味方を自爆特攻させる気満々のクズ女 VS 激重ヤンデレ女 作:人間として終わってる人
戦いが始まり、数分が経った。
無印の勇者を先頭として、多くの勇者が厄災にダメージを与えていった。
無印の勇者の聖剣、炎の勇者の豪火球、光の勇者の光波攻撃。
その全てを最後の厄災は食らった。
しかし、簡単に再生してしまう。
「な、なんなんですか……? 再生速度が早すぎます……」
私の少し前に立つエイラが震えた声でそう呟いた。
「いや、再生速度が早くても関係ない。魔核を壊せば……殺せるはず」
私は冷静に厄災を見つめる。
魔核はどこだ?
まだ時間はある。まだ私の番が回ってくる前に魔核を探さないと。
今度こそ本当に死ぬ。
「魔核を探せ!! 魔核を壊せば倒せる!」
すると、私の思考を読み取るように無印の勇者はそう叫んだ。
その言葉に周りの勇者達が頷く。
パーティーの魔法使い達も、厄災に満遍なく魔法をぶつけた。
魔核を探すべく、全員が厄災に攻撃をぶつけていた。
上半身も下半身も、爪も、頭も、全てを破壊した。
しかし、再生が止まらなかった。
辺りに絶望感が漂う。
まだ厄災は攻撃すらしていない。
それなのに、私たちは追い詰められていた。
「───────────」
そして、遂にその時は来た。
厄災から発せられた甲高い音。
神聖さすら感じさせるほどの透き通った叫び声は、ゲートの中を震わせた。
最後の厄災の攻撃。
どんな文献にも記されていない最悪の攻撃。
これを見て生きて帰った人間は、この星に存在しない。
「ッ!?!?」
厄災を睨んでいると、唐突に星空が輝いた。
赤白く輝いた星空。
思わず目が奪われそうになる。
しかし、その瞬間、無数の星から赤い槍が無数に降ってきた。
自由落下ではなく、とんでもない勢いで無数の槍は私たちを襲った。
地面が抉れ、連続的な轟音が辺りを包む。
砂嵐が舞って、視界が奪われる。
これでは上を見て避けられない。
その瞬間、私の鼻を掠めるように槍が地面に刺さった。
「ネル……! ネルは……!!」
私は怖くなり、砂埃の中必死にネルを探す。
しかし、ネルは見つからなかった。
数秒後、厄災の攻撃が止み、砂埃が消えた。
やっと視界が晴れて、周りが確認できた。
視界には無数の死体と鮮血。
綺麗な星空とは対照的な地獄が広がっていた。
「ネル!!」
私はその地獄の中、必死にネルを探した。
すると、視界の隅にネルの姿が見えた。
ネルは大きく手を挙げて、防御魔法を展開していた。
その防御魔法は何本もの槍を防いでいた。
そして、その魔法の下にはエイラとミリナの姿があった。
「……良かった」
私は地面に崩れ落ちそうになるくらい安心してしまった。
しかし、今は安心してられる状況じゃない。
あれを続けられたら簡単に全滅してしまう。
どうにかして倒さないと……。
私は剣を再び握り直した。
そして、厄災に飛びかかった。
求めるのは一つ、魔核の存在のみ。
「み、ミラさん! 待って!!」
すると、声が聞こえてきた。
ネルの声だった。
私が振り返ると、ネルは不安そうな目で私を見つめていた。
「ミラさ───魔核の場所は─────」
微かに遠くのネルの声が聞こえてくる。
ネルはそう言うと、上を指さした。
私は上を見上げてみる。
そこには綺麗な星空が……。
「まさか……」
嫌な予感がした。
私がネルの方をもう一度見ると、ネルは小さく頷いた。
ああ、そういうことなんだ。
魔核の場所は……あの星空の場所にある。
人が絶対に届かない場所。
そこに魔核はあった。
「そんなの……っ!!」
勝てるわけない。
空に人はどう足掻いても、手が届かないのだから。
でも、私はここを生き残らないと……ダメだ。
私は必死に厄災に飛びかかった。
分かってる。届かないって分かってるけど……こうするしかなかった。
厄災の体を引き裂き、いくつもの部位を消滅させる。
しかし、再生が早すぎた。
「おい、俺も……付き合わせろ……」
私が必死に戦っていると、死体の群れから一人の男が立ち上がった。
無印の勇者だった。
無印の勇者は剣を取り、フラフラになりながらも厄災に飛びかかった。
無数の火花が散り、厄災の一部を何度も消滅させる。
「ま、魔核は空に……ッ!」
「分かってる! そんなこと分かってる……」
私がそう叫ぶと、無印の勇者は苦虫を噛み潰したような表情をする。
彼も分かっていた。
あの空に届かないことを。
それでいて、私と同じように必死に剣を振るっていた。
無印の勇者ですら為す術なし。
そのことに絶望が頭を埋め尽くす。
「────ッ!?」
その瞬間、再び空が赤く光った。
来た。あの攻撃が。
次はもう耐えられない。
運良く避けられたけど、次は無い。
私はその場で膝から崩れ落ちた。
ダメだ。勝てない。
「ミラさん。逃げてください。安全な場所を見つけました。あそこなら、あと一回だけ槍を耐えられます」
すると、声が聞こえてきた。
ネルの声だった。
ネルは極めて冷静にそう言った。
「な、何言って──」
「逃げてください! 死にたくないんですよね!?」
私が口を開くと、ネルは大声で怒鳴った。
ネルは真剣な眼差しで私を見つめていた。
いつもと違うネルが、そこにはいた。
「で、でも……逃げててもアイツは倒せない……」
私がそう言うと、ネルはふっと微かに笑った。
「私なら倒せます。あの空に届きます」
ネルはそう言って、その場で膝を着いた。
そして、大きな杖を抱き締めた。
ネルより一回り大きな杖が、光を放つ。
「私の自爆魔法なら届きます」
ネルはそう言って、私の目を見つめてくる。
「約束しました。代わりに死ぬって……だから、計画通りです。これで私とミラさんの計画は完璧です」
ネルは笑った。
その笑みに胸が苦しくなる。
呼吸ができなくなって、頭が真っ白になる。
計画通り。
そのはずなのに、こんなにも胸が苦しい。
ここでネルが死んで、厄災を倒せばそれで全部解決。
そのはずなのに。
私は無言のまま、槍を凌げる場所へと歩いた。
その様子を見て、ネルは優しく笑った。
「ミラさん……私のこと、忘れないでくださいね……」
ネルは最後にそう言った。
「私は……」