味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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28話 空

 記憶を失って数日。

 ミリナと一緒に過ごして、エイラとも同じように過ごした。

 その二人ともが私の変化に驚いていた。

 

 未来の私は、今の私とは違うらしい。

 どう違うのか……二人に聞いてみてもよく分からなかった。

 

 ただ確かに分かるのは……この左腕のこと。

 私はまだ戦うことを止めてない。

 

 きっと、まだ私はあの地獄にいた。

 

 

「今日は……ネルって人か……」

 

 私は待ち合わせ場所でネルという人を待った。

 パーティーの魔法使い担当で、1番初めにパーティーに私が入れた人らしい。

 どんな人なんだろう。

 少しソワソワしながらネルを待った。

 

「ミラさん! こっちですよ!」

 

 すると、声が聞こえてきた。

 聞き慣れているようで知らない声。

 声の方を振り返ると、そこにはネルがいた。

 

 臆病そうな隠れ目の長い前髪。

 何故か愛おしいその小さな顔。

 

 私はネルを知っていた。

 

「ネルだよね? 少しの間だけどよろしくね」

 

 私はネルの方へ走り、小さく頭を下げた。

 

「ふふっ、記憶のないミラさんも可愛いですよ」

 

 すると、ネルは頬を紅く染めながらそう言った。

 その瞬間、ドキッと心臓が跳ねた。

 ただ、可愛いと言われただけなのに心が揺れ動いた。

 

 ネルは私にとって、どんな人なんだろう。

 

 ただならぬ感情の揺らぎに、私は困惑していた。

 

 

 

 ネルは私の手を引いて、家まで案内してくれた。

 

「ここ……なんか懐かしいね」

 

 知らない部屋。

 これは私の部屋らしいけど……まぁ確かにそんな感じはした。

 必要最低限の物しかないし、匂いも私のものだ。

 

 でも、少し違うのはその匂いにネルの匂いが混じっていること。

 

「私とミラさんはこの部屋で何度も……ふふっ」

 

 ネルは頬を両手で覆いながら、嬉しそうにそう言った。

 言っている意味は理解できなかったけど、私も何故か恥ずかしかった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 ネルと少しの間、話して分かったことがある。

 ネルは私の好みの性格だということ。

 それに容姿も私の好みピッタリだ。

 

 でも、戦闘に関してはあまり良くはない。

 勇者の戦いに着いていけるほど、強くはない。

 

 でも、私のパーティーメンバーなんだ。

 

 未来の私は戦闘よりも好みを優先して、パーティーメンバーを選んでいた。

 

 そのことが少し不思議だった。

 

 

「もう夜ですね……ミラさん、ちょっと外に行きませんか?」

 

 すると、ネルがベッドから立ち上がり、私に手を差し出した。

 私は不思議と無意識にネルの手を取っていた。

 

 その時、少しだけ嬉しかった。

 私の好きなタイプが私を誘ってくれたこと。

 

 好みでパーティーメンバーを選んでも、案外悪くないのかもしれない。

 

 

 私とネルは手を繋いだまま、外を歩き始めた。

 ネルは色んな場所での色んな思い出を私に聞かせてくれた。

 

 どの思い出も思い出せないものばかりだけど、心が温かくなった。

 

 歩き話していると私の知らない場所に、ネルは私を連れて来ていた。

 城壁の階段を上がり、夜の星空が近くなる。

 最後まで階段を上がると、都合の良いベンチが置いてあった。

 

「ここは、私のとっておきの秘密の場所です。未来のミラさんも知らない場所です」

 

 ネルはそのベンチに腰を下ろし、その隣をトントンと叩いた。

 私はその意図を察して、ネルの隣に腰を下ろした。

 

 ネルの秘密の場所……。

 風が吹いて、気持ちいい。

 それに星空がまるで目の前にあるみたいで……。

 

「綺麗……」

 

 私は星空を見ながら思わずそう呟いた。

 

 満天の星空。

 初めて死んだ時を思い出すほど、綺麗な星空に目を奪われた。

 

「綺麗ですね……きっと気に入ってくれると思ってました」

 

 星を眺めていると、右手に暖かいものが当たる。

 ふと横を見ると、ネルが私の方をじっと見つめていた。

 

 私なんかより星空の方が綺麗なのに……。

 どうして、ネルは私の方を見てるんだろう。

 

「ミラさん。この壁を超えて、すごく遠い場所にはこの国以外にも色んな国があるらしいです」

 

 ネルは私の方をじっと見つめながら話し始めた。

 

「もし、ミラさんが戦わなくて良くなったら……一緒に見に行きませんか?」

 

 嬉しそうに頬を綻ばせ、ネルは私にそう言った。

 私はそんなネルから目を離せなかった。

 

「ふふ、でもその為には魔王を倒さないと……」

 

 私がそう言うと、ネルは目を伏せてしまった。

 悲しそうなネルの表情に、心が揺れた。

 

「で、でも、多分その日はいつか来ます! その日が来たら!」

 

 すると、ネルは覚悟を決めたように立ち上がった。

 あ、危なくない……?

 私はネルが落ちないか少し心配になる。

 

 でも、綺麗だった。

 地平線の星とネルが重なった。

 

 その時、分かった。

 ネルは私にとって大切な人なんだと。

 きっと、命よりも大事な人。

 

 未来の私は地獄にいるんじゃなかった。

 私にも命より大事なものができたんだ。

 

 私は少し安心してしまった。

 

「その日が来たら……その……」

 

 ネルは風に煽られながらも、私の方へ近づいてくる。

 

「どっちも生きてたら……いいですね……」

 

 ネルは少し苦しそうな表情でそう言った。

 

 その表情は脳裏に焼き付いて、しばらく離れなかった。

 

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