CHAPTER #01 「今、僕、アンダーグラウンドから」
※
そうして
手汗が堪らなく滲む中で、俺はひとつ、小さな息をつく。
「……えーっと」
「後藤、ひとりさん」
そうして意を決し、静かに目の前で硬直している同じクラスメイトの女子の名前を呼ぶ。
秀華高校、体育館付近にある体育倉庫裏。
人の気配はまるで無い、古びた倉庫の真横。そんな中で、一世一代の告白を、俺は今まさに実行しようとしていた。
「は、は、は、は、は、はぃぃ!!」
「……」
五回ほど
なんていうか、すっごい過剰な反応するなぁ、この子。
こうして改めて見ると、この子の外見はよく言えば「個性的」……悪く言えば客観的に少し「奇異」と言うべきか。
学校指定ですらないピンクの上下ジャージ。
その下には、申し訳程度に履いたスカート。個性的というか、謎に満ちたファッションのクラスメイト。それが、俺にとっての最初の彼女の印象だった。まぁ、それ自体は新学期になってからあまり変わってないけども。
「……えっとまず、一つ質問ね。俺のこと、わかる? 君と同じクラスの吉沢春樹、なんだけど」
それを聞かれた彼女は見て分かる程、狼狽えて視線を下ろす。ピンクの前髪は酷く長く、その下の表情を伺う事が出来ない。「あ、ぁ、ぅ………」
「……あっあの……ごめん、なさい。私、人の名前覚えるの苦手で……」
「……あっすすす、すみません、すみません、大変申し訳ございません、わざわざっその、プリント渡してくれたり、こないだとかも扉開けてくれたりして下さってたのに!!」
「ああいやいや、大丈夫大丈夫っ、そんなん気にしてないから!」
やがてあわあわと気まずそうに両手を胸の前で固め、申し訳なさそうに後藤さんは叫び、俺は見ているこっちまで切なくなった。
「……………」
いや。まあ分かってはいた。分かってはいたけど、実際にそう言われるとやはり堪えるものはある。
(まあ、無理もないか……)
彼女とは実際、ほぼ話した事は無いのだ。精々こないだとかも彼女の言う通り、ほんの少し力添えをしたとか、手助けなのかも分からない事くらいしかしてない。印象に残らないのもそれは当然だ。
ただ、考えても見るとそもそも昼休憩のタイミングで何故か彼女の姿を見た事が無い。話したくても話せなかった。覚えられていないのもある種当然かもしれない。
「……そっか、そりゃそうだ。まぁ、ほとんど話したこともないしな」
そこまで考えたところで、もしかして、やっぱりこうして呼び出したことそのものが彼女にはだいぶ負担だったのでは無いか。そんなふうにふと思えてきた。
「………あー、えっと。急に、こんなとこ呼び出してごめんね?」
何となく、右手でうなじ周辺を掻きながら謝る。なんだろう。何だか、無性に申し訳ないことをしてる気になってきた。
「あっいえ、それは、大丈夫、ですけど……」
後藤さんは相変わらず言葉を詰まらせつつも、おずおずと静かに呟く。こうしてまともに話すのは、いっその事初めてまである。このしゃべり方はきっと、彼女の癖なのだろう。
「……あっその、それより、………ど、ど、どういった、要件、でしょうか……?」
あぁ、そうか。要件言ってないもんな。確か、ライブの感想の話をするってのが、昨日伝えた建前上の言葉だ。
ただ、彼女は密かに肩を震えさせ、首を
長すぎる前髪に隠され、垣間見ることが叶わないはずの彼女の表情から『不安』がヒシヒシと伝わってくる。見ているこっちまで胃がキュッとする。
「……えーと」
こうして改めて要件を聞かれると、言いにくい。
こういう時って、なんて言い出したものかな。
一瞬、頭を悩ます。そういえば、と。
ふと、何ヶ月か前に告白をしてきてくれた女の子のことを思い出した。
結局、あのときは訳あって断ってしまったけど、申し訳ないことをしたなって思う。あの子も、こんな気持ちだったのだろうか。今なら、彼女の気持ちも痛い程想像が着く。
なんというか、上手く言葉を形にしにくい。
まあ、普通に考えて言葉にしにくいに決まっている。今から君が好きです、なんて余りにもストレートにも程があるだろう。ならばどうする?
どうすれば、この子を怖がらせたりせずに済むんだろう。どうやったら、届くんだろう。
そこまで考えて、何とか言葉を捻り出そうと俺は唇をキツく結ぶ。
多分だけど、俺自身の今の表情は眉が八の字の様になって、だいぶ変な顔になっているに違いない。知らんけど。
コンマ数秒、軽く腕を組んで頭を悩ませ、ようやく俺は目蓋をゆっくりと開いた。
「………」
「………うーん、その、ね」
「……迷惑だったら、断ってくれていいからさ。………今から話す言葉、聞いてくれる?」
ひとつ、小さく息を漏らして俺はそう呟く。この状況、彼女も、もしかしたら迷惑してるかもしれない。
だから、あくまでも受け取って貰えたら幸いなくらいの気持ちで、そのまま続ける。
「え、え? あっは、はい? な……なん、でしょうか……?」
かなり困惑した様子で彼女は
(……あれ?)
いや、ちょっと待て。
このシチュエーション、恐らく大抵の女子なら大方察しがつくはずだ。俺が逆の立場でも流石に予想はつく。
何せ、体育倉庫の裏。
しかも二人きり。我ながら分かりやすいにも程がある。
だと言うのにまるで彼女は、俺が何を言い出そうとしてるのかが全く読めないかのように、酷く困惑した様子を見せている。これはいったいどういう訳だ。
もしかして、そういった「経験」がそもそも後藤さんには無いからだろうか。
もし仮に、仮にだ。そうだとするなら、彼女には今高確率で「そういう相手は居ない」という事だろうか。
(………もし、もしそうなら)
そう考えると、
よし。覚悟を決めろ、吉沢春樹。
湧き出たほんの少しの勇気。十六年間の人生の、その全てを賭けるには頼りない。だけど、今はそれしかない。
それらに背中を押されるように、俺はもう一度だけ小さく息を吐く。
そうして、ようやく口を開いた。
「……単刀直入に言うけど」
「後藤ひとりさん」
「はっ、は、はいっ」
「あのね、ごめん。俺、ライブの感想言いたいつって、昨日呼び出したじゃん?」
「あっはい」
「────半分、建前、なんだ。アレ」
「えっ?」
「………………その、本当は」
彼女の恐がっている様にも聞こえる声に、一瞬だけ
彼女は顔を先程より僅かに上げ、こちらを困惑しつつ見つめている。やっぱり迷惑じゃないだろうか。
もし、拒絶されたら。
そう思うと、喉元まで出かかったその想いが詰まる。
「………………………」
いや。
止めるな。詰まるな。
もうここまで来たら言うしかない。逃げるな。
言おう、俺。言うんだ、俺。持てる限りの全ての勇気を振り絞れ。
今、この瞬間がきっと──── “
そして、唇を一瞬噛む。だが、とうとうその言葉を抑えきれず、静かにそれを吐露した。
「──────君が、好きです」
「付き合って、下さい」
その瞬間。場が、静寂で満ちる。
思わず、冷や汗が頬を伝うのを感じずにはいられない。
「……………………………」
その沈黙は、永遠に感じられた。恐らく、時間としては一分にも満たなかっただろうけども。
そんな中で、硬直したまま身動きひとつ取れなくなった彼女の方から何とも素っ頓狂な声が漏れた。
「………………………………………ふぁ?」
「……」
あれ、おかしいな。
俺が話してたのは間違いなく人の形をした後藤ひとりさんだったはず。
だが、いつの間にか目の前にいたのはピンク色のカツラを被った、別の生き物だった。一体どちら様でしょうか、この御方は。
なんだろう。その昔、美術の教科書か何かで似たものを見た気がする。
パブロ・ピカソが描いたとかいう『泣く女』だったっけ。アレに似ている。
「………………………」
俺の目の前にいる後藤さんだったはずのそれは顔面が崩壊し、言語の理解を拒むように硬直したまま、動きそうもない。
とりあえず、目の前の生命体が後藤さんだと信じて俺は言い直す。
「………えーと、もう一回、言うよ? 俺の『恋人』に、なって欲しいんだ」
「俺と、付き合ってくれませんか? 後藤、ひとりさん」
そうして誤解が生まれ得ない様にはっきりと俺は断言し、深々と頭を下げた。泣く女の反応は無い。
無言のまま、数秒ほど経過する。
嫌な予感がして再び顔を上げた。
「………えっ」
なんということでしょう。思わず引き攣ったままの口元から変な声が漏れる。後藤さんだった筈の何かの顔と身体が溶け、胞子らしきものまで出始めているではありませんか。
oh。これ、なんてホラーショーかな。
「……」
うん。彼女の劇的な
今の十代はそれを知らないって? 俺はちゃんと知っている。割と親父の録画を見てたからな。いわゆる家が劇的にビフォーしてアフターするやつだ。まあそんなことはどうでもいい。
ところで、だからさっきから目の前に居らっしゃる知的生命体はどちら様なんだろう。するとその謎の生物は、震えながら何かを呟く。
「…………ふぁえ゛っ? コレ、ゲンジツデスカ?」
「…………………………」
うん。なんか帰りたくなってきた。どうやら、その生命体は見間違えという訳じゃなく、ちゃんと後藤ひとりさん本人らしい。ふらっと、思わず目眩を覚える。
いや、会話が進まない。
そうして俺は後藤さん、と慌てて名前を呼ぶ。口元のみならず頬までも引き
「………あの、後藤さん、現実だから。これ、現実。だから帰ってきて?」
「えっ? あっあ、あ、あぁ……す、すっすみません」
「ちょっと頭の中真っ白になっちゃって……え? あの、こ、これ、って、その、ば、ば、罰ゲーム、とか、ですよね? ね?」
そう言って彼女はようやく人の形を取り戻したかと思えば、あたふたと狼狽しつつ異常な程
いや、胞子どこいった? まずい。この子もしかして人間の形をした何か別の生き物なんじゃないだろうか。人間ってこんな変幻自在に動くっけ。
そんな疑惑を抱きつつも、それを半ば無理矢理無視しつつ、俺は項垂れる。
「違うよ………正真正銘、ガチの、告白だから。あの、恥ずかしいから、い、言わせないで……」
「ふえっ、あっ、あぅ、あ、すすすすみません」
「ああいや、全然謝らなくていいけども……」
ここまで伝わらないなんてことあるのだろうか。いや無い。
反語を使いたくもなるよそりゃ。
正直なところ、内心、頭を抱えた。
困惑する気持ちが胸から溢れるのを感じつつ、俺は首を振る。そのままちらりと視線を向けると、彼女は上下左右にがたがたと震えては、これまた激しく体のパーツが崩れ始めた。
「い、いやでも、う、う、うそ、だ、うそだ、私なんかにそんな、そんな、告白なんて、そんなあばばばばばぁ、ぁ、ぁ、ぅ、ぇ、おち、おち、おちついて……??」
「いや、落ち着くのは君だ」
俺は気が遠くなるような感覚を覚えつつ、目を細めてその様子を見つめる。すると、彼女は何やら落ち着きを取り戻す為か、必死に呼吸を整え始めた。
「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ……ご、ごめんなさい。ちょっと、取り乱してしまって」
そう言って後藤さんは胸に手を添え、大きな息をついて小さく呟いた。
「いっいや、全然、いいけど……」
この子、面白ぇー女過ぎないか。
あらゆる言動が変人という枠を二、三枚ほどぶち抜いて遥か彼方へと飛び抜けていく。変わった子なんだろうな、とは元々思っていた。
でも実際に話してみると、想像以上に癖が強い。
思わずそんな彼女の言葉に、苦笑しそうになるのを堪える。
「………あっあの、本当に、罰ゲームじゃ……ないん、ですか?」
彼女はおずおずと、声を震わせて質問をしてきた。
罰ゲームでそんな事をする輩も居るには居る。
心底理解は出来ないけど、実際そういう奴も居る以上、そう思うのも無理はないのかもしれない。
「………違うよ」
苦笑を抑え込む。
そしてそのまま俺は、努めて彼女を安心させようと微笑んでみせた。
「え、えぇぇえええぇ!?」
「つつつつつつつつつっ、つまり、本気で、本当って、事っ、ですか?」
「だからそーだって」
すると彼女は、驚きの余り大きく瞳孔を開いて絶句し、口元を押さえたまま微動だにしなくなった。
混乱しきったまま、顔の形がまた崩れそうになるのを物理的に戻しながら後藤さんは小さく聞き返してくる。あっ。それ戻るのね。
うーん。やっぱこの子、もしかしなくても人の形をした宇宙人なのかもしれない。
「あっあの、……なんで、ですか? どうして、私なんかを……?? すみません。ほんとに、わからなくて」
余りにも信じられないと言ったように、彼女は酷く怯えた様子でそう呟く。「……………」
やっぱり、とそこで気付く。
この子は、もしかして相当自己肯定感────あるいは、自信とか人との接し方の理解のような、とにかくそれに近い何か────が薄い子なのではないか。そんな予感が脳裏に浮かぶ。
「………後藤さんさ、こないだ文化祭でギター、弾いてたよね?」
「えっ……あっ、み、みててくれたんですか……!?」
「うん、もちろん」
すると彼女は、少し恥ずかしそうに俯きながらも、何やら嬉しそうに声色を上げて反応を示す。おお、どうやら感情が乏しい訳では無いみたいだ。
「は、はい、弾きました。い、色々とトラブルも多かったですし、さ、最後は、その、非常に醜いところをお見せして、しまい……ぁばばば……」
と、思いきや。
その時のことを思い出したのか、両手で顔を隠して小さく奇声をあげ始める。まさかの、またも物質的に彼女は崩れ始めてしまった。うっそだろおい……。
何とかそんな事を思っていないと伝えたい。
そう思った瞬間、咄嗟に口から「ッ、いや、カッコよかったよ!」という言葉がつい飛び出た。
「………え?」と彼女は目を見開き、こちらを見つめ返してくる。あぁ。やっと、こっちを見てくれた。
「─────これは、ライブの感想込みで、君に、伝えたいことなんだけどさ」
「あっ、は、はい」
「………………─────」
躊躇する。
拳を握りしめ、覚悟を決める。言え、言うんだ、俺。
「………っ、……カッコよかったんだ」
「……っ、ふぇ!?」
余程予想外の答えだったのか。そうして彼女は大きく声をあげて顔を上げた。
その瞬間、前髪が持ち上がるのと同時に後藤さんの
それはまるで、青く透き通るような。
澄んだ空のような深い
そうだ。俺はあの時、ライブで演奏を終えた彼女がこちらを向いた時。────その姿にどうしようもなく、
それ故に、その後の言葉は自然と口から本心として零れ落ちた。
「……それにその、可愛かったよ。後藤さん」
「っ、え? えっ、えっっ、えっ!? かかかかかかかか可愛っ!? かわ、ふぁ、ふぁにゃあああああッッッ!?」
その瞬間、またも彼女は髪で顔を隠し、それはそれは物凄い癖の強い悲鳴をあげる。それも大慌てで。そのまま勢いよくしゃがみこんでしまう。
それは今までと比べてみても、とんでもなく甲高い悲鳴だ。
「うおっ!? びっくりしたっ」
「……ど、どうしたの!?」
俺は一瞬、肩を震わせて困惑してしまう。
だけど、出来うる限り彼女を怖がらせたくなくて声を抑え込んでそっと問う。
すると、後藤さんはビクッと身体を振るう。
そのまま屈み込んだ姿勢のまま、ふるふると震えながら呟く。
「ッ……あ、あの、私………っ、自分のこと、ずっと嫌いで! 目立たないし、地味で暗くて、友達もろくにいないし……」
「だからその、ほんとうに、その、なにも取り柄がない人間で……そんな私を、誰かに評価してもらえるなんて思ってもみなくて、その……!」
「そっそれに、その、か、か、可愛いなんて、わたし、その、男の子に、初めて、言われて…………」
「……」
すると、
しかも、その頬はとんでもなく赤い。
なんっっっっだそれは、可愛い。可愛すぎる。
だけど俺はそこで自己否定をした彼女へ「…………取り柄がない? 何言ってんだよ、後藤さん」と返す。そんなことない。
「へ………?」
そんなことないんだ。取り柄がないとか、ありえない。俺は知ってる。
顔を見上げて、不思議そうな声をその少女は漏らす。
またも長い前髪の隙間から、綺麗な青い瞳が俺の瞳を僅かに
彼女を励ましたい。
そんなふうに思えて、唇が自分でも自然と弛むのを感じる。それに呼応する様に、俺は偽らざる想いを吐露した。
「あのね。………ごめん、大袈裟に聞こえるかもしんないけどさ」
「俺にとっては、君は、“ヒーロー” みたいだったよ」
「─────ヒーロー……?」
「うん。ヒーロー。英雄」
彼女はまるで夢心地のように呟き、ぼんやりとした瞳で俺を見つめ返してくる。
俺も無意識に、同じ様に膝を着いてしゃがみこむ。そのまま、そっと同じ目線で視線を返す。
「台風ライブの、あの時とかさ」
「………俺にはね? 君はまるで、結束バンドの皆にとってのヒーローみたいに、そう思えた。ざっくり一言で感想言えって言われたらね、もうこれが全部」
「カッコよくて、可愛い……そんな君に」
「俺は、一目惚れした」
「だから、………俺と、付き合ってほしい。もう、これが正直ぶっちゃけた本音」
「え、えぇぇぇ?! ひ、ひっ、ひひっ、ひとめぼ、ほれ、惚れ?!」
「……わっ、私に……ですか?」
パニック気味に動揺し、口走ったことの重大さに気づいたかのように、彼女は口を押さえて何度も吃る。
そのまま後藤さんはまたも顔を真っ赤に染め、前髪で顔が半分以上隠れていてもわかるほどにその狼狽は止まらない。
だけど不思議なのだ。最初はそんな姿に困惑していたはずなのに、そんな仕草をする彼女を、今ではすでに愛おしくすら感じてくる。
「あははっ。そーだよ。君に」
俺はもう、自然体のまま歯を見せて微笑みかける。
安心して欲しいから。紛れもない、本心である事を伝えたくて。
「………っ! え、えっと、え、えっと、ええっと………」
「……っ、っ、っぅ………」
最早動揺しすぎて言語中枢が機能していないのか、彼女は壊れたロボットのように同じ単語しか繰り返せなくなっている。そして、強く目蓋を閉じながら俯く。
下を向く前に見えた顔は、さながら林檎のように真っ赤で、右手で唇を覆いながら震えきっていた。
「……だから何度でも言うよ。君が好き。だから、俺と、付き合って欲しい。……ダメ、かな?」
「うぅぅ……あっあの、吉沢、くん」
羞恥を堪える様に、そっと。よし、どうだ。言えることは全部言った。
あとはもう、野となれ山となれ、だ。後は知らん。
すると後藤さんは、余りにもか細い小さな小さな声で、精一杯答えてくれた。俺はそれが余りにも可愛く思えて、柔らかく返す。
「……ん? どうしたの」
「………っ、あ、あっ、あの………」
髪の隙間から見えるのは、申し訳なさそうな表情。
何かを言おうとするのを何度も
だが、遂に意を決したように、彼女は消え入るような涙声で呟く。
「…………ご、ごめん、な、さ、い」
その瞬間。
─────俺の人生初の告白は。
「……………アレ?」
「……………oh……」
それはそれは。
これまたもう見事なまでに、いっそ額縁に入れて飾りたい程。
あまりにもキレイな形で、玉砕をしたのだった。