味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女   作:人間として終わってる人

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31話 自爆魔法

 戦いが始まり、数分が経った。

 

 無印の勇者を先頭として、多くの勇者が厄災にダメージを与えていった。

 無印の勇者の聖剣、炎の勇者の豪火球、光の勇者の光波攻撃。

 その全てを最後の厄災は食らった。

 

 しかし、簡単に再生してしまう。

 

「な、なんなんですか……? 再生速度が早すぎます……」

 

 私の少し前に立つエイラが震えた声でそう呟いた。

 

「いや、再生速度が早くても関係ない。魔核を壊せば……殺せるはず」

 

 私は冷静に厄災を見つめる。

 魔核はどこだ?

 まだ時間はある。まだ私の番が回ってくる前に魔核を探さないと。

 

 今度こそ本当に死ぬ。

 

「魔核を探せ!! 魔核を壊せば倒せる!」

 

 すると、私の思考を読み取るように無印の勇者はそう叫んだ。

 その言葉に周りの勇者達が頷く。

 パーティーの魔法使い達も、厄災に満遍なく魔法をぶつけた。

 

 魔核を探すべく、全員が厄災に攻撃をぶつけていた。

 

 上半身も下半身も、爪も、頭も、全てを破壊した。

 しかし、再生が止まらなかった。

 

 辺りに絶望感が漂う。

 まだ厄災は攻撃すらしていない。

 それなのに、私たちは追い詰められていた。

 

 

「───────────」

 

 そして、遂にその時は来た。

 厄災から発せられた甲高い音。

 神聖さすら感じさせるほどの透き通った叫び声は、ゲートの中を震わせた。

 

 最後の厄災の攻撃。

 どんな文献にも記されていない最悪の攻撃。

 これを見て生きて帰った人間は、この星に存在しない。

 

「ッ!?!?」

 

 厄災を睨んでいると、唐突に星空が輝いた。

 赤白く輝いた星空。

 思わず目が奪われそうになる。

 

 しかし、その瞬間、無数の星から赤い槍が無数に降ってきた。

 自由落下ではなく、とんでもない勢いで無数の槍は私たちを襲った。

 

 地面が抉れ、連続的な轟音が辺りを包む。

 砂嵐が舞って、視界が奪われる。

 これでは上を見て避けられない。

 

 その瞬間、私の鼻を掠めるように槍が地面に刺さった。

 

「ネル……! ネルは……!!」

 

 私は怖くなり、砂埃の中必死にネルを探す。

 

 しかし、ネルは見つからなかった。

 

 

 数秒後、厄災の攻撃が止み、砂埃が消えた。

 やっと視界が晴れて、周りが確認できた。

 

 視界には無数の死体と鮮血。

 綺麗な星空とは対照的な地獄が広がっていた。

 

「ネル!!」

 

 私はその地獄の中、必死にネルを探した。

 すると、視界の隅にネルの姿が見えた。

 

 ネルは大きく手を挙げて、防御魔法を展開していた。

 その防御魔法は何本もの槍を防いでいた。

 

 そして、その魔法の下にはエイラとミリナの姿があった。

 

 

「……良かった」

 

 私は地面に崩れ落ちそうになるくらい安心してしまった。

 

 しかし、今は安心してられる状況じゃない。

 あれを続けられたら簡単に全滅してしまう。

 

 どうにかして倒さないと……。

 

 私は剣を再び握り直した。

 

 そして、厄災に飛びかかった。

 

 求めるのは一つ、魔核の存在のみ。

 

 

「み、ミラさん! 待って!!」

 

 すると、声が聞こえてきた。

 ネルの声だった。

 私が振り返ると、ネルは不安そうな目で私を見つめていた。

 

「ミラさ───魔核の場所は─────」

 

 微かに遠くのネルの声が聞こえてくる。

 ネルはそう言うと、上を指さした。

 

 私は上を見上げてみる。

 そこには綺麗な星空が……。

 

「まさか……」

 

 嫌な予感がした。

 私がネルの方をもう一度見ると、ネルは小さく頷いた。

 

 ああ、そういうことなんだ。

 魔核の場所は……あの星空の場所にある。

 

 人が絶対に届かない場所。

 そこに魔核はあった。

 

「そんなの……っ!!」

 

 勝てるわけない。

 空に人はどう足掻いても、手が届かないのだから。

 

 でも、私はここを生き残らないと……ダメだ。

 

 私は必死に厄災に飛びかかった。

 分かってる。届かないって分かってるけど……こうするしかなかった。

 

 厄災の体を引き裂き、いくつもの部位を消滅させる。

 しかし、再生が早すぎた。

 

「おい、俺も……付き合わせろ……」

 

 私が必死に戦っていると、死体の群れから一人の男が立ち上がった。

 

 無印の勇者だった。

 無印の勇者は剣を取り、フラフラになりながらも厄災に飛びかかった。

 無数の火花が散り、厄災の一部を何度も消滅させる。

 

「ま、魔核は空に……ッ!」

 

「分かってる! そんなこと分かってる……」

 

 私がそう叫ぶと、無印の勇者は苦虫を噛み潰したような表情をする。

 彼も分かっていた。

 あの空に届かないことを。

 

 それでいて、私と同じように必死に剣を振るっていた。

 

 無印の勇者ですら為す術なし。

 そのことに絶望が頭を埋め尽くす。

 

「────ッ!?」

 

 その瞬間、再び空が赤く光った。

 来た。あの攻撃が。

 

 次はもう耐えられない。

 運良く避けられたけど、次は無い。

 

 私はその場で膝から崩れ落ちた。

 

 ダメだ。勝てない。

 

 

「ミラさん。逃げてください。安全な場所を見つけました。あそこなら、あと一回だけ槍を耐えられます」

 

 すると、声が聞こえてきた。

 

 ネルの声だった。

 

 ネルは極めて冷静にそう言った。

 

「な、何言って──」

 

「逃げてください! 死にたくないんですよね!?」

 

 私が口を開くと、ネルは大声で怒鳴った。

 ネルは真剣な眼差しで私を見つめていた。

 いつもと違うネルが、そこにはいた。

 

「で、でも……逃げててもアイツは倒せない……」

 

 私がそう言うと、ネルはふっと微かに笑った。

 

「私なら倒せます。あの空に届きます」

 

 ネルはそう言って、その場で膝を着いた。

 そして、大きな杖を抱き締めた。

 ネルより一回り大きな杖が、光を放つ。

 

「私の自爆魔法なら届きます」

 

 ネルはそう言って、私の目を見つめてくる。

 

「約束しました。代わりに死ぬって……だから、計画通りです。これで私とミラさんの計画は完璧です」

 

 ネルは笑った。

 その笑みに胸が苦しくなる。

 呼吸ができなくなって、頭が真っ白になる。

 

 計画通り。

 そのはずなのに、こんなにも胸が苦しい。

 

 ここでネルが死んで、厄災を倒せばそれで全部解決。

 

 そのはずなのに。

 

 

 私は無言のまま、槍を凌げる場所へと歩いた。

 その様子を見て、ネルは優しく笑った。

 

「ミラさん……私のこと、忘れないでくださいね……」

 

 ネルは最後にそう言った。

 

「私は……」

 

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