?」
ふわり、と体が浮く。重いギターが背中で暴れる。
次の瞬間、世界は彼の胸とアスファルトだけになった。
痛みは彼の背に落ちた。
私の体は、彼の腕の中でしかるべき場所を見つける。春樹くんも呻きながら、転がる。その時に気付く。
(え………春樹くん、私を庇って─────)
「ッッきゃ………あっぐ………ッッッ!!」
「ッ…………いって……!!」
私たちは、そのまま地面に放り投げられた。凄まじい衝撃が、背中を通して伝わる。痛みがある、と思って身を引き絞るも実際にはほとんど何も無かった。
その刹那、春樹くんはいつもでは考えられないような、そんな大声を張り上げる。
「………ぐ、危ないだろ、ひとり!! ちゃんと、周りを見ないと!?」
「…………っ」
叱られたかったわけじゃないのに、叱ってくれることが嬉しくて。
目の奥で、なにかが決壊する。
雨が止んで、わたしだけが降っていた。堪らなく、目尻が熱くなる。それはもう、抑えきれない。勝手に、ぽろぽろと落ちていく。嫌だ、嘘、なにこれ。
頬を叩く温度は、空からじゃない。胸の底から溢れた、私の“返信”。
「……ッ、だ、大丈夫か!? 怪我したのか、痛むのか!? ……ッ……いって……!」
今度は、春樹くんはどうしようもなく青ざめた表情になって叫ぶ。
腕を抑えている。そんな、いやだ。いや、うそ。
ごめんなさい、ごめんなさい、違うんです。春樹くん。必死に首を振る。
私の方こそ、恐くなる。頭の思考回路が状況に追いつかない。怪我をしたんじゃ。嫌だ。イヤ────春樹くんが、私の、私のせいで。
「ぁ、ぅ、……っ、ち、違います…… 私は、痛くありません………!! 春樹くんが、守ってくれたから……!!」
「は、春樹くんの方こそ、怪我は無いですか!? 私の、私のせいで!!」
私が、今度は大きく叫び返す。彼はそれを見て思うところがあったのか、大きく見開いていた目を細める。そうして、切なげな表情を私へ見せてきた。
「………っ、大丈夫。……鞄が、ちょうどクッションなってくれたし……」
彼の言葉が、雨上がりの光みたいに胸に触れる。そう、なんだ。
あぁ、ああ、うそ。良かった、良かった────。
両手を胸の前で合わせて、ギュッと押し込む。食い止めていた胸の苦しさが、限界を超えていく。
その彼の言葉の触れ方はやさしいのに、私の中では音を立てて崩れる。
長いこと黙っていた“返信”が、やっと口を開く。
「……良かった、怪我、ないんだな」
「……………ごめん、ごめんなさ………ごめんなさぃ……私のせいで、本当に、ごめんなさい」
声が震える。情けない。
でも無理。こんなの、そんなこと気にしてられない。ただただ、どうしようもなく謝ることしか出来ない。
「………大丈夫。泣かないで。俺は、平気だよ」
さっきまでの心配を形にしたような怒気は、もう既に春樹くんから消えていた。今度は、どこか物悲しげさに満ちたような笑みを向けてくれる。もう勝てない。
胸の中に留まってもう抑えきれない言の葉の前に、勝手に涙が落ちていく。涙のあとを、言葉が追いかける。
「……ほ、本当ですか!? 嘘、ついてないですか……!?」
「………大丈夫だよ」
手を握られた瞬間、音程が合う。
私の中の “ずっとずれていたコード” が、やっと正しい響きに戻る。その安心が。
無事でいてくれて嬉しかった、怪我しないでいてくれて良かった、その安堵が。
気付かせてくれた。その想いの先にあるものを。
胸の中で泣きながら見つけたそれを、必死に抱く。まるで、ずっと見つからなかった大切な、大事なものを見つけたみたいに。
あぁ、無理。無理だ。もう───────無理。
勝手に、零れた。
「……………好き………です」
落ちてしまった。
それは、言うはずのなかった言葉。私なんかが、言えていいはずがないと思い込んでいた、言えなかった言葉。それを、雨と一緒に────やっと私は言えた。
「…………え?」
「………………………ぁ、うっ、す、好き、です」
「…………私、私も、春樹くんの、ことが─────」
好き、なんだ。この人の事が、もう、好きになってしまっていたんだ。
気付かされてしまう。この人が、無事でよかった。そう思ったその瞬間に、勝手に溢れ出たその気持ちの正体に。
瞳の奥で、狐の嫁入りが祝福に変わる。光で、景色が満ち溢れていく。それはきっと、この世界の秘密そのものみたいな、そんな輝き。
宵闇に揺れる雨粒が拍手みたいに路面で跳ね、橙色の世界が照明みたいに明るい。“告白” はたぶん、それもまた祈りの別の名前なんだと気付く。
「……………………っ、ひと、り………」
「……っ、春樹くんに、何も、なくて、本当に、良かった……!」
「わ、私、……春樹くんの、ことが、ぅ、ぅぁあ………ん………!!」
泣き方も、歌い方も、とっくに変わった。涙が、声が溢れて零れてまるで赤ん坊の様に、私は泣き出す。
でも、震えた声でつないだ音符が、今も私をここへ連れてくる。
その瞬間。
「………………ッッ!?」
抱きしめられる。強く、落ちないように結ばれる。
世界を照らす雨の音は遠ざかり、胸の中にだけそれが残る。
「…………俺も。………好きだよ、ひとり。君の事が、好きだ」
「───────ぁ」
その彼の優しくて、全てを包むような声が、私の世界の色を決める。
忘れない。今日の景色を。忘れたくない。
“ Re: ”と始まったリプライズが、“ I am ” のままここに届いたことを。
「あ………ぁぁッ……ぁ、ぁ……………!!」
彼は私をずっと強く、つよく抱きしめながら囁く。
好き。すき。だいすき。このひとのことが
─────だいすき。
「………………無事で、本当に……良かった…………」
「あ、ああぁ………うぁ…………っ、ぁぁぁあん…………!!!! っ、ご、ごめ、ごめんなさい、はるきくんっ………もう、こんなこと、絶対しません……ごめん、なさい……」
雨はあがった。
道路のアスファルトに溜まって映り込む水面。墨の滲みの様に夕焼けのほとぼりに映えた宵空が映り込む。
でも、私の“祈り”だけは、ずっと胸の中で降り続いている。涙は止まらない。情けないくらいに私は泣きじゃくる。その中で思う。
どうか、この結び目がほどけませんように。
どうか、この音色が、ただ、ただずっと、続いてくれますように。
私達の “星座” のまま、鳴り続けますように。
そんなおぼつかない小さな願いを。
抱き締められたまま、ただ私はずっと─────小さく想い続けた。
今回は特別篇。いよいよ、ひとりと春樹が結ばれました。やっと書けた。書きたかった、この瞬間。
#22はBパートもあります。次回は春樹篇です。引き続きお楽しみください。
-追記-
こぼれ話。細すぎて多分伝わらないやつ。補足として知ってもらえたら嬉しいです。
実はこのRE:PRISEのタイトルは複数意味を込めています。
(RE:I AMとの対比的な意味合いもありますがコンマ( : )を付けてるのも意図的なものです)
直訳:『もう一度 こじ開ける』or『もう一度 掴む』
Re: + Prise = REPRISE
(名):意味は再演、反復。
同じ読み方と元ネタのインスパイア曲もあり、そちらとも重ねています。
・Re: + plies = Replies
(名):『Replay』複数形。意味は返信、応答。
・Re:pray(元ネタ)
Pray
(動): 意味は「祈る」。
Re:prayは同名のAimerの曲(2011)です。
以上、こぼれ話でした。
元ネタご存知な方も、そうでない方も、よろしければ感想、お待ちしております。お気軽にお聞かせください。
ではまた次回。