味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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14話 ネルの凶行

 意識を失ってから数時間後。

 無事に緊急クエストは終了し、続々と冒険者パーティーが街へ帰還していた。

 言うまでもなく、ネルも帰ってくるだろう。

 

 うん……どうやって言い訳しようかな。

 私はネルの帰還をいつもの練習場で一人待った。

 

 言い訳言い訳……危なさそうな人がいたら見過ごせなくてとかでいいかな。

 いや、最近のネルは少し様子が変だから通用するか不安だ。

 一番チョロいと思っていたネルが、いつの間にか私にとっては強敵になっていた。

 

「…………あ」

 

 もうすっかり陽が落ちた頃、ネルが練習場に姿を現した。

 キョロキョロと辺りを見渡し、私を探しているようだった。

 やばい、めっちゃ逃げたい。

 絶対面倒臭いことになるし……。

 

「ネル。ここだよ」

 

 そうも言ってられず、私はネルの方に自ら近づいて行く。

 すると、ネルは私に向かって全速前進で突っ込んで来る。

 と言ってもめちゃくちゃ遅いけど。

 

「うげっ……」

 

 ネルは私にタックルをかまし、あの時みたいに私は地面に崩れ落ちる。

 いや、あの時とは全く逆の状況なんだけどね。

 私は恐る恐るネルの表情を確認する。

 ネルは無表情で、全く感情を読み取れなかった。

 

「……女の匂いがします」

 

 ネルは私の首あたりに鼻を近づけ、クンクンと犬みたいに匂いを嗅ぎ始める。

 そして、そんなことを言い放った。

 え? 女の匂いって分かるものなの?

 私は疑問に思いながらも言い訳しようと口を開く。

 

「ご、ごめんね。ちょっと用事が───」

 

「エイラさんと……この匂いは誰ですか?」

 

 私の言葉を遮るように、ネルは私にそう尋ねた。

 ネルの瞳は無言の圧力と言わんばかりに、黒く濁っていた。

 私はネルに押し倒されたまま、何も言い返すことができなかった。

 

「ミラさんはやっぱり嘘つきです」

 

 ネルはそう言うと私に覆い被さるように、私の胸に顔を吸着させる。

 そして、すーっと私の匂いを嗅ぎ込むネル。

 くすぐったい。何してるのこの子。

 私は困惑しながらも、この状況を理解すべく口を開いた。

 

「ネル? 怒ってる?」

 

「……違います。ただ寂しくて」

 

 ネルは私の心臓の鼓動を感じるように、私をギュッと強く抱きしめる。

 ネルの力は意外に強くて、そのうち窮屈で息が荒くなっていく。

 まぁ怒ってなくて良かった……と言えるのかな。

 

「私、たくさん敵を倒しました。全部ミラさんの為に」

 

 すると、ネルはやっと顔を上げそう言った。

 その表情は吹っ切れたみたいに笑顔で、もはや清々しかった。

 前までの頼りないネルは、どこかへ消えてしまったみたいにネルは強くなっていた。

 

「ありがとう。ネル」

 

 私はネルの頭を適当に撫でる。

 まだ押し倒された体勢のせいで、伸ばす腕が辛かった。

 でも、ここで褒めないとせっかくいい感じだからね。

 

「えへへ……嬉しいです」

 

 ネルは気持ち良さそうに目を細める。

 ああ、良かったぁ……マジでよかった……。

 あの時みたいに怒られないし、パーティー解散の危機になんてならない。

 私はすっかり安心しきり、余裕すら出てきた。

 その瞬間だった。

 

「でも、もっと欲しいです……」

 

 ネルは私の手を握り、細めていた目を開いた。

 そして、ネルは私の口に顔を近づける。

 ネルの黒髪が顔に当たり、少しくすぐったい。

 

「……!?!?」

 

 すると、ネルは驚くほど自然な動きで私の唇に舌を入れた。

 口が塞がれ、息ができなくなる。

 こんなこと想定していない私は、ネルの思うがままに口内を明け渡してしまった。

 

「む、むごっ! ね、ねるっ!?」

 

 ネルのせいで息が止まり、困惑と息苦しさが私を襲う。

 その間もネルの舌は私の口内を激しく動き回る。

 待って待って待って待って待って!!

 私は唐突すぎるディープキスに困惑する。

 い、意味がわからん!!

 

「ね、ねる!! まっ……て!!」

 

 私は奪われていく酸素で力が抜けながらも、ネルを思いっきり吹き飛ばした。

 口がやっと解放され、ぜぇぜぇと息を吸い込む。

 新鮮な酸素の味に冷静な思考を取り戻す。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 私は垂れた唾液を拭い、なんとか顔を上げる。

 私の視線の先には、月明かりに照らされたネルが立っていた。

 ネルは肩を上下させ、興奮するように頬を赤らめていた。

 

「私、受け身ばかりだとダメだと気づいたんです。私がミラさんを夢中にさせるんだって決めました。ミラさんが私以外の女に盗られないように……」

 

 ネルはそう言うと再び私の唇に顔を近づける。

 私は潜在的な恐怖にビクッと飛び跳ねてしまう。

 

「ふふっ、かわいいです。ミラさん……」

 

 そんな私を恍惚とした表情で見つめるネル。

 私はそんなネルに恐怖を覚えた。

 いつからこんな子になってしまったのだろう。

 いくら過去を振り返っても、答えは出てこなかった。

 

 

 私は訳も分からないまま、有耶無耶にネルと別れた。

 多分会話も不自然で、私の余裕が無くなっていることは明らかだった。

 こんな隙、絶対見せちゃダメなのに。

 

 私は夜のことを後悔しながら宿に帰った。

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