味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
部屋に戻って、再び机に向かった。
しかし、どうしても紙切れに何かを書き込む気は起きなかった。
私は椅子にもたれかかり、ボーッと天井を眺める。
私の計画に狂いはない。すごく順調で上手くいってるはずだった。
でも、私の心には微かに狂いがあった。
私は生き残るためなら何だってする。
仲間を見捨てるなんて当たり前にできる。
そう思っていた。
でも、その時のことを想像するとどうしても胸が苦しくなる。
せっかく育ててきた爆弾が消える。
いや、そのために頑張ってきたのに変な話だけど。
それでも、私はどうしようもない矛盾を感じていた。
「ちゃんと……見捨てられるかな……」
前回は失敗した。
見捨てれば良かったのに、見捨てられなかった。
あの時みたいなことは、もう許されない。
私は覚悟を決め、立ち上がった。
ただ自分だけが生き残るために、頑張ると決めたから。
*
少し遅れてギルドに到着した。
ギルドには三人の姿があった。
三人は笑顔を浮かべていながらも、無言で睨み合うような形で立っていた。
「ごめん。遅れちゃった」
私がそう言うと、パッと私の傍に移動するネル。
ネルは無言のまま私の右腕に絡みつく。
その様子を見てエイラは眉を微かに顰める。
「遅いですよ。結構待ちました」
エイラはそう言うと、無表情のまま私の左手を握る。
その瞬間、ネルの方から強い殺気を感じた。
言うまでもなく、エイラに向けられた殺気だった。
しかし、エイラは前までのように私から離れることはなく、ギュッと私の手を握り締めていた。
「はぁ……そんなにくっついてたらパーティー活動になんないでしょ」
ミリナはそんな様子を呆れるように見つめていた。
ハッとしたような表情で二人は私から手を離した。
少し気まずくて、私はゴホンとわざと咳をしてみる。
「話してたから分かると思うけど、ミリナは新メンバーだから。二人とも仲良くしてね?」
私はミリナの加入を簡潔に二人に伝えた。
まぁなんか三人で少し話してたから知ってると思うけどね。
予想通り、二人の表情は少し曇ったものの、大きな反応は無かった。
ネルあたりが怒ると思っていたが、そうはならなかったことに安心する。
「その……ミリナさんはミラさんの元カノなんですか?」
すると、私から少し離れたエイラがそんなことを言い出す。
その言葉に私ではなく、ミリナの方が顔を真っ赤にして反応した。
「ち、違うわよ! こんな奴と誰が……っ!」
ミリナは怒りにわなわなと震えながら反論した。
その言葉に両脇の二人がパァっと表情を明るくさせるのが見えた。
安心してるような喜んでいるような……。
私が来るまで三人は一体何を話してたんだろう。
「と、とりあえずクエストに行こっか」
私は複雑になってきた状況をリセットすべく、そう切り出した。
*
深い森を四人で歩く。
私はわざと一番後ろから三人を追いかけるような位置を取った。
これなら三人のことがよく見えるし、色々制御しやすい気がする。
今回のクエストは普通に簡単だし、すぐ終わるだろう。
それなら有効活用させて行きたいんだけど……。
もう計画の八割は完璧に成功させている気がする。
そのせいで、私は目的を見失っていた。
「はぁ……」
誰かを自分に心酔させるのは得意だ。
しかし、そこからはどうしても苦手だった。
だいたい私の知らない動きをし始めるし、理解が及ばない範囲が確かにあった。
そんなことに思考が侵食され、やがて足元がふらついてしまう。
「やばっ……」
謎の段差に足が取られ、私はそのまま地面に顔ごと突っ込みそうになる。
その瞬間、偶然私の方を見ていたエイラがなぜか飛び込んで来た。
ドサッと音が鳴り、柔らかい感触に全身が包まれる。
「ふふ、ミラさん。大丈夫ですか?」
私の眼前に迫るエイラの膨らみ。
エイラの柔らかい感触のせいで心臓の鼓動が早くなる。
「ご、ごめん……」
私はエイラのことを直視できないまま、小さくそう謝った。
そして、すぐさま体勢を立て直し、エイラの上から離れようとする。
「私、ミラさんのこと守れましたよ」
しかし、エイラは私の腰にまで手を伸ばし、がっちりとホールドしたまま耳元でそう囁いた。
何度起き上がろうとしても、想像以上に強いエイラの抱擁に拒まれる。
「え、エイラ? 私、立ちたいんだけど……」
私はエイラの目を見つめて、そう懇願する。
すると、私は自分の力ではなく、後ろからの力で強制的に立ち上がらされる。
「……早く離れてください」
後ろから私を引っ張ったのはネルだった。
ネルは酷く不機嫌そうな顔で、私のことを抱き抱えていた。
あれ? ネルってこんなに力あったっけ。
*
結局、その後、私は三人の後ろを着いてくるつもりが一番前にいた。
ネルとエイラが私の両脇を陣取るせいで、そうならざるをえなかった。
ミリナはミリナで、その様子を愉快そうに眺めているだけだった。
「来るわよ」
私達はなんとか魔獣の生息地にまで辿り着き、戦闘を開始した。
緊急クエストは比較にならないほど小さな魔獣の群れ。
戦闘が始まると、私はようやく後ろを陣取ることができた。
ミリナが魔獣を切り裂き、それを援護するネル。
そして、ずっと私と手を繋いでいるエイラ。
完璧な布陣(?)だった。
ネルの圧倒的な火力、ミリナの安定した立ち回り。
魔獣の群れは二人の前では無力すぎた。
数分も経たないうちに、魔獣の群れは消滅してしまった。
なんだったんだろう。ここまでの移動時間。
そう思えるほどに呆気なく戦闘は終了した。
「ミラさん……私、たくさん魔獣を倒しました」
戦闘が終わると、真っ先にネルが私の方へ走ってきた。
そして、上目遣いで何かを欲しがるようにそう言った。
私は即座にネルが欲しいものを理解した。
「よく頑張ったね」
私はネルの頭を撫で撫でして、適当な労いの言葉をかけた。
ネルは目を細めて猫みたいに気持ちよさそうな表情をする。
「……私もミラさんの隣で頑張りましたけど」
すると、ずっと隣にいたエイラが不満そうに私達を見つめる。
え? い、いや、隣にいただけじゃ……。
そんな疑問が浮び上がる前に、エイラはネルに並んで頭を下げた。
そして、上目遣いで私のことを見つめる。
私は空いている左手でエイラの金髪を撫でた。
この状況に私は満足気に頷いた。
うんうん、これこれ。やっぱり私が与える側じゃないと……。
「飼い猫みたいね。馬鹿らしくなるわ」
すると、そんな様子を遠目で眺めるミリナ。
「ミリナもやって欲しいの?」
「そんなわけないでしょ……」
私がそう言うと、ミリナは私から目を逸らしそう呟いた。