味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
遂に来た。
私が二番目のお世話係。
これでミラさんと一緒に沢山話せる。
私はすぐさまミリナさんからミラさんを引き取る。
ミリナさんは少し残念そうだったけど、私たちは敵同士なんだから同情しちゃダメだめよね。
「えーっとエイラだよね? 名前はミリナから聞いたよ」
私とミラさん二人っきりになった。
少し気まずかったのかミラさんは頬をポリポリと掻きながらそう言った。
「はい。私はエイラです。覚えてくださいね」
私はミラさんの方を向いて、手をそっと掴んだ。
私の動きにミラさんの瞳が揺れる。
「エイラは……少し大胆な人なんだね」
ミラさんは苦笑いしながらそう言った。
「強引って……この癖はあなたのものですよ。あなたのせいで、こうなったんですから」
すぐに手を繋ぐ癖も、ぎこちない笑顔も。
全部ミラさんの癖が移ってしまったものだった。
ミラさんは困惑しながらも「ご、ごめん……」と謝っていた。
「そ、それは私こそ……すみません。ミラさんが記憶喪失になった原因は私なんです。私がミラさんを階段から落としてしまって……」
謝るミラさんを見て、私は慌てて謝り返す。
今のミラさんは少し調子が狂う。
いつもなら冗談を返してくれるはずなのに、今のミラさんは真面目に捉えてしまっていた。
*
今思えば、ネルさんもミリナさんも自分の家を持っている。
しかし、修道女である私は寮住まいであり、そこは修道女以外立ち入り禁止だった。
ま、まずいです。
お世話係なのに、家がないのは話にならない。
でも、だからと言ってこの任務を手放すのはダメだ。
私は作戦を考えるために、とりあえずミラさんを教会まで連れて行った。
ミラさんは不思議そうな顔をしながらも、着いてきてくれた。
「来ましたねエイラ。それにミラ様」
すると、教会に入ってすぐ目の前には大司祭様の姿があった。
まるで私達が来るのを分かっていたかのように、大司祭様はそこに立っていた。
「あ、大司祭さん」
ミラさんは大司祭様の姿を見ると、あまりに不敬な呼び方で大司祭様を呼んだ。
知り合いだったのでしょうか……。
い、いえ、その前に呼び方を直さないと。
「み、ミラさん……大司祭さんじゃなくて大司祭様ですよ……!」
私はミラさんの耳元でそう囁く。
「ふふ、良いのです。ミラ様が私のことをなんと呼ぼうが構いません」
すると、大司祭様は美しい笑みを浮かべた。
少しだけいつもより嬉しそうな大司祭様の表情に、少しだけ違和感があった。
「私はミラ様に随分嫌われてしまいましたから……こうして普通に接して貰えるだけで嬉しいのです」
大司祭様は微かに表情を曇らせた。
ミラさんに嫌われてる? 大司祭様が……?
想像できなかった。
こんなに優しい人をミラさんが嫌うなんて……。
「エイラ、部屋は用意しておきました。ここで暫しの休息を」
大司祭様はそう言って、私の手に鍵を差し出した。
私とミラさんは案内された部屋に向かった。
大司祭様に渡された鍵で部屋の扉を開いた。
その瞬間、目に飛び込んできたもの。
それは全面ピンク色の部屋だった。
部屋の至る所に枕が設置され、奥には豪華なバスタブが見えた。
「な、な、なんでしょうか……こ、これ……」
私は何故か顔が真っ赤になってしまいながらも、分からないふりをする。
「おー、すごい! めっちゃ広いね」
そんな私に構うことなく、ミラさんは部屋に飛び込んで行った。
その姿を見て、ふと我に返った。
私は何を考えているのでしょうか……。
少し恥ずかしくなり、私もミラさんに続いて普通に部屋に入った。
*
夜、私は無駄に広いベッドでミラさんと一緒に眠った。
何故かベッドが一つしかなくて仕方なかった。
だから、決してそういうことは……。
私は枕に顔を埋め、悶々とする気持ちを振り払う。
「エイラは大胆に見えて結構真面目で臆病なんだよね。少し過ごして分かったよ」
すると、隣で眠っているはずのミラさんが話しかけてくる。
恐る恐るミラさんの方を向くと、ミラさんがパッチリ目を開けて私の方を見ていた。
ミラさんの顔が近くて、ドキッと心臓が痛む。
「そ、そうですね……確かに……私はそういう性格ですね……」
緊張のあまり、私はミラさんの言葉に上手いこと返せなかった。
ミラさんはやっぱり人の本性を見抜くのが上手い。
そうやって私のことも見抜いて、あんな風に動いていたんでしょうか。
そのことを考えると少しモヤッとしてしまう。
でも、私もミラさんのことについては知ってる。
ミラさんは自分勝手で死にたくないけど、たまに優しい人。
「今のミラさんは死ぬのが怖いですか?」
私はふと気になってミラさんにそう尋ねてみる。
「え? 死ぬの? ま、まぁ、確かに怖いかな。でも、それが誰かの為なら……それでいいかなって」
ミラさんはそう答えて苦笑いをした。
この頃のミラさんはまだ勇者として戦っていた時期。
死の恐怖よりも、誰かの為を思って戦っていた……。
だから、あの時ネルさんを庇った。
まだこの時の思いが完全に消えていなかったから。
「…………」
じっとミラさんを見つめていると、不思議そうに首を傾げるミラさん。
いずれ、この目の前のミラさんは死の恐怖を知る。
人の身には、あまりに重すぎる苦痛を味わうことになる。
そして、戦うことを止める。
しかし、ミラさんはきっとあの時みたいにまた危機に晒される。
生まれつき勇者として根っこにあるものは変えられない。
今後、ミラさんが再び折れて立ち直れなくなったら……。
私は大司祭様の言う通り、ミラさんの支えになれるでしょうか。