味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
記憶を失って数日。
ミリナと一緒に過ごして、エイラとも同じように過ごした。
その二人ともが私の変化に驚いていた。
未来の私は、今の私とは違うらしい。
どう違うのか……二人に聞いてみてもよく分からなかった。
ただ確かに分かるのは……この左腕のこと。
私はまだ戦うことを止めてない。
きっと、まだ私はあの地獄にいた。
「今日は……ネルって人か……」
私は待ち合わせ場所でネルという人を待った。
パーティーの魔法使い担当で、1番初めにパーティーに私が入れた人らしい。
どんな人なんだろう。
少しソワソワしながらネルを待った。
「ミラさん! こっちですよ!」
すると、声が聞こえてきた。
聞き慣れているようで知らない声。
声の方を振り返ると、そこにはネルがいた。
臆病そうな隠れ目の長い前髪。
何故か愛おしいその小さな顔。
私はネルを知っていた。
「ネルだよね? 少しの間だけどよろしくね」
私はネルの方へ走り、小さく頭を下げた。
「ふふっ、記憶のないミラさんも可愛いですよ」
すると、ネルは頬を紅く染めながらそう言った。
その瞬間、ドキッと心臓が跳ねた。
ただ、可愛いと言われただけなのに心が揺れ動いた。
ネルは私にとって、どんな人なんだろう。
ただならぬ感情の揺らぎに、私は困惑していた。
ネルは私の手を引いて、家まで案内してくれた。
「ここ……なんか懐かしいね」
知らない部屋。
これは私の部屋らしいけど……まぁ確かにそんな感じはした。
必要最低限の物しかないし、匂いも私のものだ。
でも、少し違うのはその匂いにネルの匂いが混じっていること。
「私とミラさんはこの部屋で何度も……ふふっ」
ネルは頬を両手で覆いながら、嬉しそうにそう言った。
言っている意味は理解できなかったけど、私も何故か恥ずかしかった。
*
ネルと少しの間、話して分かったことがある。
ネルは私の好みの性格だということ。
それに容姿も私の好みピッタリだ。
でも、戦闘に関してはあまり良くはない。
勇者の戦いに着いていけるほど、強くはない。
でも、私のパーティーメンバーなんだ。
未来の私は戦闘よりも好みを優先して、パーティーメンバーを選んでいた。
そのことが少し不思議だった。
「もう夜ですね……ミラさん、ちょっと外に行きませんか?」
すると、ネルがベッドから立ち上がり、私に手を差し出した。
私は不思議と無意識にネルの手を取っていた。
その時、少しだけ嬉しかった。
私の好きなタイプが私を誘ってくれたこと。
好みでパーティーメンバーを選んでも、案外悪くないのかもしれない。
私とネルは手を繋いだまま、外を歩き始めた。
ネルは色んな場所での色んな思い出を私に聞かせてくれた。
どの思い出も思い出せないものばかりだけど、心が温かくなった。
歩き話していると私の知らない場所に、ネルは私を連れて来ていた。
城壁の階段を上がり、夜の星空が近くなる。
最後まで階段を上がると、都合の良いベンチが置いてあった。
「ここは、私のとっておきの秘密の場所です。未来のミラさんも知らない場所です」
ネルはそのベンチに腰を下ろし、その隣をトントンと叩いた。
私はその意図を察して、ネルの隣に腰を下ろした。
ネルの秘密の場所……。
風が吹いて、気持ちいい。
それに星空がまるで目の前にあるみたいで……。
「綺麗……」
私は星空を見ながら思わずそう呟いた。
満天の星空。
初めて死んだ時を思い出すほど、綺麗な星空に目を奪われた。
「綺麗ですね……きっと気に入ってくれると思ってました」
星を眺めていると、右手に暖かいものが当たる。
ふと横を見ると、ネルが私の方をじっと見つめていた。
私なんかより星空の方が綺麗なのに……。
どうして、ネルは私の方を見てるんだろう。
「ミラさん。この壁を超えて、すごく遠い場所にはこの国以外にも色んな国があるらしいです」
ネルは私の方をじっと見つめながら話し始めた。
「もし、ミラさんが戦わなくて良くなったら……一緒に見に行きませんか?」
嬉しそうに頬を綻ばせ、ネルは私にそう言った。
私はそんなネルから目を離せなかった。
「ふふ、でもその為には魔王を倒さないと……」
私がそう言うと、ネルは目を伏せてしまった。
悲しそうなネルの表情に、心が揺れた。
「で、でも、多分その日はいつか来ます! その日が来たら!」
すると、ネルは覚悟を決めたように立ち上がった。
あ、危なくない……?
私はネルが落ちないか少し心配になる。
でも、綺麗だった。
地平線の星とネルが重なった。
その時、分かった。
ネルは私にとって大切な人なんだと。
きっと、命よりも大事な人。
未来の私は地獄にいるんじゃなかった。
私にも命より大事なものができたんだ。
私は少し安心してしまった。
「その日が来たら……その……」
ネルは風に煽られながらも、私の方へ近づいてくる。
「どっちも生きてたら……いいですね……」
ネルは少し苦しそうな表情でそう言った。
その表情は脳裏に焼き付いて、しばらく離れなかった。