一般常識人に新エリー都は生きづらい   作:こなひー

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 このVR訓練自体は勢いで始めましたが、クリア後の展開は既に決まっていました。苦労人は皆報われてほしい。


(関係ないけど、11号のポテンシャル解放後が楽しすぎる)


42.サクのVR訓練 クリア特典

「ん、あれ……?」

「おめでとうサク! ゲームクリアだよ!」

 

 

 

 VRから目が覚めると、そこはアキラの自室のベッドだった。VRゴーグルを外すと、照明のまぶしさに顔をしかめる。目を横に向けると、リンが俺の顔を笑顔で覗き込んでいた。こっちもまぶしい。

 

 目がだんだん覚めていくうちに思い出してきた。バイト終わりにアキラから部屋へ誘われて、リンが後ろからVRゴーグルを被せてきたんだ。この間一切説明無し、怖いから一言ぐらい言ってほしかったわほんと。

 

「急にプレイさせてしまって申し訳ない。学生を夜遅くに帰らせるのも悪いと思って、出来るだけ早く始めさせてもらったんだ」

「こないだド深夜にチョップ大将のとこまで連行された覚えがあるんだけど……?」

 

 アキラってこんなに言い訳が下手だっただろうか。もしかして異変はまだ続いているのか。ならハリセンで元に戻さないと。

 

『サク様、訓練はすでに終了しています。ハリセンはありません』

「うぉっ! どこから声が!?」

「……Fairy、勝手に僕のスマホを乗っ取らないでくれ」

 

 今のFairyはイアスの体でなく、薄い長方形の姿になっていた。このスーパーAIなんでもありだな。

 

『改めましてサク様、クリアおめでとうございます』

「さあ、これを受け取ってくれ」

 

 そう言ってアキラは、俺に何かのチケットを手渡してきた。煌びやかなビーチの絵が描かれているチケット、心当たりは1つしかない。

 

 

 

「ファンタジィリゾートの、特別優待券!?」

「そう! いつも『Random Play』を任せちゃってるから、そのお礼!」

 

 

 

 2人曰く、ここ最近雲嶽山での修行とかで全然店にいなかった。それでここしばらく『Random Play』が実質俺の店みたいになっていることに、申し訳なさを感じていたらしい。

 

「いやいやいや。これ確か、とんでもない値段なうえに競争率がバカみたいに高いんじゃなかったか……?」

『マスターの伝手と私の収集能力があれば容易に実現可能です』

 

 パエトーンの伝手と聞くと、一気に納得がいってしまうのが何とも言えない。以前件のファンタジィリゾートに、突然歌姫を呼び出したりとかしてたみたいだし、もう今更である。

 

「景品ってこれの事だったのか……」

「だってサクったら、こういうのプレゼントしても全然受け取ってくれないじゃん!」

「そりゃ遠慮するでしょ……一学生が手に入るものじゃないし」

「けれど、これはサクが訓練をクリアした事で得た正当な報酬だ。それならいいだろう?」

「なんて遠回しな……」

 

 この人たち気の回し方どうなってるんだ。ただ俺に受け取らせるためだけに、どんだけ労力かけてるんだよ。アキラとリンの事だから、本当に善意でやっているのがわかる。いやそれはそれとして怖いったらないよ。

 

「しかし、VR訓練なんて一体どうやって用意したんだ……?」

『私がVR訓練の総責任者及び開発者です。えへん』

「Fairyが元凶かい」

 

 本当に何でもありだなこのAI。えへんじゃないよ。

 

『Fairyの発音も良くなりましたね。訓練の成果、確認完了です』

「そこ別に鍛えてないだろ」

 

 あとこのAIボケのレパートリー無駄に多くない? 発音よりもボケを拾う力の方が身に付いたような気がする。

 

「それに、知り合いのみんなはどうやって再現したんだ? 異変以外はほとんど本人みたいだったぞ」

「サクが入っているグループのメンバーがいるだろう? 皆に会って『サクが遠慮して、僕たちのプレゼントを受け取ってくれない』って相談したら、皆前向きに協力してくれたよ」

「え、常識人グループの皆さんが……?」

 

 スマホの通知を見ると、『予定が合うようでしたら、我が家政もおもてなしにご協力させていただきます』『楽しんでこい』等々のメッセージが入っていた。

 

「お、おぉう……」

 

 うれしすぎて、うまく言葉にならなかった。画面の外から生暖かい目が向けられている気がしたので、首を振って気持ちを切り替える。

 

「あれ、でも全員は出てこなかったな」

「ああ。ルーシーはアリスと一緒に、優待券の方で動いてもらっていたんだ」

「柳さんは忙しくて参加できなかったんだよねー。今度埋め合わせしたいって言ってたよ!」

「むしろ月城さんの仕事量を何とかするのが先では……?」

 

 それで第六課とかがいなかったのか。雅さんにハリセンを当てるとか無理ゲーじゃねって心配があったから、ちょっと安心した。

 

 

 

「……皆、ありがとう。じゃあ、使わせてもらおうかな」

 

 よかったー、ンナナー、とリンとアキラに加えて部屋の外からこっそり見ていたイアス、トワ、レムも喜びの声を上げた。

 

 

 

 今、すごく恵まれてるな。数年ぶりに、心からそう思えた時間だった。

 

 

 

 と、喜びと温もりに浸れたのもつかの間。長時間VRをプレイし続けた事と、一日の中で最多のツッコミ数を記録した弊害が、多大な疲労感となって俺に襲い掛かってきた。

 

 

 

「やべ……つか……れた……」

 

 ぱたり。

 

「サクーっ!?」

 

 

 

 皆の叫び声が遠のいていき、俺はまたアキラのベッドで眠ることを余儀なくされたのだった。




 良い子のみんな! ゲームは一時間やったら休憩を挟みましょう!

 景品の正体は、皆がサクに用意した優待券でした。そしてビビアンと儀玄に予見されていた『ツッコミ疲れで倒れる』がここで回収です。


 ファンタジィリゾート特別優待券は、某千葉鼠ランドのファストパス+VIP対応的なイメージです。一般市民の稼ぎじゃまず手が届かないやつ。
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