一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 メリークリスマス!
本編の内容は全く関係ありません!

 急ですが最終ステージです。多分このまま次をひねり出そうとしても、今みたいに更新をいたずらに伸ばしてしまうだけだと思ったので、この前後編でVR訓練は区切りとします。

 以降の話は、また思いついたらという感じでいきますね。ちなみに最終回ではないつもりです。


40.サクのVR訓練 その6『ヴィクトリア家政 前編』

 次のステージへと移る前に、Fairyからのアナウンスが流れてきた。

 

『唐突ですが、次が最終ステージとなります』

「あ、そうなの?」

『制作側の都合により、またネタが溜まってきたらステージを追加する予定、とのことです』

 

 ちょっと発言がメタい気もするけど、スルーしておこう。やったことないけど、スマホゲームってこういうイメージがある。順次アップデート予定、みたいな。

 

『……ねえFairy』

『はい、景品については問題なく――』

『しーっ! サクに聞こえちゃうでしょ!』

「そういう話はせめて俺からもうちょい離れてしようね?」

『あはは……』

 

 リンがもう破れかぶれになっている。アキラも乾いた笑いしか出ないようだ。アナウンスは終わったようで、最終ステージへと到着した。

 

 

「って、何ここ? なんか高級そうなビルの中か?」

 

 到着したのは、俺の知らない場所だった。装飾とかすごく高そうな雰囲気が凄い。これ多分、俺みたいな学生は縁が無い場所なんだろうな。リンとアキラは知っているらしく、冷静に思い返している様子。

 

『ここは、バレエツインズだね』

『確かここで初めて出会ったのって……』

 

 バレエツインズという名前だけは聞いたことがあった。確か、前にホロウが飲み込んじゃったビルだ。知り合いでかつ、高級ビルとかに縁がありそうなのは、もしかしてあの人たちかな。

 

 なんて考えていたら、大広間の階段上にとある人影が3つ浮かび上がった。

 

『はっ、あれらはいったい誰なんだ!?』

『もしかして、幽霊!?』

「いや、そういうのいいから。シルエットで丸わかりだから」

 

 逆光で顔は見えないけれど、メイド服にサメのしっぽはもう1人しか該当しない。あと明らかに浮いているメイドと、でかい電ノコを担ぐ少女。1人足りないけれど、もう間違い無いだろう。

 

 どこからかスポットライトが3人に当たりようやく顔が見えた。はい、ヴィクトリア家政でした。見た目に変化は無さそうだけど、果たして一体どんな異変が――。

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ! ご主人様っ!」

「えっ」

 

 

 

 

 

 まず声をあげたのは、120パーセントスマイルを浮かべるサメのメイドだった。俺の知ってる彼女が絶対にしないであろう完璧な挨拶は、俺の脳内にパニックを引き起こした。

 

「ごめん、全然エレンじゃなかったわ。サメのシリオンだからって勘違いしてたわ。いやー先入観って良くないね」

『落ち着いてサク! 間違いなくエレンだから!』

『……僕も目を疑ったけれど、あのギザギザの歯に目の下のホクロ。間違いないよ』

『え、お兄ちゃんいつもエレンのそこ見てたんだ……ふーん……』

『待ってくれリン、誤解だ。ちょっとずつ後ずさらないでくれ』

 

 開幕の第一声に、パーティーは全員混乱してしまった。アキラは何で二次災害引き起こしてんのよ、それは知らんわ。

 

 

 とりあえずわかりやすすぎるエレンは置いといて、もう2人の方に目を向けてみた。すると、お盆を持ったリナさんがこちらに来ようとしている。

 

「ただいま歓迎のおもてなしを……あらあら」

「わっと! リナさん、大丈夫ですか?」

 

 ふらふらとあっちの方向へ飛びかけたリナさんを、カリンが器用にキャッチしてみせた。こっちもこっちで違和感が凄いな。

 

「ごめんなさい、カリンさん。ドジばかりでご迷惑を……」

「気にしないでください! 私がいますから、何の問題もありません!」

 

 これ、いつもと構図が逆だな。リナさんにいつもの落ち着きがなくなっている。対してカリンはいつもの自身無さげな猫背じゃなくて、すごく堂々としている。

 

「……リナさんとカリンの特徴がちょっと入れ替わってる、のか?」

『どうやらそのようだね』

『なんか、ほほえましいね!』

 

 もしかしてこの入れ替わりって、とても健全なのではないか。そう思っていたのだが、何かが溶けるような音が聞こえてきて、一抹の不安がよぎった。

 

『あれ、リナさんが今落としちゃったのって……』

『おそらく、リナさんお手製のクッキーだ。前に見たことがあるよ』

「俺の知ってるクッキーって、建物を溶かしたりしないんだけど……?」

 

 前みたいに即記憶を消し飛ばす、みたいな理不尽さはない。けれど、こぼれた先の壁や床がジュウゥ……と言いながら溶け始めている。最早エーテルより危ないだろあれ。

 

「失礼いたしました。次こそは、必ずや……」

「その意気ですメイド長!」

 

 カリンが自信ありすぎて立場忘れかけてる。あんまり自信つきすぎるのもちょっと問題になりそう。そしてリナさんはまたフラフラしながら、今度はお茶を汲んでこちらに持ってこようとしている。

 

「うーん、一見透明なお湯に見えるんだけど。もしかしてあれも危ないか?」

『警告、彼女が用意したお茶は"王水"と成分が類似しています。金をも溶かす危険な液体です』

「あれを、ドジでこぼしちゃうメイド……ってことか!?」

『そしてリナさんは、こちらに向かってきている……非常にマズい状況だ!?』

『た、退避退避ーっ!!』

 

 なんと、リナさんの殺戮手料理とドジっ子が組み合わさることによって、超危険なメイドが誕生したのである。異変を直そうにも、今のリナさんに近づいたらハリセンが俺もろとも溶かされちゃう。

 

「だ、誰か助けてくれーっ!?」

 

 

 

 

 

 

「……ご主人様の頼みでしたけど、本当に私が全部頂いちゃってよかったのでしょうか?」

「いやありがとうエレン本当に助かったわ」

「お役に立てて良かったです!」

 

 はい、という事で愛嬌MAX状態のエレンに全部処理してもらいました。ありがとう、エレンの強靭な胃袋。

 

『でも、性格が入れ替わっている、じゃダメだったねー』

『2人とも元には戻らなかった。何か、もっと根本的な異変があるんだろうか?』

 

 そう、危険物の処理が終わってからツッコミを入れてみたのだけれど、2人はもとに戻らなかった。原因がわからないまま悩んでいると、ふとエレンが呟いたのである。

 

 

 

「……はー、やっぱこの仕事ちょろいわー」

「!?」

 

 

 

 今のエレンの口から発せられたとは思えない、衝撃の一言は俺にしか聞こえなかったらしい。けれどこのトーンの低さは元のエレンっぽい。だがしかし、実は純情でとても良い娘なエレンがあんな事を言うだろうか。

 

「ほらリナさん! 意外とどうにかなるんですよ!」

「ええ、そのようですわね……辞めずに済みそうで、安心いたしました」

 

 カリンとリナさんも、発言がちょっと引っかかる。この違和感は、いったいどこから来ているのだろうか。

 

 

『ところでさ、ライカンさんはいないのかな?』

『そういえば姿が見当たらないな。ここまで全員揃って出てきているのだから、仲間外れは無いと思うけれど……』

『肯定。このステージも()()の異変を解決しなければ、クリアとはなりません』

 

 全員、を強調したという事はライカンさんもここにいるのだろう。けれどこのあたりにオオカミのシリオン執事の姿は見当たらない。

 

 

 ……ただ1つだけ、可能性はあった。これは正直、そうであってほしくないと思って、除外していたのだ。

 

 

「……あの、さ。さっきから気になってたんだけどさ」

『どうしたのサク? もしかして、何かわかったの?』

「いや、あの……まさかとは思うんだけどね? そこの隅っこに、()()()()()()()()()()()()()()()()があるじゃん?」

『本当だ。……サク、まさか』

 

 何せエレンがあの変わり様だったのだ。ライカンさんだって、普段からは想像もつかないような状態になっている事だって、あり得る話ではあった。

 

 しかし近づいて見えてきたのは、俺のキャパシティを余裕で飛び越えてくる、衝撃的な異変だった。

 

 

 

 

 

「はぁ……だりぃ……」

「悪夢だあぁーっ!?」

 

 

 

 

 

 そこにいたのは白い巨大な毛玉、もとい執事のしの字もなくなったライカンさんだった。嫌だ、こんなライカンさん見たくなかった……。




 最初はバレエツインズの双子のイメージから、性格を入れ替えるだけでした。ですが共通のツッコミどころは別で用意しています。勘の良い人はここまでで気づくのかな……?
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