味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
あれから数日。
私はずっと考えていた。
仲間を犠牲にして生き残ることについて。
でも、答えは出なかった。
死の恐怖はどうしても忘れることはできない。
でも、クエストで頑張る三人の姿を見ると胸が苦しくなる。
失いたくなかった。
もう私にとって大切なものに三人はなっていたから。
そんなクエストの中、少しだけエイラの様子がおかしかった。
ネルとミリナは吹っ切れたように頑張っていたけど、エイラの目には迷いがあった。
「ミラさん」
クエストが終わり、宿に帰ろうとするとエイラに話しかけられた。
久しぶりにエイラだけと話す機会が訪れた。
私は少し嬉しくなり、エイラの方を向いた。
「どうしたの? 何か悩みとか?」
いつもと変わらない笑みをエイラに向ける。
エイラは私の顔を見ながらも、ずっと迷っているようだった。
「ミラさんは死ぬのが怖いんですよね」
エイラはゆっくりと私に近づき、私は石段の隅においやられる。
少しでも足を踏み外せば、階段から落ちてしまう。
そのくらいエイラは私へ接近していた。
しかし、そんなこと以上にエイラの言葉が頭に残った。
死ぬのが怖い。
それは私にとって象徴的な感情だった。
「うん、怖い。だから死なないように頑張ってる」
私はエイラの頭を撫でて、できるだけ優しい声音でそう言ってみる。
しかし、エイラは目を細めることはなく、ただ私の目を見つめていた。
「……じゃあどうして、ネルさんを庇ったんですか?」
「え?」
エイラから飛び出した言葉。
その言葉に少し困惑する。
「いや、だって……ネルが死んじゃったら……」
「わかってます。でも、それ以上にミラさんは死ぬのが怖いじゃないんですか?」
エイラは再び私に迫り、綺麗な顔が私の目前まで迫ってくる。
「え、エイラ? 私は……」
「ミラさんは悪い人です。死ぬのが誰よりも怖いはずなのに、そんなに優しかったら……いつか……」
エイラは声を震わせながらそう言った。
そして、再び私との距離を詰める。
ネルの吐息が顔に当たるくらいの距離になり、私は一歩後ずさってしまう。
その瞬間、足が虚空に投げ出される。
踏んだと思っていた地面がなく、私はそのままバランスを失ってしまう。
「み、ミラさん!! 危な───」
無表情だったエイラの顔が歪む。
必死そうな表情のエイラが見えて、私は少し笑ってしまう。
こんな私でも、心配してくれるエイラは優しい子。
私は遠ざかっていくエイラを見つめる。
次の瞬間、後頭部に衝撃が走り、私は地面に叩きつけられた。
まぁでも、5段くらいの階段だし、別に命の危機もなければ怪我もないだろう。
そんなことを考えていると、意識が暗転した。
え? 当たり所が悪かった?
意識が朧気になって……やばい……。
*
薄れゆく意識の中、暗闇であの時のことを思い出した、
私が初めて死んだ日のこと。
「……綺麗」
薄れゆく意識の中、視界には満天の星空が映っていた。
もう既に心臓は魔獣に貫かれ、息苦しさと痛みが頭を埋め尽くしている。
それでも、あまりに綺麗な夜空に目を奪われた。
まだ田舎の村娘だった私は、ここで人生を終えるはずだった。
「勇者様……この子は……」
視界の隅で誰かが喋っている。
この声は……村長の声だった。
お母さんとお父さんは魔獣に殺されたから、残ってるのは私の知らない人だけ。
まだ家から出たこともあんまり無かったから、少し心残りはあった。
でも、もう残ってるものは無いから。
私はここで死んでいいと心から思っていた。
「…………」
視界の隅から知らない人の顔が現れる。
見下すように私を見つめる誰か。
「勇者様。この子を助けられる方法は……」
「……ない」
勇者様と呼ばれた人は、目を閉じたままそう答えた。
分かってたけど、勇者様って言われる人でも私を助けられないんだ。
ここで私の人生は終わりみたい。
短かったけど、それでも多くのものを知れた。
死ぬのは怖いけど……それでもいいと思った。
「……すまない」
勇者様はそう言って、腰から剣を抜いた。
「どうかこれ以上の苦しみを感じないように……君に永遠の安らぎがあらんことを」
勇者様は顔を歪めながら、私の首元に剣を振り下ろした。
最後に見たのは苦しそうな勇者様の顔。
この人の記憶に私が残り、きっとこの人は苦しむだろう。
その事だけが少し心残りだった。
剣が私の脊髄を貫き、私は死んだ。
綺麗な星空の下、私は勇者様に殺された。
初めての死だった。
*
目が覚めた。
あれ? ここは……?
辺りを見渡すと、私はベッドの上にいた。
「あれ……?」
知らない人の顔が三つあった。
それに昔より私の声が低くなっている気がする。
「ミラさん……? 大丈夫ですか?」
すると、金髪の修道女が私の方を不安そうな瞳で見つめてくる。
あれ? 知り合いだっけ?
どれだけ思い出そうとしても、この人を私は知らなかった。
「あ、あの、あなたは……誰ですか?」
私が恐る恐るそう言ってみると、三人はその場で動きを止めた。
まるで時間が止まったみたいに、静寂が流れていく。
「……記憶喪失かしら。昔も一時期だけどあったわね」
すると、剣を持った女の人がそう言った。
え、記憶喪失?
私には記憶はあるけど……?
確か……厄災を倒して死んでから……そこから……あれ。
そこからの記憶は少し曖昧だった。
長い時間を過ごしていた気がするけど、思い出せなかった。
やっぱり、この人の言うとおり記憶喪失らしい。