味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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26話 ミリナの過去

 昔、一度だけミラは記憶喪失になったことがあった。

 あの時は数日間だけだったけど、新鮮な気分だった。

 まだミラは完全に取り繕えてたこともあってか、違和感はあまりなかった。

 

 本性を知った今、あの時の違和感にやっと気づいた。

 あの時のミラは打算的な行動を全くしていなかった、

 

 あれがきっとミラの本性。

 ミラがまだ英雄と呼ばれていた時代の彼女だった。

 

「わ、私……記憶喪失なの?」

 

 いつもの喫茶店に入り、私達パーティーメンバーはミラに向かうように座った。

 当人であるミラは不思議そうに首を傾げていた。

 

「そうね。まぁあんたが記憶を失うのは珍しいことじゃない……気がするわ」

 

 まぁそうは言い切れないけど、そういう体質なのかもしれない。

 

「それは……いつ治るんですか?」

 

 すると、私の隣に座るネルが不安そうな表情を浮かべる。

 

「まぁ数日で治るわ。前もそうだったわ」

 

 私がそう言うと、ネルとエイラは安心したように息を吐いた。

 まぁミラのことだしね。

 心配しても無駄よね。

 

 私もどこかそういうことに関してはミラに信頼を置いていた。

 

「じ、じゃあ、戻るまでの間は誰かがお世話しないといけませんね……」

 

 すると、沈黙を裂くようにエイラが立ち上がる。

 そして、ミラの手を取った。

 

「こ、ここは私が代表してお世話を!」

 

 エイラは私たちの顔を睨み、そう言い放った。

 

「だ、ダメです! それは私が!」

 

 すると、ネルもそれに呼応するように立ち上がる。

 ネルとエイラはお互い睨み合うように、バチバチと視線をぶつけ合った。

 

 私はその二人を見て、少しだけモヤモヤとした感情があった。

 私がミラのことを1番知ってる。

 私がお世話するべきなのに。

 

「ふふ、私って人気なんだね」

 

 そんな様子を見て、ミラが小さく笑った。

 初めて見るミラの純粋な笑みに、ドキッと心臓が跳ねる。

 

「分かったわ。じゃあ、一日交代でミラの世話をしましょう。順番はジャンケンで」

 

 私も立ち上がり、その戦いに参戦するためルールを作ることにした。

 二人は不満そうな顔をしながらも、頷いてくれた。

 

 そうして、私達三人は手を出しあった。

 そして、運命のジャンケンが行われた。

 なぜだか心臓がドキドキする。

 コイツの世話なんて別にしたくないのに。

 

 でも、最初の方だったら……いいな。

 記憶喪失がいつ治るか分からないから、最初の方だったらミラを独占できる。

 

「あ……」

 

 ジャンケンの結果が見えた。

 少し間を開けて、勝敗をやっと理解できた。

 

 一番手は私だった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 いつもの家。

 何度も何度も過ごしてきたはずなのに、無性に落ち着かない。

 理由は明白だった。

 

 ジャンケンによって勝ち取った一番手の権利。

 私は自分の家にミラを招き入れた。

 まぁだって、お世話しないとどうなるか分からないし。

 ちゃんと見ておかないと……ダメよね。

 

「綺麗な部屋……その、ミリナさんは真面目な人なんだね」

 

 ミラは少し気まずそうに私の部屋を見渡した。

 慣れない呼び方に少しドギマギする。

 

「その……私のことはミリナでいいわよ?」

 

「え? あ、うん、じゃあ、ミリナ」

 

 ミラはいつもの呼び方で私を呼ぶと、屈託のない笑みを見せた。

 また心臓がドクッと跳ねて、顔が熱くなる。

 私の憧れのままのミラが、目の前にいた。

 そのことに緊張してしまう。

 

「と、とりあえずもう遅いからお風呂にでも入ってくるわ。後で使い方は教えるから……」

 

 あまりの緊張に私は逃げ出すように浴室へ向かった。

 その様子を手を振って見送ってくれるミラ。

 

 服を脱ぎ、私は適当に水浴びをした。

 その間も、ずっとミラのことで頭がいっぱいだった。

 

 自分の家にミラがいる。

 それだけのこと、そのはずなのにどうしても頬が緩んでしまう。

 嬉しくなんてない……のに。

 

「やっぱり……好きなんだ……」

 

 私は地面を流れる水を見つめながら、そう呟いてしまった。

 言葉にしただけで顔が熱くなり、恥ずかしくて死にそうになる。

 

「おお、広いね。ミリナのお風呂」

 

 すると、その瞬間浴室の扉を開ける音が聞こえてきた。

 

「え?」

 

 扉の方を振り返ると、そこにはミラがいた。

 ミラは当たり前のように裸のまま、浴室に突撃してきていた。

 

「な、な、何してるの!? わ、私まだ入ってるから……っ!!」

 

 私は必死に体を隠し、ミラから距離を取る。

 すると、ミラは不思議そうに首を傾げた。

 

「女の子同士でお風呂って普通じゃないの?」

 

 あ、ああ……ダメだ。

 ミラはこういう奴だったんだ……。

 こういう所は過去のミラとか関係なく、こうなんだ。

 

 私は新しい発見をしてしまった。

 それも最悪のシュチュエーションで。

 

「ふふ、久しぶりに誰かとお風呂に入るよ。少し楽しみなんだよね」

 

 ミラは笑顔で私と同じように水浴びをする。

 恐る恐るミラの方を見てみると、あまりに刺激の強い光景が広がっていた。

 思わず私は目を両手で覆い隠す。

 

 こんなことダメなのに……。

 

 ミラと私は無言のまま水浴びを済まし、風呂に二人で浸かってしまった。

 風呂から出ようとしてもミラは私の手を掴み、強引に出るのを阻止された。

 打算的でなくても、ミラはこういう性格なんだということを実感してしまった。

 

「ねぇ、私ってどんな人になった? ミリナはどんな関係なの?」

 

 狭い風呂の中、私とミラは向かい合いながらそんなことを話す。

 ミラの体が見えるせいで目を逸らしていると、そんなことをミラは尋ねてきた。

 

「どんな人って……」

 

 私は答えに詰まってしまう。

 どうしようもないクズで、でも時々優しくて……。

 そんなこと言えなかった。

 

「そう、私、やっぱりダメだったんだね」

 

 答えに詰まっていると、ミラは悲しそうに目を伏せた。

 その表情に胸がキツく締め付けられる。

 

「ち、違うわ。あんたは……クズだけど頑張ってるわ」

 

 思わず口に出てしまった本音。

 目の前のミラはぶっと吹き出した。

 

「クズって……ふふっ、ミリナは素直だね」

 

 ミラは酷く嬉しそうに笑った。

 

 その笑顔を見て、私の頬は無意識に緩んでしまう。

 このまま、この時がずっと続けばいいのに。

 そう思えるほどに。

 

 

 *

 

 

 

 深夜、私とミラは一緒に眠りについた。

 まぁ言うまでもなく、私は眠ることができなかった。

 

 しかし、横のミラは気持ち良さそうに眠っていた。

 普通はあんたが眠れない側の人間でしょ。

 

 私は少し苛立ちを覚えながらも、ミラの顔に手を伸ばした。

 月明かりに照らされるミラの顔。

 寝顔だけはあの時も今も変わらない。

 

「ぅぅ…………ぅ……」

 

 ミラは苦しそうに唸っていた。

 きっと嫌な夢を見ているのだろう。

 何度も死を経験して、悪夢を見るなという方が無理な話だった。

 

 私が……あなたを守れたら……。

 

「うぅ……ネル……どこ……」

 

 その瞬間、ミラはハッキリとネルの名前を出して苦しそうに唸った。

 記憶がないはずなのに、ネルの名前だけはハッキリと口に出した。

 そのことに心臓が止まりそうになる。

 

 私は分かってしまった。

 

 きっと、私はミラの一番大切な人にはなれないんだ。

 

 私が好きなミラは、きっと私のものにはならない。

 

「ばか……ばかばかばかばかばか」

 

 不思議と涙が零れる。

 まだ諦めないと言ったあの日のことを思い出す。

 まだ好きだと気づいたのに、私はきっとネルに勝てない。

 

 その事を考えると、胸が苦しくなり悔しいという感情が湧き上がる。

 好きだったけど、もうミラは別の好きな人を見つけていた。

 

「でも、今だけは……」

 

 私は音を立てないように、こっそりミラの顔に口を近づけた。

 そして、優しく口付けをした。

 

 すると、次の瞬間ミラが目を開けた。

 

「─────!?!?!?」

 

 私は急いでミラの唇から口を離す。

 本当に止まりかけていた心臓が止まった。

 あまりの衝撃に頭が真っ白になる。

 

「……ぐがーー」

 

 しかし、その次の瞬間にはミラは大きないびきを立てていた。

 

 どうやら、私は九死に一生を得たらしい。

 

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