本編の内容は全く関係ありません!
急ですが最終ステージです。多分このまま次をひねり出そうとしても、今みたいに更新をいたずらに伸ばしてしまうだけだと思ったので、この前後編でVR訓練は区切りとします。
以降の話は、また思いついたらという感じでいきますね。ちなみに最終回ではないつもりです。
次のステージへと移る前に、Fairyからのアナウンスが流れてきた。
『唐突ですが、次が最終ステージとなります』
「あ、そうなの?」
『制作側の都合により、またネタが溜まってきたらステージを追加する予定、とのことです』
ちょっと発言がメタい気もするけど、スルーしておこう。やったことないけど、スマホゲームってこういうイメージがある。順次アップデート予定、みたいな。
『……ねえFairy』
『はい、景品については問題なく――』
『しーっ! サクに聞こえちゃうでしょ!』
「そういう話はせめて俺からもうちょい離れてしようね?」
『あはは……』
リンがもう破れかぶれになっている。アキラも乾いた笑いしか出ないようだ。アナウンスは終わったようで、最終ステージへと到着した。
「って、何ここ? なんか高級そうなビルの中か?」
到着したのは、俺の知らない場所だった。装飾とかすごく高そうな雰囲気が凄い。これ多分、俺みたいな学生は縁が無い場所なんだろうな。リンとアキラは知っているらしく、冷静に思い返している様子。
『ここは、バレエツインズだね』
『確かここで初めて出会ったのって……』
バレエツインズという名前だけは聞いたことがあった。確か、前にホロウが飲み込んじゃったビルだ。知り合いでかつ、高級ビルとかに縁がありそうなのは、もしかしてあの人たちかな。
なんて考えていたら、大広間の階段上にとある人影が3つ浮かび上がった。
『はっ、あれらはいったい誰なんだ!?』
『もしかして、幽霊!?』
「いや、そういうのいいから。シルエットで丸わかりだから」
逆光で顔は見えないけれど、メイド服にサメのしっぽはもう1人しか該当しない。あと明らかに浮いているメイドと、でかい電ノコを担ぐ少女。1人足りないけれど、もう間違い無いだろう。
どこからかスポットライトが3人に当たりようやく顔が見えた。はい、ヴィクトリア家政でした。見た目に変化は無さそうだけど、果たして一体どんな異変が――。
「おかえりなさいませ! ご主人様っ!」
「えっ」
まず声をあげたのは、120パーセントスマイルを浮かべるサメのメイドだった。俺の知ってる彼女が絶対にしないであろう完璧な挨拶は、俺の脳内にパニックを引き起こした。
「ごめん、全然エレンじゃなかったわ。サメのシリオンだからって勘違いしてたわ。いやー先入観って良くないね」
『落ち着いてサク! 間違いなくエレンだから!』
『……僕も目を疑ったけれど、あのギザギザの歯に目の下のホクロ。間違いないよ』
『え、お兄ちゃんいつもエレンのそこ見てたんだ……ふーん……』
『待ってくれリン、誤解だ。ちょっとずつ後ずさらないでくれ』
開幕の第一声に、パーティーは全員混乱してしまった。アキラは何で二次災害引き起こしてんのよ、それは知らんわ。
とりあえずわかりやすすぎるエレンは置いといて、もう2人の方に目を向けてみた。すると、お盆を持ったリナさんがこちらに来ようとしている。
「ただいま歓迎のおもてなしを……あらあら」
「わっと! リナさん、大丈夫ですか?」
ふらふらとあっちの方向へ飛びかけたリナさんを、カリンが器用にキャッチしてみせた。こっちもこっちで違和感が凄いな。
「ごめんなさい、カリンさん。ドジばかりでご迷惑を……」
「気にしないでください! 私がいますから、何の問題もありません!」
これ、いつもと構図が逆だな。リナさんにいつもの落ち着きがなくなっている。対してカリンはいつもの自身無さげな猫背じゃなくて、すごく堂々としている。
「……リナさんとカリンの特徴がちょっと入れ替わってる、のか?」
『どうやらそのようだね』
『なんか、ほほえましいね!』
もしかしてこの入れ替わりって、とても健全なのではないか。そう思っていたのだが、何かが溶けるような音が聞こえてきて、一抹の不安がよぎった。
『あれ、リナさんが今落としちゃったのって……』
『おそらく、リナさんお手製のクッキーだ。前に見たことがあるよ』
「俺の知ってるクッキーって、建物を溶かしたりしないんだけど……?」
前みたいに即記憶を消し飛ばす、みたいな理不尽さはない。けれど、こぼれた先の壁や床がジュウゥ……と言いながら溶け始めている。最早エーテルより危ないだろあれ。
「失礼いたしました。次こそは、必ずや……」
「その意気ですメイド長!」
カリンが自信ありすぎて立場忘れかけてる。あんまり自信つきすぎるのもちょっと問題になりそう。そしてリナさんはまたフラフラしながら、今度はお茶を汲んでこちらに持ってこようとしている。
「うーん、一見透明なお湯に見えるんだけど。もしかしてあれも危ないか?」
『警告、彼女が用意したお茶は"王水"と成分が類似しています。金をも溶かす危険な液体です』
「あれを、ドジでこぼしちゃうメイド……ってことか!?」
『そしてリナさんは、こちらに向かってきている……非常にマズい状況だ!?』
『た、退避退避ーっ!!』
なんと、リナさんの殺戮手料理とドジっ子が組み合わさることによって、超危険なメイドが誕生したのである。異変を直そうにも、今のリナさんに近づいたらハリセンが俺もろとも溶かされちゃう。
「だ、誰か助けてくれーっ!?」
「……ご主人様の頼みでしたけど、本当に私が全部頂いちゃってよかったのでしょうか?」
「いやありがとうエレン本当に助かったわ」
「お役に立てて良かったです!」
はい、という事で愛嬌MAX状態のエレンに全部処理してもらいました。ありがとう、エレンの強靭な胃袋。
『でも、性格が入れ替わっている、じゃダメだったねー』
『2人とも元には戻らなかった。何か、もっと根本的な異変があるんだろうか?』
そう、危険物の処理が終わってからツッコミを入れてみたのだけれど、2人はもとに戻らなかった。原因がわからないまま悩んでいると、ふとエレンが呟いたのである。
「……はー、やっぱこの仕事ちょろいわー」
「!?」
今のエレンの口から発せられたとは思えない、衝撃の一言は俺にしか聞こえなかったらしい。けれどこのトーンの低さは元のエレンっぽい。だがしかし、実は純情でとても良い娘なエレンがあんな事を言うだろうか。
「ほらリナさん! 意外とどうにかなるんですよ!」
「ええ、そのようですわね……辞めずに済みそうで、安心いたしました」
カリンとリナさんも、発言がちょっと引っかかる。この違和感は、いったいどこから来ているのだろうか。
『ところでさ、ライカンさんはいないのかな?』
『そういえば姿が見当たらないな。ここまで全員揃って出てきているのだから、仲間外れは無いと思うけれど……』
『肯定。このステージも
全員、を強調したという事はライカンさんもここにいるのだろう。けれどこのあたりにオオカミのシリオン執事の姿は見当たらない。
……ただ1つだけ、可能性はあった。これは正直、そうであってほしくないと思って、除外していたのだ。
「……あの、さ。さっきから気になってたんだけどさ」
『どうしたのサク? もしかして、何かわかったの?』
「いや、あの……まさかとは思うんだけどね? そこの隅っこに、
『本当だ。……サク、まさか』
何せエレンがあの変わり様だったのだ。ライカンさんだって、普段からは想像もつかないような状態になっている事だって、あり得る話ではあった。
しかし近づいて見えてきたのは、俺のキャパシティを余裕で飛び越えてくる、衝撃的な異変だった。
「はぁ……だりぃ……」
「悪夢だあぁーっ!?」
そこにいたのは白い巨大な毛玉、もとい執事のしの字もなくなったライカンさんだった。嫌だ、こんなライカンさん見たくなかった……。
最初はバレエツインズの双子のイメージから、性格を入れ替えるだけでした。ですが共通のツッコミどころは別で用意しています。勘の良い人はここまでで気づくのかな……?