味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
外から鳥の鳴き声が聞こえてくる。
暗闇の中で私は太陽の光を感じながら、目を開く。
明るく照らされた天井が見えて、その瞬間一気に昨日の夜のことがフラッシュバックする。
あの後、結局は私はネルの責めに耐えられずに気絶してしまった。
そのことを思い出すと、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。
どうしてこうなってしまったんだろう。
「……はぁ」
私は小さく溜息を吐き、上半身を起こした。
まだ体が気怠くて昨日の感触が体中に残っていた。
体に触れる布が擦る感覚で、少しゾクッと体が反応してしまう。
私はベッドから立ち上がろうとする。
その瞬間、いつの間にか隣に立っていたネルの気配を感じる。
「あっ……」
ネルはいつの間にか着替え終わっていて、私のことをじっとベッドの外から見つめていた。
それに対比するように私は生まれたままの状態だった。
私は反射的に布で体を隠す。
「逃げないでください。絶対、パーティーには来てください」
ネルは無表情のまま私にそう告げると、部屋から出て行った。
それを伝える為だけに、あそこにずっと立っていたのだろうか。
そんなことを考えると、またもや昨日のことを思い出してしまう。
人生史上最大の過ち。
やってしまった。
私は顔を両手で覆い、ひたすらに後悔する。
それでも私は逃げることはできない。
ネルの言う通り、私はパーティー活動をこれからも続けなくてはならない。
そのことを考えると、憂鬱な気分になった。
*
フラフラとおぼつかない足取りで、私はギルドに向かった。
ギルドには既にミリナがいた。
何故かミリナの顔を見て、私は酷く安心してしまった。
「……おはよう。ミリナ」
私は掲示板の前に立つミリナに挨拶をする。
すると、ミリナは目を丸くして私の方を見つめる。
「ど、どうしたの? フラフラしてるわよ?」
ミリナは私を心配そうに見つめてくれる。
嬉しくて安心してしまい、私はふらっと体勢を崩してしまう。
「み、ミラ!?」
ミリナは咄嗟にそんな私を支えてくれた。
助かった。あのままだったら地面に激突してた。
ネルと同じく騙したミリナに助けられてしまった。
私は後ろめたい気持ちを隠しながら、ミリナに小さく感謝を告げた。
「あんた……まさか……バレたの?」
ミリナはそんな満身創痍な私をジト目で見つめてくる。
ミリナの予想は正しかった。
口で言わなくても普通にバレるものなのだろうか。
私の余裕が無さすぎただけなのか、ミリナの察知力が凄いのか。
今の私には判断できなかった。
「はぁ……。まぁ自業自得ね」
ミリナは私の反応を見て悟ったように溜息を吐き出した。
「これからどうするの? 私たちのパーティーはどうするの? 解散するの?」
ミリナは呆れたような口調で私にそう尋ねる。
「いや、解散は……しない。まだそれはできない」
私はミリナの支えからしっかり立ち上がり、そう伝えた。
すると、またもやミリナは少し驚いていた。
「そう。まだやるのね……」
複雑そうな顔でミリナは表情を曇らせた。
ミリナがどんなことを考えているのは分からなかった。
でも、少しだけ申し訳ない気がした。
「追い打ちをかけるようだけど、今日、緊急クエストがあるわ」
ミリナは掲示板の方を見ながら私にそう告げた。
あの時みたいな余裕そうな表情がミリナには無かった。
あの時の低級の魔獣しかいなかった大量発生とは違うようだった。
私はそれを悟り、歯を食いしばった。
ついに来てしまった。最悪のタイミングで。
掲示板の方に目をやると、緊急クエストと書かれた文字の下には『厄災』の二文字があった。
厄災。
それは有象無象の魔獣の中でも特異な存在。
その脅威は人類の存続を簡単に左右できるほどの絶大な被害をもたらす。
過去、厄災は5体しか討伐されていない。
それに対して確認された厄災の数は7つ。
つまり、あと2体の厄災がこの世界には未だに存在していた。
恐らく、その残りの一体が今回の緊急クエストの対象。
厄災が人類の生存域にまで接近していることを意味していた。
私ができる限り遭遇したくなかった最悪の存在。
この緊急クエストから逃げることを女神は見逃してはくれないだろう。
私はこの戦場に立たなければならない。
そのことを考えると、昨日の出来事がどうでも良くなるくらいに怖くなる。
私は何を迷ってたんだろう。
この日のため、私は必死に足掻いてきたんじゃないのか。
「私は……」
正直、目標を見失っていた。
でも、今は明確に分かる。
この緊急クエストを生き延びること。それが私の第一目標。
「……顔色悪いわよ?」
すると、私の方をじっと見つめていたミリナがそんなことを言った。
「え?」
私はビックリして両手で顔を触れてみる。
顔は酷く冷たくてピクピクと震えていた。
覚悟は決まったはずなのに、まだ私の体は死の恐怖に震えていた。
「これじゃ……私たち、今度こそ死ぬかもね」
ミリナは溜息を吐き、私の前からいなくなってしまった。
ミリナの捨て台詞に私は酷く動揺してしまう。
い、いや、私はこれくらいの困難なら何回も回避してきた。
何度死んでも私はここまで生き延びてきた。
今回も何を使ってでも生き残ってやる。
例え、誰が死ぬことになっても私が死ななければそれでいい。
私はグッと拳を握り締め、覚悟を決めた。