綾辻遥の幼馴染な男のボーダーライフ(旧題:太刀川隊万能手の男のボーダーライフ)   作:アーステロイド

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弟子は可愛いもの

「今回も俺の勝ちだな」

 

「むぅ…」

 

遥とのカラオケ大会を楽しんだ(生き抜いた)数日後の昼前。俺は加古隊の隊室にあるトレーニングルームの中に居た。

その理由は弟子の双葉に呼ばれたからである。

 

因みに俺の弟子は双葉の他にも何人か居るが、その話は一旦省略しよう。

 

「韋駄天で通る場所にメテオラ…その前は韋駄天が切れたところにすかさず旋空…。古谷先輩はいつもいやらしいです」

 

「せめて戦い方がって言おうか。聞くやつが聞いたら誤解招くから」

 

しかも俺と双葉の年齢差、そして身長差を考えてみろ。間違いなく案件待ったなしである。

ところで双葉さん?どうして今日の分の勝負は終わったのに弧月の切先を俺に向けてるんですかね?

 

「いえ、なんだか馬鹿にされてる気がしたので」

 

「なぁ…最近のボーダーの女性隊員ってエスパーか何かが流行ってるの?俺まだ何も言ってないよね」

 

「まだ…」

 

「すみませんすみません!謝るから韋駄天使おうとしないで。避けられるけど怖いから!俺いつものクールで可愛い双葉が好きだなぁ!!」

 

「いつもの私が…好き……」

 

ほっ…どうやら落ち着いてくれたらしい。韋駄天使った双葉相手にリアル鬼ごっことか冗談じゃねえぞ。

なんか少し顔が赤くて何か言ってたけど、きっと訓練後だから疲れてるんだろ。

 

「ま、まあそれより。双葉って動きは素早いし実力もあるけど、韋駄天に頼るところがまだ抜けきってないな。

前にも言ったけど韋駄天は確かに強力なトリガーだけど無敵でも万能って訳でもないからな」

 

「はい。それは分かってるんですけど、どうしても癖で」

 

双葉が使っているオプショントリガー韋駄天。

その性能は一言で言えば高速斬撃。

トリオンを消費する事で目にも止まらぬ速さで敵を切り裂く事のできる、動きのイメージでいえば数連出来る霹◯一閃に近い。

 

ただし、そんなトリガーにもデメリットや弱点はある。

例えば高速で動く為に予め攻撃するルートを設定しなければならない事や攻撃してる間は途中で動きをキャンセルしたり止める事が出来ない事。

そして発動する瞬間にどうしても隙が出来てしまう事。

なので通り道に斬撃や爆弾を置かれたら普通にダメージ受けるし、発動しようとする瞬間を狙われる可能性もある。

 

「まぁそこはもう追々改善するしかないな。双葉はまだまだ成長出来るだろうからあんまり落ち込むなよ」

 

「……はい」

 

うんうん。双葉は中学生にしては妙にプライドの高いところはあるけど素直にこっちの言葉は聞いてくれるから教え甲斐がある。何故か木虎の奴にはキツく当たってるみたいだけど。

 

ホント、緑川もこれくらい聞き分けが良かったら可愛い後輩だと思えたのに。

 

「双葉…頼むから君はそのまま純粋で良い娘のままでいてね。ほら飴ちゃん舐めな」

 

「?よく分かりませんが、ありがとうございます」

 

そう言って俺があげたぶどう味の飴を生身に戻って口に含む双葉。頬のところにあるのか少し膨らんでるのが可愛いなぁもう。←彼の名誉の為に念を押しておくと、あくまで妹を相手にする様な心境である為他意は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯◯◯◯◯◯◯◯

 

 

「あ、綾辻?」

 

「…何ですか?嵐山さん」

 

「いや…急に不機嫌になった様だから、気になってな」

 

「はい、私は大丈夫ですよ。ただ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこかのお馬鹿な幼馴染が、万が一を起こしてしまう気がしたので後でお話しに行こうと思っただけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

◯◯◯◯◯◯◯◯

 

 

「ひっ⁉︎」

 

な、何だ今のプレッシャーは⁉︎下手したら二宮さんとか城戸司令以上の威圧感じたんだが⁉︎

しかも最近似た様なやつを体感した様な気が…。

 

「どうしたんですか?」

 

「い、いや?何でもないよ?」

 

一旦今の威圧感については忘れよう。そうしよう……。

それに此処はボーダー本部の中だ、命の危機なんて早々訪れる筈が……無いとは言い切れないのは何でなんだろう。

 

「それより流石にそろそろ出ようか。いつまでも加古隊じゃない俺が居続けるのも悪いしな」

 

「気にしないでください。お忙しいのに態々ありがとうございます、古谷先輩。

ところで、もしよりしければこの後加古さんが炒飯を作ってくれるそうなのでお昼がまだでしたら一緒に」

 

「あごめん、実はこの後太刀川さんに呼ばれてるんだ。悪いけど炒飯はまた今度な」

 

双葉には悪いが、訓練後にあの炒飯は流石にまずい。

ホント、遥の音楽や美術のセンスといい加古さんの炒飯といい太一の超高校級のトラブル体質といい、ボーダーの正隊員達はクセが強い奴ばっかりなんだ。

 

とにかく、このまま此処で待機していたら高確率で命が危ない。さっさと退散させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていたんだけどなぁ。

 

「それじゃあ今から作るから少し待っててね」

 

「「「「…はい/ああ」」」」

「はい」

 

俺が隊室を出ようとした瞬間、運悪く外出から戻ってきた加古さん。

オマケに加古さんから呼び出されたというウチの隊長こと太刀川さん、そして堤さんとなんと二宮さんまで来た。

太刀川さんに呼び出されたという言い訳を使ってしまった手前無理やり突破する事ができなかった俺は、そのままこの昼食(地獄)の席に着かざるを得なかった。

 

「(何で皆さんこんなタイミングで来ちゃったんですか!)」

 

「(仕方ないだろ!加古にレポート人質、いや紙質に取られて逃げられなかったんだ!)」

 

この間俺たちが手伝ったというのに、またレポート盾にされたのかこの人は…。

 

「(俺はいつもの通り加古ちゃんに逆らえず…)」

 

「(心中お察しします)」

 

この人は一体どんな弱み握られてるから毎回加古さんの炒飯を食う羽目になるんだろうか…。

 

「(ところで二宮さんはどうして)」

 

「(聞くな、さもないと蜂の巣にするぞ)」

 

「(すみません)」

 

理由は分からんが、どうやら二宮さん的にかなり屈辱的な負けをしたとかなのだろう。

だってそうでもなければ普段から加古さんと仲の悪い二宮さんが加古さんの炒飯を食いに来るわけもないし。

 

…ホントにどんな負け方したんだろう。

 

「(あの、俺帰っちゃダメですか?)」

 

「(ダメですねぇ)」

 

「(古谷君。先輩3人がこれから地獄へ行こうとしているのに1人だけ逃げるだなんて、冷たいとは思わない?)」

 

「(お前が抜ければ、お前が食う筈だった分を俺たちが処理する羽目になるんだ。逃走は許さんぞ)」

 

アンタら大の大学生が寄ってたかって後輩追い詰めて恥ずかしくないのか⁉

しかも傍から見たら無駄に豪華な顔ぶれになりやがって!

 

「あの、皆さんどうしたんですか?さっきからずっと静かになって」

 

「「「いいやぁ?何でも無いよ」」」

 

「何も問題は無い、気にするな」

 

「そう、ですか。分かりました」

 

「「「あはははは…」」」

 

あぁ、そういえば双葉って確か山育ちだったから加古さんの炒飯は平気だったんだっけ。

双葉が毎回毎回平気な顔して炒飯完食するから加古さんが変な自信付けちまってオリジナル炒飯のバリエーションが増えてくんだよなぁ。

けど双葉に対してそんな事指摘する勇気なんざ無いからどっちにしろ俺たちにはこれから出される炒飯を待つしか選択肢が無い。

あれ?つい最近も死にかけたのに、どうしてまた死にかけてるの?俺。

 

俺たちの敵ってネイバーの筈だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに悪夢の瞬間は訪れてしまった。

 

「お待たせ。やっと完成したわ!」

 

満足げに俺たちの前に加古さんが完成品の炒飯並べていく。

だがその炒飯は、炒飯と呼ぶにはあまりにもカラフル過ぎた。

 

「あの…加古さん?この炒飯は?」

 

「あら気になるの?最近はマシュマロやチョコレートなんかを使う事が多かったから、今回はグミや金平糖なんかを使ってみたわ」

 

「……炒飯の上にかかってるのは?」

 

「本当は餡掛けチャーハン風にしたかったんだけど、餡かけが無かったのよ。だから偶々あった黒蜜を使ってみたわ」

 

「へ、へぇ~。そうなんですか…」

 

黒蜜よ、何故こんな時に限って偶々あってしまったんだ…。

そもそもそれなら普通の餡かけ炒飯に留めてくださいよ。何で炒飯でこんな危険すぎる冒険をしてしまったんだ…。

見てみろよ、太刀川さんや堤さんなんて顔がこれでもかと青くなってるし、二宮さんなんて若干目を見開いてるし、よく見たら小刻みに震えているし。

この3人をここまで怯えさせる加古炒飯恐るべし。

 

ん?俺は大丈夫なのかって?ふん、そんなの何回も加古炒飯を味わってる俺なんだから平気

 

 

 

 

 

 

 

 

んな訳無いのでマジで誰か助けて…!

 

「はい、これ双葉の分ね」

 

「ありがとうございます」

 

うん、双葉。お願いだからその特級呪物を平気な顔して受け取らないで。多分加古さんがいつまで経っても味見を覚えないの言いたくないけど君も原因だと思うから。君の目の前で今から4人の尊い命が消えるかもしれないんだよ?しかも内1人は一応君の師匠だよ?

 

「ささっ、遠慮せずに召し上がれ♪」

 

全力で遠慮します。とは、今までのパターンで誰も言える筈が無い。

双葉もバクバクと食べ始めたし…もう、覚悟を決めるしかない。

 

「(太刀川さん…二宮さん…堤さん…)」

 

「「「(!)」」」

 

「(今度、4人で焼肉食いに行きましょう。俺もある程度なら出しますから。

この苦しみを、上手い肉でも食って忘れましょう)」

 

「「「(古谷(くん)…)」」」

 

こんな地獄を共に経験してきたからこそ、偶にはそれを愚痴れる場所が必要だと思うからこその言葉だ。

 

「(…後輩に奢らせる程落ちぶれてはいない。その時は俺が出してやる)」

 

「(二宮さん…!)」

 

「(この地獄、何としてでも生き残るぞ)」

 

「「「(ッ…はい(おう)!!)」」」

 

よし、俺たちの決意は固まった。

俺たちはスプーンを手に取り、目の前の死神。或いは特級呪物と向き合い、各々意を決して決意の言葉を口にする。

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから先、具体的にどうなってしまったのか俺たちは覚えていなかった。

 

覚えているのは、意識を取り戻した時に最初に目に入ったのが俺の隣で川の字になって白目を剝いていた太刀川さん達の哀れな姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





主人公のサイドエフェクトについては近々設定は出そうと思っています。


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