味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
意識を失ってから数時間後。
無事に緊急クエストは終了し、続々と冒険者パーティーが街へ帰還していた。
言うまでもなく、ネルも帰ってくるだろう。
うん……どうやって言い訳しようかな。
私はネルの帰還をいつもの練習場で一人待った。
言い訳言い訳……危なさそうな人がいたら見過ごせなくてとかでいいかな。
いや、最近のネルは少し様子が変だから通用するか不安だ。
一番チョロいと思っていたネルが、いつの間にか私にとっては強敵になっていた。
「…………あ」
もうすっかり陽が落ちた頃、ネルが練習場に姿を現した。
キョロキョロと辺りを見渡し、私を探しているようだった。
やばい、めっちゃ逃げたい。
絶対面倒臭いことになるし……。
「ネル。ここだよ」
そうも言ってられず、私はネルの方に自ら近づいて行く。
すると、ネルは私に向かって全速前進で突っ込んで来る。
と言ってもめちゃくちゃ遅いけど。
「うげっ……」
ネルは私にタックルをかまし、あの時みたいに私は地面に崩れ落ちる。
いや、あの時とは全く逆の状況なんだけどね。
私は恐る恐るネルの表情を確認する。
ネルは無表情で、全く感情を読み取れなかった。
「……女の匂いがします」
ネルは私の首あたりに鼻を近づけ、クンクンと犬みたいに匂いを嗅ぎ始める。
そして、そんなことを言い放った。
え? 女の匂いって分かるものなの?
私は疑問に思いながらも言い訳しようと口を開く。
「ご、ごめんね。ちょっと用事が───」
「エイラさんと……この匂いは誰ですか?」
私の言葉を遮るように、ネルは私にそう尋ねた。
ネルの瞳は無言の圧力と言わんばかりに、黒く濁っていた。
私はネルに押し倒されたまま、何も言い返すことができなかった。
「ミラさんはやっぱり嘘つきです」
ネルはそう言うと私に覆い被さるように、私の胸に顔を吸着させる。
そして、すーっと私の匂いを嗅ぎ込むネル。
くすぐったい。何してるのこの子。
私は困惑しながらも、この状況を理解すべく口を開いた。
「ネル? 怒ってる?」
「……違います。ただ寂しくて」
ネルは私の心臓の鼓動を感じるように、私をギュッと強く抱きしめる。
ネルの力は意外に強くて、そのうち窮屈で息が荒くなっていく。
まぁ怒ってなくて良かった……と言えるのかな。
「私、たくさん敵を倒しました。全部ミラさんの為に」
すると、ネルはやっと顔を上げそう言った。
その表情は吹っ切れたみたいに笑顔で、もはや清々しかった。
前までの頼りないネルは、どこかへ消えてしまったみたいにネルは強くなっていた。
「ありがとう。ネル」
私はネルの頭を適当に撫でる。
まだ押し倒された体勢のせいで、伸ばす腕が辛かった。
でも、ここで褒めないとせっかくいい感じだからね。
「えへへ……嬉しいです」
ネルは気持ち良さそうに目を細める。
ああ、良かったぁ……マジでよかった……。
あの時みたいに怒られないし、パーティー解散の危機になんてならない。
私はすっかり安心しきり、余裕すら出てきた。
その瞬間だった。
「でも、もっと欲しいです……」
ネルは私の手を握り、細めていた目を開いた。
そして、ネルは私の口に顔を近づける。
ネルの黒髪が顔に当たり、少しくすぐったい。
「……!?!?」
すると、ネルは驚くほど自然な動きで私の唇に舌を入れた。
口が塞がれ、息ができなくなる。
こんなこと想定していない私は、ネルの思うがままに口内を明け渡してしまった。
「む、むごっ! ね、ねるっ!?」
ネルのせいで息が止まり、困惑と息苦しさが私を襲う。
その間もネルの舌は私の口内を激しく動き回る。
待って待って待って待って待って!!
私は唐突すぎるディープキスに困惑する。
い、意味がわからん!!
「ね、ねる!! まっ……て!!」
私は奪われていく酸素で力が抜けながらも、ネルを思いっきり吹き飛ばした。
口がやっと解放され、ぜぇぜぇと息を吸い込む。
新鮮な酸素の味に冷静な思考を取り戻す。
「はぁっ……はぁっ……」
私は垂れた唾液を拭い、なんとか顔を上げる。
私の視線の先には、月明かりに照らされたネルが立っていた。
ネルは肩を上下させ、興奮するように頬を赤らめていた。
「私、受け身ばかりだとダメだと気づいたんです。私がミラさんを夢中にさせるんだって決めました。ミラさんが私以外の女に盗られないように……」
ネルはそう言うと再び私の唇に顔を近づける。
私は潜在的な恐怖にビクッと飛び跳ねてしまう。
「ふふっ、かわいいです。ミラさん……」
そんな私を恍惚とした表情で見つめるネル。
私はそんなネルに恐怖を覚えた。
いつからこんな子になってしまったのだろう。
いくら過去を振り返っても、答えは出てこなかった。
私は訳も分からないまま、有耶無耶にネルと別れた。
多分会話も不自然で、私の余裕が無くなっていることは明らかだった。
こんな隙、絶対見せちゃダメなのに。
私は夜のことを後悔しながら宿に帰った。