味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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22話 ネルの思い

 私はミラさんに騙されてた。

 きっと私はミラさんにとって捨て駒だった。

 でも、私にとってミラさんは私の全てだった。

 ミラさんがどんな嘘つきでも、私はもう抗うことはできなかった。

 

 厄災が現れてミラさんに襲いかかった時、心臓の鼓動が止まらなかった。

 思いっきり放った魔法が当たって、厄災は私にターゲットを変えた。

 

 その時、少し安心してしまった。

 私はミラさんの願い通りの捨て駒になれた。

 どうしようもなく胸が苦しくなるけど、それでも良かった。

 

 ここで私が死んだら、ミラさんは悲しんでくれるかな。

 薄れゆく意識のなか、私はそんなことを考えてしまう。

 

 いや、まだ寝たらダメだ。

 自爆しないと。

 自爆すればミラさんが逃げるには十分な時間を稼ぐことができる。

 

 厄災に吹き飛ばされた私は、朧気な意識の中、魔力を集中させた。

 やがて地面に叩きつけられ、激痛が全身を走る。

 それでも私は杖を握り締めた。

 手がガタガタと震えるけど、魔法は撃てる。

 これも全部ミラさんから貰ったもの。

 精一杯の愛憎を込めて、私は自爆しようと魔力を練った。

 

 いつの間にか厄災は口を大きく開き、あの広範囲攻撃を放とうとしていた。

 あの時みたいに私の目の前に現れるであろうビーム。

 でも、大丈夫。その前に自爆すれば関係ない。

 

 私は目を閉じた。

 

「…………え?」

 

 その瞬間だった。私の目の前に立つ人影が瞼の隙間から見えた。

 ハッとして目を開くと、そこにはミラさんが立っていた。

 頭が真っ白になる。

 ミラさんは逃げてなかった。

 圧倒的な死の危機を前にして、ミラさんは何故か私の目の前に立っていた。

 

「な、何してるんですか……? に、逃げないと……ッ!」

 

 私は目の前のミラさんに手を伸ばした。

 逃げないと。じゃないと私と一緒に死ぬことになる。

 そんなのダメ。死ぬなら私一人でいい。

 

 ミラさんに手が届きかけた瞬間、辺りが青白く照らされる。

 厄災があの攻撃を既に放っていた。

 大気が割れるような衝撃波が辺りを包み、眩い光が視界を覆い隠す。

 そして、青白い魔力の波動はミラさんの目の前に現れた。

 

 時間が止まるような感覚に陥る。

 いくら手を伸ばしても、私がミラさんを守ることはできなかった。

 ただ、おぞましいほど大きな魔力の塊を左腕で防御するミラさんを見つめていた。

 

 私が生成するより遥かに大きな防御魔法。

 防御魔法の範囲は人一人をカバーするのには十分すぎる大きさだった。

 そして、ギリギリ後ろに控えているもう一人を守りきれる大きさ。

 

 そのことに気づき、情緒がグチャグチャに掻き回される。

 私は守られていた。

 自分だけを守るなら、こんな非効率な大きさでなくていい。

 それなのに、ミラさんは

 

「……ミラ……さん……?」

 

 やがてミラさんは放たれた魔力を全て受け止めた。

 私の方へ辿り着いたのは、微かに霧散した魔力だけだった。

 

 ミラさんの左腕は無惨に消し飛ばされていた。

 鮮血がボタボタと落ちて、血溜まりが地面にできていた。

 

「はぁっはぁっ……」

 

 呼吸が苦しくなり、私は首元を抑える。

 苦しくて苦しくて首を締める手が震える。

 息ができなかった。

 かひゅっと空気を吐き出しながら、私はミラさんを見つめることしかできなかった。

 

「ふふ……私、何してんだろう……」

 

 ミラさんは私の方を振り返り、苦しそうな表情で笑った。

 そして、地面に崩れ落ち私のことを抱き締めた。

 ミラさんの血が頬に零れ、また吸い込んだ息が吐き出される。

 

「……み、ミラ……さん……どうして……?」

 

「私も……分かんないよ……」

 

 ミラさんはそう言うと、ゆっくりと目を閉じた。

 

「でも、少し安心した……」

 

 ミラさんは私の耳元でそう呟き、意識を手放した。

 ミラさんの体重が私の全身に乗っかってくる。

 私は震える手でミラさんを支える。

 

「いや……いやだ……死なないで……」

 

 ミラさんの体は酷く冷たくて、底なしの恐怖が頭を埋め尽くす。

 左腕から止めどなく溢れ落ちる血液に、息が苦しくなって体が震える。

 

 ミラさんは嘘つきだった。

 最低の嘘つき。

 私のことなんて見捨てればよかったのに。

 

 どうしてあそこでミラさんの為に死なせてくれなかったの?

 そのことを考えると胸が苦しく押し潰された。

 

 

 

 *

 

 

 

 あれから私の目の前の光景は目まぐるしく変わった。

 厄災はミラさんが防御魔法を展開しながら発動させた魔法によって仕留められていた。

 考えられないほど正確に、最小限の魔力でミラさんは厄災の魔核を撃ち抜いていた。

 

 そして、やがてエイラさんが走ってきて必死に治癒魔法をかけていた。

 しかし、左腕以外の傷が治るだけで、欠損してしまった腕が治ることはなかった。

 

 こんな事になるなら、私が代わりに死ねばよかった。

 

 病床で眠っているミラさんを見つめると、自分が憎くて嫌になる。

 きっとミラさんは目が覚めても、私を大切に扱ってくれる。

 それが利己的な行為だとしても、ミラさんはいつものように笑ってくれる。

 それがどれだけ苦しいことか、私には想像もできない。

 

 私は無意識に爪で左腕を握り潰してしまう。

 肌が裂けて血が溢れる。

 痛くなかった。こんな痛みじゃ……。

 

「こんな私……嫌ですよね」

 

 血だらけの腕を隠し、ミラさんの寝顔に手を伸ばす。

 温かくなってきたミラさんの体温が手に伝わる。

 その体温に止まっていた呼吸がやっとできた。

 

「まだ……チャンスありますよね……」

 

 私はミラさんの心臓に手を当てる。

 柔らかな感触ともにミラさんの心臓の鼓動を感じる。

 まだ生きてる。まだチャンスはある。

 

 まだミラさんのために、この命を使える。

 

 私はそのことに安心した。

 

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