味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
部屋のベッドに座ると、少しだけ恥ずかしい気持ちになった。
あの時のことを思い出してしまい、顔が熱くなる。
この場所で私とネルはとんでもないことを……。
道具として見ているはずなのに、あの時だけは少し愛おしかった。
いや、別にあの時に限らずに愛おしいのかもしれない。
その感情は私にとっては要らないもの。
だけど、捨てることはできなかった。
「会いたい……」
まだベッドに染み付くネルの匂いを嗅いでみる。
なぜだか少し寂しかった。
そう思った瞬間、玄関の扉が小さく音を鳴らした。
私の部屋を訪ねてくるのは、きっとただ一人だけ。
私ははやる気持ちを抑え、ゆっくりと玄関の扉を開いた。
「………………」
扉の前では無言のまま俯くネルがいた。
少し小さなネルの姿が見えて、私は安心してしまった。
この子を私は守ってしまったんだ。
命をかけて、馬鹿みたいに非効率に。
「どうしたの? ネル」
私はいつものように薄っぺらい笑みを浮かべて、ネルにそう話しかけた。
すると、ネルはピクっと動き、顔を上げて私の顔を見つめる。
「外に……行きませんか?」
ネルはそう言って、私の手を取った。
片方しかない手が引っ張られ、抵抗することもできず私は外に連れ出された。
ネルは無言のまま私の手を引っ張り続けた。
いつの間にか、辿り着いたのはいつものギルドだった。
もう深夜になっているせいで、扉は厳重に閉じられていた。
「初めてミラさんとこの場所で会って……」
「そうだね……。昔のことみたい」
ネルは少しだけ頬を緩ませながら呟く。
私はそんなネルを見つめていた。
あの時、偶然ネルを見つけた。
自爆特攻させるために、私はネルをパーティーに誘った。
今はその目的を果たせてはいないけど、あの時の選択はきっと間違いじゃなかった。
そう思ってる自分がいた。
「私、あの時ミラさんに会えて嬉しかったです。最初は変な人だと思ってたけど、今は……違います」
ネルは熱の篭った瞳で、じっと私の目を見つめてくる。
その瞳を私は直視できなかった。
今でも、ネルを騙していることには変わりないから。
少し気まずい感情になっていると、ネルは再び私の手を引っ張った。
次はあの練習場だった。
この場所では色んなことがあった気がする。
嫌な思い出もあるけど、今となっては……どうなんだろう。
「ふふ、ここでネルに襲われてから、ネルはどんどん悪いことばかり私にするようになったよね」
私は悪戯っぽい笑みを浮かべ、ネルを弄ってみた。
「そ、それは……ミラさんが悪いんです」
すると、ネルは目を逸らし、少しだけ頬を赤くしながら反論した。
この場所からは綺麗な空がよく見えた。
月明かりも降り注ぎ、ネルの表情がよく見えた。
「……どうして、私を助けたんですか?」
すると、ネルは私の右手を離し、そう言った。
「私も……分からないよ。でも、体が動いて」
私はネルにありのままを話した。
すると、ネルは目を伏せてしまった。
「私が死ねばミラさんはそんな体にならなくて良かった。私が死ねば、全部上手くいったのに」
ネルは瞳を濡らしながら私の胸に顔を埋めた。
暖かい体温が伝わってきて、少しだけ嬉しくなる。
責められるはずなのに、心は暖かいままだった。
「ごめん。ネル」
私はゆっくりとネルの頭を撫でた。
嗚咽で震えていた背中が止まり、ネルは顔を上げた。
「ミラさん、次は……自爆させてくれますよね?」
ネルは声を震わせながらもそう言った。
その言葉に冷たい何かが胸を突き刺す。
でも、これは私の選んだ道だから。
「……うん。次は代わりに……死んでね」
私はできる限りの笑顔で、そう言い放った。
それでも私の笑顔は見てられないくらいぎこちなかったと思う。
それに心がどうしようもなく締め付けられた。
「はい……ミラさん……」
ネルは私の答えに満足したように、笑みを浮かばた。
私の笑顔とは対照的に、一点の曇りもない笑顔。
その無垢な笑顔に、尚更胸が苦しくなる。
*
あれから数時間後、私とネルは一緒のベッドで眠っていた。
まだ余韻のせいで体が震えて動けない。
前回は気絶して簡単に寝れたのに、今回は眠れなかった。
ネルの体温を感じたまま、私は天井を見つめる。
横をちらっと見ると、ネルの顔があった。
まだ真っ赤に染まったネルの頬を見て、少し笑ってしまう。
「どうしたんですか? まだ足りないんですか?」
すると、ニヤニヤとネルは私の体に触れてくる。
ゾクッとした感覚がして、頭が警戒信号を発する。
「だ、だめ。今日はもう無理だから」
私はネルの手を引っ込めさせた。
すると、ネルは少しだけ不満そうな顔をする。
そんなネルの顔に手を伸ばす。
頬を優しく触れると、嬉しそうにネルの顔が綻んだ。
「ねぇ、もし、私がネルに死んで欲しくないって言ったら……?」
私はネルにそう言ってみた。
すると、ネルは私の手を取って、ギュッと両手で握り締める。
「ふふ、ダメです。私、絶対死にますから」
ネルはそう言って、私の右手を握り締めたまま体勢を変え始める。
「ち、ちょっと? ネル??」
ネルは私を拘束するように右手を掴み、空いた左手を私の体に伸ばす。
「だから、それまでずっと一緒にいてください」
「い、いや、今日はもう無理だから……! ちょっと!?」
私がネルを必死で制止するより前に、二回戦が始まってしまった。