ぼっち・ざ・ろっく! フラッシュバッカー   作:空山 零句

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お待たせしました。新章、開幕です。長くなったのでこれまた二分割で。連続投下するので後編もお楽しみください。










#07『君の街まで、月並みに輝け』(前篇)
CHAPTER #59「覚悟」(前篇)


 

 

 STARRYの玄関扉前。

 

 入口手前の小さな階段を降りた私は、そのドアの前でしばらく立ち尽くしていた。

 右手に一枚のフライヤーを握り締め、左手でお母さんが巻いてくれた首元のマフラーを僅かに動かす。

 目の前の扉は、いつもよりずっと重そうに見えた。STARRYの入り口。バイトと練習とライブの為に何度も通ってきたはずの場所。それなのに今日は、その扉の向こうにある空気ごと、昨日とは違ってしまった気がする。

 くしゃ、と乾いた音が、秋の空気に紛れて小さく響く。

 それは、何度も開いて。何度も握りしめて。そのたびに皺が増えていったポスター用紙。

 けれどそこに書かれた文字だけは、昨日の夜からずっと、私の胸の奥で消えずに残り続けていた。

 

 昨夜生じた、 “熱” の(おもむ)きは、しわくちゃになった紙を握る掌の感触と共に、今も(くすぶ)り続けている。

 

 私は強く結んだ唇を微かに開き、微かに吐息を漏らす。

 そうしてそのまま、右手のそれをまた拡げる。未確認ライオット二〇二三、と書かれた告知用紙。その文字を見るたびに、怖くなる。

 怖くなるのに、目線はそこから一ミリたりとも逸らせない。まるで、そこに視線だけが縫い付けられたかのように。

 耳を澄ませる。

 重い扉の向こうから、くぐもった声が聞こえた。

 

「────未確認ライオット?」

 

 リョウさんの声だ、と思った。

 

 心臓が、どくん、と鳴る。

 次に聞こえたのは、虹夏ちゃんの声だった。

 いつもみたいに明るくしようとしているのに、その奥に昨日の悔しさがまだ残っている声。

 それから、春樹くんの声。

 

「……だから証明しなくちゃならない」

 

 扉越しで聞き取りづらいはずなのに、言葉だけははっきり届いた気がした。

 証明。

 その二文字が、胸の奥で唸る。

 ああ、やっぱり。

 みんなも、同じだったんだ、と思う。昨日のまま、終わるつもりなんてなかったんだ。そのことが嬉しくて、苦しくて、私は手の中のポスターをさらに強く握りしめる。喉の奥からお腹まで力が入る。

 そうして思わず、紙がまたくしゃりと鳴った。

 

「………でも、春樹、虹夏。そもそもの話、ぼっちがまだ来てないし、ぼっちがこの手の話に乗れるとは思わないんだけど。そこは大丈夫なの?」

 

 その言葉に、私は一瞬だけ目を伏せた。

 

「───────……………」

 

 昨日までの私なら、握り締めるこの紙ごと、今聞き取れたその言葉を聞かなかったことにしていたかもしれない。だって、たぶん、昨日までの私なら、その通りだった。

 嫌がったと思う。

 怖がったと思う。

 逃げたと思う。

 見つけても、誰かに渡すことなんて出来なかったと思う。

 だって、こういう何かが大きく変わる瞬間なんて、陰キャにはあまりにもハードルが高過ぎるから。私みたいな人間なんかに、そんなものができると思えなかったから。

 大会とか、審査とか、グランプリとか、メジャーデビューとか。そういうものは、私なんかが口にした瞬間に、世界から笑われてしまう気がしたから。

 

 でも。

 昨日、私は悔しかった。

 

 結束バンドを、私の大切な場所を、あんなふうに言われたことが。

 春樹くんや、虹夏ちゃんや、喜多ちゃんや、リョウさんが、皆が傷ついたことが。

 

 何より、その場で私は、何も出来なかったことが、自分でも許せなかった。納得なんか出来なかった。

 

 怖かった。でも────それ以上に、悔しかった。

 

 昨日までの私は、きっと殻の奥で息を潜めるマイマイのようだった。暗くて、狭くて、ぬるい場所に丸まっていれば、傷つかずに済むと思っていた。でも、殻の中にいるままじゃ、守れないものが出来てしまった。

 

 だから、出なきゃいけない。

 内側の熱が、ドッペルゲンガーと共に囁く。私は私のままでいられるの、って。

 

 そんなの知らない。分からない。怖い。そんなすぐに人が変わる訳ない。物語の主人公みたいに、私はそんなにすぐ強くなんかなれる訳ない。

 そんな事、私自身が一番よく知ってる。

 殻を捨てられるほど、私は強くないってことを。

 怖がりで、臆病で、すぐ縮こまるところは、きっと何も変わっていないのだろう。

 

 でも、それでも。

 

 それでも、だ。もう逃げない。逃げたくない。

 だって、震える身体ごと、外へ顔を出すことくらいは、今の私にも出来るかもしれないからだ。卵を破り、この世界に新しく産まれ落ちる、新たなる生命の始まりのように。

 

 このままでいいの、とドッペルゲンガーがもう一度問い掛ける。

 良いわけない。そんなの、いやだ。今日は違う。

 違うって、ちゃんと自分で言いたい。

 私は、深く息を吸う。

 

 喜多ちゃんの、私を抱き締めてくれた体温。

 虹夏ちゃんの、私の髪を撫でてくれた温もり。

 リョウさんの、私の背中を押してくれた言葉。

 春樹くんの、私自身を信じてくれた信頼。

 

 昨日のそれらが頭を過ぎっては、目蓋の裏に浮かんでいく。

 そうだ。信じて貰えたんだ。みんな私の言葉を否定しないで受け止めてくれたんだ。だったら、だったらそれに応えなければ。

 その時、思い出す。

 あの日、春樹くんに告白された日、リョウ先輩に話を聴いてもらって、夜空の “一番星” を眺めた日に誓ったことを。

 

 いつか、こんな私自身を変えることが出来たなら。

 いつの日か、もし堂々と胸を張れる日が来たら。

 その時は、皆に言う。

 

 皆に出会えて、本当に良かった、って。私は、本当のヒーローになれた気がします、って。誇りを持って、自分からそう言えるようになるって誓った。

 夜空に願った、その時のたった一つのあの想いだけは、嘘にしたくない。

 きっとこれは、その分岐点。

 

 この一歩が、その始まりなのかもしれない。今この瞬間が、私自身が揺蕩(たゆた)う “暗闇(アンダーグラウンド)” から抜け出す為の。

 

 そうして私はドアノブに手をかけていく。

 冷たい金属の感触が、指先に伝わる。

 それだけでまた少し怖くなる。けれど、もう離さなかった。

 ゆっくりと、扉を開ける。ギィィ、と重い扉が、低い音を立てて動いた。

 コッ、コッ、コッ、と。そこから階段を降りる自分の足音が、いつもより大きく聞こえた。

 逃げる音じゃない。

 隠れる音でもない。

 来ると決めた人間の足音だと、そう思いたかった。

 皆の視線が、こちらを向く。

 

 虹夏ちゃん。

 喜多ちゃん。

 リョウさん。

 春樹くん。

 

 怖い。

 でも、足は止まらない。不思議と震えは無かった。私はみんなを見据えたまま、立ち止まる。

 

「あっ、ぼっちちゃん………! 今皆で…………」

 

「───────……………」

 

 虹夏ちゃんの声に、私はすぐには答えられなかった。

 代わりに、握りしめていた紙をゆっくりと持ち上げる。何度も握ったせいで、もう皺だらけになってしまったフライヤー。

 そこに書かれた文字だけは、昨日よりずっと強く、私の中に残っている。私はそれを、ゆっくりと皆の前に広げた。

 

 未確認ライオット二〇二三と記された、私なりの覚悟を。

 

「……ッ!!」

 

 虹夏ちゃんが息を呑むように、強くつよく目を見開く。

 喜多ちゃんの目が、一瞬で華やぐ。

 リョウさんは、少しだけ口元を緩めるのも見えた。

 

 そして、春樹くんだけは。

 

「─────誰より信じてた。きみが来ること。ひとり」

 

 最初から、信頼しきってくれていたかのように、そう言った。

 昨日と同じように、私をただ当たり前のように信じて、待っていてくれた。

 その声に、胸の奥が少しだけほどける。私は小さく頷いた。それから、顔を上げる。もう、ここまで来たら迷いはない。

 前髪の向こうに隠していた視線を、ちゃんと皆へ向けて、呟く。

 

「皆さん。………お願いがあるんです」

 

「皆さんの力を、貸してください」

 

 

 

「私を信じて、着いてきて、くれますか」

 

 

 

 声は、思っていたより震えることはない。

 昨日の夜、私は何も出来なかった。でも、もう今日まで何もしないままでいることだけは、どうしても嫌だった。

 だから言い放った。それは誰に言われた訳でもない。

 自分の言葉で。自分の意志で、皆に問い掛ける。

 

「ッッ………!! ぼっちちゃん!!」

 

 虹夏ちゃんの声が弾けた。

 その声を聞いた瞬間、私は思う。

 

 ああ、私はこの人たちと一緒に行きたい、って。

 怖くても、下手でも、震えていても。それでも、この人たちとなら、未だ見ぬ明日へ行ってみたい、って。

 

「──────誰よりも俺は、君を信じる。そう言ったろ。……言うまでもなく、信じるよ」

 

「必ず!!」

 

 春樹くんが立ち上がる。

 その言葉に、私はほんの少しだけ微笑んだ。

 そして、ポスターを握る手に力を込める。

 

 怖いままでいい。臆病なままでいい。それでも、前へ出る。

 

 そう決めたから。

 

 

 

 

「結束バンドで……」

 

「グランプリ──────獲りましょう!」

 

 

 

 

 それを言い切った瞬間。胸の奥で、何かがぱり、と音を立てた気がした。

 壊れたわけじゃない。

 捨てたわけでもない。

 それは言うなれば、ただ、そこから顔を出して、外の光を見た音なんだろう。

 

 未だ見ぬ明日というものが、どこか遠くに勝手に用意されているものじゃないのなら。

 

 ならばそのひびは私を包んでいた殻に、初めて自分の意志で入れたひび。

 新たなる未来、そのものだ。

 

 私は今、それをこの瞬間から掴みに行く。結束バンドの皆と、一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ぼっち・ざ・ろっく!

フラッシュバッカー

 

 

 

 

 

#07『君の街まで、月並みに輝け』(前篇)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その言葉を言い切ったあと、STARRYの空気が少しだけ止まった気がした。

 

 空調の機械的な唸り声も、誰かの息遣いも。

 さっきまで確かにここにあった音が、全部まとめて、ほんの一瞬だけ遠くなる。

 私の手の中では、皺だらけになったフライヤーがまだ小さく震えていた。自分でもわかるほどに、指先に力が入っている。

 でも、それが怖さのせいなのか、それとも、ここまで言い切ってしまった自分自身への驚きのせいなのかは、もうよく分からなかった。

 

「………………」

 

 目の前で、春樹くんが私を見ていた。それは、誰よりも驚いていない顔だった。

 ううん。正確には、たぶん驚いていないわけじゃない。でも、私がここに来たことも、こう言い出したことも、最初からどこかで信じていてくれたような、そんな顔。

 その表情を見ただけで、胸の奥が少しだけほどける。

 それが、安心によるものなんだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

 やっぱり、この人はずるい。そんなことを、私は思う。自分でも信じきれないことを、当たり前みたいに信じてくれるから。

 

「──────待ってた。おはよ、ひとり」

 

「…………っ」

 

 また、名前を呼ばれた。

 いつもより少し低くて、でも、どうしようもないくらい温かくて優しい声。

 その声に、ポスターを握る指先すらきゅっと震える。私は何とか小さく頷く。そうしないと、喉の奥から何かが溢れてしまいそうだったから。私の勇気を、この人には呆気なく見抜かれているって、わかってしまいそうだったから。

 

「─────ぼっちちゃん……」

 

 次に聞こえたのは、虹夏ちゃんの声。

 いつもみたいに明るく跳ねる声じゃない。少しだけ掠れていて、でも、どうしようもなく切なげな声色。

 顔を向けると、虹夏ちゃんは私の手元にあるフライヤーをじっと見つめていた。

 その紙がもう皺だらけになっていることに、きっと気づいたんだと思う。

 何度も握って。何度も開いて。何度も見て。何度も怖くなって。それでも捨てられなくて、ここまで持ってきた紙。

 それを見つめる虹夏ちゃんの目が、少しだけ揺れる。

 

「……たくさん、悩んだんだね」

 

「……っ……は、い」

 

 言われた瞬間、胸の奥がぎゅっと縮む。

 正直、自分では悩んだのかどうかも分からない。ただ、夜の間ずっと、このフライヤーを握りしめていた。眠れなくて、何度もスマホで調べて、何度も怖くなって、何度もやめようと思って、それでも。

 それでも──────朝になってもこの紙を捨てられなかった。それだけは、確かだった。

 

「……うん。嬉しい」

 

 虹夏ちゃんが笑う。

 その笑顔は、私まで泣きそうなくらい優しい。

 

「あたし達、皆……やっぱり同じ気持ちだったんだね」

 

 そう言って、彼女は一歩こちらへ踏み出した。

 

 気づいた時には、私は虹夏ちゃんに抱きしめられていた。

 

「……っ、に、虹夏ちゃん……!?」

 

「ありがとう、ぼっちちゃん」

 

「────……………」

 

 耳元で、虹夏ちゃんが囁く。

 それから彼女は、私だけじゃなくて、隣にいた春樹くんの腕も掴んで、喜多ちゃんの手も引いた。

 

「ちょっ、虹夏!?」

 

「っ、あの、虹夏先輩……?」

 

 戸惑う私達をまとめて抱き寄せるみたいに、虹夏ちゃんはぎゅっと腕を回す。

 あたたかい。

 私の右肩に喜多ちゃんの髪が触れて、左側では春樹くんの制服の袖が近くにある。虹夏ちゃんの腕が、その全部をまとめて結んでくれているみたいだった。春樹くんは照れたように困惑しつつも、どこか苦笑を口元に浮かべている。

 一方の喜多ちゃんも喜多ちゃんで、恥ずかしそうに身を(よじ)って頬を赤くする。でもどこかその姿は嬉しそうで。

 なんだろう。

 いつもなら近すぎて、心臓が爆発して、胞子を撒き散らしながら消滅するところなのに。

 今は、ただあたたかかった。喜多ちゃんが、前に言っていたっけ。

 

『─────だってバンドって、“第二の家族” って感じしない?』

 

『本当の家族以上にずっと一緒にいて、みんなで同じ夢を追って』

 

『友達や恋人とかを超越した不思議な存在な気がして』

 

(─────………ああ、そっか。これって、“そういうこと” だったりするのかな)

 

 最初に結束バンドに入る前、彼女が言ってた言葉の意味が、あの時よりももっと自然に私の胸中(きょうちゅう)へそっと落ちていく。

 家族。

 お母さん達とはまた違う、大切な人達との “繋がり” 。

 そこには、血が繋がってようと繋がってなかろうと関係ない。どんな事があっても、皆で夢を追って諦めない。前を向いて、一緒に歩んでいけるキズナそのもの。それが、 “家族” の条件そのものなのだとしたら、と私は思う。

 だとしたら、私達のこれは、喜多ちゃんの言う通り、もうひとつの “家族” の在処そのものなのかもしれない。

 

「………………………」

 

 その時、ふと視界の端で、リョウさんの姿が見えた。彼女は少しだけ離れたところに立っていた。

 いつも通り、何を考えているのか分からない顔。無表情で、気だるげで、でも。

 ほんの少しだけ、口元が寂しそうに見えた。

 

「……あの」

 

 リョウさんが、小さく声を出す。

 その声は、たぶん本人が思っていたよりもずっと控えめだった。

 彼女は制服のポケットをまさぐると、そこから一枚の紙を取り出す。折り目のついた、少しだけくしゃっとしたフライヤー。

 そこにも、同じ文字が書かれている。未確認ライオット二〇二三、と。

 

「……実は私も、持ってきてた」

 

「リョウ……」

 

「リョウ先輩っ……」

 

 それを見た虹夏ちゃんと喜多ちゃんが揃って目を丸くする。

 リョウさんは、珍しく気まずそうに視線を逸らしていた。頬を掻くでもなく、笑うでもなく、ただ少しだけ目を細めて、こちらへ歩いてくる。どこかその仕草が、照れてるような、悲しげなような、そんな様に見えるのはきっと気のせいじゃない。

 

「………………仲間、入れて」

 

 その一言が、なぜだか胸に刺さった。

 リョウさんはいつも、どこか一人で平気そうに見える。

 何を言われても涼しい顔で、変なことを言って、草を食べて、私達をからかって、気づけばいつも後ろの方でベースを鳴らしている。

 でも、今のその声は。

 とても小さくて、少しだけ寂しそうで。

 だから、虹夏ちゃんが笑った。

 

「も~~~~! ほんっとに!! 素直じゃないなぁリョウは!」

 

「ほらっ!!」

 

 更にぱっと腕を開く。

 

「おいでよ!」

 

「……ん」

 

 口元を微かに吊り上げたリョウさんが、ゆっくりこちらへ近づいてくる。そうして、五人で固まった。

 

 私。

 虹夏ちゃん。

 喜多ちゃん。

 リョウさん。

 春樹くん。

 

「───………あはは、なんだこれ。昨日も似たようなことしてたな」

 

「ふふっ、いーの! そん時は春樹くん巻き込んでないし! ……あたし達は普段いっつもバラッバラなんだから。こういう時くらい、ね?」

 

「……おぅ。ありがとう」

 

 春樹くんが可笑しそうに微笑む中、虹夏ちゃんは瞳を伏せて嬉しそうに囁く。

 私はそれを聞いて、胸がキュッとなる。これはまるで、ぎこちなくて、少し狭くて、変な距離感で、でも、どこかちょうどいい円環。

 

 それはまるで、結束バンドそのものみたいだった。

 

 ばらばらの星が、無理やり線で結ばれているわけじゃない。一見するとそう見える。でも、実際は違う。これはなんというか、それぞれ勝手な場所で光っているのに、気づいたらひとつの形に見える。そんな、不思議な円のようなものなんだ。

 

「…………」

 

 私はその輪の中で、そっと息を吸った。

 

 怖い。

 やっぱり怖い。何回思ったか分からないけど、どう頑張ってもそれは消せない。

 でも、今だけは、その怖さごと、この人たちと一緒にいたかった。

 やがて、私達はゆっくりと身体を離した。

 

 

 

 

 

 






後篇は、18時30分に引き続き投稿します。
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